米澤穂信「遠まわりする雛」7話「遠まわりする雛」のネタバレ解説

1年生から2年生に進級する春休みのことです。

奉太郎は千反田さんに頼まれ、
人間が雛人形の格好をして町を歩く『生き雛』に
傘を差しかける役目をやることになりました。
お雛様は千反田さんがやります。

『生き雛』が出発する水梨神社に行く途中、
奉太郎は千反田さんから教えられた道順の途中にある長久橋が
工事中であることに気付き、作業員に声をかけてから橋を渡りました。

修羅場っぽい雰囲気の水梨神社の社務所の中で待っていると、
長久橋の工事の話が出たため、奉太郎が何気なく、
「長久橋なら、工事を始めていましたよ」
と言ったところ、雰囲気が一変しました。

本来、『生き雛』祭りが終わるまで工事は止めてもらうはずだったのですが、
何者かが工務店に電話して工事をしていいと言ったのだそうです。

『生き雛』の行列が通るルートに長久橋が含まれていたため、
みんなは頭を悩ませます。
やがて、遠路橋を通ってはどうかという案が出たのですが、
気まずい雰囲気になり、みんなが黙り込んでしまいました。

そんなとき、奉太郎は千反田さんに呼ばれ、女性用の控え室へ行きます。
そこで帷(とばり)越しに千反田さんに事情を説明すると、
「先方の宮司には、わたしから話をします。
氏子総代には、父から連絡するよう頼んでみます」
と伝言するようにと言われました。

その伝言を伝えると、みんなはほっとした表情になりました。

やがて、奉太郎も茶髪の男に着付けしてもらいましたが、
あまり似合いませんでした。

祭りが始まり、『生き雛』たちが揃います。
そのとき、お内裏様が、男装した入須冬実であることに気付きました。

十二単を着た千反田さんもやってきましたが、
「これはよくない」と奉太郎は思いました。

よくないというのは、そういう衣装を着ていると、
お雛様に傘を差しかけている奉太郎からは、千反田さんの顔が見えない、
という意味でした。

長久橋を過ぎ、桜の下を通り過ぎたあたりで、里志や伊原を発見しますが、
もちろん話をするわけにはいかないのでそのまま歩きます。

ルートの変更があったため予定よりも終了時刻が遅れたものの、
何とか『生き雛』祭りは終了しました。

アニメではこのタイミングで、
奉太郎と2人きりになった摩耶花からバレンタインの件でお礼を言われたり、
入須冬実から話しかけられたりしましたが、
これはアニメオリジナルであり、原作にはないシーンでした。
アニメ版はこの話が最終回なので、大団円にしたかったのでしょうね。

化粧を落とし、普通の服に着替えた千反田さんから、
誰が、何のために工務店に長久橋の工事をするよう電話したのか、
という謎を解いてもらうよう頼まれます。

奉太郎は、「奉太郎の着付けをした茶髪の男が、
『滅多に見られん行列だから、わざわざ帰省してきたんだ』
と言っていたことから、茶髪の男が犯人だと推理しました。
茶髪の男の目的は、あの桜の下を『生き雛』が通るように、
ルートを変更することだったのです。

ちなみに、今回は千反田さんも、
色んな人のメンツを潰して平気な顔ができる気楽な人が、
小成さんの息子である茶髪の男しか思いつかなかった、
という理由で犯人に目星をつけていました。

また、長久橋の向こうに『生き雛』の行列を通すことをみんなが躊躇っていたのは、
昔、この辺では水争いや土地争いがあり、南北に分かれていたためでした。
その問題を、千反田さんとそのお父さんが解決したのでした。

その後、千反田さんは、理系を選択したことを奉太郎に告げます。
千反田家の娘として、この町を豊かにするために、
『より商品価値の高い作物を他に先駆けて作る』という方法と、
『経営的戦略眼を持つことで生産を効率化する』という方法を考えていたのですが、
前者を選択したのです。

奉太郎は、自分が後者の経営的戦略眼を務めたい、
と言いたかったのですが、言えませんでした。


そして、物語は「ふたりの距離の概算」に続きます。

というあらすじなのですが、
奉太郎が千反田さんに好意を持っているのが明確になるのは、
実は原作ではこの話が初めてなのです。

それまでにも、何となく惚れているっぽい描写はあったのですが、
何しろ物語は基本的に奉太郎の視点で進みますから、
どうとでも解釈できるような表現だったんですよね。

そのため、割と初期の段階から両想いっぽく見えたアニメとは、
また違った味わいのある話でした。

米澤穂信「遠まわりする雛」6話「手作りチョコレート事件」のネタバレ解説

この「手作りチョコレート事件」というタイトルは、
海外ミステリーの「毒入りチョコレート事件」から取ったものですね。

2000年の2月14日。
まだ奉太郎たちが中学生だったころ、
摩耶花は里志に手作りチョコレートを渡そうとしますが、
市販のチョコレートを溶かして固めただけのチョコレートなんか
チョコレートじゃないから――と、そういう言い訳をして、
里志はチョコレートを受け取ろうとしませんでした。

摩耶花は里志に、来年こそは傑作の手作りチョコレートを作る、
という意味のことを宣言しました。

そして、2001年2月。
里志を追いかけて古典部に入部した摩耶花は、
本気でチョコレートについて勉強した成果を千反田さんに話します。
千反田さん自身はチョコレートを配る予定はないのですが、
やっぱり女の子なので摩耶花に全面協力します。

一方、奉太郎は里志とゲームセンターで対戦型ゲームをしていました。

さて、問題の2月14日。
漫画研究会の方で問題が発生しているため、
摩耶花は里志に直接チョコレートを渡すことができず、
古典部の部室にチョコレートを置いておき、放課後、
里志に持って行かせることにしたのだそうです。

千反田さんは部室で里志が来るのを待っていましたが、現れず、
図書室にいた奉太郎のところに里志を見ていないか聞きに来ました。
その間に、部室からチョコレートが盗まれてしまいました。

千反田さんは奉太郎に助けを求めます。
古典部の部室に行く途中の階段でポスターを貼っていた工作部員の証言により、
天文部に疑いがかけられました。
しかし、天文部の沢木口先輩は、
チョコレートを盗んだ部員などいないと断言します。

やがて、摩耶花がやってきて、チョコレートが盗まれたことを知ると、
別にチョコレートの番を頼んでいたわけではないから、
千反田さんの責任ではないと慰め、帰っていきました。

自責の念に駆られ暴走しようとする千反田さんを、奉太郎が止めました。
奉太郎の推理によると、犯人は「天文部の中山という女子生徒が、
スカートの下にチョコレートを隠して部室に持ち帰ったのだそうです。

千反田さんがいると中山からチョコレートを取り戻すことができないから、
と奉太郎は千反田さんを説得し、先に帰らせます。

その後、「奉太郎と里志は普通に帰り支度をして学校を出ました。

チョコレートを盗んだのは里志であり、
里志がいつも持ち歩いている巾着袋の中にチョコレートを砕いて入れていたのでした。

数日前に奉太郎は里志とゲームをした際、
里志が勝ちにこだわらなかったことに違和感を覚えていました。
しかし、里志本人は今の自分の方が気に入っており、
以前のように何かにこだわる自分には戻りたくないと考えていました。

摩耶花の好意を受け止めてしまうと、摩耶花にこだわることになってしまうから、
チョコレートを受け取らずに済むように画策していたのですが……。

正直、何言ってんだこいつ、という感じですねw
でも、ある意味、凄く高校1年生っぽいです。

里志の態度もどうかと思いますが、摩耶花だって、
千反田さんがチョコレートの受け渡しを見届けたがることを見越して、
あえて千反田さんを巻き込んだ――利用したのですから、
個人的にはお似合いのカップルじゃないかと思います。


ちなみに、この「手作りチョコレート事件」は、この短編集の中で最長の話です。
そのため、アニメでは尺に納めるために大幅にカットした上で、
なおかつハッピーエンドっぽくなるように改変していました。

まあ、原作通りにやってしまうと、
最終回の1話前なのに煮え切らない話になってしまいますから、
しょうがないですけど。

ちなみに、原作でも、「ふたりの距離の概算」の中で、
この日の後日談が少しだけ語られています。

米澤穂信「リカーシブル」のネタバレ解説

リカーシブル


主人公の越野ハルカは、「弟」のサトル、「ママ」のヨシエと一緒に、
ヨシエの生まれ故郷の坂牧市に引っ越してきました。
ハルカは中学1年生、サトルは小学3年生です。

ハルカが引っ越してきたのが中学に進学する4月だったため、
転校生扱いされずに済むかと思いきや、
クラスメートの在原リンカに転校生であることを見破られてしまいます。

ハルカはリンカと一緒に帰りますが、途中でサトルと待ち合わせした場所で、
リンカにサトルを紹介せざるを得なくなります。

ハルカはリンカに町を紹介してもらうことになりました。
その際、リンカはハルカが携帯電話を持っていないことに驚きます。

でも、後でこの小説内の時代設定が2003年であることが分かるので、
ハルカが携帯電話を持っていることを前提に話をしていたリンカの態度には、
ちょっと疑問を覚えます。
現在なら携帯電話を持っていない中学生は珍しいですけど、
2003年だったら、田舎に住んでいて携帯電話を持っている中学1年生は、
まだ少なかったはずなんですよね。地域にもよりますが、
当時はクラスの半分もケータイを持っていなかったのではないでしょうか。

それはさておき、ハルカは、
お蕎麦屋さんをやっているリンカの家がある商店街を案内してもらいます。
その際、ハルカはマルさんという中年の男が万引きするのを目撃しました。
しかし、リンカは、マルさんはお店の人だから万引きじゃないと説明しました。

家に帰ると、前にマルさんが万引きするのを見たことがある、
とサトルが言いました。

翌日、サトルは通学途中にある報橋(むくいばし)を渡るのが怖いから、
学校に行きたくないと言い出します。
ハルカはママに頼まれ、サトルと報橋を渡りますが、
確かに車が通るたびに揺れていて危険そうな橋でした。

その日の放課後、ハルカとサトルは商店街に行き、
ママから貰った福引券で福引をすることになりました。
福引所ではリンカが必死に場を盛り上げようとしていました。
もうすぐハルカたちの順番が回ってくる頃、サトルは、
自分達以外の誰かが大当たりを引く、と予言し、
本当にハルカ達の少し前の女の人が一等の温泉旅行を当てました。

そして、その女の人のバッグをスクーターに乗った男が置き引きしました。
ハルカとリンカは追いかけますが、見失ってしまいます。
そこへ、商店街の会長とサトルがやってきました。
サトルは、置き引き犯はパチンコ屋に入っていったと主張します。
既にハルカ達はパチンコ屋の駐輪場を調べていましたが、
置き引き犯がナンバープレートを偽装していたため気付かなかったのでした。
さらにサトルは、犯人がナイフを持っていることまで予言しました。

翌日、ハルカは歴史教師の三浦に、職員室に呼び出されます。
その際、サトルの予言について考えていたハルカは、
未来が見える子どもについて尋ねてしまいます

すると三浦は、ハルカは「タナマヒメ」に関心があるのだと思い、
「常井民話考」という本を貸してくれました。
帰ってその本を読んだハルカは、タマナヒメというのが、
この辺の信仰の対象である、未来が見える子どもであることを知りました。

深夜1時に目を覚ましたハルカは、ヨシエが、
ハルカの父親に宛てた手紙を書いているのを知りました。
そして、深夜の散歩に出たハルカは、過去を回想します。

ヨシエはハルカの実の母親ではなく、父親の再婚相手でした。
サトルもヨシエの連れ子であり、ハルカと血の繋がりはありません。
ハルカの父親は会社のお金を横領してしまい、自分だけ逃亡してしまいました。
そして、元の町にいられなくなったハルカたちは、坂巻市に引っ越してきたのです。
そんなわけで、ハルカの立場は非常に微妙でした。

深夜の散歩から戻ったハルカは、ヨシエに作ってもらったホット・ミルクを飲みながら、
改めて、サトルは引っ越す前にこの町に来たことはないんだよね、と確認しますが、
やはりヨシエは「そうよ」と言いました。

翌日、ハルカは学校の行事として、報橋付近の川の清掃ボランティアに参加します。

そのボランティアの最中に、ハルカはリンカから「水野報告」の話を聞きます。
ハルカ達が生まれる前に、坂牧市に高速道路が通るという計画が持ち上がりました。
過疎化が進んでいた坂牧市の人達は大喜びです。
しかし、坂牧市を通らない別のルートに決まりそうになり、
5年前に坂牧市の人達は高速道路誘致計画の権威である、水野教授を招きました。

水野教授は坂牧市に高速道路を建設するべきだという「水野報告」を書きますが、
報橋から落ちて溺れ死んでしまいます。
坂牧市の人達に渡すはずだった「水野報告」は行方不明になってしまい、
その「水野報告」に対し、100万円という賞金がかけられている、
という噂があるのだそうです。

ただ……ハルカも指摘していましたが、高速道路で東京や名古屋と結ばれたところで、
過疎化に歯止めがかかるどころか、むしろ人口の流出に拍車がかかりそうだな、
と、しまうましたは思います。

その日の放課後、ハルカはリンカに、
三浦先生から借りた「常井民話考」を持っているのを見つかってしまいます。
その本の中から落ちてきた『誘致を考え直す会』というチラシを、
リンカはさり気なく自分のポケットに入れました。

本を三浦先生に返しに行ったハルカは、
タマナヒメの伝承について三浦先生に詳しく訊きます。

まず、タマナヒメは代々、条件を満たした常井村(現在の坂牧市)の女の子に憑依する、
神様の一種のような存在です。
タマナヒメは、常井村の発展のために、我が身を犠牲にしますが、
役目を終えると自殺してしまいます。
また、タマナヒメのお願いを聞いたお役人や県職員、
工場の誘致をしていた家電メーカーの社員は、報橋のある佐井川に落ちて死んでしまいます。

常井村(坂牧市)では、何百年も前からそんなことを繰り返してきた、
という言い伝えがあるのでした。

しかしリンカは、三浦先生の説明は間違っており、タマナヒメは劇の名前のようなものだと言います。
翌日、ハルカは現在のタマナヒメを見せてもらうことになりました。

その夜、ハルカは、サトルが押入れの襖の中にテストの答案を隠しているのを発見しました。
以前住んでいた家でもサトルは似たようなことをしていたのだそうです。
また、サトルは、過去に報橋から落ちたのは、学校の先生で、太ったおじいさんだった、
という、知っているはずのないことを言います。

翌日の土曜日、ハルカは図書館へ行き、5年前の新聞を調べました。
そして、5年前に報橋から佐井川に落ちて死んだ水野教授が、
丸々と太っていたことを知ります。

その後、ハルカはリンカに案内され、町の高台にある庚申堂へ行きます。
そこで、現在のタマナヒメだという宮地ユウコを紹介されました。
リンカやユウコの話を聞く限りでは、確かに現在のタマナヒメは劇の名前みたいなものと言うか、
タマナヒメごっこ、という他愛もないものに思えました。

その帰りに、ハルカはサトルを発見します。
サトルは「森元」という表札のかかった家に昔住んでいたことがあると言い出し、
その家の特徴をいくつか口にしました。

翌日。4月13日、日曜日。ハルカはリンカに誘われ、
坂牧文化会館の駐車場で行なわれているフリーマーケットに行きました。

その際、三浦先生も持っていた例の「誘致を考え直す会」のチラシが落ちているのを発見します。
散らしによると、会合は、今日の午後5時からここで行なわれるのだそうです。

ハルカは何気なくそのチラシを貼り直してあげますが、突然現れたマルさんから、
紛らわしいことをするなと注意されました。

ハルカは、このフリーマーケットは、
「誘致を考え直す会」の会合を邪魔するために開催したのではないか、と思いました。

その夜、散歩に出たハルカは、報橋の上で事故に遭った車の野次馬をしました。
翌日、その車に乗っていたのが三浦先生であったことが学校で噂になっていましたが、
誰もお見舞いに行こうとは言いませんでした。

その日の放課後、いつも一緒に帰っていたリンカが先に帰ってしまいました。
また、報橋の上でリンカとサトルが話しているのを目撃します。

そこでハルカは三浦先生から、自損事故ではなく、
ナンバープレートを隠したワゴン車にぶつけられたのだという話を聞きました。
さらに、『常井民話考』は何者かに破棄されているせいでどんどん数が少なくなっていることや、
『常井民話考』に関わった人達が次々と不審な死を遂げている、ということも教えられます。

その夜、ハルカは、以前住んでいたアパートには押入れがなかったことを思い出します。
つまり、前の家でも押し入れの襖の裏に大事なものを隠した、
というサトルの記憶に矛盾が生じていることになります。
また、報橋の上でのリンカとの会話について、
ヨシエがサトルを問い詰めているのを目撃してしまいます。

翌日。
ヨシエのところへ、ハルカの父親から離婚届が送られてきました。
ヨシエは離婚届を出すつもりだと言い、ハルカが中学校を卒業するまでは家に置いてあげるけど、
それ以上は知らないと言います。

二階の自分の部屋に戻ったハルカは、昔、父親が帰ってくることを祈って引き続けたおみくじを、
泣きながら破り捨てました。

そこへ、サトルがやってきて、ハルカを止めます。
2人はヨシエから貰った千円で、外へ夕食を食べに行きます。

ハルカは夜風に吹かれながら、この町に来てから起こった、
不可解な出来事に説明をつけられることに気付きます。

翌日、学校へ行くと、クラスの様子が一変していました。
どうやら、ハルカが三浦先生のお見舞いに行ったことを知られ、
村八分というか仲間外れにされているみたいでした。
頼みの綱のリンカもその日は休んでおり、ハルカは憂鬱な一日を過ごしました。

さらに、ヨシエが帰ってきたのにサトルがまだ帰っていない、ということに気付き、
ハルカは青ざめました。
時刻は5時半です。
この時間になっても、田舎の小学3年生が帰ってこないというのは、ただごとではありません。
過去にタマナヒメと関わった人が何人も不審死を遂げていることや、
最近、三浦が事故に遭ったことを考えると、サトルに命の危険が迫っている可能性もあります。

しかし、「ヨシエは、『弟』の不在に気付かなかったハルカを責めることなく、優しく接します。
ハルカはその不自然な優しさの理由に気付いていました。

ハルカはたった1人で、サトルを取り戻すことにしました。
まず、ある場所へ電話し、午後11時に庚申堂で『交換』しようと持ちかけます。

『森元』という表札のかかった家を訪れたハルカは、その家の住人が留守であることを知り、
サトルから聞いていたこの家の特徴を頼りに不法侵入します。
そこへ、住人が帰ってきますが、何とか切り抜けました。
ハルカはその家の仏間の押し入れの襖の裏から、MOディスクを発見しました。

ハルカはそれを持って、庚申堂へ行きます。
庚申堂の前にいたリンカと会ったハルカは、リンカこそが現在のタマナヒメであり、
ユウコはその影武者に過ぎないという推理をつきつけます。

5年前、水野教授は、5年前のタマナヒメに水野報告を渡した。
その時点で水野教授は用済みとなり、
報酬を支払うのが惜しくなったタマナヒメ信仰の信者に消された。
一方、5年前のタマナヒメも死に、庚申堂は火に包まれた。

その火事を目撃していたのが、当時『森元』の家でヨシエと一緒に暮らしていた、
サトルだったのです。
サトルはタマナヒメから水野報告を託され、自宅の押し入れに隠していたのです。
しかしサトルは、大人に聞かれても水野報告を隠した場所を教えようとせず、
身の危険を感じたヨシエは坂牧市を出て、ハルカの父親と再婚しました。

しかし、ハルカの父親が横領で会社を追われ、困窮したヨシエは、
実の息子であるサトルを、信者たちに『売る』ことにしたのでした。
サトルが帰ってこないのにハルカに優しかったのも、
最初からサトルが帰ってこないことを知っていたからでした。

サトルがこの町に来てから、過去や未来を予知しているように見えたのも、
町の人達がそう仕組み、サトルが過去の記憶を取り戻しやすいようにしていたからでした。

そして、この日、リンカは5年前の火事すら再現しようとしますが、
ハルカにMOディスク――水野報告を渡され、思い留まります。

ハルカは眠り続けているサトルをおんぶして、家に帰りました。


というあらすじなのですが、「これは地味に後味が悪い話ですよね。
結局、ハルカもサトルも、実の親から見捨てられてしまったわけですから。
そして、町中が自分たちの敵であることを自覚しながら、
これから3年間はこの町で暮らさなければならないハルカの気持ちを考えると、
息苦しさを覚えます。

ただ、ハルカが、大嫌いな『弟』を助けるために活躍したのには、素直に感動しました。

ところで、水野報告に関してですが、
しまうましたは今さらこんなものを発掘したところで無意味じゃないかなあ、と思います。
5年前には誘致の権威だった水野教授ですが、今は別の人が権威になっているでしょうし、
水野報告など無視される可能性が高いような気がします。

ただ、そんなものにすがりつきたくなるほど、
坂牧市の現状は厳しいということなのでしょうね……。
今、こんな村や町が日本全国にあるのかと思うと、暗い気分になります。

米澤穂信「遠まわりする雛」5話「あきましておめでとう」のネタバレ解説

新年あけましておめでとうございます。

2013年初めてのネタバレ解説は、
米澤穂信さんの「遠回りする雛」の第5話、「あきましておめでとう」です。

ちょうどお正月に相応しい話の解説ですね。

それにしても、第3話の「正体見たり」は夏休みの話だったのに、
時間の経つのは早いものです。
そう言えば、第1話の「やるべきことなら手短に」と、
第2話の「大罪を犯す」の記事を更新したのは、8月31日でしたね。

何で、一つの短編集の解説に4ヶ月以上もかかっているのでしょうか。
……いや、違うんです。
忘れていたわけじゃないんですよ。
本当に忘れていたわけじゃないんです。
決して忘れていたわけではありません。信じて。

……さて、奉太郎は千反田さんに誘われて、
神山市内にある荒楠神社へ初詣にやってきました。
奉太郎は着物姿の千反田さんを鑑賞し、2人でお参りを済ませます。

千反田さんが神職に挨拶に上がり、
そのときに巫女姿の十文字かほと会います。
十文字かほは、あの「クドリャフカの順番」に登場しているキャラです。

その後、おみくじや落し物などの係をしている、
巫女のバイト中の摩耶花を冷やかしに行きます。

奉太郎はおみくじを引きますが、凶でした。
ところで、しまうましたは凶とか見たことないんですけど、
ネタじゃなくて本当に実在するものなのでしょうか。

その後、忙しそうにしていた十文字かほの手伝いを千反田さんが申し出て、
奉太郎と千反田さんは蔵に酒粕を取りに行きます。

が、奉太郎は蔵と間違えて納屋へ行ってしまい、
しかも直後に外から鍵をかけられてしまい、閉じ込められてしまいます。

「氷菓」の最初の話で、
千反田さんが地学準備室に閉じ込められたのと似たパターンですね。
どうやらこの世界では外から鍵をかける際、
中に人がいないか覗く習慣はないようです。

奉太郎は大声を出そうとしますが、
年頃の男女が2人で納屋にいたとなると、
あらぬ誤解を招きそうだと千反田さんに止められます。

携帯電話で摩耶花か十文字かほ辺りに連絡をとって助けを呼ぼう、
と千反田さんは提案しますが、2人とも携帯電話を持っていないのでした。

原作では時代設定が2001年(物語開始時点は2000年)なので、
高校1年生が携帯電話を持っていないのは普通なのですが、
アニメでは放送年に合わせて2012年に変更されていたので、
ちょっと無理があるエピソードになっていましたね。

2人は寒さに震えながら、自分の持ち物を落として、
落し物の係の摩耶花に助けてというメッセージを送ります。
が、売店にいた摩耶花や、遅れてきた里志は分かってくれません。
まあ、特に里志や摩耶花の察しが悪いわけではなく、
ハンカチとか、凶のおみくじが入った財布だけで、
納屋に閉じ込められていると推理するのは難しいでしょう。

そこで奉太郎は、千反田さんが持っていた巾着と紐を使い、
巾着の下を紐で結び、里志にSOSのメッセージを送りました。

織田信長の妹が、小豆袋の上下を結んで、兄に『袋の鼠』と伝えた、
という歴史マニアには有名なエピソードがあるのです。

この話は3話『正体見たり』で奉太郎が里志から借りた漫画にも登場していた
エピソードでした。

そして、里志は期待通り、
納屋に閉じ込められていた2人を助けに来てくれたのでした。

米澤穂信「遠まわりする雛」4話「心当たりのある者は」のネタバレ解説

ある日、奉太郎と千反田さんが二人で部室にいるときに、
「理屈と膏薬はどこにでもくっつく」
という金言を奉太郎は使いました。

理屈は、つけようと思えばなんにでもつけることができる、
という意味です。

「そう簡単に理屈をくっつけるなんてできない」
ということを証明してやる、と奉太郎が言ったとき、
校内放送が流れました。

『十月三十一日、駅前の功文堂で買い物をした心当たりのある者は、
至急、職員室柴崎のところまで来なさい』
という放送を聞いた千反田さんは、
この放送がどういう意味で行われたのか推論を立ててくれと言います。

二人で協力しつつ推論を立てていった結果、
Yに貸していた金を返してもらったXは、
それが偽札であることに気付きつつ駅前の功文堂で使いましたが、
やがて罪の意識に耐えかね謝罪文を送った、
という結論を出します。

が、『そう簡単に理屈をくっつけることなんてできない』
ということを証明するためにゲームを始めたのに、
結局理屈をくっつけてしまい、
しかもそのことを2人とも忘れてしまっていました。

翌日の新聞で奉太郎はその推論が正しかったことを知りますが、
ゲームのスタートとなった金言は『瓢箪から駒』だったはず、
とやはり記憶違いをしたままでした。

ちなみに、アニメでは部室に二人きりということで、
ちょっとお互いに意識してしまうような雰囲気が流れていましたが、
原作ではそんなことはありません。
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個人の趣味でやっているブログなので、解説してほしい本のリクエストは受け付けていません。
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