森絵都「異国のおじさんを伴う」第10話「異国のおじさんを伴う」のネタバレ解説

作家の「私」はある日、民芸品展でオーストリアの「ひげ人形」を買いました。
そして、そのひげ人形をモチーフにした「ビアード・マン」という本を書き、
それがアニメ映画化までされるヒット作となりました。

すると、オーストリアの「ひげ人形愛好会」なる団体から、
「私」をひげ人形愛好会の集いに招待したいというメールが来ました。

担当編集者には反対されたのに、「私」は1人でオーストリアに行き、
ひげ人形愛好会の集いの会場を探しました。

すると、思っていたよりも小規模な集いで、
大きな会場の別の集まりに迷い込んでしまい、
その度に心がくじけそうになりました。

しかし、それでも何とかひげ人形愛好会の集いの会場に辿り着きました。

10人弱の老婆たちが一斉に、「私」の作品を褒めちぎります。
どうやらオーストリアでもひげ人形はあまりメジャーな存在ではなく、
知名度は低いようでした。

その後、老婆たちの手作りのひげ人形のコンテストが始まり、
全長2メートルはある特大のひげ人形が優勝しました。
そして、その特大ひげ人形は「私」にプレゼントされることになりました。

ホテルへ戻ってから、もらえるはずだった航空券代と宿泊費を
もらわずじまいで終わったことに気付きます。

特大ひげ人形が入るスーツケースを探しましたが、
そんなものは売っていないと言われます。

空港へ向かう途中、
特大ひげ人形を抱えた日本人の「私」は悪目立ちしていました。
空港でも、ひげ人形を荷物として預けることはできず、
ミュンヘン行の飛行機では隣の座席に座らせることになりました。

そしてミュンヘンの空港に着くと、「預けていたスーツケースは流れてきませんでした。

スーツケースを探してもらう手続きをしている間に、
『私』は何だかどうでもよくなり、
特大ひげ人形と新たな旅に出かけるのでした。


というあらすじなんですけど、何が何だかよく分からない話ですね。
でも、遠い外国でスーツケースを失い、
特大ひげ人形を抱えて歩いている「私」の姿を想像すると、
可哀想なんだけど笑えてしまいます。

これは何も考えずに読むと、日常を忘れることができる話だったと思います。

森絵都「異国のおじさんを伴う」第9話「母の北上」のネタバレ解説

主人公の「僕」は結婚していたこともあり、
2年前に父親が亡くなってからというもの、
あまり実家に寄りつかない生活を送っていました。
そしてたまに実家に帰省すると、
母親の生活拠点が北へ北へと移動していることに気付きます。

陽当たりも居心地も良いリビング・ダイニングが母の定位置だったのに、
父が死んでからはその北にある洋間を定位置にし、
とうとう今年の正月には家の北端にある、
かつては物置代わりだった狭い和室まで移動していました。

「僕」がリビングへ移動しようとすると、母に止められ、
入れてくれません。

しばらく外出していた「僕」は、ある仮説を思いつき、再び実家に戻りました。

その仮説というのは、「リビングやダイニングには
父親との思い出の品が溢れ返っており、
それを見るのが辛いから逃げているのではないか、というものでした。
解決策として、新しい趣味を見つけて新しい思い出を作ってみろ、
という意味のことを『僕』は言ったのですが、それは的外れな物でした。

『僕』が母親に連れて家電ショップへ行くと、
母親はそこで蛍光灯や電球をいくつも買いました。

そうです。
実は、実家の天井が高いせいで電球が切れても交換できず、
それで母親はまだ電球が点く部屋へ移動していたのでした。
普段使わない部屋ほど、電球が切れるのは遅くなりますからね。

それを息子の『僕』に秘密にしていたのは、自立できていないみたいで、
言えなかったのだそうです。

ちなみに、母親には友達以上恋人未満のケンさんという人がいて、
『僕』は惚気話を聞かされることになったのでした。


というあらすじなのですが、これはジャンル分けするとすれば、
ミステリーの「日常の謎」というジャンルになりますね。
推理作家のノンシリーズ短編集の中に紛れ込んでいても違和感がないくらいです。

森絵都「異国のおじさんを伴う」第8話「桂川里香子、危機一髪」のネタバレ解説

この話は桂川里香子という女性の物語です。

「私」は上司の代わりに東京から京都まで、
桂川里香子という女と新幹線に同乗することになりました。

この桂川里香子はとにかく趣味に生きている女で、
様々な肩書を持つ人物です。
そんな桂川里香子には新幹線に思い出があり、
そのため東京から出発する新幹線に乗った際にはお酒を飲まないと
やっていられないのだそうです。

「私」が興味本位でその理由を尋ねると、里香子は教えてくれました。

名古屋の地方豪族の家系に生まれた里香子は自由な恋愛と趣味に生きていたのですが、
30歳を過ぎた頃に、5歳年下のエジプト人の美青年、アリと出会い、恋に落ちました。

里香子はアリと結婚したいと考えますが、
何しろ旧家なので外国人との結婚をすんなりと許してもらえるとは思えません。

そこで、騙し打ちのような形でアリを実家に連れて行こうと、
里香子はアリと冬の新幹線に乗ることにしました。

ところが、「ホームで指定席の乗り場に並んでいる人たちを見て、
アリは彼らを馬鹿にします。
里香子がとりなしてもアリは彼らのことを馬鹿にし続け、
新幹線が到着したからと乗り込もうとした里香子のことも引き止めます。

アリは意地になっちゃったんでしょうね。
おそらく、これから大金持ちの里香子の実家に行くにあたり、
主導権を握ろうと亭主関白を気取ってみたんでしょうが、
その行為に里香子はブチ切れ、新幹線の発車直前に乗り込もうとしたアリを蹴飛ばし、
ホームに置き去りにしたのでした。


というあらすじなのですが、この話はとにかく、
桂川里香子という女を描写することにだけ命を懸けている感じですね。
実際、最初に登場する「私」は、
ただ里香子から新幹線にまつわるエピソードを引き出すための猿回しに過ぎません。

しかし、それでもちゃんと起承転結と痛快なオチがついているのは流石だなあと思います。

森絵都「異国のおじさんを伴う」第7話「ラストシーン」のネタバレ解説

大学の卒論の下調べに行く際に、
主人公はロンドンからキューバへ行く国際便の飛行機に乗りました。

40Aに座っているのは太った女で、
40Bが主人公の席で、
40Cには褐色の肌の毛深い中年男性が座っていました。

飛行機に乗ってから9時間が経過した頃、
それまでずっと寝ていた40Cが覚醒し、
若くして気取った口髭をたくわえた乗務員に説明を受けながら、
300本もある映画の中から、
「検察側の証人」という古めかしいモノクロ映画を観始めました。

「検察側の証人」は、アガサ・クリスティの短編小説を原作とした映画で、
日本では「情婦」というタイトルで公開されています。

情婦 [DVD]


そして事件は飛行機が着陸する少し前に発生します。

3時間も映画を観ていて、あと10分で映画が終わるというのに、
着陸態勢に入ったせいで40Cの観ていた映画が途中で切れてしまったのです。
しかも、ラストのどんでん返しのオチの部分を40Cは見損ねてしまいました。

40Cと、全くの他人である40Aは必死に、
映画の続きを観せるべきだと乗務員に訴えますが、
乗務員はルールだから仕方がないと言います。

まあ、飛行機の乗務員なんてやってると、
理不尽なクレームの相手をすることも多いでしょうし、そうなっちゃうんでしょうね。

飛行機を降りてからDVDで続きを観ればいいと言う乗務員に対し、
40CはDVDなんて見たこともないし、自分の国の一般家庭にはないと言います。
情報統制されているので映画館で流れる映画も数が非常に限られていますし、
もちろんインターネットはおろかパソコンを一般人が持つことも困難です。

30年間、糖尿病の研究を続けた40Cはキューバ政府の許可を得て、
生まれて初めて国を出ました。
そして、今はその帰りです。

もう一生、本当に2度と、
40Cは『検察側の証人』のラスト10分を見ることはできないのです。

みんなに責められた乗務員は、「信念が揺らいでしまいますが、
残念ながら飛行機は間もなく着陸しようとしていました。

40Aはネタバレをして、自分が検察側の証人の女の役をやってもいいと申し出ますが、
他の乗客から『あんたにゃ無理だ』と言われたのをきっかけに、
40Cは笑い出してしまいます。

40Cは、40Cにとって本当に重要なのは作り話の映画の結末ではなく、
自分自身の人生だと気付いたのでした。


というあらすじなんですけど、
世界には自由に好きな映画を観ることができる人よりも、
できない人の方が圧倒的に多い、という当然の事実に衝撃を受けました。

……まあ、40Cの母国ほど露骨ではないにせよ、
日本も非常に高度なレベルで(情報が統制されていることを国民に気付かせないレベルで)
情報が統制されている国ではあるんですけどね。

でも、世界的に見れば、確かに日本は自由で豊かで平和な国なんだなあ、
と思ってしまいます。

あと、最後の方で40Aが『検察側の証人』のネタバレをしようとしていたのも、
ネタバレサイトの管理人としては見過ごせないですね。

カリフォルニア大学の研究チームが行った実験によると、
ネタバレされてからその作品を見たグループの方が、
ネタバレされずにその作品を見たグループの方が、その作品を楽しめたのだそうです。

まあ、日本で同じ実験をしたら違った結果になるかもしれませんけど、
例えばこの40Cのような人とか、気になっている作品があって、
途中まで見たんだけど、続きを見るべきか見まいか迷っている人なんかには
ネタバレも必要なんじゃないかと思います。

他にも、昔見た作品のネタバレを見ると、懐かしい記憶が蘇って2度楽しめますよね。
複雑で難解な話で、1度見ただけでは内容を理解できないときにも役立つと思います。

もちろん、ネタバレしてほしくない人にネタバレするのは最低の行為だと思いますけどね。

森絵都「異国のおじさんを伴う」第6話「思い出ぴろり」のネタバレ解説

異国のおじさんを伴う


主人公の「私」は、昔一人旅で来たことがある修善寺の町に来たところ、
葬儀屋のマイクロバスに乗った男にナンパされます。

葬儀屋のバスに乗せてもらい、ドライブが始まります。
運転手の男は小池だと名乗りましたが、
主人公はそんなことより小池さんのセーターの肩のほつれが気になっていました。

小池さんは人気者らしく、あちこちで町の住人に話しかけられ、
主人公はヨシミの存在を知ります。

小池さんはもう10年以上もヨシミと付き合っているのに、
ふんぎりがつかずに結婚はしていないのでした。
その話を聞いた主人公は、
「あとで後悔しても遅いんです。本当に遅いんですよ」
と説教をしました。

実は主人公は「既に死んでおり、幽霊のような存在でした。
長い闘病の末に亡くなった主人公は、通夜の席から逃げてきたのでした。

小池さんと話をしたおかげで、主人公はだんだんこの世への未練がなくなってきます。
セーターは滑り止めつきのハンガーにかけるようにと約束もし、
思い残すこともなくなった主人公は葬儀場へ戻っていったのでした。


というあらすじですが、「これがミステリーだったら、
最後の最後まで主人公が幽霊であることは明かさない構成にするところなのですが、
森さんはミステリー作家ではないので、
かなり早い段階で主人公が幽霊であることを露骨な表現で読者に教えています。

というか、小池さんの職業が葬儀屋という時点で隠す気ゼロですよねwwww

でも、そういう構成にしたおかげで、人の死を題材にしているにもかかわらず、
とても爽やかな読後感のある話に仕上がっています。
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