星新一「適当な方法」のネタバレ解説

ある夜遅く、救急車で青年が運びこまれてきました。

救急車の人たちは、青年が道ばたにねそべり、
なにかぶつぶつ言っていたと医者に告げました。

青年は酔いつぶれていたので、医者は酔いをさまさせるべく、
何種かの薬を注射しました。

青年はやがて目を開きましたが、
まったく、よけいなおせっかいだ、と言いました。

青年は、いまの世の中が面白くないから、
飲んでいるのだという意味のことを言いました。

いつのまにか世の中が、平均化の一途をたどりはじめていて、
だれもかれも適当に働き、適当に遊んでいて、
健全そのもので、だれもかれもが適当に文句を言う、
決して大きな文句は言わない、と青年は言いました。

こんな世の中のために、おれは不満感で悩んでいる、
これというもの国家の責任だ、と青年は言いました。

医者は青年に、しばらく入院して治療をすませましょう、
と提案しました。

青年は、治療費の金額が確定したら、
訴訟をおこしてでも入院費は国家が全額を負担させる、
と息巻きました。

しかし、数日たち、全快して気分がなごやかになると、
費用を国家に請求するのは筋が通らないかもしれない、
と青年は考えを変えました。

治療費はどれくらいかかったのです、と青年は言い、
医者は一枚の紙片を渡しましたが、
それは請求書ではなく領収書でした。

すでに国家が治療費を払ってくれていました。

青年のような患者をなおすために、補助金が出ていて、
治療装置も新薬も、無料で病院に配置されたものでした。

医者が最初にそれを告げなかったのは、始めのころ、患者に、
おれの個性を消してしまうつもりなんだろう、とさわがれたり、
陰謀だなんて叫ばれたりしたので、
言わないことに方針を変えたのでした。


というあらすじなのですが、青年は結局、
国家の手の平の上から飛び出すことができなかったのでした。

タイトルは「適当な方法」ですが、適当には「いい加減」という意味と、
「適切」という2つの相反する意味がありますよね。

最初に青年が「適当に働き、適当に遊んで~」と言っていたときは
「いい加減」という意味で使われていました。
しかし、医者が青年を適当な方法で治療した、
というふうに考えると、「適切」の方の意味ですね。

星新一「窓」のネタバレ解説

主人公は都会で1人暮らしをしている18歳の女性です。

主人公は、昼間は洋裁学校にかよい、
それが終ってからは、友人たちと演劇のまねごとをやったり、
時にはボウリングやスケートをやりにゆく生活をしていました。

主人公は寝る前に小型テレビの前に手の鏡をたてかけ、
顔を近づけ、あたしはテレビにむいていると思うんだけど、
むいているにちがいないわ……とつぶやくのが日課でした。

ふと気がつくと、
夜おそくで、相当する放送局のないチャンネルなのに、
画面に若い女が映っているのが見えました。

女は、飾りのない部屋のなかで、芝居らしいことをやっていました。
熱演しているようでしたが、音量を上げても声は聞こえませんでした。

テレビへの出演にあこがれている主人公は、
やがて軽蔑したような声で、たいしたことはない演技だわ、
とつぶやきました。
あたしだったら、もっとやれるのに、スタイルも美しさも、
あたしのほうがずっと……と口にして、スイッチを切り、
眠りにつきました。

つぎの日、主人公が夕ぐれの道をひとりで歩いていると、
見知らぬ男に声をかけられ、
テレビに出てごらんになるお気持ちはありませんか、と言われました。

主人公は承諾し、すぐにテレビ局に向かうことになりました。

男の自動車に乗り、テレビのスタジオに連れていかれます。

ある部屋に案内されましたが、その部屋は、きのうの夜、
テレビの画面で見たのと同じ部屋でした。

男は、この部屋はスタジオだと言い、
この建物には、テレビの亡者を収容するために、
同じような部屋がいくつもあると言いました。

主人公はその部屋に閉じ込められてしまいます。

男は悪魔そのものだと名乗り、テレビに出演し、
輝かしい栄光をあびる座につける人が出るためには、
一方、かげで朽ちはてる人がなくてはなりません、
幸運の女神を存在させるには、
犠牲をささげるわたしのような役が必要なのです、と言いました。

男がいなくなると、主人公は壁にある小さな窓を見つめていました。

やがてその窓がすき通りはじめ、どこかの家の部屋で、
若い女が夢見るような、あこがれにみちた目つきで主人公を見ていました。

主人公は、助けを求めますが、声は若い女には聞こえませんでした。

若い女が主人公と同じ運命になると気づき、
つぎの犠牲をくいとめなくては、と主人公は思い、
なんとかして伝えようとしましたが、
窓のそとの若い女の顔に、軽蔑の表情が浮かびました。

若い女は口を動かしていて、声は聞こえてきませんでしたが、
へたな演技ね。あたしなら……」と言っているのは知ることができました。

というあらすじなのですが、無限ループって怖くね?
という感じの話でしたね。

テレビ出演を餌にして、
女性に対して悪いことをする悪い男も世の中には存在するので、
テレビに出ないかと誘われても、安易についていってはいけませんね。

星新一「景品」のネタバレ解説

部屋の片すみにある銀色の機械は、
いまやあらゆる家庭の経済を維持する、
なくてはならない装置でした。

しかし、ラーム氏はその機械をどうも好きになれませんでした。

ラーム氏の妻がスーパー・マーケットで
化粧品と冷凍肉と栄養剤とキャンデーを買って帰ってくると、
各社のサービス券を機械の各所にある穴に入れました。

機械は、F冷凍食品の券があと5枚で100枚になることや、
M化粧品の券が一杯になったことなどを告げました。

妻は、長椅子をはじめ、この家のあらゆる物は、
この機械がただで手に入れてくれたのよ、すばらしい装置だわ、
と言いました。

ラーム氏が、むかし読んだヘミングウェイ全集が
もう一度読みたくなったと言うと、
妻は機会に聞いてみて、Z製菓のサービス品に入っていると告げました。

しかし、ラーム氏は、おれはヘミングウェイを読みたくなったが、
キャンデーの景品としてもらって読みたくはないんだ、
だからこれから買いに行ってくる、と言いました。

雑誌や週刊誌はマーケットにあるけど、
本は景品としてしか手に入らないのよ、と妻は言いましたが、
ラーム氏は電話帳をめくって調べて、ドアから出て行きました。

ラーム氏が、景品としてではなく、この本を買いたいんだ、
と係の老人に言うと、老人は、ただでさしあげましょう、
とまで言いました。

しかしラーム氏があくまでもお金を払うとがんばると、
老人は気の毒そうな表情で、製菓会社との契約で、
景品として以外に売る時には、
とても割高にしなければならないと教えてくれました。

それでもラーム氏は高いお金を払って買い、
老人はラーム氏の住所を聞きました。

ラーム氏がヘミングウェイ全集を持って家に帰り、
妻にそのことを自慢げに報告していると、玄関に声がして、
出版社から連絡があって、これを景品として届けてくれと、
たのまれました、と訪問者に言われました。
そこにつみあげられたのは、
色とりどりの山のようなキャンデーだったのでした。


というあらすじなのですが、ラーム氏はがんばったけど、結局、
キャンデーの景品として本をもらうか、
本の景品としてキャンデーをもらうか、の違いしかなかった、

というオチですね。

ラーム氏の妻は、ただで景品が手に入ると喜んでいましたが、
それは誤解です。

実際には、買った商品の値段のなかに、
景品の値段も含まれていただけです。

抱き合わせ商法と同じですね。

消費者が「得をした」と勘違いすることはできますが、
実際には得していません。
商品と景品をセットで購入したのに、
そのことに気づいていないだけです。

星新一「タイムボックス」のネタバレ解説

エフ博士は、バー兼もぐりの賭博クラブを経営しているアール氏を、
研究室に呼び出しました。

エフ博士はタイムボックスという発明品を作ったのですが、
相当な研究費をかけて完成させたものの、
いい利用法が思いつかず、
それをアール氏に考え出してほしいと頼みました。

エフ博士はタイムボックスの説明のため、
銀色をした四角な金属製の箱の一端から出ているコードを電源につなぎます。

植木鉢の土のなかにチューリップの球根を埋め、
植木鉢を箱の中に入れ、太陽灯をつけ、
光が箱のなかに注ぎこむようにし、ダイヤルをまわしました。

タイムボックスのなかで時間が進み、芽が伸び、葉が成長し、
チューリップの花が開きました。
エフ博士は植物の成長をいったん停止させ、
こんどは逆に時間を戻します。
花はつぼみとなり、葉は小さくちぢまり、土のなかにもどっていきました。

酔いにまかせてめちゃくちゃに電線を巻きつけたら、
タイムボックスの動作がうまくいったのですが、
利用する方法が思い浮かばないと、分解して設計図を書く気にもならない、
とエフ博士は言います。

時間を操作するのに費用がかかり、
原子炉の放射能半減期を早めるのはロケットで宇宙へ捨てたほうが安あがりで、
ウイスキーを古くするのも金がかかって、やはり引きあいません。

アール氏は、タイムボックスのなかで、ダイス(サイコロ)をころがし、
その出る目を記録し、その順序に賭けることで儲けようとしました。

しかし、十何回目かにダイスをころがすと、
ダイスはまっ2つに割れてしまいました。

おそらく、ダイスが割れる運命を持っているのでしょう、
不審を抱いた相手が調べようとして、
ダイスを割るといったことになるのかもしれません、
とアール氏は言いました。

しかし、割ってみたところで、しかけがあるわけではありませんから、
問題にはなりませんよ、とアール氏は言い、エフ博士はうなずき、
ダイヤルをまわして、ダイスをひび1つないものにもどしました。

アール氏の店で、アール氏が紹介したカモを相手に、
エフ博士は賭博をします。
エフ博士は勝ち続け、カモは負け続けます。

しかし、紳士的な相手はダイスを怪しむことなく、
割られるには至りませんでした。

つぎの日、アール氏はさらにもうけようと、
いくつものダイスを研究室に持ちこみます。

しかし、エフ博士がコードを電源につなぐと、
タイムボックスの装置は「きのうとちがった調子の音をたて、
ばらばらに分解してしまいました。
勢いよく飛び散った部分品の1つは、
問題のダイスに当って、まっ2つに割りました。


というあらすじなのですが、
まだ分解してタイムボックスの設計図を書いていなかったので、
もうイカサマはできなくなった」というオチですね。

ところで、このタイムボックスって、
「ドラえもん」の「タイムふろしき」にそっくりな発明品ですね。

もちろん、このショート・ショートの方が先ですが。

現代にこのタイムボックスがあったら、
スマートフォンに、自分で数字を選べる宝くじの当選番号のサイトを表示させ、
タイムボックスの中に入れるといいでしょうね。

他には、若返りたいお金持ちをボックスの中に入れ、
時間を戻す商売をやるとよさそうです。

星新一「治療」のネタバレ解説

ほとんどの者が劣等感という病気にかかって、苦しんでいました。

しかし、マール氏という中年の男が、
自分の電気機具製造会社の工場を使って、
だれもが悩まされている劣等感から、
人びとを救い出す大きな電子頭脳を作りはじめました。

電子頭脳に記憶をうえつける時に、
できるだけ多くの人からデータを集めて、
きっちり平均値をそろえておきます。

そうすると、完全な平均人間、標準人間といったものができあがり、
これと患者を対面させるのです。

患者が電子頭脳よりまさっている場合だったら、
なにも気にすることはありませんよ、あなたはすぐれたほうの人間です、
とはっきり示してやることができます。

もし劣っていた時は、仕方がありません。

患者の全部はなおりませんが、半分はなおる装置です。

電子頭脳が完成すると、マール氏は幸福検定クラブを発足させ、
患者と装置を対面させました。

自分の性別、年齢などを、ダイヤルをまわして合わせると、
正面のスクリーンに人物の像があらわれてきます。

劣等感から救われた人は、
その標準人間はぱっとしないようすのやつだと判断し、
いままで、自分がなにをくよくよしていたのか、
ばかばかしくなったと話しました。

なおるといったうわさばかりが広まり、好評でしたが、
マール会長が電子頭脳のデータ―を手加減して、
実際よりはるか下を、平均と称しているのではないか、
と警視庁は調査をしましたが、不都合は発見されませんでした。

幸福検定クラブの電子頭脳は、都会のも、また地方につぎつぎと作られたのも、
連日、多くの人の話し相手になって、消すことのできる劣等感を消していきました。

劣った半分に判定を受けたものが、
何度も幸福検定クラブに何度もやってくるうちに、
しだいになおりつつありました。

マール会長は、装置の正確さを保つために、
つねに新しくデータ―を集めて、電子頭脳に入れかえ、
そのたびに古いデータ―は捨てられていました。

標準人間を追い抜いた途端に、向上への努力をやめるので、
スクリーンに出る標準人間の顔つきは、ますますのんびりとしていき、
はじめのうちは劣った半分に判定された連中も、
何回かかよううちに、標準人間を追い抜くのでした。

一時はあれほど混雑した幸福検定クラブも、
まったく患者が来なくなった時、
マール会長は幸福検定クラブにあらわれ、治療室にはいりました。

世の中の人間は、すべてぼんやりした人間になっていて、
これからスクリーンにあらわれる標準人間が、
マール氏よりはるかに低級であることには間違いはありませんでした。

彼はその標準人間を相手に、思い切り優越感を味わってやるつもりで、
今日まで装置との対面をのばしていました。

マール氏はスクリーンに浮かびでた標準人間にむかってつぎつぎと話しかけ、
からかいましたが、「標準人間は、からかわれようと、
軽蔑されようと、なんの反応も示しませんでした。
それはすべての人びとから、そのようなことをいやがる感情が、
ことごとく失われていることを示していました。

マール氏は、はじめてこのことに気づき、
あらゆる人からとりのこされてしまったことを知り、
たとえようのない孤独感を味わったのでした。


というあらすじなのですが、この「標準人間と対面すれば、
半分の人は劣等感から救われる」という理論は、
机上の空論のような気がしますね。

たとえば身長が平均以上の人が50パーセント、
学歴が平均以上の人が50パーセント、
収入が平均以上の人が50パーセントだとすると、
それらすべてが平均以上の人は0.5の3乗で、
0.125、つまり12.5パーセントしかいません。

その3つの項目に関して劣等感を抱いている人が、
「標準人間」と対面しても救われる確率は、
12.5パーセントということになってしまいます。

実際には、劣等感を感じるポイントは3つどころではなく多いので、
ほとんどの人は標準人間と対面しても救われないのではないでしょうか。

また、仮に99点をとったとしても、100点をとった他の人を見て、
「どうして私は100点をとれなかったんだろう」
と考える人もいて、そういう人は平均点の人を見ても救われないと思います。
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