星新一「遺品」のネタバレ解説

主人公の「私」と同僚は、宇宙で5ヶ月間、彗星の調査をしました。
「私」も同僚も、若い男の学者でしたが、
同僚にはリーラという恋人がいて、「私」にはいませんでした。

せまい宇宙船内で、同僚が話すことといえば、いつもリーラのことで、
とりだして見せるものといえば、彼女の写真でした。

「私」が眠る時、また女性についてふと考える時のイメージは、
リーラ以外の姿でなくなっていました。

「私」と同僚は調査を終え、地球に帰還しようとしましたが、
宇宙船が故障し、きりもみ状態に入ってしまいました。

同僚は脱出装置に入って、ボタンを押しました。
「私」もべつな脱出装置にはい寄り、ボタンに触れました。
脱出装置は、「私」を激しく外部に発射し、そのショックで、
気を失いました。

「私」はリーラの夢を見ていましたが、病院で目を覚ましました。
医者の男とリーラがいて、同僚のパラシュートが開かず、
同僚が亡くなったことを説明してくれました。

顔を伏せて泣くリーラに「私」は手をさしのべようとし、
右肩の痛みに気がつきました。
医者に鎮静剤を打たれ、「私」は眠りました。

それから毎日、リーラは見舞いに来ました。
悲しみをまぎらせるため、また恋人の思い出に触れるために。

「私」もリーラを快く迎えました。

退院したら、湖水の近くへでも行って、しばらく静養しようかな、
と「私」が言うと、それがいいわ、そして釣をしましょう、
いつかのように……とリーラは答え、顔をほてらせました。

場面が変わり、医者は「私」に、「私」の右腕は脱出の直後に、
宇宙船の本体がぶつかり、もげてしまったことを告白しました。

時を同じくして同僚が亡くなったため、
医者は「私」の右肩に、同僚の右腕を移植していたのでした。

包帯が取り去られ、右腕へのマッサージが開始されました。
リーラは相変わらず見舞いにやってきて、マッサージを手伝いました。

リーラがいない時に、ある患者が、手相でも見てやろうか、
と話しかけてきて、「私」は右の手を出しました。
相手は、なにか大きな事件を経験したな、と言い、
女性関係で、問題を起こすかもしれない、と言いました。

退院をあすにひかえた夜、単との医者が病室にやってきて、
同僚の遺品があったことを「私」に伝え、
遺族のかたに渡してあげて下さい、と言いました。

渡された遺品は「拳銃でした。
同僚は、万一の場合、たとえば宇宙船が宇宙へ漂流しはじめた時に、
自殺する目的で持っていたのでした。

医者が去ったあと、右腕は拳銃に伸びました。
右手の指は安全装置をはずし、引き金に触れていて、
『私』の目は、銃口の奥をのぞくことができました。


というあらすじなのですが、ゾッとするオチですね。

ラストシーンは「同僚の右腕が勝手に動いて、
『私』を撃ち殺した、という意味なのでしょう。

同僚の右腕は、『私』に恋人のリーラを奪われた復讐をしたのでしょうね。

タイトルの『遺品』は、拳銃だけではなく、
同僚の右腕そのものも指しているのだと思います。

星新一「責任者」のネタバレ解説

道路建設の現場の責任者であるエス氏は、部下から、
このさきの山腹にほら穴があり、化物の住む穴だとの伝説があり、
みな、気味わるがって、仕事をためらっている、と言われました。

エス氏は気休めのために近所の寺から住職を呼び、
盛大な儀式をやらせましたが、穴のなかから、
神をふりみだし、足はなく、色は抜けるように白く、
醜態きわまる顔をしている幽霊が出現しました。

幽霊は大きな笑い声をあげました。

エス氏が話しかけても、幽霊は笑いつづけます。

本社に連絡しても一生に付され、幽霊からも笑われ、
エス氏はあいだにはさまって泣きたい気分でした。

生前に笑いたりなかったのが、心残りなのかもしれません、
と部下に進言され、お祭りを実行しても、
またも幽霊が出現し、いっこうに効果はあがらず、
くたびれたために、この計画は中止となりました。

思いついた案は、すべて片っぱしから実行に移されましたが、
成果をあげることはできませんでした。

穴へ入って、奥をさぐってきてくれ、とエス氏が頼むと、
勇気のある志願者と技師が穴のなかへと入っていき、
さびついた金属片のようなものを持ち帰りました。

判別はできませんが、絵のような、記号のような、
文字のようなものが記されていました。
こわれ、ぼろぼろになっていますが、宇宙船の残骸かと思われます、
と技師は言いました。

どこかの星の宇宙船が大むかしにここに墜落し、
そのためにできた穴なのでした。

幽霊を成仏させるには、やつの星に特有な宗教で、
いのってやればいいということになりましたが、調べようがありません。

本社からは、一刻もおくれを許さないと、矢のような指令がきて、
エス氏は責任者として、身動きできない立場に追いこまれてしまいます。

数日間、眠らずに悩みぬき、ある夜、エス氏は「ふらふらと歩き出し、
夜道をさまよい、足をすべらせてしまいました。
深い谷川で、下には岩があり、死んでしまいました。

問題の幽霊は、それを境に出現しなくなりましたが、
かわって、エス氏の幽霊があらわれ、
おれが退治したぞ、幽霊を退治することは、幽霊にしかできない……、
と、かん高い笑い声を響かせました。

こんどは地球人の幽霊でしたが、責任者の立場で悩みつづけたため、
発.狂してしまった幽霊だったので、成仏させることはできませんでした。


というあらすじなのですが、エス氏は責任者とは言っても、
中間管理職ですよね……。

中間管理職の悲哀が凝縮した話だったと思いました。

星新一「ごきげん保険」のネタバレ解説

朝、エヌ氏は万能生活保険会社へ電話し、
保険証書の番号を告げました。

昨夜はノラネコが一晩じゅう近所をうろつき、
なき声をあげていたせいでぐっすり眠れなかった、
とエヌ氏は文句をぶちまけました。

保健会社の人は、心から、ご同情申し上げます、
不愉快さに相当する金額をお支払いします、
それで、お許しいただけないでしょうか、と言いました。

エヌ氏はさっぱりした表情になり、電話を切りました。

万能生活保険会社に入ってから、2か月になりますが、
やはり加入してよかったようだ、とひとりごとを言いました。

エヌ氏はコーヒーに砂糖を入れ、また顔を曇らせました。
万能生活保険会社に電話し、
半年ほど前に買った、砂糖入れの模様がはげかかっている、
面白くない、とエヌ氏が言うと、
保健会社の人は、その製品に相当する代金を、
当社からお支払いします、と言いました。

出勤の途中、エヌ氏はまた万能生活保険会社に電話しました。
電車のなかで、そばに美人が乗っていた、
何度もウインクしてみたが、いっこうに反応がない、
精神的に傷つけられた、とエヌ氏が言うと、
保健会社の人は、それに対応する慰謝料を、
当社がお支払い申しあげます、と言いました。

1日の仕事を終えた後、仕事の能率が悪いと上役に怒られたことや、
道ばたに落ちていた、だれかが捨てたタバコの吸殻や、
商店の看板に見つけた、文字の誤りをエヌ氏は指摘し、
いかに精神的に不快であるかを、
思いきり万能生活保険会社に訴えました。

相手は心から同情してくれ、保険金の支払いを承知してくれました。

その後も、ひいきしている野球チームが、負けてしまったことや、
テレビのドラマのなかで、あまりにも人が死にすぎることや、
ちっとも人が死なないことについて、文句を言いました。

眠る前には、数年まえにくらべて、若さがいくらか失われてきたことや、
万能生活保険がなぜもっと早く、勧誘に来てくれなかったのか、
ということについて不満を言いました。

エヌ氏の1日は、かくして終り、つぎの日も、そのつぎの日も……。
そして、月末、エヌ氏は銀行へ寄り、
たまった金額の数字をうれしそうに眺め、
その金額を全部おろし、「自分の給料のなかから相当の額を加え、
万能生活保険会社へ保険料を納めたのでした。


というあらすじなのですが、結局、
いくら保険金を支払ってもらったところで、
それ以上に保険料を支払わないといけないので、
この万能生活保険で儲けることはできないのですね。

反論されずに愚痴を聞いてもらうのが目的で、
エヌ氏はこの保険に入っているのでしょう。

星新一「すばらしい星」のネタバレ解説

地球から出発した宇宙船が、小さな惑星を発見し、
山のそばの草原におりたちました。

小さな星ですが、海も陸もあり、美しい草花が咲いていて、
大気も清潔そのものでした。

隊員たちは、大輪の5色の花をつけた草花、
家のふさふさしたリスをつかまえました。

大理石でできた廃墟のいたるところに、
黄金製の彫刻品が並んでいました。

山の洞穴には放射性鉱物がありました。

空では声のいい小鳥たちがさえずり、
夜になると草むらの虫が銀の鈴を振るように鳴き、
地球上の四季の、いいところだけを寄せ集めたような状態でした。

樹々には味のいい果実がみのり、澄んだ小川には、
たくさんの魚がむれていて、川の底には、
地球では産出しない種類の宝石が、大粒の輝きを放って散っていました。

しかも、住民がまったくいませんでした。

みなは宇宙船のなかに、あらゆる物をはこびこみ、
隊長は出発の命令を口にしようとしました。

その時、「青空の雲のかげから、
みたこともない型の小さな宇宙艇が高速度でおりてきました。
相手の異星人科学力は優秀で、その気になれば、
地球の宇宙船など、一瞬で灰にすることもできるのだそうです。

異星人ふたりは宇宙船内を調べ、代金をお支払い願います、と言いました。

この星は異星人たちが作った、セルフサービスのマーケットだったのでした。

隊長が、代金の用意がないと言うと、借用書を書かされてしまいました。

いずれ、あなたがたの地球という星へも、品物を仕入れにまいります、
おかげさまで、ますます繁盛するようになるでしょう、
と異星人は言ったのでした。


というあらすじなのですが、すばらしい品々がある無人の星なんて、
都合のいい話はない、ということなのでしょうね。

星新一「逃走」のネタバレ解説

主人公の青年は友人の家でおそくまで酒を飲み、
夜の雨のなかを車で走り、帰路についていました。

その時、ライトのなかに、とつぜん人影があらわれ、
避けるひまもなく、重い衝撃が伝わってきました。

ひいたぞ、と心の奥が叫び声をひびかせました。

青年はブレーキをかけたものの、うしろを振りむくことができず、
手はふるえてドアをあけることをこばみました。

耳をすませますが、かすかな雨の音しか聞こえず、
うめき声は……と考えかけ、そんなものは聞きたくないと、
青年は反射的に車をスタートさせました。

ひき逃げになるぞ、ひき逃げだ、と心の奥が、強烈な言葉を告げました。

青年は心の奥の声に逆らいながら逃走を続けますが、
パトカーのサイレンの音が追っているような気がしました。

横へ曲る道をみつけ、それへハンドルを切りました。
しかし、ライトのなかに、横に張られたくさりが見え、
青年は思いきりブレーキをふみました。

黒い人影がドアをあけ、ぐったりした青年を取りおさえました。

やがて意識を取り戻すと、青年は小さな部屋のなかにいました。
目の前に見知らぬ人物がいて、ここは法廷で、
事故をよそおった殺人だと青年を糾弾し、死刑だと言いました。

その人物に向かって、
わたしは精神に異.常があるのです、狂.気なのです、
と、青年はくりかえし主張しました。

明日まで休廷する、と相手は言い、
青年は、明日はまた、気力の限りしゃべりつづけることにしました。

場面が変わり、「訪問者が医者に、あの青年はどうしたのですか、
と訊ねました。
医者によると、青年は毎日、一定時間だけ自己の狂.気を主張しつづけ、
あとは死んだように、ぐっったりするのだそうです。

青年は数ヶ月前、公園のなかの自動車の運転席で、
バックミラーにうつる自分にむかって、ああしゃべっているところを、
つれてこられただそうです。
その自動車ですが、どこかの街路樹をかすめたらしく、
そのあとが車体に少しついていました、
これはなんの関係もないことでしょうが……、と医者は言ったのでした。


というあらすじなのですが、「本当にひき逃げがあったら、
警察がそれを青年と関連づけるでしょうから、
青年がひいたのは人ではなく、街路樹だったのでしょう。

青年は街路樹を人影だと思いこみ、逃走して現実逃避を続けたせいで、
本当に精神に異.常を来してしまったのですね。

事故を起こしたときに、すぐ車から降りて確認していれば、
こんなことにはならなかったのに、としまうましたは思いました。
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