西尾維新「混物語」傷物語〈Ⅲ冷血編〉来場者特典④「第大話 みここコミュニティ」のネタバレ解説

阿良々木くんは曲直瀬(まなせ)大学理学部数学科に補欠合格し、
同じ大学に進学した戦場ヶ原さんや老倉育とつるんでいましたが、
私達、こんなんじゃ高校時代と何も変わってないわ、何の成長も見えないわ、
と戦場ヶ原さんが言いました。

阿良々木くんは最近では気持ち悪いことにマムと呼んでいる羽川さんに泣きつき、
他の大学の葵井巫女子(あおいい・みここ)、江本智恵(えもと・ともえ)、
貴宮(あてみや)むいみという女子大生、
いーちゃんと、宇佐美秋春(あきはる)という男子大学生との、
交流の場をセッティングしてもらいました。

巫女子たちは、戯言遣いシリーズ第2弾、
「クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識」に登場しています。

カラオケルームでの二次会の席では2組に別れることになり、
阿良々木くん、葵井巫女子、江本智恵、貴宮むいみで1チーム作りました。

おきゃんな葵井巫女子、儚げな江本智恵、元ヤンの貴宮むいみは3人だけでも会話を回すことができ、
人見知りな阿良々木くんはミステリアスな雰囲気を出そうとして失敗し続けていました。

『変わる』ということについて話が弾み、江本智恵に促されて、
葵井巫女子はいーちゃんから聞いたという、変化する彫刻の話を阿良々木くんに話しました。

大学生になったばかりの頃、こんなことでいいのか、こんなあたしでいいのか、
と悩んでいた巫女子に、いーちゃんが話してくれたのだそうです。

むかしむかし、とある高名な僧侶が彫った、その年の干支である鼠の象は、
見事な出来栄えで、今にも動き出しそうで、
ある人がその鼠が逃げ出さないように、檻の中に閉じ込めたのだそうです。

僧侶はそれを見て、無駄なことだ、閉じ込めたところで、拙僧が込めた魂までは囚われない、
と言ったのだそうです。

翌年、檻の中の鼠の彫像が、牛の彫像になり、新年を迎えるたびに、
鼠、牛、虎、兎、竜、蛇、馬、羊、猿、鳥、犬、猪に変化し、
12回目の新年には、猪から鼠に変身することなく、ふっと消えてなくなったのだそうです。

江本智恵によれば、「変わりたいと思う気持ちは、自殺だよね」と、
いーちゃんはそんなことも言っていたのだそうです。

阿良々木くんは色々と考えましたが、問題は、変わったのではなく、変えられた場合――だ、
自分にとっていい変化ではなく――誰かにとって都合のいい変化、
己の変化と無変化について思い悩む葵井に対して、そういう意図で、
くだんの変化する彫刻の話をしたのであれば――『いっくん』は、闇だ、と考えました。

後日談では、阿良々木くんは3人の女子大生とは普通に別れて、その後、
普通に会っていないことが語られます。
戦場ヶ原さんや老倉も、その後、あちらのコミュニティと連絡が取れなくなったのだそうです。

変化する彫刻の謎について阿良々木くんは、「僧侶は檻の隙間から、
巨大な『鼠』の中にいる『牛』を、掘り出し、『牛』の中にいる『虎』を掘り出し、
(中略)『犬』の中にいる『猪』を掘り出したのだと推理しました。

『猪』の彫像は最小のサイズになり、檻の隙間をするりと通り、自由になったのでした。

また、現状を変えたくて、あのような交流の席に参加した阿良々木くん達3人に向けて、
変わりたいだなんて、変わってるね、といーちゃんは言ったのだそうです。


というあらすじなのですが、変わりたいと思う気持ちは、自殺だよね、
といういーちゃんの言葉は、「クビシメロマンチスト」で、
いーちゃんと関わったばかりに強制的に変化させられて崩壊した、
「みここコミュニティ」を暗示するような言葉ですね。

ちなみに、この話で干支を題材にしたのは、この話が混物語の12話目だったからでしょうね。

もしかして、「あかりトリプル」が〈Ⅲ冷血篇〉の③じゃなかったのは、
「あかりトリプル」が10話目の話で、「酉(とり)」が干支の10番目だから、
それと掛けたのでは――と思いましたが、
今日子さんの「子」が、「子(ね)」であることと、
「まゆみレッドアイ」のレッドアイが兎の赤い目と関係していること以外、
他の話は別に干支とは関係ないものばかりだったので、これは深読みしすぎですねw

西尾維新「混物語」傷物語〈Ⅲ冷血編〉来場者特典③「第喰話 りずむロックン」のネタバレ解説

今回のゲストキャラクターは、戯言遣いシリーズ第6弾、
『ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹』に登場する、
匂宮理澄(におうのみや・りずむ)です。

2月初旬、『恋物語』『憑物語』の間くらいの時期に北白蛇神社を訪れた阿良々木くんは、
名探偵という肩書の匂宮理澄と出会いました。

理澄は眼鏡をかけていて、拘束衣の上にマントを着ている、自称16歳の女の子です。

理澄に帰っていただくために、
阿良々木くんは理澄が捜査している児童誘拐事件について推理することになります。

誘拐された被害者は、骨董アパートに住む、
闇口崩子(やみぐち・ほうこ)という13歳の暗殺者の女の子です。

郵送で5000万円の身代金を要求する脅迫状が入ったアタッシュケースが届きました。

崩子の兄は地獄主義者の死神、父親は結晶皇帝(クリスタルカイザー)、
生涯無敗の六何我樹丸(りっかが・じゅまる)で、
その父親が『呪(まじな)い名』の時宮病院の身内の娘に手をつけていて、
その復讐で崩子は誘拐されたのだと理澄は見立てていました。

しかし、父親はお金なんて払わないでしょうし、
崩子とその兄は父親から逃げて家出中なので、
お金は骨董アパートに住む戯言遣いこと「いーちゃん」とねんごろな、
大金持ちのご令嬢、青色サヴァンこと玖渚友(くなぎさ・とも)が立て替えてくれました。

手紙で要求された通り、5000万円をアタッシュケースに詰めて、
兄を含む骨董アパートの住民の皆さんは、北白蛇神社の賽銭箱の上に置きました。

仲間みんなで、神社の各所に潜んで、犯人のやってくるのを待ちましたが、
犯人は約束の時間になっても現れず、いーちゃんがたまりかねて賽銭箱に駆け寄り、
アタッシュケースを開けると、5000万円は消えていて、
中にはすやすや眠る崩子が入っていたのだそうです。

理澄によると、時宮病院でも、その場を見張っていた全員を術中に陥れるのは無理なのだそうです。

謎が残り、名探偵がお出まししたのだそうです。

アタッシュケースは金庫みたいに頑丈で、それ自体が重さのあるものだから、
5000万円と13歳児の質量差は、誤差の範囲内だと聞き、
阿良々木くんは、「アタッシュケースが二重底だったという可能性を考えました。

13歳児をアタッシュケースに詰め込んで、山道を持ち運んだら、
『無傷』で済むはずがないと考えた阿良々木くんは、真相に辿り着きました。

理澄ちゃんっ――! と、阿良々木くんが理澄に向き直ると、
理澄の『兄』の人格、『殺し屋』の匂宮出夢(いずむ)が出現していました。

操想術で操られた崩子は、5000万円をくしゃくしゃに丸めて緩衝剤にしていたのでした。

アパートの住民は、帰ってきた崩子を連れて、アタッシュケースを残してすぐに山を下りたので、
時宮病院は5000万円を回収していたのでした。

阿良々木くんの推理を聞いた出夢は、5000万円を取り戻そうと、爆笑しながら、
北白蛇神社から跳び去っていったのでした。


というあらすじなのですが、意外な真相で、ミステリーとして面白かったです。

理澄は名探偵という肩書なのに、結局全部阿良々木くんが推理してるじゃないかと思う人もいるでしょうが、
理澄は戯言遣いシリーズの中でもそういう立ち位置のキャラですw

ちなみに、この「りずむロックン」は2月の話ですが、
戯言遣いシリーズ第1弾「クビキリサイクル 戯言遣いと青色サヴァン」の2ヶ月前の話ですね。

「クビキリサイクル」よりも後の2月だと考えると、重大な矛盾が生じてしまうので。

ネタバレになりますが、「クビキリサイクル」の後の2月の時点では、
理澄と出夢、崩子の兄」は既に死んでしまっていますから。

しかし、無桐伊織というキャラクターが生まれるのは、「クビキリサイクル」よりも後のことなので、
「いおりフーガ」は「クビキリサイクル」よりも後の話です。

「いおりフーガ」と「りずむロックン」はどちらも阿良々木くんが高校3年生の時の話なので、
時系列的に矛盾が生じてしまっています。

ちょっとこの説明で伝わるか怪しいので、別の言い方をすると、
「クビキリサイクル」は4月の話なので、「クビキリサイクル」の前か後かで、
阿良々木くんの学年が変わってしまうのです。

「りずむロックン」が阿良々木くんが高校3年生の話だとすると、
「いおりフーガ」は阿良々木くんが大学1年生以降の話でないといけません。

逆に、「いおりフーガ」が阿良々木くんが高校3年生の話だとすると、
「りずむロックン」は阿良々木くんが高校2年生の話でないといけません。

その辺の矛盾を解消するために、「しおぎレンジャー」で、
パラレルワールドやループの存在に言及していたのかもしれません。

西尾維新「混物語」傷物語〈Ⅲ冷血編〉来場者特典②「第招話 あかりトリプル」のネタバレ解説

今回のゲストキャラクターは、戯言遣いシリーズ第1弾、
「クビキリサイクル 戯言遣いと青色サヴァン」に登場する、
三つ子メイドの千賀(ちが)あかり、千賀ひかり、千賀てる子です。

3人のうち、てる子だけは眼鏡をかけていて、無口で無表情という個性がありますが、
あかりとひかりは外見による区別が難しいです。

三つ子メイドの主人である赤神イリアは、鴉の濡れ羽島に天才を集めていて、
羽川翼を招きにきました。

しかし、このメイドは意外とドジっ子で、学習塾跡の焼野原で、
羽川さんと間違えて阿良々木くんに向かって、羽川翼さんですね?
と話しかけてしまいました。

11月、撫子に殺されそうになっていた阿良々木くんは忍野を懐かしんで、
忍野が根城にしていた学習塾跡にやってきて、間違われたのでした。

羽川さんは直江津高校を休学して海外に行っている時期だということもあり、
阿良々木くんはそのまま羽川さんの振りをすることにします。

羽川さんは選ばれし天才として鴉の濡れ羽島に招待されましたが、
入島にあたって、試験があるんです、とあかりかひかりは言いました。

てる子が眼鏡を外し、区別はつかなくなった3人が、
互いに交差するように音もなく動き出し、シャッフルされ、
阿良々木くんを三方から囲みました。

さあ、誰が長女でしょう? 解答権は、2回です、
と3人のうち、誰かが出題しました。

「そだちリドル」にも登場したモンティ・ホール問題です。

羽川さんを鴉の濡れ羽島に連れて行かせたくない阿良々木くんは、
わざと間違えようとして、色々と推理します。

じゃあ、まずはあなたを指名します、と阿良々木くんがひとりを選んで指さすと、
指名されたメイドは、残る2人を促しました。
片方は微笑んだだけでしたが、もうひとりはエプロンのポケットから眼鏡を取り出して、
装着し、1歩退きました。

阿良々木くんが指名しようとすると、1回目の解答権で指名されたメイドは、
きっと楽しいと思いますよ、羽川さん、自分と同じレベルの天才と競えることは、
羽川さんにとって、と言いました。

羽川さんは天才を集める孤島に行きたいのかもしれないと迷った阿良々木くんは、
選択を変え、眼鏡のメイドを指差しました。

お見事! と、てる子だったメイドは、眼鏡を外し、
わたしが千賀あかりです、三つ子メイドの長女です、と言いました。

シャッフルの際に眼鏡を渡されたメイドが選択肢から外れると、
あらかじめ入念なミーティングを済ませていて、そしてそののち、
問題の眼鏡を阿良々木くんの背後でもうひとりの選択肢に受け渡すと決めていたのでした。

阿良々木くんが指名したメイドが、きっと楽しいと思いますよ、羽川さん、
と注意を引く発言をしたのは、背後で眼鏡を渡すためだったのでした。

そんなわけで、正解した阿良々木くんは鴉の濡れ羽島を訪れることになってしまい、
初日の朝を迎えようとしているのでした。


というあらすじなのですが、モンティ・ホール問題のさらにその一歩先を行く問題でしたね。

しまうましたは、阿良々木くんは「人助けの天才」と呼んでもいい存在だと思うので、
阿良々木くんにも鴉の濡れ羽島に招かれる資格はあるのではないかと思いました。

ところで、せっかく三つ子メイドの話で「あかりトリプル」というタイトルなのだから、「3」つながりで、
〈Ⅲ冷血篇〉の来場特典②ではなく来場特典③にこの話を収録してほしかったですね。

西尾維新「混物語」傷物語〈Ⅲ冷血編〉来場者特典①「第軍話 しおぎレンジャー」のネタバレ解説

今回のゲストキャラクターは、戯言遣いシリーズ第3弾、
「クビツリハイスクール 戯言遣いの弟子」に登場する、
澄百合学園3年生の策師の萩原子荻(はぎはら・しおぎ)、
澄百合学園2年生の曲絃師の紫木一姫(ゆかりぎ・いちひめ)、
澄百合学園1年生の狂戦士の西条玉藻(さいじょう・たまも)です。

『傷物語』『猫物語(黒)』の間くらいの事件です。

「傷物語」で、ドラマツルギー、エピソード、ギロチンカッターの、
ヴァンパイアハンターの3人に3方から挟撃された三叉路で、
阿良々木くんは子荻たちに挟撃されました。

右の道に進み、狂戦士と戦う→002へ。
左の道に進み、曲弦師と戦う→003へ。
後ろの道に進み、策師と戦う→004へ。

と、まるで昔懐かしいゲームブックのような選択肢があります。

002を選んだ阿良々木くんは、左右の手に分厚いナイフを携えている玉藻の横をすり抜けようとしますが、
玉藻は突如機敏に動き、ナイフで阿良々木くんを狙いました。
阿良々木くんはのけぞって刃をかわし、ナイフは電信柱に突き刺さりました。

狂気を持て余す玉藻は、阿良々木くんと会話が成立せず、
阿良々木くんは地面を転がるようにナイフを躱します。

地面に対して垂直に突き刺さった刃物を抜けなくなった玉藻は、
ナイフは1本でイナッフ、と言い、残り1本のナイフで阿良々木くんを狙います。

阿良々木くんは吸血鬼の視力でナイフを躱し続けますが、
玉藻はナイフを「自分の背中に突き刺し、自分の胴体ごと、
阿良々木くんの腹にZを描きました。

きみも死んじゃわない? と阿良々木くんが言うと、
だいじょーぶです、ひとがしぬのは、せぼねじゃなくてこころがおれたときだから、
と玉藻は言い、最後の最後に会話が成立したのでした。


003を選んだ阿良々木くんは、『見えない糸』を周囲にびっしりと張り巡らせた、
紫木一姫こと「姫ちゃん」の方へ全速力で駆け出しました。

吸血鬼の視力を有している阿良々木くんには、『見えない糸』も見え、
それを避けていました。

姫ちゃんもそれに気づき、糸を回収し、左右の電信柱をポールとして編み上げた『網』を作りました。

阿良々木くんは網の壁にぶつかり、全身が引っかかり、体重が分散されて、
前にも後ろにも動けなくなってしまいました。

姫ちゃんはリボンをほどき、あなたの意図は、ここで切れます、と言って、
髪の毛で阿良々木くんを絞殺したのでした。

004を選んだ阿良々木くんは、羽川に匹敵する女子高校生、子荻とすれ違おうとします。

しかし、子荻は懐から拳銃を取り出し、阿良々木くんは止まりました。

手を挙げていただいても構いませんか? と子荻に言われ、阿良々木くんは両手を挙げました。

戦う理由、自分が狙われる理由を訊ねますが、子荻は何にも知りませんでした。
知りたくもありません、知りたくないから戦えるんです、と子荻は言いました。

動いている阿良々木くんを足止めさせ、心臓をガードさせないために手を挙げさせた子荻は、
銀の弾丸で阿良々木くんの心臓を貫き、殺しました。

005では、3人の中で1番歩調が速いのは子荻で、子荻の速度を100ポイントとするなら、
姫ちゃんは80ポイント、玉藻は90ポイントと阿良々木くんは考えます。

まずは阿良々木くんが姫ちゃんに向かって突進し、「姫ちゃんに出会う前に、
踵を返して引き返します。
けれど、そんな『振り出しに戻る』を実行するよりも前に、子荻は、
右の道に進むか、左の道に進むか考え、制御不能の狂戦士が担当する右の道に進むと阿良々木くんは考えます。

そしてがら空きになった後退の道を、阿良々木くんは120ポイントの速度で駆け抜けるのでした。


というあらすじなのですが、最後の阿良々木くんの考えは、失敗すると思います。
なぜなら、子荻は「交差点の真ん中に到着した時点で、右の道に進むか、左の道に進むか、
という以外に、立ち止まる、という選択肢があるからです。
後退の道を空けるとは思えません。


それにしても、色々とわけがわからない話ですねw

まず、阿良々木くんがなぜループしているのかがわかりません。

初対面のはずの子荻や姫ちゃんや玉藻について詳しく知っている理由も不明ですし、
狙われる理由も不明です。
(前者については、002以前にもループしていて、そのときに知ったとも考えられますし、
単なるいつものメタとも考えられますが)

ただ、混物語は色々と時系列や世界観がおかしなことになっているので、
パラレルワールドの存在を提示することで、その矛盾を解消したかったのかもしれません。

ちなみに、しまうましたの考えた、この戦いから逃げる方法は、
「道がない場所に逃げる」でした。

たとえば電信柱に登って、電線の上を移動して逃げるというのはどうでしょうか?
マンホールの蓋を開け、下水道の中を逃げるという方法も考えられます。

西尾維新「悲終伝」のネタバレ解説

悲終伝 (講談社ノベルス)


伝説・空々空シリーズ第10弾にして、最終巻です。

時系列的には、9巻の「悲球伝」ではなく、8巻の「悲衛伝」から話が繋がっています。

「悲衛伝」のラストで、地球の「小さき悲鳴」により、
太陽、月、水星、金星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星の擬人化が死に、
これで誰も戦争を止められない、と地球の擬人化である幼児は死体の山の頂で言いました。

空々空(そらから・くう)は、
その幼児に飛びかかり、首を絞めながら、死体の山を転がり落ちました。

空々は、油断していた地球を絞め殺そうとしましたが、
これまでに誰かを絞め殺したのは、剣藤犬个(けんどう・けんか)しかいなくて、
それがトラウマになっていました。

首を絞めれば絞めるほど、感情が――自我が芽生え、力を込められなくなりました。

突然、部屋が回転し、反転し、空々と幼児と死体の山は、天井に向かって落下しました。

まずいよ、私達、周回軌道から外れて――、と灯籠木四子(とうろうぎ・よんこ)は叫びました。

人工衛星『悲衛』が回転したせいで、空々は幼児から手を離してしまい、
や――やるじゃ、ないか、と幼児は潰れた声で言いました。

灯籠木は、マルチステッキ『ファイアフラッシュ』で『火』の魔法を使おうとしましたが、
やめて! と空々は反射的に止めました。

交渉は決裂だね、また会おう、空々空、地球で待っている、と幼児はかすれた声で言い、
ふっと姿を消しました。

空々は、地濃鑿(ちのう・のみ)を呼び、科学と魔法の融合実験の産物である、
『リビングデッド2』で、9つの天体の死体を生き返らせました。

しかし、9つの死体は生き返っても、また死んでしまい、生き返りきりませんでした。

地球の重力から外れた空々達が宇宙の藻屑と消える前に、どの星でもいいから――生き返って、
空々達を捕まえてくれないかと空々は思っていたのでした。

『リビングデッド2』はコスチュームがいらないというのが利点ですが、
灯籠木は『白夜』の黒衣の魔法少女のコスチュームを脱ぎ、地濃鑿に着せることで、
天体を生き返らせようとしました。

ロープで繋がって、大会議室に移動し、地濃鑿は灯籠木のコスチュームを着て、
『リビングデッド2』を使いましたが、やはり天体は生き返りきりませんでした。

灯籠木は、最後に、月の化身であるバニーガール、
ブルームを『リビングデッド2』を地濃鑿にどつかせました。

地球に隕石が衝突して、そのときに生じた破片が寄り集まって月になったという、
『ジャイアントインパクト』仮説があります。

地濃鑿は、元魔法少女『ジャイアントインパクト』であり、
灯籠木は語呂合わせで、地濃鑿にブルームを蘇生させようとしたのでした。

その結果、ブルームは「ぴょん!」と悲鳴を上げて生き返りましたが、
黒衣のコスチュームが爆発したように破けました。

なんとかできますか!? と空々がブルームへと呼びかけると、

なんとかするぴょん、だいたいわかったぴょん、あたしが何をしてしまったのか、
ちっぽけな衛星の分際で、何をしでかしたのか――、
あとで殺して、殺してくれるなら、責任を取るぴょん――まずはこの宇宙船を引き留めるわ、
とブルームは言い、月の引力で人工衛星『悲衛』を引っ張りました。

そのままだと、『悲衛』は月に墜落して乗組員は全員死ぬところでしたが、
左右左危(ひだり・うさぎ)博士と、酸ヶ湯原作(すかゆ・げんさく)が、
急激な重力異常にアドリブで対応し、逆噴射をし、
『土』の魔法少女『スクラップ』こと好藤覧は月面をパウダー状に砕いてクッションにし、
死亡者を出すことなく、上下が逆の状態で不時着に成功しました。

着陸後、ブルームは再び意識を喪失し、地濃鑿は星々を生き返らせ続けます。

大会議室はそのまま、9つの星々の臨時医療ルームとなり、
食堂に地濃以外のアストロノーツが集まり、話し合いをします。

空々は『悲衛』の最高責任者にして開発者にしてキャプテンの左右左危に怒られながら、
隠れて星々と交渉していたことを皆に白状しました。

『悲衛』の通信機能はいかれてしまい、ステルス機能をオフにできなくなっていましたが、
酒々井(しすい)かんづめの先見性で、
地球に対して『死んだふり』をするため、ステルス機能の制御の回復はしないことにしました。

コスチュームを失い、地濃のだるだるのスウェットを着ている灯籠木は、
次なる『大いなる悲鳴』のタイムリミットは、その頃からずいぶん状況が変わっているから、
気にしなくてもいいというような意見を言いました。

片言の日本語しか喋れなかったはずのロシア少女、トゥシューズ・ミュールは、
まろやかな日本語で、ブルームは無意識下で地球の味方をしてしまう『地球陣』だから、
この人工衛星が月に不時着したことさえも、地球の利益に繋がる現象なのではないか、
ということを発言しました。

トゥシューズ・ミュールが日本語を喋れるのを隠していたことは、左右左危にとっても痛恨で、
左右左危はミーティングを切り上げ、トゥシューズと個人面談をすることになりました。

空々は酒々井かんづめと自室に戻り、2人で論点をまとめます。
月面からの自力での脱出は、現状不可能そうだけど、通信機能はあえて回復させず、
ステルス性も発動させ続け、『リビングデッド2』で星々を完璧に生き返らせる試みは続行し、
科学と魔法の融合実験は継続し、食料や酸素が尽きるサバイバルのタイムリミットを計算する、
ということになりました。

そこへ、好藤覧がやってきて、トゥシューズ・ミュールの妹、
パドドゥ・ミュールの話を始めました。

地濃が所属していたチーム『ウインター』(徳島県)の魔法少女のマルチステッキは、
『情緒』『治癒』『無痛』『無傷』『不死』と、治癒・治療系の魔法少女が固められていて、
その中にロシアの『道徳啓蒙局』からの交換スパイ、パドドゥ・ミュールもいました。

ひょっとすると、パドドゥ・ミュールって、生きとんちゃう? と好藤覧は言いました。

『死んだふり』で四国ゲームを生き延びることはチーム『ウインター』なら可能で、その後、
『ウインター』のメンバーは『道徳啓蒙局』から『人間王国』に移住していて、
『人間王国』は魔法の研究を進めているのではないかと、好藤覧は考えていました。

好藤は『土』を操る魔法を使うということを考えている時、空々は、
四国ゲームの時に見た好藤の魔法は、『土』と言うよりは地面全般を操る魔法だったと思い出し、
好藤のマルチステッキ『マンデーモーニングクオーターバック』で、
月を動かせるってことじゃない、と言いました。

宇宙船は、このまま、突き刺さったまま、僕達は月ごと地球に帰ればいいんだよ、
と空々は言いました。

大気圏の傍まで月くらいの物体が近づいたら、
それなりの現象が地球で起こってまうんちゃうんか?
衛星とはいえ、この通り、かなり巨大やねんで、
地球の4分の1くらいあるんやなかったかな?
ということを、酒々井かんづめは平仮名で言いました。

最初は興味を示した「美意識の好藤」でしたが、
酒々井かんづめに次々と問題点を指摘され、飽きてきました。

しかし、『マンデーモーニングクオーターバック』の『マンデー』は『月曜日』、
『クオーター』は4分の1で、月の大きさは地球の4分の1だということを、
空々は言います。

『バック』は帰還を指していて、『モーニング』は高知出身の好藤の地元の英雄、
坂本竜馬の名言、日本の夜明けだと、好藤は勝手に考え、
初めてええ名前じゃ思うたわ、美しい思うたわ、と言い、乗り気になりました。

その後、空々は酒々井かんづめと好藤と別れ、星々の蘇生を試みている地濃のところに行きます。

チーム『ウインター』の地濃の他のメンバーが爆死した件について、
それが偽装工作だって可能性はない? と空々が訊ねると、
実はチームメイトの4人が死んだっていうのは私がついた嘘でしてね、
爆死していないかもしれないどころか、今もきっとどこかで生きていると思いますよ、
と、地濃は語り始めました。

地濃を置いてみんなが黙って逃げていて、

『絶対平和リーグ』は『道徳啓蒙局』から『魔女』を提供されていて、
その見返りとして、チーム『ウインター』にヒーリング系の魔法少女ばかりを集め、
『道徳啓蒙局』が生き返らせたい対象を、生き返らせる研究をしていたのでした。

パドドゥ・ミュールは、その責任者で、『道徳啓蒙局』からの要請でもあったその特務は、
成功したのだそうです。

その対象というのが、火星の擬人化である『人間王』だったのでした。

火星の蘇生は不完全なものでしたが、『大いなる悲鳴』によってアフリカ大陸で起こった混乱の空白地帯に、
火星を送りこんだところ、わずかな期間で王国を築いたのだそうです。

チーム『ウインター』はコスチュームを破壊し、
地濃が地濃以外は爆死したと証言することで、四国ゲーム以降も生き延びていたのでした。

空々は地濃と分かれ、トゥシューズ・ミュールの部屋に行きます。

妹さんのことで、話があるんです、と空々が言うと、
わたしがその妹だとトゥシューズ・ミュールは言いました。

パドドゥ・ミュールはヒーリングの魔法で『成長』し、
姉のトゥシューズ・ミュールに成りすましていたのでした。

また、パドドゥ・ミュール達は火星だけではなく、牡蠣垣閂(かきがき・かんぬき)も生き返らせていました。

その後、空々が、月ごと地球に帰るという「空々プラン」について話すと、
トゥシューズ・ミュールはオーバーリアクションで空々プランをべた褒めしました。

魔法少女『キャメルスピン』こと血識零余子は、火星語を操る『火星陣』の亜流であり、
酒々井かんづめのような『先見性』を持っていて、
魔法少女の名前が、なんらかの予言録になっていても、疑問はない、
とトゥシューズ・ミュールは言いました。

また、『ジャイアントインパクト』仮説で、地球に衝突した隕石は、
地球の2分の1くらいの大きさで、火星は月の倍で、地球の半分のサイズでした。

地球と火星との戦争で、火星そのものが地球に衝突し、月が生まれたとしたら、
月を生んだのは火星だということになり、
ブルームは『地球陣』のような星であると同時に『火星陣』のような星にもなり、
ブルームと協力体勢が築けるかもしれないという推測を、トゥシューズ・ミュールは述べました。

空々はトゥシューズ・ミュールの部屋を出て、医療室に乗り込みました。

灯籠木四子はだぼだぼのスエットを着ていて、
氷上竝生(ひがみ・なみうみ)は『水』の黒衣の魔法少女のコスチュームに身を包んでいて、
宇宙恐怖症の虎杖浜(こじょうはま)なのかは、布団を被ってダンゴムシみたいに震えていました。

これまでは、大人女子の氷上が個人的な趣味で科学と魔法の融合実験のためにコスチュームを着ているせいで、
氷上は天才ズの黒衣の魔法少女達からは嫌われていたのですが、
氷上が5時間も灯籠木と虎杖浜を励まし続けたことで、彼女達は和解していました。

空々プランについて話をすると、軌道計算は事前にしっかりとおこなって、
好藤に、アクセルを担当してもらっても、コースは左博士が決めて、
『風』の魔法少女『スペース』こと虎杖浜がコースを外れないようコントロールしたほうがいいと思う、
ということを灯籠木は言いました。

宇宙に大気はありませんが、『風』――『太陽風』は吹くので、虎杖浜の出番です。

また、『太陽風』の構成要素は、大半が『水』素イオンなので、氷上にも出番がありました。

灯籠木は、お守り代わりに、『火』のマルチステッキ『ファイアフラッシュ』を、氷上に渡しました。

その後、船内放送が響いて、空々は艦長室に呼び出されました。

その『マンデーモーニングクオーターバック』作戦を採用することはできないわ、
と、左博士はきっぱりと言いました。

もしも月を乗り物にした帰還プランを実行したら、地球までの距離、
およそ38万キロメートルを半分も詰めないうちに、その影響で人類は絶滅するのだそうです。

世界中で津波と氾濫が起こりまくるし、『月が落ちてくる』という世界の終わりを想起させる絵面は、
人類を自暴自棄にさせてしまいかねません。

そう説明されて、諦めて失礼しようとした空々を、左博士は呼び止め、
空々くんのそういう、本来の現実受容気質とは相反する謎のギャンブラー気質って、
ひょっとすると、私の娘、在存の影響があったりするのかなって思って――と言いました。

そりゃあ、そうですよ、なにせ『狼ちゃん』は、僕の崇める師匠でしたからね、と空々は言いました。

ひとりの母親としての純粋な興味? と、賭けに負けた空々は思い、謝罪行脚をして歩きました。

それから数日後、月のブルームの意識が戻ったけど様子がおかしいと、
空々は地濃に呼ばれて大会議室に向かいました。

ブルームは、手袋鵬喜だと名乗り、空々を呼んだのでした。

外見はブルームの手袋鵬喜は、『人間王』の使いなのよ、通信をするようにって、言われたの、
と言いました。

しかし、手袋鵬喜は何も知らないままに通信を任されていて、
その会話は火星にも筒抜けになっているようで、
火星は手袋を利用して『悲衛』から情報を引き出そうとしている様子でした。

この通信は、手袋の命を削っているかもしれないと空々は思い、
『人間王』に、こう伝えてくれない? もしも、この人工衛星『悲衛』を、帰還させてくれたら、
あなたを完全に蘇生させることができるマルチステッキ『リビングデッド2』を提供するって、
と手袋に言いましたが、まだ通信は終わりませんでした。

手袋さんのほうから、僕達に訊きたいことはない?
と空々が訊いても、別に、何も……と手袋は言いましたが、
空々くん、あれ、宇宙に持って行ってる? 四国ゲームの優勝賞品……、『なんとか丸』っていう刀を、
マルチステッキにした奴――と、そんな質問の中途で、バニーガールの肉体は、
電源が切れたかのように、崩れ落ちました。

地球で――『人間王国』で、何かあったとしか思えない、ぶつ切り具合でした。

その意味を考えていると、好藤がやってきて、今、月が地球に向こうて動いとるんぜよ――
一直線に、隕石みたく、と言ったのでした。

本来の空々プランとは逆に、好藤と虎杖浜と氷上が協力して、
月が地球に向かうのを止めようとしましたが、相当減速したものの、まだ完全には止まっていませんでした。

たぶん、これって単純な落下じゃないのよ、まさしく魔力と魔力の、魔法と魔法のぶつかり合い、
鬩ぎ合いって感じ……、と虎杖浜は言いました。

手袋の発言がスイッチになったのだと空々は推測していましたが、
火星こと『人間王』が『破壊丸』を欲している理由は不明でした。

また、『破壊丸』は空々の部屋にあるはずでしたが、
『悲衛』が上下さかさまになって部屋が散らかっているせいで見つかっていませんでした。

このままだと人類は滅びてしまいます。

左博士は通信機器を修理していて、左博士が馬車馬ゆに子と乗鞍ぺがさにコンタクトを取るその一方で、
杵槻鋼矢と花屋瀟(人造人間『悲恋』)にもコンタクトを取ることになりました。

空々達は一度解散し、空々と酒々井かんづめは操舵室で『悲恋』とコンタクトを取りました。

鋼矢と花屋は『リーダーシップ』を制圧し、好藤が作った地下トンネルを使って、
『人間王国』に向かっているところでした。

『リーダーシップ』の真の目的は、地球をもうひとつ作ることだったと説明し、
『ジャイアントインパクト』仮説のように、「月の落下速度をアップさせて地球に衝突させて、
地球をもうひとつ作れるのではないか、ということを鋼矢は言いました。

ジャイアントインパクトの瞬間には、まだ人類の避難は完了してへんやんけ、
地球がもう1個できるころには、人類はやっぱり、滅んでもうとんちゃうん?
ということを、酒々井かんづめは平仮名で言いました。

解決策として、引っ越し前の一時的な宇宙への避難や、地下へ潜ることなどを、空々は提案しました。

鋼矢は、衝突時にある程度の人類が死ぬのは避けられないけど、その後、
新たなる地球で、『リビングデッド2』でばったばったと蘇らせるという解決策を考えていました。

空々は通信を切ろうとしましたが、花屋ちゃんの意見も聞いてあげないと、と鋼矢は言い、
花屋と代わりました。

鋼矢をまじえたクロストークができないだけで、AIとの会話自体は可能なのでした。

お前が地球をくびり殺し損なったのって、やっぱり犬个さんを殺したときのことを、
思い出しちゃったからなの? と花屋は問うた後、剣藤と代わりました。

私を殺したことを、やり直せない失敗だと思ってる? あれを失敗だとは思ってほしくないな、
殺す機会がもう訪れないなら、もう殺さなくてもいいじゃない、
地球を殺すから英雄なんじゃなくて、人類を救うから英雄なんでしょ?
地球を殺す以外の方法でだって、そらからくんはきっと人類を救えるよ、と剣藤は言いました。


通信を終えて操舵室を出た空々は、スエットを着たトゥシューズ・ミュールと会いました。

トゥシューズ・ミュールは、自分のコスチュームを地濃に提供していました。

コスチュームは見るも無残に破れましたが、ブルームの意識は回復しました。

ブルームは、テレパシーみたいなもので、火星と通話できるんじゃないかと言っていましたが、
空々は、バニーガールを通じて――「地球と対話しようとしました。

通信に出た地球は、擬人化する時は、その人物にとって、
もっとも殺しにくい姿で顕現することにしているのだということを言いました。

地球は、灯籠木の前では『成人男性』として顕現しましたが、
『成人男性』は、灯籠木を虐待していた、灯籠木の父親だったのだそうです。

空々にとっての『性別不明の幼児』は、幼児の頃の空々自身の姿だったのだそうです。

『大いなる悲鳴』は、増え過ぎた人類の数を調整するために、
あなたがおこなった間引きだったんじゃないですか?
人類を救うために、あなたは悲鳴をあげたのでは、と空々は言いましたが、地球は否定しました。

また、『人間王』は、地球への復讐なんて考えていないと地球は言いました。

四国ゲームで『破壊丸』は『魔人』作りのアイテムになりましたが、
それは『人』が『魔』になるアイテムであると同時に、
『魔』が『人』になるためのアイテムでもありました。

火星はね、人間になりたかったのだよ――擬人ではなく、と地球は言いました。

火星は手袋の発言で、恥ずかしい願いがばれたと思って、我を失い暴走したのでした。

あれからちょうど1年ですね、次なる『大いなる悲鳴』で、人類を皆殺しにしてください、
と空々は地球にお願いしました。

いくら『リビングデッド2』で生き返らせると言っても、バラバラになった死体や焼けた死体、
損傷の激しい死体を蘇生させることはできません。

『悲鳴』で損壊も、損傷もなく『デッドスリープ』させ、
『リビングデッド2』で蘇らせられる状態にしてもらおうとしたのでした。

『悲鳴』は、ズル防止のために、金星が定めてくれた戦争のルールみたいなもので、
防げないということを地球は言いました。

火星の使う『魔法』や、人類の使う科学技術は、反則みたいなもので、
『悲鳴』はそれにつきつけるレッドカードみたいなものなのだそうです。

科学が発達し、魔法の域に達したから、人類に『大いなる悲鳴』が通じるようになったのです。

剣藤が『小さき悲鳴』で例外的に生き残ったのは、機械に強いほうじゃなかったからでしたが、
『地球撲滅軍』に入隊してからは、全自動殺戮兵器である『破壊丸』を付与『されてしまった』から、
英雄の資格を失ったのでした。

擬人化して、姿を見せるか見せないかの基準は、
『地球を擬人化してみることができない奴』という基準だったのだそうです。
そういう奴は、天体なんて漠然としたものを敵視できないから、
個別に危機感と敵愾心を煽っていたのだそうです。

最後に地球は、参ったよ、きみの勝ちだ、と降参のポーズで言いましたが、
感情が死んでいたはずの空々に『怒り』の感情がうまれ、
戦争に勝者なんていません、敗者と死者がいるだけです、と言いました。

日本時間で2014年6月25日、午前7時32分31秒から33分17秒までの、
46秒間、悲鳴が聞こえ、その直後に猛スピードで落下した月が地球の大地に直撃し、
戦争は終わったのでした。


最後に、最終話「悲鳴伝」があります。

戦争が終わってから「100年後の話です。

新しい地球の公園で、114歳になった空々老人は本を読んでいました。

そこに、114歳の老婆になった地濃がやってきて、昔話をします。

『大いなる悲鳴』でも死ぬことのなかった『地球陣』の自発的な協力で、
死体を新天地に運んだのでした。

もとの地球は太陽の向こう側を、鏡映しのように、
同じ周期で同じ軌道を周回しているので、もとの地球は見えませんでした。

空々は、馬車馬ゆに子と乗鞍ぺがさの手引きで、メランダ王に謁見した際、
人間の王として新天地を統治してもらうために、『破壊丸』で、メランダを人間にしました。

お前は満点だな、空々空、太陽系すら包み込む、満天の星だ、とメランダは言いました。

酸ヶ湯原作の率いる元チーム『白夜』やトゥシューズ・ミュール、牡蠣垣閂は、
終戦後も地球で、更に戦い続けることを選び、地球に帰っていきました。

氷上は空々と結婚しました。
鋼矢じゃなくて氷上と結婚したのかー、という感じです。

20年前に鋼矢の葬式があり、30年前には長年メランダの側近を務めた手袋の葬儀がありました。

メランダが死んだ後は、酒々井かんづめが隠居の身から引っ張り出されたのだそうです。

100年後の現在、空挺部隊は、広義の意味でも空々と地濃しか生き残っていません。

100年前に、この新天地へと運んだ人類約50億人の蘇生を、
地濃の弟子たちが完了させたことを、地濃は報告しに来たのでした。

しかし、地濃が去って行った後、空々が最初に出席したのが、地濃の葬儀だったようにも……、
と、前提をひっくり返すようなことを空々は考えていました。

記憶も混濁した空々は、座っていても、身体を起こしていられなくなりました。

やっと死ねるんだね、そらからくん、と幻聴まで聞こえてきて、
いいえ、やっと生ききったんですよ、剣藤さん、と空々は心の中で言ったのでした。


というあらすじなのですが、結構最後の方まで、
これ本当に終わるのか???
と不安になりながら読んでいたのですが、本当に終わりましたね……。

こうして終わってみると、周到に伏線が張り巡らされていたようにも思えますが、
行き当たりばったりだったようにも思えます。

すっごく長い話でしたが、面白かったです。

ずーっと無能扱いされていた手袋鵬喜が、
ここに来て『スイッチ』を入れる重要人物になるという役回りが面白かったですね。

また、最終話の雰囲気が好きで、そこだけ何度も読み返しました。
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