加納朋子「モノレールねこ」第8話「バルタン最期の日」のネタバレ解説

この短編集のトリを飾る「バルタン最期の日」の主人公は、
ツッコミ気質で一人称が「俺」の――ザリガニです。

……冗談ではありません。
本当にザリガニが主人公なのです。

フータという男子小学生に釣られてしまったザリガニは、
バルタンと名付けられ、フータの家で飼われることになります。

が、フータもその両親も、みんな少し抜けているところがあり、
何だか生きるのが苦しそうでした。
フータは学校でいじめられ、母親は意志薄弱で、父親はバルタンに
「……バルターン、オレ、会社辞めたいよ……」
などと愚痴をこぼす始末です。

しかし、バルタンが脱皮したのを見た母親は、
「決めた。私も脱皮する」
と宣言しました。

母親は、フータと父親を励ますために、慣れない笑いをとろうとします。

そんな母親の思いがフータと父親に通じ、
3人は気晴らしに旅行に出かけることになりました。

が、旅行中に泥棒が家の中に入って来ようとします。
バルタンは「水槽を抜け出し、
窓ガラスを割って侵入しようとしていた泥棒の指を挟みました。

泥棒は逃げていきますが、バルタンは泥棒に床に叩きつけられてしまいます。

バルタンは死んでしまいました。

うう、バルタン……。・゚・(ノД`)・゚・。

そして、旅行から帰ってきたフータたちは何が起こったのかを理解し、
フータはバルタンのために泣き、バルタンのお墓を作りました。


というあらすじなのですが、やられました。

まさか、ザリガニが主人公の話で涙ぐんでしまうとは思いませんでした。
この話大好きです。

この話のためだけに、
この「モノレールねこ」の解説を続けていたと言っても過言ではありません。

加納朋子「モノレールねこ」第7話「ポトスの樹」のネタバレ解説

物語の中心となるのは主人公の父親なのですが、
この父親がとにかくクソオヤジです。

クソオヤジどれほどの駄目人間なのか、という描写にページの大部分が割かれています。

しかし、駄目人間なのは駄目人間なんですけど、
どこかケチ臭いというか人間臭いというか、
小物感が溢れる感じのクソオヤジなのです。

大人になった主人公はクソオヤジと絶縁するのですが、
彼女と結婚することになったためクソオヤジも紹介せざるを得ませんでした。
主人公が大人になっても、やっぱり駄目っぷりは変わっていません。

しかし、新婚旅行がサイパンだと聞いたクソオヤジは、
サイパンにある砂糖王公園にある巨大なポトスの樹を見て来いと言いました。

ポトスの葉は、ある程度育ってくると、
下から生えてくる小さな葉っぱに陽が当たるように、
自然と裂けてしまうのだそうです。

それからクソオヤジは、自分の父親(つまり主人公にとっての祖父)が、
川で溺れたクソオヤジを助ける代わりに亡くなってしまったという話をしました。
それをポトスの葉に例えていたのです。

そしてそのことを重荷に感じていたことを告白し、
「俺は、おまえのために死んだりなんかしない」
と宣言しました。

その後、主人公たちは新婚旅行でポトスを見に行きましたが、
クソオヤジの話とは違い、ポトスは別の種類の大きな木に寄生していました。

数年後、主人公たちには赤ん坊ができるのですが、
その赤ん坊が「通り魔に襲われた際、身を挺して守ったのはクソオヤジでした。

そのことがマスコミに取り上げられ、クソオヤジは一躍ヒーローになります。
急に仕事の依頼も増え、クソオヤジはだんだんまともになっていったのでした。


というあらすじなのですが、これは映画版ジャイアンの法則を、
温かいタッチで描いた作品だと思います。



……映画版ジャイアンの法則について、説明しないといけませんかね?
既に何回かこのブログでも説明しているんですけど、
駄目な人がたまにいいことをすると、普段からいい人がいいことをしたのに比べ、
高い評価を得られるという現象のことです。

不良が雨の中で濡れている捨て猫に傘を差し出すところを
女の子に見せつけてモテようとする行為
と同じです。

どれだけこのクソオヤジが駄目人間か、
というのを息子の視点から見ていたので、
最後の思いがけないエピソードに感動してしまったわけです。

ええ。解説というのは蛇足きわまりないものだと、しまうましたも思います。

加納朋子「モノレールねこ」第6話「ちょうちょう」のネタバレ解説

主人公は人気ラーメン屋「ラーメン蝶々」を営む叔父を説得し、
「ラーメン蝶々」の2号店の店長になりました。

叔父の右腕的存在の上田、可愛い女子大生の鳥井恵、
叔父の親戚の北岡蘭子という女の子と一緒に、2号店をオープンします。

最初は順風満帆に思われていたのですが、
オープンから数週間後にチンピラを追い払います。

すると、そのチンピラたちがインターネットで誹謗中傷した結果、
客足が遠のいてしまいます。
そのことを蘭子に教えられた主人公と上田はショックを受けます。

上田を励ましに行ったのは、「主人公が密かに思いを寄せていた恵でした。
そのことを主人公に教えたのも蘭子でした。

主人公は上田に店を譲って自分は店長をやめようとするのですが、
開店祝いにもらった胡蝶蘭が枯れるまでは店を続けるようにと、
蘭子にハッパをかけられます。
我慢強く続けたおかげで、徐々にではありますが事態が好転していきました。

が、実は蘭子が育てていたはずの胡蝶蘭は1鉢だけ造花だったのでした。

このオチは、O・ヘンリーの『最後の一葉』のパロディなのでしょうね。
また、タイトルの『ちょうちょう』も、蝶々と胡蝶蘭をかけているのだと思います。

人を見る目のない主人公が、蘭子に尻を敷かれつつ成長していくのが面白いです。


この話はこの本に収録されている他の短編と比較しても極端に短く、
ショートショートといっていい分量なのですが、
ちゃんと起承転結がついているあたり、流石だなあと思いました。

加納朋子「モノレールねこ」第5話「セイムタイム・ネクストイヤー」のネタバレ解説

モノレールねこ (文春文庫)


今回は、5歳の娘を亡くした母親が主人公、という重い内容の話になっています。

主人公は、当時5歳の娘の誕生日に泊まった思い出のホテルに、
娘が生きていれば6歳の誕生日に泊まることにしました。

主人公には夫もいるのですが、夫はついてこなかったので、
たった1人で1年前と同じ部屋に泊まることにします。

すると、主人公は亡くなったはずの娘の姿を目撃しました。
バーへ行ってその話をすると、バーテンダーは、
このホテルでは年に1回だけ、亡くなった人の幽霊を見ることができるのだと言いました。
しかも幽霊は成長していき、喋ることもできるのだそうです。

主人公は翌年も同じ日に同じ部屋を予約しました。

主人公は毎年、死んだはずなのに成長している娘にプレゼントを渡し、
短い会話を楽しみました。

毎年毎年……そして10年が経過しました。

主人公はホテルマンに、「10年前に自分は死のうとしていたことを告白しました。

ホテルマンたちはグルであり、主人公の夫の協力の元、
娘によく似た子に娘の演技をさせていたのでした。
主人公もそれを知っていながら騙されているふりをしていたのです。
ただし、その子が男の子であることには気付いていませんでしたがw

主人公が10年目にして娘の幽霊の正体を話題に上げたのは、
余命半年と告知されていたからでした……。

しかし、ホテルマンに説得されて、
来年も主人公が生きていたら同じ日にホテルに来ることを約束するところで物語は終わります。


というあらすじなのですが、これは何とも切ない話ですね。
しかし、死んだ子の年を数えるという、やってはいけないことをやっているのに、
心が温かくなります。

加納朋子「モノレールねこ」第4話「シンデレラのお城」のネタバレ解説

主人公のスズは、居酒屋にいたミノさんという男性に、
偽装結婚をしようと持ちかけます。

そして偽装結婚は本当に実現されることとなったのですが、
実はミノさんには事故で亡くなった婚約者である、
瑞樹という女性の幽霊と同居している、という秘密がありました。

最初は、自分には見えない幽霊が存在するかのように振る舞っているミノさんに
戸惑っていたスズでしたが、やがて瑞樹の存在に慣れていきます。

やがて、瑞樹がスズさんのアルバムを見たがっている、とミノさんに言われ、
スズはアルバムを見せてあげます。
すると、瑞樹はその中のノイシュヴァーンシュタイン城に興味を持ちました。

ディズニーランドのシンデレラ城のモデルとなったお城だと伝えると、
瑞樹はディズニーランドへ行きたがりました。
ミノさんとスズの間に挟まることで、外に出られるのだそうです。
ディズニーランドへ行った瑞樹はとても嬉しそうにしていたそうです。

それから1年が過ぎました。
やがてスズは赤ちゃんの泣き声が聞こえることに気付き、
瑞樹が赤ちゃんと産んだのだとミノさんに教えられました。

……赤ちゃんを産む幽霊って!
結構独創的なアイデアですね。

赤ちゃんの名前は貴樹と言い、それはスズにとっても意味がある名前なのだそうです。

実家に帰ったスズは、貴樹という名前に心当たりがないか母に訊ねます。
そして実家のアルバムの写真を見て、思い出しました。
当時小学2年生だったスズは同級生の貴樹くんと凄く仲が良かったのですが、
スズは風邪を引いた貴樹くんを連れ出し、雨に濡れてしまい、
肺炎になって死んでしまったのでした……。

スズにとってあまりにも辛い記憶だったので封印していたのです。

スズは泣いた後、今度はミノさんの実家へ行きます。
そこで、瑞樹のことを尋ねます。
瑞樹は妊娠3ヶ月のときに事故死していたのです。

そして家に帰ったスズを待っていたのは、赤ん坊を抱いた瑞樹の姿でした。
スズにも瑞樹の姿が見えるようになったのです。

それからさらに年月が流れ、4人は幸せに暮らしていました。
ところがある日、「スズは、ミノさんが事故で危篤状態だという知らせを受けました。
病院へ駆けつけたスズは、
『大好きよ、ミノさん』
と最初で最後の告白をしました。

本当は最初からスズはミノさんのことが好きだったのですが、
普通に告白したのでは結婚してくれないと思い、偽装結婚の話を持ちかけていたのです。

とうとうミノさんは死んでしまいますが、
ミノさんや瑞樹や貴樹と別れるのが辛かったスズは、
義母と一緒に暮らすことでミノさんや瑞樹や貴樹をあの家に留めようと決意するのでした。


というあらすじなのですが、「その後の暮らしぶりを想像すると、ちょっと後味悪いですね。

『シンデレラのお城』というタイトルも、
いつか魔法が解けてしまうことを暗示しているような気がしますし……。
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