星新一「年間最悪の日」のネタバレ解説

〈このたびの懸賞で、あなたが特等に当選なさいました〉
という手紙が主人公の男のところに届きました。

主人公は壁のカレンダーを眺め、新聞を手にして、
きょうが4月1日でないことは、たしかだな、とつぶやきました。

毎年、エープリル・フールの日になると、
主人公はきまって悪友たちによって、嘘をつかれていました。

記憶に残っている限り、4月1日は主人公にとって、
年間最悪の日でした。

主人公は気象台に電話し、きょうが4月1日ではないと、
女性のオペレーターに教えられました。

しかし、主人公はなぜか信用できない気分になり、
行きつけの医者にも電話しましたが、
やはり今日は4月1日ではないと言われました。

主人公は安心し、ばんざい、と大声を上げました。

しかし、「この喜びの声が大きすぎ、主人公の眠りを終らせました。

主人公は夢を消し去るように目をこすり、壁のカレンダーを見て、
いまが4月1日の朝であることを知りました。


というあらすじなのですが、このオチを読んで、
なんだ、「夢オチか、と思った人も多いのではないでしょうか。

しかし、正確には、夢に嘘をつかれて騙された、というオチです。

もっと言うと、自分自身に嘘をつかれて騙された、ということにもなります。
そう考えると評価が変わるのではないでしょうか。

星新一「専門家」のネタバレ解説

主人公の「私」は死体処理の専門家です。
本業は葬儀社を経営しています。

殺人を犯した人から依頼されると、
死体を霊柩車に乗せて、ゆうゆうと運び、
墓地らしく作り上げてある土地に埋めてあげます。

依頼人が屋外で女の子を殺してしまった時は、
液体プラスチックを噴霧してマネキンに見せかけて運んだり、
太った男を殺してしまった時には、
灰色の塗料で石像にしたり、
黒っぽくして銅像にしたりして運びます。

屋内の死体の場合は、
無音電動ノコギリで適当な大きさに分けて輸送します。

ある日、また依頼人から電話があり、
今夜12時、公園の林のなかで殺すから、あとをたのむ、
と言われました。

依頼人に金を銀行に払い込むよう指示し、
公園の場所をよく頭に入れました。

夜になると、主人公は小さな鞄を持って、公園に行きました。

その場所には首をしめられた、ひとりの男が倒れていました。

主人公は噴霧器で、まっ黒な塗料をまんべんなく吹きつけ、
つぎに携帯用の水素のボンベを使い、
小型の黒い気球を膨らませ、黒い死体に結びつけました。

気球のヒモの端を握り、大通りに出ましたが、
ふいに気球が動かなくなってしまいました。

気球のヒモが、
ホテルらしいビルの2階のバルコニーにひっかかっていました。

ヒモを外しながら、部屋をのぞくと、だれかがぐっすりと眠っています。

主人公は、死体を外し、窓をそっとあけ、なかに押しこんでしまいました。

こうしておけば、だれかが罪をひきうけてくれるだろう、
と思ったのですが、「依頼人がその部屋にとまっていました。

依頼人の男は目がさめたとたん発.狂し、
いまは神経科の病院のなかにいました。

最後は、いままでの商売のうち、
失敗したことはこの1回だけしかないので、
安心してご用命下さい、と読者に語りかける場面で終わります。


というあらすじなのですが、
そのホテルの部屋にとまっていたのが誰だったとしても、
主人公がやったのは依頼人にとって最悪の行為でしたね。

そもそも、なぜ死体を隠すのかと言うと、
その人が殺されたことが警察に知られないようにして、
捜査されないようにするためです。

死体が見つかったら自分が疑われる、と思うから、死体を隠すのです。

それなのに、ホテルの部屋なんかに残しておいたら、
そのホテルにとまっていた人が警察に通報してしまいます。

ホテルにとまっていた人が、
自分が疑われるかもしれないと思って通報せずに処理しようとしても、
それじゃあ主人公がバ.カにしている素人の仕事になってしまいます。

この主人公、自分は有能だと考えているみたいですが、
そんな基本的なこともわからないなんて無能だな、
としまうましたは思いました。

星新一「循環気流」のネタバレ解説

主人公は小さな貿易会社を経営していました。

とつぜん、その会社に私服警官がやってきて、
この会社で、なにか不正な物を輸入しているといううわさを耳にしたので、
倉庫にある輸入した品物をひととおり見せて欲しい、と言いました。

主人公は警官を倉庫に案内し、ボール箱の中身を見せます。

ただのカンヅメだと主人公は言いましたが、
こんなに軽いカンヅメは見たことがない、と警官は言います。

主人公は、これが外国でいま流行している、空気のカンヅメだと答えました。

レッテルには、いま最も人気のある女優の写真があり、
その寝室の空気だと主人公は言いました。

カンヅメを開けると、香水のにおいが、かすかにしました。

警官は、このカンそのものが怪しいと言い、
カンに希少金属が含まれているかもしれないと言いました。

主人公は、カンヅメのレッテルをはぎとり、
その缶を警官に突きつけると、警官はそれを持ち帰りました。

警官を見送った主人公は、「いま丸めて捨てたレッテルを拾いあげ、
ていねいにしわを伸ばしました。
このレッテルをある溶液につけると、文字と数字とが浮き出てきます。

ある国の暗号通信の、極秘のリストで、
全部そろうと、解読用の手引書となります。

秘密機関の支部に、きわめて高値で売れるのでした。


というあらすじなのですが、レッテルを剥がすのが怪しすぎるのに、
警官はそれに気付かなかったのか、と思いました。

どうせ、レッテルに目をつけられたら終わりなのですから、
剥がさずに渡してもよかったんじゃないかと思います。

星新一「報告」のネタバレ解説

夫が稼いでくれているため、夫人は贅沢な暮らしをしていました。

欲しい物はなんでも買ってくれるし、
使いたいお金は、使い道も聞かずに渡してくれます。

夫が夫人を心から愛していることはわかっていましたが、
時どき、夫の帰りが遅くなるときがありました。
夫に理由を聞いてみても、大切な仕事だとだけ答え、
言葉を濁してしまいますし、どうも心にやましいことがありそうでした。

ほかに好きな女でも、できたのじゃないかと思い、
夫人は興信所の青年を家に招きました。

青年は、奥さまのように若く、お美しいかたと結婚でき、
このような生活ができるとは、と夫人の夫を羨ましがりましたが、
夫人が夫の素行調査の依頼をすると、青年は引き受けました。

2週間後、青年は夫人の家にやってきて、
報告書を見せ、浮気ではありませんと報告しました。

夫は大切な仕事をしていたのですが、その仕事というのは、
人の弱みにつけこみ、毎月いくらかずつを恐喝しつづけるという仕事でした。

夫人の愛情をつなぎとめておくため、夫はこの仕事をしていたのでした。

青年は、夫人の夫の『仕事』を警察や税務署に黙っている代わりに、
これから毎月、定期的に、夫人にお金を払ってもらうことにしました。

夫人が、おっしゃる通りにするわ、と言うと、
青年は、おかげで、わたしもやっと結婚できそうです、
奥さまに匹敵する、すばらしい女性と、と言いました。


というあらすじなのですが、興信所に後ろ暗いことを依頼すると、
逆に脅迫される可能性があるのが怖いですね。

星新一「目撃者」のネタバレ解説

50歳をちょっと過ぎた年配のS氏は、夕ぐれの街を歩いていると、
大きな悩みをお持ちのようにお見うけしますが、
と易者に声をかけられました。

S氏は会社でわりといい地位にあり、家庭には妻と大学生の息子がいます。

しかし、妻も息子も金使いが荒く、
収入がそれにともなっていないので、
借金が少しずつかさんで、身動きがとれなくなってきました。

その穴埋めをしなければなりません。

会社の金庫には金がありますが、忍びこんでそれを持ち出すと、
疑いは当然、S氏にかかってきます。

その悩みを聞いた易者は、アリバイを作ってあげますと言いました。

易者がべつな場所にいて、そこで起ったことを全部メモにとります。

それを暗記すれば、その時刻にそこにいたと主張できます。

S氏は乗り気になり、30分ばかり、ここに立っていたことにして、
会社にとってかえし、金庫を開け、札束をポケットに移しました。

易者のところに戻り、易者に報酬を上乗せして払います。

この30分にひき逃げがあり、その車のナンバーを易者はメモしていました。

S氏はさっそく近くの警察に立ち寄り、ひき逃げを目撃したと言いました。

車のナンバーを警官に訊ねられ、もちろん、わかっていますとも、
とS氏は言い、メモを見ました。

しかし、その車のナンバーは、「S氏がねだられるままに買ってやった、
息子の自動車のそれだったのでした。


というあらすじなのですが、S氏は究極の二択を迫られましたね。

ナンバーを警察に教えても破滅ですし、教えなくても破滅です。

しかし、完全にS氏の自業自得なので、全く同情する気になれません。

ちなみに、現在はビデオカメラが普及したので、
このアリバイ工作は役に立ちませんね。
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