恩田陸「錆びた太陽」のネタバレ解説

錆びた太陽


21世紀の半ばごろ、過激派の環境保護団体が日本国内の原発を爆破した、
「最後の事故」と呼ばれるテロがありました。
最後の事故で、3万人余りが死亡し、国土の2割が汚染地域になってしまいました。
それから百数十年後も、地道に汚染地域を除染し続けている、
という未来の世界観の話です。

北関東にある広大な立ち入り禁止の制限区域では、
ウルトラエイトと呼ばれるロボットたちが除染作業を何十年も続けていました。

ウルトラエイトのメンバーは、ボス、マカロニ、ジーパン、デンカ、ヤマ、ゴリ、
チョーの7体です。

ロボットなので、全員が同じ顔、同じ屈強な体型をしていますが、
外見は人間の男にそっくりです。

髪型が違うので7体は見分けがつき、主人公のボスは角刈りです。
また、デンカは「女性的」な喋り方をするようにプログラムされています。

5月25日、月曜日の午前5時に、27、8歳くらいの人間の女性が、
四角い要塞のようなベースキャンプの建物に突然やってきました。
女性は国税庁の財護徳子(ざいご・とくこ)と名乗りました。
3日間の予定で実態調査に来たと徳子は言いましたが、ボスは何も聞いていませんでした。

ボスは徳子の身元確認をしようとしますが、
その前に「青玉」と呼ばれる巨大なタンブルウイードが転がってきました。
タンブルウイードというのは、西部劇の映画などによく出てくる、転がる植物なのですが、
ここの「青玉」は汚染された地下水や土壌から有害物質や油分や金属粉を吸い上げていて、
ちょっとした摩擦で燃えてしまう、危険な爆弾のようなものでした。

ボスは徳子を守ろうとして、なし崩し的に徳子を建物に入れました。

ボスたちが自己紹介をすると、ウルトラエイトというからには、
8人いらっしゃるんだと思っていました、と徳子が言いました。
しかしボスは、最初から7人だったと言いました。

徳子本人は、マルピーと呼ばれるゾンビの調査に来たのだと言いました。
1年8ヶ月前には、緩衝地帯の近くに住む水越一家の、
6人が失踪するという事件も起こっていました。

この北関東エリアの処置は、まだ1・26パーセントしか終わっていませんでした。

徳子をトラックに乗せ、制限区域を案内していると、
アウトレット・モールの廃墟の方から光が見えました。

ゴリとチョーが偵察に行きますが、ゴリは協力なトラバサミの罠に引っかかってしまいました。
ボスは偵察を中止し、出直すことにします。

しかし、帰り道には、青玉と違って無害な「赤玉」が積み上げられた壁がありました。

その赤玉の壁を突破しようとすると、
男と少年のマルピー(ゾンビ)がフロントグラスに張り付き、遠くの同じ方向を指差しました。

筆談をしようと、ホワイトボードとマーカーをマルピーに渡すと、何かを書き始めました。
しかし、エアガードという汚染物質の防護処置をした徳子がトラックの外に出て、
マルピーの2人を質問責めにすると、2人は逃げてしまいました。

建物に戻ったボスは、女性的な喋り方をする上司的存在のコンピューター、トンボに頼み、
ドローンを飛ばしてもらい、偵察します。

徳子のIDは確認されましたが、トンボも徳子が来るのを知らされていませんでした。

しばらくして、九十九山(つくもさん)の旧滑走路が、
マルピーの2人がホワイトボードに書いた十字みたいな形に似ていることに、ボスが気づきました。

そこに向かってドローンを飛ばすと、前方後円墳のような形の建物が見つかりました。

そのタイミングでボスが徳子を問いただすと、
徳子は、マルピーたちに使役という形で税金を払ってもらうことを国税庁が検討していて、
その調査のためにやってきたのだと白状しました。

夜になり、徳子はボスたちのベッドを見て、ベッドが8台あると指摘しました。

ボスは、シンコという8人目のロボットがいたが、
水越一家失踪事件があった一昨年の9月23日に、
定期メンテナンスをしていたシンコも失踪してしまった、と白状しました。
GPSの反応もなく、シンコはそれ以来行方不明のままでした。

翌朝の、5月26日、火曜日の午前5時に、いつものようにボスたちは目覚めました。
ゴリは、アルジャーノンという名前を付けて飼っていたネズミが
いなくなっているのに気づきました。
また、徳子も部屋から消えていました。

トンボに正面玄関前の映像をチェックしてもらうと、午前3時31分に、
徳子が乗った軽自動車が制限区域内に出て行ったことが判明しました。

徳子を捜しに行こうとすると、徳子が戻ってきました。
徳子は、2時間ほど出かけてまいります、と書いた書き置きを残していましたが、
古典的な方法すぎたためボスたちは誰も気づかなかったのでした。

ボスたちは、九十九山の麓の旧飛行場へ偵察に行くことにして、
サンダーバード2号という名前の、空を飛ぶ巨大な消防車に徳子を乗せました。
しかし、ゴリが持っている鍵がないと外せないシートベルトがついたVIP席に徳子を乗せました。

徳子は今朝軽自動車で出かけた時に、九尾の「猫」の尻尾を踏んでしまっていました。
「猫」といっても、体調10メートルほどの巨大な化け物です。
「猫」は徳子に尻尾を踏まれたせいで起こっていて、サンダーバード2号を襲いました。

ボスたちは放水をして、「猫」を追い払いました。

旧飛行場に着くと、ゴリとチョーが偵察に行きましたが、
建物の奥に10個以上の青玉が集めてあるのを発見し、待避しました。

マルピーたちは青玉を使ってテロを起こそうとしている、とボスたちは考えました。

その後、前方後円墳に似た建物の方に向かうと、50人ほどのマルピーの集団に襲われました。

30人ほどの別のマルピーの集団を引き連れた、リーダーのような老婆のマルピーが笛を吹くと、
サンダーバード2号を襲っていたマルピーの集団は動きを止めました。
しかし、すぐに2つのマルピーの集団は大乱闘を始めてしまいました。

徳子がマイクでマルピーたちにアンケート調査をしようとします。

しかし、ドアの窓にいつの間にか昨日の2人のマルピーが張り付いていました。

そのマルピーたちに誘導され、移動して停車すると、
大きい方のマルピーの背中から先ほどの老婆のマルピーが降りました。

老婆は太陽電池で動くモニターと、眼球の動きで入力できるキーボードを使い、
「私の名前は湯川真奈美」と表示して自己紹介をしました。

老婆のマルピーは、
「最後の事故」で行方不明になっていた九十九生命科学研究所の湯川博士でした。

シートベルトをピッキングして開けた徳子は、湯川博士を質問攻めにします。

湯川博士はマルピーにしては珍しく、理性的で意思の疎通が可能でした。

湯川博士がその目で見たり、無線LANを使って調べた情報によると、
前方後円墳のような建物は、「政府関係者や外資企業が造っているのだそうです。

日本政府は、外国から使用済み核燃料を制限区域に預かり、
レンタル料として半永久的に外貨を獲得し続ける仕組みを作る
『護美箱(ごみばこ)計画』を進行していて、
前方後円墳のような建物はその保管先なのだそうです。

鹿島港で入港し、制限区域内の陸路を通って九十九山に向かうのだそうです。

その演習が、明日未明に行なわれるのだそうです。

そしてマルピーたちは、予行練習の時を狙って、青玉を接触させて爆発し、
あの施設もろとも吹き飛ばしてやろうと考えていました。

マルピーは他の制限区域のマルピーとも意識が繋がっていて、
日本がゾンビだけが暮らす国になってしまえばいいのにと願っていました。

湯川博士や男と少年のマルピーはそれを阻止しようとして、
徳子やボスたちに接触したのでした。

徳子の上司たちも日本政府とグルでしょうから、現場にいる徳子やボスたちが、
どうするのか判断を下さなければなりませんでした。


ベースキャンプの建物に戻り、議論をし、上には報告せずに、
明日未明に予想される攻撃を阻止することにしました。

その夜、トンボはボスに、昨日から3日間の予定で国税庁の人間が来る予定はあったが、
向こうの手続きミスでトンボのところまで伝わっていなかった、という話をしました。

ただし、本来は56歳の男性が来るはずで、
徳子は昨日から休職中ということになっていました。

夜中に早くも目覚めた徳子は、ボスに休職中であることを伝え、
昨日の朝、祖母の家の合歓の木を撮影しに行ったのだと言いました。
徳子が祖母から聞かされていた合歓の花は、咲いていました。

翌朝、ボスは、「ボスたちが予行演習を阻止して、
マルピーに彼らを攻撃する機会を与えないことにしました。
また、湯川博士が入手した政府の極秘文書を、博士自身に流してもらうことにしました。

徳子とデンカはワイルド7号というオートバイとサイドカーに乗って、
湯川博士に頼みに行きました。

一方、ボス、マカロニ、ジーパン、ヤマ、ゴリ、チョーは、『猫』を麻酔で眠らせ、
演習のコース上に『猫』を配置することで、
制限区域は予想以上に危険な場所であると彼らに認識させ、
『護美箱計画』を中止に追い込ませました。

それはうまくいったのですが、マルピーが保管していた青玉がすべてなくなっていました。

トンボはドローンを飛ばし、
青玉を持ってベースキャンプに移動するマルピーたちの集団を発見しました。

マルピーたちが総攻撃を仕掛けようとしていたのは、
演習の連中ではなく、キャンプにいたボスたち7人だったのでした。

マルピーたちはボスたちのことを怖れ、怒りをぶつける対象として見ていたのです。

ボスたちはキャンプの方向に戻り、ゴルフボールを投げて、
マルピーたちが持っていた青玉を爆発させました。乱闘になります。

と、そこへ、徳子がやってきてしまいました。

ボスは徳子のことを、身を挺して守ります。

その時、ボスは幻覚のようなものを見ました。
徳子は生まれつき子供を作ることができない身体で、
だからこそ制限区域の調査をすると名乗り出たのでした。
ボスは徳子の祖母を知っていて、
祖母とその母親たちを救助したことがあったのを思い出しました。

ボスは腕が吹っ飛んでしまいましたが、奇跡的に助かります。

また、地中に埋もれていたものが青玉の爆発で露出し、
水越一家6人の死体が発見されました。
前方後円墳を造った連中が犯人かもしれない、と徳子やボスは言いました。

翌朝、ネズミのアルジャーノンの死体が発見され、
餌に混入していた異物のせいだったのではないか、と徳子は言いました。
徳子がキャンプにいるときに食べていた弁当を作っていた全国フーズは、
品物を納品していないのに品物代としてカネを受け取っていました。
さらに、人間のために調達した食材を、ペットフードにも流用していて、
アルジャーノンはそれが原因で死んでいたのでした。

湯川博士が政府の極秘文書を世界に公表し、
『護美箱計画』を完全に阻止することもできました。

徳子はベースキャンプを出てボスたちと別れます。
これにて大団円です。


というあらすじなのですが、たった3日間の出来事とは思えないくらい、
次から次へと事件が起こり、とても面白かったです。

結局、「シンコは見つからないままですし、
水越一家を殺したのが前方後円墳を造った連中なのか
」は確定していませんが、
それがメインの話ではありませんし、殆どの伏線は回収されているので、
しまうましたも大満足です。

恩田陸「失われた地図」6話「六本木クライシス」のネタバレ解説

この短編集は今回が最終話です。

5話と6話の間に、「幕間 横須賀バビロン」
という3ページほどの短い話があります。
少年と母親と、大臣の男が登場します。
少年が男のことを「おじさん」と呼ぶと、
母親は、「『お父さん』よ」と言いました。

幕間が終わると、今回は鮎観の視点で話が進みます。

鮎観は六本木で遼平と待ち合わせをし、再婚したことを伝えました。

どうして、俺に言わずに、再婚なんてしたんだ。俺は俊平の父親だぞ!
と遼平が激昂すると、だからよ、と鮎観は答えました。

回想です。
一族同士の親から生まれた子供に、
しばしば「めんどう」なことが起こるという噂がありました。

それでも、自分たちとは関係ないと思い、鮎観と遼平は結婚し、
子供を作りました。

俊平が2歳を越えてから、鮎観と遼平が諍いを起こす度、
俊平がすごいタイミングで火が点いたように泣くことに気付きました。

一族の「仕事」について鮎観と遼平が議論し、恐怖について語っていると、
俊平が銃にこめる古い弾丸を吐き出しました。

それからしばらくして、
また「仕事」の帰りに鮎観と遼平が苛立ちをぶつけあっていると、
俊平の口から「グンカ」の手が出ようとしていました。
俊平の身体の中に「裂け目」ができはじめていたのでした。

鮎観と遼平が落ち着いて和やかでいれば、何も起こりませんが、
肉体的にも、精神的にもへとへとになり、
どちらかが外出して一人が残るという生活パターンが出来てきました。

そして2人は離婚したのでした。
回想終わりです。

鮎観は「仕事」をやめると言いました。

その時、「ROPPONGI」の「O」の文字が重なり合い、
オリンピックのマークを作ったかと思うと、
首都高の白い壁が全部「裂け目」になり、
無数の「グンカ」が飛び降りてきました。

しかし、「『グンカ』の群れが足を止め、何かに目を留め、指差していました。

六本木交差点の道路の真ん中に俊平がいて、『ダイジョウブ』と言い、
ニッコリと神のような満面の笑みを浮かべました。


というあらすじなのですが、
いつもの恩田陸作品らしい終わり方になってしまいましたね。

投げっぱなしエンドです。
打ち切り漫画の最終回みたいな終わり方です。

見切り発車でシリーズ全体のオチを考えずに書き進めた結果、
こうなったのでしょう。

恩田陸作品は当たり外れが大きく、
面白い時は最高に面白いのですが、
この短編集は外れかな、と思いました。

恩田陸「失われた地図」5話「呉スクランブル」のネタバレ解説

煙草屋が呉に「グンカ」が出ると予報し、
遼平と浩平は呉にやってきました。
今回は、またしても鮎観が休みで、カオルと一緒に行動することになりました。

遼平たちは、呉には自衛隊の士官学校があるとか、
戦艦大和が建造されたところだ、という話をします。

食堂で食事をしながら、「グンカ」が何より大好きなものはナショナリズムだ、
という話をカオルはしました。
戦艦大和は出来た時点で時代遅れで、
かつての日本のナショナリズムのダメダメなところを
象徴しているものだとカオルは言います。

食事後、「裂け目」を探しますが見つからず、せっかく呉に来たんだから、
両城の二百階段に行こうとカオルは言いました。

海上保安庁の映画、海猿のロケ地は呉だという話をした途端、
二百階段全部が上から下までまるごと「裂け目」になり、
大勢の「グンカ」があふれ出してきました。

遼平は「グンカ」に脅威を覚え、
その遼平の動揺を「グンカ」がエネルギーとして吸い込み、
1・5倍くらいに膨らみました。

遼平たちは「グンカ」を封じ込められなさそうになり、
ピンチでしたが、「戦艦大和が現れ、
戦艦大和の放つ青い巨大な光が『グンカ』を破裂させました。

まさかの戦艦大和が『グンカ』から助けてくれる
」というオチで、
5話は終わります。

恩田陸「失われた地図」4話「大阪アンタッチャブル」のネタバレ解説

お盆の時期に、遼平と浩平は煙草屋に言われて大阪にやってきました。
鮎観も今回は来られませんでした。

代わりに煙草屋が応援に出したのは、筋肉が分厚く、
女性的な喋り方をする男、カオルでした。
遼平や浩平とは既知の仲であり、
遼平たちはカオルのことを苦手に感じています。

大阪城に向かいながら、なんでこんなに「裂け目」ばっかり出来るんだろう、
と遼平は言いました。

「グンカ」は、戦争したいと思う連中が増えるとその気配を察して、
「裂け目」を破って湧いてくるのだとカオルは言いました。
4話目にして、やっと世界観の説明です。

大手門には戦国時代の足軽の集団がいて、
京橋口の橋の上にはぼろぼろの着物を着た、長い髪の大女が立っていました。

遼平はカオルに押されて、大女の脇を駆け抜け、全速力で橋を渡りました。
カオルと浩平も走ってついてきますが、大女もついてきてしまいます。

しかし、大女は急にいなくなり、ふっと辺りが暗くなったかと思うと、
石垣だったものが飛んでいました。

巨大な石が無数に空中にばらまかれていて、
その石のそれぞれに足軽たちが乗っていて、
武器を振り回し、誰かと戦っていました。

遼平と浩平はカオルに首根っこをつかまれ、空中にぶん投げられ、
近くに浮かんでいる石にしがみつきました。

石は少しずつ上下に揺れていました。
遼平は石が上がった時を見計らって近くの石に移動し、
徐々に高く上がっていきました。

さっきの大女が石の上に乗っていて、「裂け目」はその女の顔でした。

遼平は「裂け目」を縫おうとしましたが、強い衝撃で宙に跳ね飛ばされました。

カオルが飛び上がり、女の前にストンと降り立ち、
アイロンがけに使う糊(のり)のスプレーを御餡お顔に浴びせかけます。

カオルの手そのものがアイロン代わりになっていて、
カオルは手で「裂け目」の隙間を埋めました。

石が次々に落ちていきます。
落ちていく、世界が。
そう思ったら、元司令部の前にいました。
恐るべし、大阪城。まさにアンタッチャブル、と遼平は思いました。

というあらすじなのですが、新キャラのカオルの性格が問題だと思いました。

女性的な喋り方をするのは別にいいのですが、
遼平が嫌がっていることを繰り返しやるので、読んでいてイライラしました。

恩田陸作品には女性的な喋り方をする男性がよく登場しますが、
今回登場したカオルは、その中で一番微妙だと思います。

恩田陸「失われた地図」3話「上野ブラッディ」のネタバレ解説

3話は鮎観の視点で話が進みます。

鮎観は上野公園にお花見に来ました。
遼平、浩平、そして煙草屋の3人が待っている場所に行きます。

乾杯し、お花見をしていると、
鮎観の一人息子の俊平によく似た男の子を見かけました。
しかも、その男の子は同い年くらいの女の子と一緒にいました。
鮎観はその女の子に見覚えがあるような気がしました。

鮎観と遼平が、俊平によく似た子を追いかけようとすると、
気をつけろ、桜の木の下には魔物がいるぞ、と煙草屋は言いました。

俊平によく似た子を追いかけるうちに、鮎観の左の耳が痛み、
どこかの寺の境内にある、巨大な桜の木の下に出ました。

女の子が振り返り、鮎観はそれが子供の頃の自分だと気付きました。
俊平によく似た子は、子供の頃の遼平でした。

女の子は歌っています。

しばらくして、満身創痍の侍、落ち武者たちの行列が現れました。

男の子は侍たちを見て真っ青になって、かすかに震えていました。

しかし、女の子の方は風を見るのが得意ではないため、
何も見えていませんでした。
女の子は風を見るより聞く方が得意だったので、
すぐそばを行く異様な気配を感じて聞き取ろうとし、
左耳を突き出していました。

女の子がバランスを崩し、足元の砂が耳障りな音を立てて飛び、
侍の1人が女の子の姿を認めました。

侍は刀を振り上げます。

鮎観の隣の遼平が、「やめろーっ! と叫ぶと、
男の子がビクッと全身を震わせて、身体を動かせるようになり、
女の子に駆け寄り、腕をつかんでぐいと引き戻しました。

女の子の耳が刀で切られ、女の子は泣き叫びます。
現在の鮎観の耳も痛みました。

桜の花びらが一斉に散り始め、
大量のピンク色の蝶が落ち武者たちに覆いかぶさっていきました。
男の子がちらっとこっちを見て、口が『あ』の形になりました。

周囲の喧騒が戻ってくると、遼平は、
『グンカ』じゃなくて『彰義隊(しょうぎたい)』のほうだったのか、
と呟きました。

あんな変なものを見たのは、俊平が小学生になり、
あの時の歳に近づいたからかな、と遼平は言いました。

そして、さっき遼平があの時の遼平に声をかけたから、
鮎観は助かったのではないか、と遼平は言いました。


というあらすじなのですが、パラドックス的で面白かったです。

ちなみに彰義隊というのは、幕府より江戸市中取締の任を受け、
江戸の治安維持を行なった部隊のことです。
彰義隊は上野戦争で明治新政府軍に敗れ解散した、
という歴史があります。
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