道尾秀介「笑うハーレキン」のネタバレ解説

笑うハーレキン


主人公の東口太一は、「疫病神が自分の近くにいる」という幻覚を見ている、
40歳のホームレスの家具職人です。

ジジタキさん、チュウさん、トキコさん、モクさんという4人の仲間と、サンタという犬と一緒に、
スクラップ置き場で暮らしています。
4人はスクラップ置き場に自分で建てた小屋に住んでいて、
東口だけはトラックの荷台で寝泊まりしています。
そのスクラップ置き場は持ち主の橋本が住む場所として提供してくれている場所です。

東口を含めた5人のホームレスたちは共同でアパートを借りており、
そこを住民票置き場と、トイレ、お風呂、物置用の場所として使っています。
ですから、ちゃんとお風呂に入っているので、普通のホームレスに比べれば清潔です。

ある日、東口は、木下多恵という老婆から預かった箪笥の修理を請け負いました。
その翌日、東口はトラックの助手席に、西木奈々恵と名乗る若い女性がいるのを発見しました。

世界中を旅して回っていた奈々恵は祖母である西木多恵の家を訪れた際に、
以前から憧れていた東口を発見し、尾行していたのだそうです。
奈々恵は、東口の弟子にしてくれと頼みます。
東口は断りますが、奈々恵は無理やり仕事についてきます。

帰る場所がないというので、東口は奈々恵をスクラップ置き場へ連れて帰り、
泊めてあげることにしました。
他の住人には隠すつもりだったのですが、見つかってしまい、仕方なく紹介します。

翌日、東口と奈々恵は宮本家具という業者の手伝いをしに、赤羽警察署を訪れました。
そこで壁の補修作業をしていると、酔っ払った井澤という男が警察署に連行されてきました。
やがて、井澤の妻が井澤を迎えにやってきました。

――かつて、東口は家具会社の社長だったのですが、
ある日、幼い息子の笙太が川で溺れて死んでしまいます。

その後、笙太の死を忘れるために仕事にのめり込んでいた東口でしたが、
取引先の井澤の会社が倒産した煽りを受けて、
東口の会社も連鎖倒産してしまいました。
東口は妻の智恵と離婚し、会社も家も失い、こうしてホームレス家具職人となったのでした。

そして、元妻の智恵は、井澤の妻として警察署にやってきたのでした。
東口は井澤と智恵の後をつけ、自宅を突き止めます。

その夜、昔撮られた笙太のホームビデオを見ながら、東口は奈々恵に過去を語りました。
笙太は東口の言いつけを破り、川で遊んでいて溺れ真死んでしまったのだと。

翌日、東口と奈々恵は修理が終わった箪笥を木下多恵のところへ届けに行きました。
ただし、孫だと知られたくない奈々恵は変装していました。

その1週間後、ホームレス仲間のジジタキさんが消えました。
さらに1ヶ月ほど経過して、犬のサンタ(♀)が子どもを産みました。
そして数日後、ジジタキも何事もなかったかのように戻ってきました。

木下多恵が危篤だという知らせを受けて、奈々恵は病院へ駆けつけました。

その頃、モクさんはサンタが亡くなっているのを発見しました。
さらに、東口が仕事で使っていたシュウ酸という劇薬が減っていました。

東口の見ている幻覚の疫病神は、奈々恵がサンタを毒殺して逃げたことを仄めかします。
しかし、夜遅くに奈々恵はスクラップ置き場に戻ってきました。

翌朝、ジジタキさんが遺体となって川で発見されました。
一応警察が来ますが、死んだのがホームレスだということで、
おざなりな捜査の後、事故死として処理しました。

奈々恵が発見した遺書によると、ジジタキさんは失踪していた間、中国へ行っていたのだそうです。
ヤクザに利用され、クスリの運び屋をやらされていたのですが、
そのことやホームレスでいることに嫌気がさし、盗んだシュウ酸を飲んで自殺したのでした。

サンタを殺したのもジジタキさんで、薬の効果を確かめるためと、
誰かを道連れにしたくてサンタの餌に毒を盛ったようでした。

それから、奈々恵は東口につきまとうのをやめて実家に戻りました。
奈々恵は以前中国へ行ったときのことをジジタキさんに話しており、
そのこともあって責任を感じている奈々恵は、スクラップ置き場を去っていきました。

それから半月後。
かつてホームレス仲間だったガンさんという男が、スクラップ置き場へやってきます。
今はガンさんがアパート暮らしをしているという話を聞いた東口は、劣等感を覚えます。

それにつけこむように疫病神が、井澤に復讐するようにと東口を唆しました。
井澤は計画的に倒産したおかげで自分の財産を守りましたが、
東口の会社は連鎖倒産してしまい、妻を奪われてしまっていたのですから、
東口が井澤に対して恨みを抱かないわけがありません。

東口は井澤の行きつけの店へ行き、シュウ酸を盛ったグラスを飲ませようとします。
が、「実際にそのグラスを飲んだのは井澤ではなく東口でした。

東口は井澤の目の前で自殺しようとしたのですが、
そこへ現れた奈々恵が救急隊員に、この人はシュウ酸を飲んだと告げたおかげで適切な処置がされ、
東口は一命をとりとめました。
それと同時に、疫病神は姿を消しました。

東口の入院する病院へやってきた井澤は、百万ほどのお金を包んで東口に渡しました。
井澤なりに思うところがあったということなのでしょう。
東口はそのお金で、見るからに長期間具合が悪そうだったモクさんを入院させようとしますが、
モクさんは断りました。


東口が退院してひと月が経過しました。
仕事をせずにぶらぶらしていた東口の前に、再び奈々恵が現れ、
木下多恵が亡くなったことを告げました。

翌日、気晴らしに出かけた先で、奈々恵は道化師(ハーレキン)の話をします。
ピエロや道化師を怖がる人がいるのは、笑っている化粧をしているのに、
実際の表情はシリアスだからだという説を奈々恵は教え、
東口は自分の顔が道化師のようなのかと考えました。

大晦日になり、東口はホームレス仲間たちとお祭りに行きますが、
そこで再び東口は厄病神にとりつかれてしまいました。

奈々恵だけではなく、チュウさん、トキコさん、モクさんにもチラシ配りを手伝ってもらい、
仕事を再開することにした東口でしたが、その矢先に妙な仕事が舞い込んできます。

目隠しをした状態でヤクザっぽい人物の屋敷に連れていかれた東口は、
天井まである巨大な作り付けの棚を前方へズラし、
パッと見ただけでは分からないようにスペースを作るようにと命令されました。
その間、ずっと監禁されたままの状態です。

トラックへ戻った東口は、そこに奈々恵、チュウさん、トキコさん、モクさんがいるのを発見し、
悩みますが、すぐに見つかってしまいました。

4人は自分の部下だと説明し、東口は奈々恵たちにも棚の移動を手伝わせます。
何日もかけて棚を移設したのですが、「実は奈々恵の父親が警察の幹部であったことが災いし、
棚の移設が完了したら5人まとめて口封じされることになってしまったのです。

それを盗み聞きして知った東口は棚の移設がまだ終わっていないことにして時間を稼ぎます。
その夜、東口は元妻の智恵に暴力を振るっており、
笙太にも辛く当たっていたことを奈々恵に告白しました。
ホームビデオを撮影していたのも、東口ではなく智恵の方だったのです。

一方、奈々恵も色々と嘘をついていたことを東口に告白しました。
奈々恵は幼い頃に父親と事故に遭い、そのせいで右脚を怪我してしまい、
普通に歩いたり走ったりすることができなくなってしまいました。
それからも奈々恵は引っ込み思案のまま学生時代を終え、引きこもっていました。
ジジタキに語った中国へ行った話は嘘だったので、ずっと罪悪感を覚えていたのです。

翌日、東口たちは色々と策をめぐらせながら決死の覚悟で屋敷を脱出しました。
何のかんので疫病神も消えます。

スクラップ置き場に戻ると、地主の橋本がやってきて、あの屋敷のことは口外するなと釘を刺しました。
あの屋敷の持ち主に東口の情報を売っていたのは橋本だったのです。

東口たちはスクラップ置き場を去り、別の場所でホームレスとして暮らし始めました。
その場所で、チュウさんやトキコさんに手伝ってもらいながら仕事を続けています。
モクさんには入院してもらいました。
しかし、東口にはいずれまた会社を作り、
そのときにはチュウさんやトキコさんやモクさんを従業員として雇うという夢がありました。

一方、奈々恵の方は親の反対を押し切って宅配ピザの仕事をしており、
東口も奈々恵も、過去を乗り越えて生まれ変わることができたのでした。


というあらすじなのですが、
いくら何でも裕福な家庭で育った若い女性である奈々恵が、切羽詰まった事情があるわけでもないのに
ホームレスと同じような生活をするのは無理があるんじゃないかなあとか、
まだ若い東口は年齢的に無理でも、他の人は生活保護を受けられるだろうに何で受けないんだろうとか、
一度はあの屋敷の持ち主が東口たちを殺そうとしたのに見逃すのは物語として都合が良すぎないかとか、
結局東口が智恵と和解することがないまま話が終わってしまうのはどうなのか
(例えば笙太のお墓参りで再会するとかそういう展開にすることもできたはずです)
」とか、
色々と突っ込みどころはあるものの、比較的いい感じにまとまったんじゃないでしょうか。

道尾秀介「光」終章「夢の途中と脱出」のネタバレ解説

終章は6章と直接話が繋がっています。

ツノダは最初から、もしもの時は誘拐事件にするつもりでした。
利一たちは、清孝の家の前に停めてきた自転車を見つけた
親たちが捜しに来てくれることを期待していましたが、
ツノダは部下に命じてその自転車を駅前へ移動させてしまいます。

やがて、男たちは焚き火をします。
利一たちは男たちに頼み、
交代でトイレに行かせてもらうことになりました。

その際、清孝はワンダのフンが付着した清孝のジャンパーの一部を
焚き火に放り込みます。
これで、洞窟の中が臭くなり、解放されることを期待していたのですが、
単に焚き火を消されて終わりでした。

トイレに連れていかれた利一は、ワンダの姿を発見し、
洞窟に戻ってそれを仲間に伝えました。
缶詰にSOSのメッセージを仕込み、ワンダにその缶詰を持って行かせる、
という作戦を立てますが、宏樹が缶詰を外に持っていこうとしたところ、
見つかってツノダに缶詰を食べられてしまいます。

その後、劉生は脱出するためのあるアイデアを話しました。

利一たちは「6章で録音した、将来の夢に関するテープを流し、
自分たちが洞窟の奥で話をしているように見せかけながら、
男たちの傍を通って脱出することにしました。

が、ツノダが再び焚き火をしようとしたため、見つかってしまいます。

利一たちは慌てて、洞窟から逃げ出しました。
女恋湖に飛び込もうとしたとき、ゴムボートに乗ってこちらへやってくる、
キュウリー夫人、ガニーさん、ワンダの姿が見えました。

もう終わりだと覚悟したツノダは、せめて最後に、
自分を唆した劉生に危害を加えようとしました。
が、花火に飛ばされた人魚の首がツノダの頭に当たり、阻止されました。

その後、これまで章と章の間に挟まっていたインターローグの『わたし』が、
悦子であったことが明かされます。
悦子は、大人になった利一が書いた、実話をもとにした小説の話をします。

小説の中では、人魚の首は花火が飛ばしたことになっていましたが、
実際に飛ばしたのは悦子でした。
ノスタルジックな余韻を残しつつ、物語は幕を閉じます。


というあらすじなのですが、この「光」はこれまでに道尾さんが発表した、
男子小学生が主人公の話に比べると、地味な話の連続でした。
そのため、最初は物足りなく感じたのですが、読み終わってみると、
これはこれで有りかな、という読後感でした。

道尾秀介「光」第6章「夢の入り口と監禁」のネタバレ解説

キュウリー夫人の家を溜まり場にして遊んでいるところへ、
宏樹がカセットテープを持ってきました。
それはアポロ11号の乗組員たちの会話を録音したテープで、
本の冒頭に載っている会話がそれです。

利一たちは将来の夢を、そのカセットテープのB面に録音しました。

そのとき、ワンダの吠え声が響き渡りました。
窓の向こうを覗くと、四角い顔の男がワンダに噛みつかれています。
清孝がワンダを止めると、男はワンダを思い切り蹴飛ばしました。

利一たちはワンダを家の中に運び入れ、
翌日病院へ連れて行くことに決めました。

家に帰った利一は、鷺之宮劉生が午後7時になっても帰宅していない、
ということを母親から教えられます。

翌日、日曜日の朝に集まった利一たちでしたが、
清孝のジャンパーにフンをしてしまったワンダは逃げ出してしまいました。

利一たちは森の中にワンダを捜しに行きますが、
そこで、昨日から行方不明になっていた劉生を発見しました。

が、そこへ逆三角形の顔の男がやってきます。
利一たちはその男に捕まり、洞窟へ連れてこられました。
そこには、例の四角い顔の男もいて、丸顔の男も戻ってきました。

劉生は彼らに誘拐されていたようです。
しかし、「実は狂言誘拐なのだと劉生は笑いながら言います。
劉生は、四角い顔の男、ツノダに自分を誘拐して、
父親へ議員辞職を要求するようにと持ちかけていたのです。

が、狂言誘拐だと思っていたのは劉生だけでした。
どんなに頭が良さそうに見えても、劉生はやはり子どもでした。

家に帰してと言った劉生の胸を、ツノダが蹴り飛ばします。

『おしまいだ……』というツノダの声を残し、物語は終章へ続きます。

道尾秀介「光」第5章「アンモナイツ・アゲイン」のネタバレ解説

1月4日。
「手打ち野球」という、子ども向けの草野球をしていた利一は、
ボールを追いかけている途中で、
鷺之宮劉生(さぎのみやりゅうせい)という下級生が乗った
自転車にぶつかり、気を失ってしまいました。
劉生の父親は市議会議員をやっており、最近引っ越してきたのだそうです。

その後、家に帰った利一は、
飼い亀のダッシュが冬眠しているのを死んだと勘違いし、泣きました。

翌日。
清孝が新学期の直前に引っ越すという話をしていた利一たちは、
清孝に新しい化石をプレゼントを渡したいと考えました。

そこで、劉生の提案で、電車で大きな町のデパートへ行き、
化石を「盗って」くることにしました。
デパートの壁や床に使われている大理石には、
よく化石が埋まっているのだそうです。

そう言えば、しまうましたも、今はなき新宿のジュンク堂書店へ行った際、
壁に化石が埋まっているのを何回も目撃したことがあります。

男子トイレへの通路の途中に巨大なアンモナイトを発見した利一たちは、
早速それを掘ろうとしますが、「警備員に見つかってしまいます。
さらに、警備員室へ連行される途中に沙織先生と出会ってしまい、
利一たちは絶望しました。

そんな中、それまで清孝のために何かするなんて面倒臭いと言っていた宏樹が、
もう手遅れなのにアンモナイトを掘り出そうとして暴れました。
映画版ジャイアン効果で、宏樹に対する好感度が急上昇しました。

ちなみに、この日以来、劉生は利一たちと遊ばなくなりました。

そしてこの話には、実は利一を引き取ることになったおじさんというのは、
3章に登場した用務員のガニーさんのことであり、
引っ越しはするけど転校はしない、ということが明らかになったのでした。

ベタなオチではありますが、ちょっと笑ってしまいました。

道尾秀介「光」第4章「冬の光」のネタバレ解説


利一、慎司、悦子、宏樹の4人は放課後、
キュウリー夫人と出会いました。
ワンダはすっかりキュウリー夫人に懐いています。

キュウリー夫人に頼まれ、4人は山に登ることになりました。
そこで、キュウリー夫人は昔の遊びを利一たちに教えた後、
ここで2年前に清孝とホタルを見たという話をしました。

そろそろ帰ろうかという雰囲気になったとき、
キュウリー夫人が倒れてしまいます。
急いで清孝を呼びに行った利一は、
キュウリー夫人が入院していた病院を抜け出していたことを
教えられました。

それから数日後、ホタルは幼虫のときにも光る、
という情報を悦子が仕入れてきました。
苦労して幼虫を集めた利一たちでしたが、幼虫は光りません。
夏が近づき、暖かくならないと光らないのだそうです。
落胆する利一たちでしたが、「宏樹の提案で、水を温めることにしました。

クリスマスの日、利一たちはキュウリー夫人のお見舞いに行きました。
そこで、ビンの中で光る幼虫の姿をキュウリー夫人に見せます。
幼虫たちが餌に群がっているところで、宏樹がくしゃみをしたため、
その光はまるで花火のように見えました。


というあらすじなのですが、へえ、ホタルって幼虫のときも光るのか、
と新鮮な驚きがありました。
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