恩田陸「失われた地図」6話「六本木クライシス」のネタバレ解説

この短編集は今回が最終話です。

5話と6話の間に、「幕間 横須賀バビロン」
という3ページほどの短い話があります。
少年と母親と、大臣の男が登場します。
少年が男のことを「おじさん」と呼ぶと、
母親は、「『お父さん』よ」と言いました。

幕間が終わると、今回は鮎観の視点で話が進みます。

鮎観は六本木で遼平と待ち合わせをし、再婚したことを伝えました。

どうして、俺に言わずに、再婚なんてしたんだ。俺は俊平の父親だぞ!
と遼平が激昂すると、だからよ、と鮎観は答えました。

回想です。
一族同士の親から生まれた子供に、
しばしば「めんどう」なことが起こるという噂がありました。

それでも、自分たちとは関係ないと思い、鮎観と遼平は結婚し、
子供を作りました。

俊平が2歳を越えてから、鮎観と遼平が諍いを起こす度、
俊平がすごいタイミングで火が点いたように泣くことに気付きました。

一族の「仕事」について鮎観と遼平が議論し、恐怖について語っていると、
俊平が銃にこめる古い弾丸を吐き出しました。

それからしばらくして、
また「仕事」の帰りに鮎観と遼平が苛立ちをぶつけあっていると、
俊平の口から「グンカ」の手が出ようとしていました。
俊平の身体の中に「裂け目」ができはじめていたのでした。

鮎観と遼平が落ち着いて和やかでいれば、何も起こりませんが、
肉体的にも、精神的にもへとへとになり、
どちらかが外出して一人が残るという生活パターンが出来てきました。

そして2人は離婚したのでした。
回想終わりです。

鮎観は「仕事」をやめると言いました。

その時、「ROPPONGI」の「O」の文字が重なり合い、
オリンピックのマークを作ったかと思うと、
首都高の白い壁が全部「裂け目」になり、
無数の「グンカ」が飛び降りてきました。

しかし、「『グンカ』の群れが足を止め、何かに目を留め、指差していました。

六本木交差点の道路の真ん中に俊平がいて、『ダイジョウブ』と言い、
ニッコリと神のような満面の笑みを浮かべました。


というあらすじなのですが、
いつもの恩田陸作品らしい終わり方になってしまいましたね。

投げっぱなしエンドです。
打ち切り漫画の最終回みたいな終わり方です。

見切り発車でシリーズ全体のオチを考えずに書き進めた結果、
こうなったのでしょう。

恩田陸作品は当たり外れが大きく、
面白い時は最高に面白いのですが、
この短編集は外れかな、と思いました。

恩田陸「失われた地図」5話「呉スクランブル」のネタバレ解説

煙草屋が呉に「グンカ」が出ると予報し、
遼平と浩平は呉にやってきました。
今回は、またしても鮎観が休みで、カオルと一緒に行動することになりました。

遼平たちは、呉には自衛隊の士官学校があるとか、
戦艦大和が建造されたところだ、という話をします。

食堂で食事をしながら、「グンカ」が何より大好きなものはナショナリズムだ、
という話をカオルはしました。
戦艦大和は出来た時点で時代遅れで、
かつての日本のナショナリズムのダメダメなところを
象徴しているものだとカオルは言います。

食事後、「裂け目」を探しますが見つからず、せっかく呉に来たんだから、
両城の二百階段に行こうとカオルは言いました。

海上保安庁の映画、海猿のロケ地は呉だという話をした途端、
二百階段全部が上から下までまるごと「裂け目」になり、
大勢の「グンカ」があふれ出してきました。

遼平は「グンカ」に脅威を覚え、
その遼平の動揺を「グンカ」がエネルギーとして吸い込み、
1・5倍くらいに膨らみました。

遼平たちは「グンカ」を封じ込められなさそうになり、
ピンチでしたが、「戦艦大和が現れ、
戦艦大和の放つ青い巨大な光が『グンカ』を破裂させました。

まさかの戦艦大和が『グンカ』から助けてくれる
」というオチで、
5話は終わります。

恩田陸「失われた地図」4話「大阪アンタッチャブル」のネタバレ解説

お盆の時期に、遼平と浩平は煙草屋に言われて大阪にやってきました。
鮎観も今回は来られませんでした。

代わりに煙草屋が応援に出したのは、筋肉が分厚く、
女性的な喋り方をする男、カオルでした。
遼平や浩平とは既知の仲であり、
遼平たちはカオルのことを苦手に感じています。

大阪城に向かいながら、なんでこんなに「裂け目」ばっかり出来るんだろう、
と遼平は言いました。

「グンカ」は、戦争したいと思う連中が増えるとその気配を察して、
「裂け目」を破って湧いてくるのだとカオルは言いました。
4話目にして、やっと世界観の説明です。

大手門には戦国時代の足軽の集団がいて、
京橋口の橋の上にはぼろぼろの着物を着た、長い髪の大女が立っていました。

遼平はカオルに押されて、大女の脇を駆け抜け、全速力で橋を渡りました。
カオルと浩平も走ってついてきますが、大女もついてきてしまいます。

しかし、大女は急にいなくなり、ふっと辺りが暗くなったかと思うと、
石垣だったものが飛んでいました。

巨大な石が無数に空中にばらまかれていて、
その石のそれぞれに足軽たちが乗っていて、
武器を振り回し、誰かと戦っていました。

遼平と浩平はカオルに首根っこをつかまれ、空中にぶん投げられ、
近くに浮かんでいる石にしがみつきました。

石は少しずつ上下に揺れていました。
遼平は石が上がった時を見計らって近くの石に移動し、
徐々に高く上がっていきました。

さっきの大女が石の上に乗っていて、「裂け目」はその女の顔でした。

遼平は「裂け目」を縫おうとしましたが、強い衝撃で宙に跳ね飛ばされました。

カオルが飛び上がり、女の前にストンと降り立ち、
アイロンがけに使う糊(のり)のスプレーを御餡お顔に浴びせかけます。

カオルの手そのものがアイロン代わりになっていて、
カオルは手で「裂け目」の隙間を埋めました。

石が次々に落ちていきます。
落ちていく、世界が。
そう思ったら、元司令部の前にいました。
恐るべし、大阪城。まさにアンタッチャブル、と遼平は思いました。

というあらすじなのですが、新キャラのカオルの性格が問題だと思いました。

女性的な喋り方をするのは別にいいのですが、
遼平が嫌がっていることを繰り返しやるので、読んでいてイライラしました。

恩田陸作品には女性的な喋り方をする男性がよく登場しますが、
今回登場したカオルは、その中で一番微妙だと思います。

恩田陸「失われた地図」3話「上野ブラッディ」のネタバレ解説

3話は鮎観の視点で話が進みます。

鮎観は上野公園にお花見に来ました。
遼平、浩平、そして煙草屋の3人が待っている場所に行きます。

乾杯し、お花見をしていると、
鮎観の一人息子の俊平によく似た男の子を見かけました。
しかも、その男の子は同い年くらいの女の子と一緒にいました。
鮎観はその女の子に見覚えがあるような気がしました。

鮎観と遼平が、俊平によく似た子を追いかけようとすると、
気をつけろ、桜の木の下には魔物がいるぞ、と煙草屋は言いました。

俊平によく似た子を追いかけるうちに、鮎観の左の耳が痛み、
どこかの寺の境内にある、巨大な桜の木の下に出ました。

女の子が振り返り、鮎観はそれが子供の頃の自分だと気付きました。
俊平によく似た子は、子供の頃の遼平でした。

女の子は歌っています。

しばらくして、満身創痍の侍、落ち武者たちの行列が現れました。

男の子は侍たちを見て真っ青になって、かすかに震えていました。

しかし、女の子の方は風を見るのが得意ではないため、
何も見えていませんでした。
女の子は風を見るより聞く方が得意だったので、
すぐそばを行く異様な気配を感じて聞き取ろうとし、
左耳を突き出していました。

女の子がバランスを崩し、足元の砂が耳障りな音を立てて飛び、
侍の1人が女の子の姿を認めました。

侍は刀を振り上げます。

鮎観の隣の遼平が、「やめろーっ! と叫ぶと、
男の子がビクッと全身を震わせて、身体を動かせるようになり、
女の子に駆け寄り、腕をつかんでぐいと引き戻しました。

女の子の耳が刀で切られ、女の子は泣き叫びます。
現在の鮎観の耳も痛みました。

桜の花びらが一斉に散り始め、
大量のピンク色の蝶が落ち武者たちに覆いかぶさっていきました。
男の子がちらっとこっちを見て、口が『あ』の形になりました。

周囲の喧騒が戻ってくると、遼平は、
『グンカ』じゃなくて『彰義隊(しょうぎたい)』のほうだったのか、
と呟きました。

あんな変なものを見たのは、俊平が小学生になり、
あの時の歳に近づいたからかな、と遼平は言いました。

そして、さっき遼平があの時の遼平に声をかけたから、
鮎観は助かったのではないか、と遼平は言いました。


というあらすじなのですが、パラドックス的で面白かったです。

ちなみに彰義隊というのは、幕府より江戸市中取締の任を受け、
江戸の治安維持を行なった部隊のことです。
彰義隊は上野戦争で明治新政府軍に敗れ解散した、
という歴史があります。

恩田陸「失われた地図」2話「川崎コンフィデンシャル」のネタバレ解説

2話は鮎観ではなく遼平の視点で話が進みます。

遼平、鮎観、浩平の3人は、
いつものようにタウン誌の取材班の恰好をして電車に乗っていました。

鮎観は、伯母が再婚話を持ってきた、と言い出しました。

鮎観と遼平の子供の俊平に父親が必要だから、
と叔母は言ったのだそうです。

俺がいるじゃないか、と遼平は言いますが、
これから先もあたしたち一緒にはいられない、と鮎観は言いました。

鮎観の左の耳が痛み、いつのまにか、浩平が天井を見上げていました。

かつ、かつ、かつ、かつ、
と天井の向こうから「グンカ」の足音が聞こえました。

ぶらさがった「グンカ」達が窓の向こうからナンブで撃ってきます。

電車が浅野駅に着くと、遼平達はホームに飛び出し、
「グンカ」と戦います。

遼平たちに撃たれたり殴り倒されたりして、
残り少なくなった「グンカ」は電車にしがみつきました。

「グンカ」を追って遼平たちも電車に乗り込み、
終点に着きましたが、「グンカ」は消えていました。

巨大な工場に「裂け目」があるのを見つけ、タクシーで近づきます。

その工場の橋が「裂け目」になっていました。
鮎観は蝶を出し、遼平は「裂け目」を縫っていきますが、
「裂け目」が長すぎて縫っても縫っても終わりません。

しかし、白い風が吹いて白い蛇があらわれ、
「裂け目」に蓋をするみたいに身体を伸ばして横たわりました。

蛇のおかげで、遼平はさくさくと「裂け目」を縫うことができました。
縫い終えたとたん、蛇は動きだし、煙突や塔に絡みつくと、
溶け込むように建物と一体化しました。
慌てて目を凝らすと、巻きついた蛇に見えたのは、
工場を縦横に走るパイプにしか見えませんでした。

沖縄料理の店に行き、蛇の皮を使っている沖縄の三味線に気づき、
さっきの蛇だ、と遼平は言いました。

鮎観は、錦糸町の公園にいた男が、
今日の電車の奥の車両で眠っていたことに気付き、
あいつが「くだん」だと言いました。

というあらすじなのですが、今回もよく分からない話でした。

ちなみに、タイトルの「コンフィデンシャル」は「機密」とか「裏情報」
という意味です。
プロフィール
Author:しまうました
見やすい記事一覧はこちらです。
スポンサードリンク

結物語 (講談社BOX)

さとり世代探偵のゆるやかな日常 (新潮文庫nex)

雪煙チェイス (実業之日本社文庫)

このブログについて
見やすい記事一覧はこちらです。
このブログの記事は管理人「しまうました」の独自の解釈によるものなので、制作者の意図したものや一般に考えられているものとは異なる場合があります。
個人の趣味でやっているブログなので、解説してほしい本のリクエストは受け付けていません。
重要なネタバレ箇所は白字にしてあるので、反転してお読みください。
現在、荒らしをした人物のコメントを拒否しており、巻き添え規制される場合があります。詳細はこちらに書いてあります。
承認したコメントに対しても、管理人は基本的には返信しません。また、後日予告なく削除する場合があります。ご了承ください。
今月の人気ページ
人気ページの集計期間は30日間です。2017年4月10日リセット。
スポンサードリンク
カテゴリ
最新記事
検索フォーム
月別アーカイブ
最新コメント
FC2カウンター
スポンサードリンク

ソードアート・オンライン プログレッシブ (4) (電撃文庫)

業物語 (講談社BOX)

キノの旅XX the Beautiful World (電撃文庫)

悪の教典 上 (文春文庫)

                amazon人気本ランキング
RSSリンクの表示
リンク
最新トラックバック
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
記事一覧
見やすい記事一覧はこちらです。