東野圭吾「危険なビーナス」のネタバレ解説

危険なビーナス


主人公の手島伯郎(てしま・はくろう)は、38歳前後の獣医です。

伯郎が院長代理をしている池田動物病院に、
矢神楓(やがみ・かえで)と名乗る女性から電話がありました。

楓は、伯郎の弟である明人(あきと)の妻だと言いましたが、
伯郎は明人が結婚していたことすら知りませんでした。
楓は、明人が行方不明で、もう何日も帰らないと言いました。

ここで回想です。

伯郎の父親は手島一清(かずきよ)という売れない画家で、
手島家の生活を支えていたのは看護師だった母親の禎子(ていこ)でした。

小さな借家の2階で一清が不思議な絵を描いていた記憶がありましたが、
その絵が完成することはありませんでした。
一清は伯郎が2歳の頃に脳腫瘍を発症し、伯郎が5歳の冬に亡くなりました。
一清はそれまで静物画を得意としていたはずなのに、
脳腫瘍を発症してから2年ほどが経った頃に、
伯郎の記憶にある抽象画を描き始めました。

禎子が働いている間、伯郎は近所に住む禎子の妹、順子の家に預けられました。
順子の夫である健三は大学の数学の教授でした。

一清が亡くなってから3年後、
伯郎は禎子の交際相手である矢神康治(やすはる)と食事をしました。
まだ30代半ばだった禎子は康治と結婚してもいいかという意味のことを言い、
伯郎は、いいよ、と答えました。

それからしばらくして、伯郎は康治の家である豪邸に連れて行かれました。

禎子が康治の両親に挨拶してくる間、伯郎は別室で待たされます。
その部屋に、勇磨という伯郎より2、3歳上の少年がやってきて、
やっぱり貧乏人だな、無理して一張羅を着てきたんだろ、
そういうのがだせえんだよ、貧乏人は、と言われました。
伯郎は、この日初めて、矢神家が大金持ちであることを知りました。

康治が戻ってくると、勇磨は部屋から出て行きました。

康治に別の部屋に連れて行かれ、康治の両親と引き合わされました。

それから2ヶ月後、伯郎は康治が買ったマンションに引っ越すことになり、
転校し、学校帰りに叔母の順子の家に寄ることができなくなりました。

それから3ヶ月後、禎子は来年、伯郎に弟か妹ができると言いました。

伯郎が9歳の時、異父弟の明人が生まれました。

康治の父親である康之介は、明人を可愛がり、
早い時期から高い教育を受けさせ、跡継ぎとして育てました。

ある日、禎子から中学受験をしてほしいと言われましたが、
伯郎は断り、公立中学校に進学しました。
それから数ヶ月後、養子縁組をして正式に矢神家の人間になる気はないか、
と禎子は言いました。

回想終わりです。

伯郎は、明人の妻の楓と待ち合わせをしました。
楓は茶色のカーリーヘアの美人でした。

明人は今、IT関係の仕事をしていて、半年ぐらい前から先月まで、
楓と明人はシアトルにいたのだそうです。

明人は4日前、帰国して2日目に行方不明になったのだそうです。
急に帰国したのは、明人の父、つまり康治がもう保たないから、
父親の死に目に会いたいなら帰ってこいと言われたからなのだそうです。

帰国してお見舞いに行こうと思ったその日に、
『ちょっとしたミッションがあるので出かけます。
もしかするとしばらく戻らないかもしれない。でも心配しなくていいです。
その場合、申し訳ないけど父の見舞いは君一人で行ってください』
と書き置きを残して、明人は姿を消したのだそうです。
携帯電話も繋がらず、メールを書いても応答なしでした。

2日間待ったが、明人からの連絡はなく、楓は地元の警察に届け出ましたが、
書き置きがあるというだけで事件性はないと判断されたのだそうです。

楓は、「お義兄さま」にも一緒にお見舞いに行ってほしいと言いました。
伯郎は嫌がりましたが、お見舞いに行っていないことを楓に責められ、
大学まで進めたのだって、獣医さんになれたのだって、
お義父様のおかげのはずです、恩返しって言葉、知らないんですか?
と言い、伯郎は承諾しました。

翌日の午後、楓は動物病院に来ました。

楓は、明人と会う前はJALのCAをしていて、
ステイ先だったバンクーバーにあるお寿司屋さんで、
カウンターで隣同士になり、出会ったのだそうです。
明人から、仕事の補佐をしてくれないかと頼まれ、
去年の3月にCAの仕事を辞めたのだそうです。

伯郎の車で、矢神総合病院に向かう途中、康治とは10年ほど会ってないと伯郎は言いました。
伯郎は康治の籍には入っていなくて、20歳になって間もなく、
本当の父親である手島姓を選んだ、という話をしました。

母親の禎子は16年前に亡くなりました。
10年前に康治と会ったのは、禎子の7回忌があったからでした。

再び回想です。
9つ下の異父弟、明人は極めて高い知能を備えていました。
この子は天才だね、と誰もが言いました。
ただ康治は、天才なんかじゃないよ、明人はせいぜい秀才だろう、
それでいいんだ、天才なんか、幸せになれないからな、と言いました。

公立高校に通っていた伯郎は焦りに似た感情を感じ、獣医になりたいと禎子に言いました。
神奈川県の大学に進学し、学生専用のアパートに引っ越しました。

4年生になり、解剖などの実践的な講義が始まった頃、康治から電話があり、
禎子が亡くなったと教えられました。
禎子の実家がある小泉の家の風呂場で頭を打ち、
そのまま気を失って湯船に……という事故だったのだそうです。

禎子は昨日、ちょっと荷物の整理をしてくる、
遅くなったら泊まってくると言って小泉の家に行きましたが、
今日になっても連絡がつかないので順子に様子を見に行ってもらったところ、
風呂場で禎子を発見したのだそうです。

警察の説明では、湯船の中で足を滑らせ、後頭部を強打して気を失い、
そのまま水に沈んだ可能性が高いのだそうです。
玄関の鍵はかかっていて、窓もすべて内側から施錠されていました。

中学1年生の明人と禎子が安置されている部屋で2人になると、
玄関の鍵なんて作ればいいんだ、合い鍵なんて、簡単に作れる、と明人は言いました。

回想終わりです。

伯郎と楓は矢神総合病院に行き、康治の妹の波恵(なみえ)と会いました。

楓は、明人が失踪していることは伏せ、新しいビジネスを開発中で、
どうしてもシアトルを離れられないと嘘をつきました。
去年の暮れにアメリカで結婚式を挙げたが、入籍はしていないという話をします。

康治は病気のせいで殆ど動くことができず、まともに話をすることもできませんでした。
しかし、伯郎が康治の顔に耳を近づけると、
「明人に、背負わなくていいと……」と言い、寝てしまいました。

矢神家の親戚が集まる親睦会で、遺産相続についても話し合われることになり、
明人の代理として伯郎にも出席してほしい、と楓と波恵の両方から頼まれます。
伯郎は嫌がりましたが、遺産の中には、禎子の遺品も含まれていると言われ、
出席することにしました。

見舞いの後、伯郎は港区にある明人のマンションに案内してもらいます。
非常に豪華な部屋で、後で分かりますが、家賃は120万円でした。

明人の部屋で小泉の家の写真を見つけ、写真立てを手に取ると、中に小泉の家の鍵がありました。

また、神経科医だった康治の元患者のサヴァン症候群の人が作った曲を聴きました。

明人によれば、一清の描いた絵を見た康治は、
これを描いた画家はサヴァン症候群ではないかと思い、画家のことを調べ、
画家の未亡人である禎子と出会ったのだそうです。

場面が変わり、また動物病院に楓がやってきます。
電車で移動中に、楓は友達が飼っていたミニブタが可愛かったから
自分も飼いたいという話をしました。
しかし伯郎は、その友達の家の広さがワンルームで、
最後にミニブタを見たのが2年くらい前で、最近、
その友達からミニブタの話を聞いていないと知ると、捨てたんだろう、と言いました。
ミニブタは1年で80キロぐらいになり、100キロを超えるものもあるのだそうです。

目的地である、伯郎の叔母の兼岩順子と憲三の家に到着します。
小学生だった明人は憲三の部屋で数学関連の資料や本を読み、
数学を勉強していた、という話を憲三はしました。

順子は、伯郎が見たがると思い、10畳ほどの和室に一清の絵をずらりと並べておきました。
しかし、伯郎が最後に描いていた、幾何学模様のような絵はありませんでした。
憲三は大学の数学教授を退職した後、リーマン予想について研究を続けているのだそうです。

楓は、今月7日に、明人が順子と憲三の家に電話したが留守だったみたいだ、という話をしました。

午後9時に兼岩家を辞去した後、今月7日といえば明人が行方をくらました日じゃないか、
あれはアリバイ確認だ、と伯郎は楓を責めました。

場面が変わり、伯郎が午後1時に池田動物病院でシマリスの診察をしているところに、
波恵から電話がかかってきます。
明日、親睦会があるので正午に来て欲しいという内容でした。

電話の後、院長の池田幸義(ゆきよし)老人がやってきて、
例の話をしたい、考えてくれたかね、と言いました。

池田は伯郎に、自分の養子になって池田動物病院を継いで欲しいと話をしていましたが、
伯郎はまだ結論が出ていませんでした。

通称として手島を使ったらどうだとか、
病院の名前を手島動物病院と変えてもいいと池田は言いますが、
無関係な名称に変更するのは筋が通りません、と伯郎は断りました。

動物看護師の蔭山元美(かげやま・もとみ)は、
私、どちらでもいいですよ、池田動物病院でも、手島動物病院でも、と言いました。

翌日、伯郎は明人のマンションに楓を迎えに行きました。
矢神邸に向かう途中、明人の失踪については隠しておくことや、
相続についての明人の以降を確認した、ということを打ち合わせしておきました。

矢神邸に着くと、波恵以外に6人の男女が待っていました。

まず、康治の次妹の支倉祥子(はせくら・しょうこ)、
その夫の支倉隆司(たかし)、その娘の支倉百合華です。
祥子は康之助の2番目の妻の子供で、康治や波恵とは母親が違います。
支倉夫妻は有料老人ホームを6箇所経営しています。
百合華はブックデザイナーです。

祥子と母親が同じ、祥子の弟の矢神牧雄(まきお)は50代半ばの不気味な人です。
牧雄は泰鵬(たいほう)大学医学部神経生理学科の研究者で、脳の研究をしていました。

後の2人は養子の、矢神佐代(さよ)と矢神勇磨でした。
佐代は銀座のクラブのオーナーママです。
居酒屋やダイニングバーのチェーン店を経営している勇磨は、
美人の楓を気に入り、口説き始めました。

食事後、一旦解散となり、勇磨が楓に、僕が邸内を案内しようか、と言い、
勇磨と楓は部屋を出ていきました。

伯郎は百合華に話しかけられました。
おかしいなあ、あんな軽い女に引っ掛かるようなタイプじゃなかったのに、
アキ君は、と百合華は言いました。
百合華は明人のことが好きだったのでした。

また、勇磨は康之助の子供だが、愛人に生ませた子供だ、という話を百合華はしました。
また、佐代は勇磨の母親なのだそうです。

話し合いの準備が整い、再び全員が集合します。

今から20年前に康之助が亡くなり、康之助の個人資産はすべて矢神明人に譲る、
という遺言状があったのだそうです。
しかし、当時の明人はまだ小学生で、
法定相続人には遺留分という最低限受け取れる額が決められています。
子供は、実子と養子合わせて6人ですから、
それぞれの遺留分は全財産の12分の1ということになります。

康之助は医療法人『康親会』の理事長で、矢神総合病院や老人保健施設『矢神園』など、
6つの事業を行っていました。
しかし、いずれも極めて深刻な経営不振に陥っていて、
銀行から融資を受けられた矢神総合病院と、支倉夫妻が引き継いだ『矢神園』を除いて、
4つの事業は閉鎖されました。
その過程で、康之助の資産は、100億円近くから10分の1以下にまで目減りしました。
しかもその半分近くが、この屋敷を含めた不動産だったので、
屋敷などは将来明人に譲るという前提で、現金だけを子供たちで分けることになりました。

康治が亡くなれば、当然明人が遺産を引き継ぎますが、
その前に康之助の遺産を整理しておく必要があります。
波恵は、掛け軸や壷、絵画といった品々がずらりと並んだ財産目録を皆に配りました。

2階の書庫に行き、その品々を全員で見ます。

牧雄は、康治のものである絵を気にしていました。
もしかすると、サヴァン症候群患者が描いたものでは?
と伯郎が訊ねると、牧雄は認めました。

かつて康治の共同研究者だったという牧雄は、
『資料・ファイル類』と記された段ボール箱も調べようとしていました。
動物実験も手伝ったんですか? と伯郎が訊くと、
科学の発展のためには何かを犠牲にしなければならないこともある、と牧雄は言いました。

康治の所持品に混じっていた禎子の荷物を調べると、家族のアルバムや、
一清の作品集を撮影した写真のアルバムもありました。
しかし、最後のページには何も貼られていませんでしたが、写真が剥がされた形跡がありました。
一清が死ぬ間際まで描き、とうとう完成しなかった絵です。
写真はありませんでしたが、書き込みがあり、絵のタイトルが『寛恕の網』だと判明しました。

佐代が近寄ってきて、気をつけたほうがいいですよ、その箱の中に、
禎子さんの遺産のすべてが入っているとはかぎらないということです、と言いました。

今後の方針を決めることになり、支倉隆司と勇磨がそれぞれ鑑定士を連れてくることになりました。

また、楓は明人の意向として、喜んで、亡き祖父の意志を継ぎたい、その際、
20年前に支払われた法定相続人への遺留分についても改めて精査を行い、
不正が判明した場合には、直ちに返還を要求する、と皆に伝えました。

車に戻ると、その明人の意向は楓のオリジナルだと楓は言いました。
また、勇磨から楓のスマートフォンに電話がかかってきて、ディナーに誘われ、楓は承諾しました。

伯郎と楓は明人のマンションに行き、禎子のアルバムを確認します。

その時伯郎は、康治を自分の父親だとは思えなかったという話をしました。

禎子と康治が結婚して、まだ何か月も経っていない頃、
泊まりがけで仕事をしている康治に禎子が着替えを届けに行くことになり、
8歳の伯郎も一緒に行きました。

泰鵬大学に着くと、康治は実験中で、若者に応接室に案内されました。
禎子がトイレに行き、伯郎はテレビとビデオデッキのスイッチを押しました。
すると画面に変化が起き、猫が映りました。
頭蓋骨に穴を開けられ、脳を露出させられ、脳に電流を流されていた猫でした。
禎子が戻ってきて、伯郎はテレビを消しました。
その後、伯郎は若者に案内され、ケージにいた5匹の猫を見せられました。
生気のない目を見て、伯郎は嘔吐しました。

それがトラウマになり、伯郎は康治を父親と思えなくなり、獣医になったのでした。

そのことを楓に打ち明けると、その時のお義兄様が……8歳の伯郎少年が今ここにいたのなら、
この手で抱きしめてあげるのに、と言われました。

場面が変わり、伯郎は禎子のアクセサリーやアルバムを、順子と憲三に見せに行きました。
伯郎は、スマートフォンで撮影していたサヴァン症候群患者の絵を憲三に見せました。
憲三は、これはフラクタル図形の一種だ、と言いました。
その後、勇磨と会っている楓が気になり電話すると、
今、明人のマンションにいると教えられ、伯郎はそこに駆けつけました。
正面玄関の前で勇磨と会い、嫌みを言われました。

あいつをたらしこんで、情報を引き出そうってわけか、と伯郎が言うと、
明人君の居場所を突き止めるためなら、あたしは何でもやります、と楓は言いました。

明人は生きてると思うのか、と伯郎が言うと、
楓は伯郎を引っぱたき、今夜は帰ってください、と言いました。

翌日、伯郎は喫茶店で楓と待ち合わせをし、小泉の家について話をしました。
あの家は禎子の名義になっていたので、康治だけではなく、伯郎や明人にも相続権があるはずでした。

いっそのこと、これから行っちゃいません?
と楓に言われ、車で1時間かけて、伯郎と楓は小泉の家に行きました。
その途中、昨晩、明人の消息について、無神経なことをいった、と伯郎は謝りました。

小泉の家は更地になっていたはずで、伯郎は更地になった写真も見ていましたが、
小泉の家は現存していました。
その写真は加工された画像だったのだと楓は言いました。

楓は明人の部屋に飾ってあった小泉の家の写真立ても持ってきていたので、
その写真立ての中の鍵を使い、家に入りました。

ブレーカーを上げると天井の明かりが点きました。
中は綺麗で、靴を脱いで上がります。

日本間に入り、子供の頃に祖母にプレゼントしてもらった空気銃で
襖や障子を穴だらけにしてしまったことを思い出しました。

母親のアルバムを楓と一緒に見ていると、老人が家に入ってきました。

老人はこの家の裏に住んでいるイモトで、伯郎も子供の頃に会ったことがありました。
イモトは康治に頼まれ、この家の管理や掃除をしていたのでした。

明人もここに来たことがあり、禎子が亡くなった風呂場を見ていたのだそうです。

老人が帰った後、伯郎と楓はこの家を見て回りましたが、何も見つかりませんでした。
明人は禎子の死に疑問を持っていたので、
この家を殺人事件の証拠物件として残す必要があると思ったんじゃないだろうか、
という結論になりました。

小泉の町を出た後、明人と楓の行きつけの店だというワインバーに行きました。
楓は、明人とこの店に来た時には、まず生牡蠣のセットを注文するのだそうです。

伯郎は、楓が佐代から貰っていた、佐代の名刺を見せてもらいました。

また、楓はサヴァン症候群の患者でフラクタル図形を描けるようになった人が
ほかにいもいるかどうかスマートフォンで調べ、
康治が所有していたのと同じ絵をブログにアップしていた主婦を発見しました。
その絵を描いたのは、その主婦の父親だったのだそうです。
伯郎はその主婦と連絡を取ることにしました。

伯郎1人で佐代の店に行くことになり、楓と別れると、
伯郎は小学生の頃の明人が牡蠣が嫌いだったのを思い出しました。

銀座8丁目にある佐代の店『クラブ CURIOUS』に行くと、
VIP席に案内されました。

佐代は、矢神総合病院はすでに経営が破綻していて、銀行の支配下にあり、
矢神邸も今後の状況次第ではどうなるかわからない、という話をしました。

伯郎は1度店を辞去してから、唐突に閃いたことがあり、店に戻って、
アルバムから剥がした写真を出し、説明を求めました。

向かいのビルの地下にあるバーで待ち合わせをし、佐代と再び話をします。

実家のアルバムに、禎子と佐代が一緒に映った写真があったのでした。
佐代は禎子と高校3年生の時、同じクラスで、同窓会で再会したのだそうです。

禎子の夫の一清は脳腫瘍の影響で、しばしば錯乱状態になっていて、
そのことを知った佐代は、康之助に何気なく話しました。
すると康之助は、康治に任せてはどうかと提案したのだそうです。
当時康治は、脳に電気を流すことで痛みを和らげたり、
精神的な疾患を改善するという研究をしていたのだそうです。

康治の治療で一清が錯乱することはなくなりましたが、
見た目には快方に向かっているようでありながら、
じつは急速に脳腫瘍は悪化していて、やがて亡くなりました。

康治は、自分が施した治療が原因ではないかと考え、
2度と同じ過ちは犯したくないといっていたのだそうです。
また、禎子は佐代に、自分はすでに貴重すぎて手に余るほどのものを康治から貰っている、
と言っていたのだそうです。

場面が変わり、池田動物病院に百合華がやってきて、
百合華と明人の共通の友達は明人が結婚したことを誰も知らず、
明人に電話しても繋がらない、と言いました。
しかし蔭山元美が口裏を合わせてくれて、百合華は帰っていきました。

その後、楓と矢神総合病院に向かう途中、百合華から聞いた話を楓に話すと、
明人が誰にも知らせていなかったことは楓も知らなかったようでした。
その理由は、サプライズ狙いかな、帰国した時、みんなを驚かせたかったとか、
と楓は説明しました。

伯郎1人で康治の病室に行き、
楓がナースセンターに電話して波恵を呼び出して時間を稼いでいる間に、
伯郎は康治に大きな声で話しかけます。

お袋に……禎子に何かあげましたよね、貴重な何かを、それって何ですか?
と伯郎が訊くと、康治は、「明人、恨むな……」と言いました。

その後、伯郎と楓は、例のブログの主婦、仁村香奈子(にむら・かなこ)と
東白楽駅の近くにある喫茶店で会いました。

香奈子の父親は銀行マンでしたが、居眠り運転で電柱に激突し、脳に重度の損傷を受け、
ある時期から急に奇妙な絵を描くようになりました。
ふつうのサヴァン症候群とは違う、後天性サヴァン症候群の研究のために、
康治が訊ねてきて、脳の状態を細かく調べる代わり、
香奈子の父の看護はすべて引き受けることになりました。

康治は、後天性サヴァン症候群の発症、つまり、
人為的に天才脳を作りだす研究をしていましたが、康治はそれを発表せず、
研究自体をやめてしまった感じでした。

その後、伯郎は1人で動物病院に戻りました。
楓が勇磨とこれから会うとメールで知り、電話しましたが、
話の途中で切られてしまい、その夜は眠れませんでした。

翌日の夕方、楓は勇磨を連れて動物病院にやってきました。

勇磨は、明人がシアトルにいるのか、海外の伝手を使って調べてもらい、
楓と2任で日本に帰ったと知ったのだそうです。
楓は事情を全部勇磨に話してしまいました。

勇磨は、明人が失踪しているのを隠しておく見返りとして、
後天性サヴァン症候群に1枚噛ませてもらうことにしたのだそうです。

勇磨の提案で、伯郎と楓と勇磨は牧雄の住むアパートに行きました。

伯郎達が説得し、牧雄は後天性サヴァン症候群の研究について話しました。
康治は、一清の脳腫瘍が急速に悪化したのは電気刺激治療にあるのではないかと疑い、
人体への施術は一切見合わせることにし、動物実験が主になりました。
しかし猫は絵を描かないし、楽器も演奏しないし、
天才脳を獲得したかどうかを確認する術がありませんでした。

康治は、事故あるいは病気によって脳を損傷したしたせいで、
それまではなかった特殊な才能を発揮した例があるはずだと考え、
仁村香奈子の父親などのデータを集め、仮説の正しさを証明しつつありましたが、
ある日突然、康治は後天性サヴァン症候群の研究から一切手を引きました。
また、その研究データも行方不明でした。

牧雄の部屋を後にした伯郎達は、その研究データは小泉の家にあると考え、
明日、家捜しすることにしました。

勇磨が楓を明人のマンションに送っていき、伯郎は順子と憲三の家に行き、
小泉の家で見つけたアルバムを順子に見せました。
憲三はもう寝ていました。

どこにあったの? と訊かれ、
伯郎が禎子から預かっていたのをクロゼットの奥にしまいこんでいて、
たまたま見つけたのだと説明しました。

伯郎は、小泉の家に書類なんかを隠せるところがあったのを
知らないかと訊きましたが、順子は知らないと言いました。

もう午前1時でしたが、伯郎は、これから小泉の家に行って家捜ししようと思い、
明人のマンションに行きました。
コインパーキングに勇磨の車が駐まっているのを見つけ、部屋に押しかけました。

楓は、明人が撮影したと思われる小泉の家の写真を勇磨に見せていたのだと説明しました。

楓は伯郎の車に乗り、勇磨は自分の車で、小泉の家に向かいます。

伯郎は、明人が戻らないと楓が諦める日が来たら、
楓の力になりたいと思う、という意味のことを言いました。
その勢いで告白しようとしますが、今夜は、そこまでにしておいていただけませんか、
その続きを聞くのは今ではないと思いますので、と楓は言いました。

小泉の家に到着し、手分けして家捜しをすると、
勇磨は天井裏で『後天性サヴァン症候群の研究』というレポートを発見したと言いました。
しかし、天井裏は前回この家に来た時に伯郎が調べたはずの場所で、伯郎は釈然としませんでした。

午前4時に解散し、勇磨は帰っていきました。
伯郎も楓と帰ろうとしましたが、突然閃き、急ブレーキを踏みました。

伯郎と楓は夜道を歩き、小泉の家に引き返します。

家の中に誰かがいて、照明をつけました。

伯郎はインターホンを鳴らして家に入ります。

居間に「順子の夫の兼岩憲三がいました。
憲三は、伯郎と順子の話を立ち聞きして、伯郎が古いアルバムを持っていたことに驚き、
この家が今も残っていたことを初めて知ったのでした。

もし康治の報告書を見つけられなかったら、朝まで伯郎達は家捜しをしていたので、
それを終了させるために、先回りして天井裏に報告書を置いたのでした。

16年前、憲三は一清が描いた『憤怒の網』を探しにこの家に来たことを話しました。

『憤怒の網』は、素数の分布に法則性があることを示す『ウラムの螺旋』の表現方法を変えたものでした。
康治の『明人、恨むな……』は本当は『明人、ウラムの……』と言っていたのでした。

しかし、一清はその絵を描くのをやめました。
一清がこの世を去った後、『憤怒の網』が消えていたのを憲三は知りました。
一清が処分したと憲三は思っていましたが、
明人が禎子のアルバムから剥がしてきた『憤怒の網』の写真を見て、動揺しました。
その日付は、一清が亡くなった時より、ずっと後だったからでした。

憲三は順子の鍵を使い、小泉の家に忍び込み、絵を探しました。
しかし禎子は、イモト老人から、時々電気がついていることを教えられ、
憲三を待ち伏せしていました。

禎子は、順子に電話をかけて教え、絵を燃やすと言いました。
憲三は電話を取り上げようとし、揉み合いになり、折り重なるように倒れ、禎子は脳震盪を起こしました。
憲三は禎子を風呂場まで運び、事故に偽装して殺したことを告白しました。

明人を監禁したのも憲三でしたが、間もなく解放されると憲三は言いました。
憲三は、この家はないと思っていたから、『憤怒の網』は康治の元にあると思い込んでいました。
康治が死んで遺品が出揃うまでの間、明人を監禁すれば、
伯郎を通して兼岩家に『憤怒の網』も来るだろうと予想し、明人を監禁したのでした。

罪を告白した憲三は、灯油をまいて火を放ちました。
しかし、楓が憲三を抱え上げて家の外に出ました。

伯郎は燃える家を見ながら、子供の頃、空気銃で襖を穴だらけにしたのを思い出し、
家に飛び込みました。
襖にスコップを突き立てると、『憤怒の網』が見えましたが、焼けた天井が落ちてきて、
『憤怒の網』が隠された襖にも燃え移ろうとしていました。

伯郎は襖に近寄ろうとしましたが、明人に腕を掴まれ、
絵なんか、どうでもいいじゃないか、たかが絵だ、逃げよう、と言われ、家を出ました。

伯郎は小さな警察署に連れていかれ、応接室のような部屋で眠ってしまいました。
午前7時に目覚めると、明人から事情を説明してもらえました。

明人がシアトルから帰国すると、成田空港で警視庁の人間が待ち受けていたのだそうです。
警視庁のサイバー犯罪対策課は、インターネットを通して、
明人の拉致、監禁を実行してくれる人間を募っている者がいるのを知り、
警察は明人を待ち伏せしていたのでした。
警察は、明人を実際に監禁したように見せかけ、相手の出方をうかがう作戦を考えました。
明人は、犯人が親戚の人間にいると考え、警察に協力するから、
禎子の死を再調査してほしいと頼みました。

明人がそこまで話したところで、女性警察官の制服に身を包んだ楓が入ってきました。
楓は潜入捜査官で、明人は独身だったのでした。

2日後、康治が死んだ、と明人から連絡が入りました。
憲三が逮捕されたことを知り、順子は倒れ、入院していました。

通夜の焼香の後、明人は、例の後天性サヴァン症候群の研究報告書をビジネスに使うのはやめ、
明人が保管しておくと話しました。
報告書の最後のページには、
『天才が幸せをもたらすとはかぎらない。不幸な天才を生むより、幸せな凡人を増やす努力をしたい』
と書かれていたのだそうです。

明人は勇磨と2人でこのおちぶれかけている一族を建て直すことにしたのだそうです。
また、明人は百合華と付き合うことになったようでした。

後日、伯郎は池田老人の養子になり、池田動物病院を引き継ぐことを決めました。
また、ミニブタを飼うことにしたので、アドバイスをいただこうと、楓が動物病院にやってきました。
楓は伯郎のことを『伯ちゃん』と呼び、ミニブタって病気しがちらしくて、
これからながーい付き合いになると思います、よろしくね、伯ちゃん、と言ったのでした。


というあらすじなのですが、凄く面白かったです。

ただ、勇磨に対してヘイトが溜まったので、
一度くらいは勇磨にぎゃふんと言わせてやりたかったですが。

東野圭吾「雪煙チェイス」のネタバレ解説

雪煙チェイス (実業之日本社文庫)


スキー場・根津昇平シリーズの第3弾です。

ただし、序盤、根津はなかなか登場しません。

男子大学生の脇坂竜実(わきさか・たつみ)は、
白銀ジャック」の舞台となった、
新潟の新月高原スキー場でスノーボードをしていました。

滑走禁止区域を滑っていると、
赤と白のツートンカラーのウェアに黒のヘルメットの女性スノーボーダーが、
カメラで自分を入れて写真を撮ろうとしていました。

竜実は、シャッター、押しましょうか、と声をかけ、
木の枝と山の稜線がハート形に見えるように写真を撮ってあげました。

女性がフェイスマスクを外すと、勝ち気な猫を連想させる美人でした。

ふだんはどこで滑ってるんですか、と竜実が聞くと、
ホームグラウンドは里沢温泉スキー場だと言われました。

竜実は滑り出した女性を追いかけますが、
女性は密集した木々の間を、雪煙を上げながら滑り抜けていき、
あっという間に引き離されてしまいました。

場面が変わり、刑事の小杉敦彦は仙台への出張から新幹線で帰る途中、
上司の南原係長からの電話に出ました。

南原は、三鷹市N町の一軒家で強盗殺人があり、
被害者は80歳の老人だと言いました。

小杉は嫌がりましたが、そのまま現場に行きました。

初動捜査が始まっていて、後輩の白井から状況を説明されます。

被害者の福丸陣吉(ふくまる・じんきち)という老人は、
息子夫婦と同居していました。
長男の秀夫の妻の加世子が、勤め先のスーパーから帰り、
陣吉が死んでいるのを発見して通報しました。

リビングボードの抽斗に入れてあった現金20万円ほどが消えていました。

署に戻ると、南原から、散歩係を当たってもらいたいと言われました。

福丸家では柴犬を飼っていて、散歩に連れていくのは被害者の役目でしたが、
半年ほど前に腰を痛めて以来、長い時間を歩けなくなりました。
散歩させないのはかわいそうなので、バイトを雇いました。

しかし、3ヶ月ほど前にバイトが散歩中に自転車と接触し、
柴犬は足を怪我して動けなくなり、
持病を悪化させて先月に死んでしまいました。

近所の主婦が、昨日の昼間、福丸家の中を覗いていた男を目撃していて、
それが散歩係のバイトの男でした。

犯人は郵便ボックスの底に隠してあった合い鍵を使って、
勝手口から侵入した可能性がありました。

南原の上司の刑事課長の大和田がいきり立っていて、
小杉と白井は逃げるように部屋を出ました。

署長が本庁の捜査一課に応援を要請したのですが、担当係の七係には、
大和田課長と昔から犬猿の仲の花菱(はなびし)係長がいて、
大和田課長ははらわたが煮えくりかえる思いをしているのでした。

小杉と白井は、散歩係のバイトをしていた、
開明大学4年生の脇坂竜実のアパートを訪れました。

しかし、竜実は留守で、隣の部屋の松下広樹に話を聞きました。

その途中、南原から電話があり、勝手口の合い鍵から不審な指紋が発見され、
竜実の部屋のドアノブと指紋を照合すると言われました。

鑑識が到着し、ドアノブと、竜実の自転車の指紋を採取しました。

一方その頃、竜実は友人の波川省吾(なみかわ・しょうご)の部屋で、
酒を呑んでいました。

松下広樹から電話があり、竜実の部屋に警察が来て指紋を採っている、
と教えられました。

勝手口の合い鍵に付いている指紋と照合するとかいってた、
と松下広樹に言われ、竜実の頭に閃いたものがありました。

さらに、殺人事件かもしれない、と松下広樹は言いました。

竜実は電話を切り、波川省吾に心当たりを説明します。

回想です。
昨年秋、竜実は研究室の大学教授から、
午前中に1時間ほど柴犬を散歩させるバイトを頼まれ、引き受けました。

飼い犬のペロはすっかり竜実に懐き、陣吉も竜実を信用して、
雨の日は郵便ボックスに隠してある勝手口の合い鍵を使って、
ペロを屋内に入れておいてくれと言われました。

しかし、考え事をして散歩をしている時に、
自転車に乗っていた主婦が自転車でペロとぶつかってしまいました。
主婦は、犬の姿は竜実の身体で隠されていて前方からは見えなかった、
と主張しました。

ペロは骨折し、竜実はクビになり、
それ以来、福丸老人ともペロとも会っていませんでした。

ところが昨日、たまたますぐ近くまで行く用事があり、
ペロのことが気になって福丸家に行きました。

インターホンを押しても応答がなく、竜実は門扉を開き、
敷地内に足を踏み入れました。
郵便ボックスが目に入り、合い鍵がまだ秘密の場所にあるか気になり、
手に取って確かめてみて、戻しました。

ペロの犬小屋には『1月19日没』と書かれていて、
竜実は気持ちが落ち込みました。
犬小屋の中に古いリードが放置されているのを触っているうちに、
ペロの形見が欲しくなり、竜実は持ち帰ることにしました。
門から外に出た後、ぼんやりと眺めていると、
ペロの散歩中に何度か会ったことがある近所の女性と顔を合わせました。

回想終わりです。

……っていうか、意味不明な行動のオンパレードですねw

まるで、この翌日に殺人事件が起こるのを予知していて、
警察に疑われるために行動しているみたいですwww

竜実の話を聞いた波川は、かなりまずい状況だと言いました。

警察が竜実の意味不明な話を真に受けるはずがありません。

今日1日、竜実は、新月高原スキー場でスノーボードに行っていて、
午後7時過ぎからは波川の部屋にいたと答えました。

竜実は高速道路の領収証を出し、
新潟の湯沢インターを出たのが朝の9時で、
練馬インターを出たのが午後7時だと言いました。
しかし波川は、新幹線を使えば、往復5時間の距離なので、
新幹線を使ってアリバイ作りができるから証明にならない、と言いました。

その頃小杉は、竜実の隣人の松下に立会人になってもらい、
管理人から預かった鍵で竜実の部屋のドアを開け、
家宅捜索をしていました。
そして、福丸陣吉の首を絞めるのに使われたリードが発見されました。

一方、竜実は波川にアドバイスされ、スマートフォンの電源を切りました。

松下から電話があり、家宅捜索で凶器のリードが見つかったと聞くと、
竜実は、ペロのリードは2本あり、
凶器に使われたのは新しい方だと言いました。

今帰ったら、竜実は120パーセント逮捕されてしまいます。
冤罪で人生を棒に振ってしまいます。

竜実は、物語冒頭で出会った女性スノーボーダーの写真を
撮ってあげたのを思い出し、彼女がホームグラウンドにしている、
里沢温泉スキー場でその女性を探し、
アリバイの証言をしてもらうことにしました。

波川も一緒に行ってくれることになり、波川のマンションを出て、
後輩の藤岡に口止めをして車を借りました。
時刻は午後11時を少し過ぎたところでした。
Nシステムを避け、高速道路は使わず、下の道で行くことになり、
カーナビで検索しました。

車を発進させようとした時、波川の女友達に声をかけられ、
N駅まで送って欲しいと言われました。
波川は、その女友達と一回やっていて、断り辛く、送ってあげました。

翌朝になり、やっと根津昇平が登場します。

里沢温泉スキー場で、ゲレンデを舞台にした結婚式を始めようということになり、
老舗旅館『板山屋』の経営者の長女の成宮葉月と、
根津の後輩パトロールの長岡慎太が、
宣伝のためにスキー場で結婚式を挙げることになりました。

しかし、スキー場関係者に、そんなノウハウを持っている者はいませんでした。
成宮葉月の妹、莉央(りお)は東京の広告代理店にいたことがあり、
自分がプロデュースしたいといいだしました。

莉央は昔からの伝手を使い、スタッフを集め、
シリーズメインヒロインの瀬利千晶にも声をかけました。
千晶は莉央の親友でもあり、スノーボード選手時代のライバルでもありました。

そしてこの時点で、結婚式は2日後の午後1時に迫り、
根津たちはその練習をしていました。

その頃、警察は竜実を犯人と考え、
小杉は捜査一課の中条という若い巡査長とペアを組み、
竜実が所属しているアウトドアスポーツのサークルを当たることになりました。

中条はスマートフォンで調べ、
竜実が『マウンテン・モンキーズ』というサークルに所属していることを突きとめ、
『マウンテン・モンキーズ』が溜まり場にしているお好み焼き屋に行きました。

お好み焼き屋の店主に頼み、リーダーの藤岡という3年生を呼び出してもらいます。
藤岡は竜実と波川に車を貸していましたが、もちろんそんなことは話さず、
最近は会っていないと答えました。
中条に頼まれ、藤岡はサークルのメンバー全員に、竜実の行き先を知らないか、
とメッセージを送ります。

波川だけが未読だと知り、中条と小杉は波川の部屋に行きました。
所轄の刑事には荷が重いだろうから、本部に戻ってください、
という意味のことを中条に言われ、小杉は内心で怒りながらマンションを出ました。

小杉は自転車を倒した女子大生を助け、その女子大生から、
昨夜、波川と竜実にN駅まで送ってもらい、
カーナビに里沢温泉スキー場までのルートが表示されているのを見た、
という情報を得ることができました。

南原は、本庁を出し抜こうとして、小杉と白井の2人だけで、
3日以内に脇坂竜実を発見し、確保しろと命令しました。

一方、里沢温泉スキー場に着いた竜実と波川は、
アリバイを証言してくれる女性のことを『(救いの)女神』と呼び、
女神を探していました。

まず、女神はスキー場のスタッフではないかと考え、
事務所でインストラクターの顔写真を見ますが、女神はいませんでした。

女神はパウダー好きで、コース外で出会ったと竜実が言うと、
波川は、圧雪などの整備が入っていない山の中を、
地形や自然を熟知したスタッフに案内されながら滑る、
バックカントリーツアーに申し込みました。

講習を受け、ガイドの男性に、友人が一目惚れをした女性スノーボーダーを捜していて、
その女性はコース外を滑るのが好きだから、
地元の人たちがコース外を滑るとしたら、どのあたりが多いか、
と竜実たちは聞きました。
しかし、当然、教えてもらえませんでした。

そこへ、無断で山に入ったきり戻ってこない男を探している根津昇平が現れ、
その男を見かけていた竜実がその場所に案内しました。
すると、その男は木に激突して肋骨を折り、動けなくなっていました。

その頃、小杉と白井も里沢温泉スキー場に到着し、
レンタルショップでスキーヤーの衣装を調達し、
予約してある宿で聞き込みをしましたが、誰も竜実達を見かけていませんでした。
夕食を済ませようと、小杉と白井は店を探します。

偶然前を歩いていた根津と長岡を発見し、根津達が入った居酒屋に、
小杉と白井も入りました。

小杉と白井は、家出したボンボンを探している調査会社の者だと名乗り、
竜実の写真を居酒屋の女将見せましたが、女将は知らないと答えました。
根津もその写真を見ましたが、
木に激突して肋骨を折った男を探していたときに竜実に会っていたのに、
見覚えはないと嘘をつきました。

千晶と莉央と葉月も店にやってきて、明日のリハーサルの話をします。

小杉と白井が店を出ていくと、さっきの写真の男性に見覚えがあった、
という話を根津はしました。
自分たちのツアーそっちのけで案内してくれた竜実達のことを、
悪い人ではないと直感し、根津は竜実達の味方をしてあげたのでした。

一方、公衆電話から大学の仲間に連絡をとった竜実と波川は、
実家に電話して心配ないと伝えました。
パウダーランが好きな女神は朝一番の山頂近くまで行く方のゴンドラに乗る、
と考え、翌朝午前8時にゴンドラ乗り場に行くことにしました。

(ちなみに、このシーンに本編の内容とは関係ないラジオで、
「東京にお住まいのホテルマンのMさん」の話がありますが、
これは「恋のゴンドラ」に登場した水城という男が女性達に話していた笑い話です。
根津昇平も「恋のゴンドラ」にゲスト的な扱いで登場しています。)

一方、旅館で休んでいた小杉と白井は、南原から、
竜実のスマホの過去のGPS位置情報や車の動きを調べ、
事件当日、新潟のスキー場に行っていたことを突き止めたと教えられました。
竜実にはアリバイがあることになりますが、
それは波川が竜実のスマホと車を使い、
アリバイ工作をしたのだと南原は考えていました。

小杉は南原に、竜実と波川のウェアの色と写真が欲しいと頼みました。
南原は小杉と白井に、竜実の車を探せと命令されました。

翌朝、車中泊をした竜実と波川は少し寝坊してしまいましたが、
ゴンドラの営業前にゴンドラ乗り場に到着し、女神を探しました。
しかし、ゴンドラの列の中には女神はいませんでした。

昨日バックカントリーツアーで竜実たちを案内してくれた、
高野誠也(たかの・せいや)という若い男性ガイドを発見し、
その高野から、女神が滑っていそうな滑走禁止エリアを教えてもらいました。

その滑走禁止エリアのコースの入り口で、
竜実と波川は1時間以上見張りましたが、女神は現れず、
諦めて別の場所を探そうと下まで滑り、リフトに乗り直することにしました。

ところが、その途中、竜実は女神を発見しました。
白地に赤の水玉模様のウェアで、ヘルメットは黒、パンツはライトブルーでした。
竜実は女性を追いかけますが、彼女のスピードとテクニックは尋常ではなく、
追いつけず、竜実は途中で転倒して女神を見失ってしまいました。

一方、白井と手分けして竜実の車を探していた小杉は、
昨日入った居酒屋の女将に不審者扱いされて話しかけられました。
村の旅館組合に、長野県警からの竜実の車両の問い合わせのファックスが
あったことを女将に教えられました。

小杉は白井を呼び、刑事の身分を明かし、
上司の指示で自分達2人だけが独自に竜実を追っているということも含めて、
女将に詳しい事情を説明しました。

その時、若者が明日のゲレンデ・ウェディングの資料を持ってきて、
結婚式のことを思い出した女将は、結婚式を成功させるために、
明日、結婚式がすべて終わるのを見届けてから、
竜実がこの村に来ていることを警察に知らせると言いました。

小杉は女将に頼み、竜実を見つける手助けをしてもらうことにしました。

一方、竜実と波川は、コース外を滑っているのを根津に見つかってしまい、
自分達を探している2人組の男がいるのを教えられました。
女性スノーボーダーを探していることを根津に伝えると、
スカイウェイに入ってすぐのところに、
ローカルの悪ガキどもが侵入するポイントがある、と教えてくれました。

公衆電話で後輩の藤岡に電話し、ウェアの写真を刑事が知った、
ということを知った波川は、今すぐ服を着替えないといけない、と言いました。
しかし、刑事がレンタルショップを張っている可能性があるので、
レンタルは使えません。

波川と竜実は高野に、女性に一目惚れをしたのは竜実本人だと言い、
親の決めた婚約者と結婚させたい親に追われていると説明し、
追っ手の目を欺くためにウェアを貸してほしい、と頼みました。

高野は了承し、『カッコウ』というレストランに行ってほしいと言いました。
この『カッコウ』は、「疾風ロンド」に登場したお店です。

『カッコウ』に向かう途中、結婚式のパフォーマー達の会話を聞き、
明日、このスキー場で結婚式があることを竜実と波川は知りました。

『カッコウ』に着くと、高野の弟の裕紀(ゆうき)に話しかけられ、
裕紀とその友達の川端健太のウェアを貸してもらえることになりました。

裕紀と健太も、「疾風ロンド」に登場した悪ガキ達です。

一方、女将は、竜実たちはスノーボードが大好きだから、
逮捕される前に最後の晩餐とし極上のパウダースノーを滑りに来たのだろう、
と考えました。

スキー初心者の白井にはレンタルショップを回らせ、
小杉と女将はスキー場でスキーをして竜実たちを追いかけることにしました。

顔の広い女将は、ゴンドラ乗り場の係員たちに声をかけ、
竜実たちを見かけたら連絡してほしいと頼んで回りました。

女将は若い頃はアルペンスキーの高速系の選手で、地元では有名人なのだと、
ゴンドラの中で話しました。
女将は15年前に夫と結婚し、
夫の祖父の代からやっている旅館を引き継ぎました。

しかし、女将の夫は8年前に肝臓癌で亡くなり、
それ以来女将は旅館と居酒屋の切り盛りをしていました。

一方、根津や千晶や莉央は、
ゲレンデでパフォーマンスのリハーサルの見学をしていました。

千晶の親から電話がかかってきて、電話を切った後、
家業の保育園を継げと親に言われていることを千晶は告白しました。

若いうちは好きなスノーボードをやらせてもらいましたが、
家業を継ぐことが決まったら、二度とスノーボードには乗らない、
と千晶は言いました。

根津も、新潟の小さい建築事務所を継いでいて、
冬場以外は建築士として働いていました。
昔、遊園地みたいなスキー場を作りたいという夢を千晶にしたことがありました。

その頃、根津に教えてもらったコース外のエリアを見張っていた竜実と波川は、
今日はもう女神は現れないかもしれないと思い、正規のコースに戻ろうとします。

しかし、パトロール隊員達がそのコースに『貸し切り閉鎖中』と
書かれた札を立てていました。
ゲレンデ・ウェディングのリハーサルをしていたメンバーの中に、
竜実は女神を発見しました。

パトロールがいますし、警察もこのスキー場に来ている可能性が高いので、
揉め事を起こすわけにはいかず、様子を見ることにしました。

一方、女将のところにゴンドラ乗り場の作業員から連絡があり、
グレーにピンク、ブルーに黄色、という竜実と波川のウェアを発見しました。

しかし、そのウェアを着た2人は林道を滑って逃げてしまいました。

しばらくして、リフトに乗っている2人が小杉達に手を振っているのを見て、
女将は、何だか、おかしいと思いませんか、あの2人、と小杉に言いました。

その頃、竜実と波川はコースを大きく迂回して山麓まで降りていました。
しかし、降りる場所を間違えてしまい、結婚式の集団はもういなくなっていました。
食道やコーヒーショップを回っても見つからず、
高野を頼ろうと『カッコウ』まで行きました。

すると、そこに小杉と女将が待ち構えていました。

川端健太と高野裕紀が、勝手に竜実と波川のウェアを着て滑っていたのでした。

女将は、地元の悪ガキの仕業だと考え、
悪ガキが溜まり場にしている『カッコウ』に来たのでした。

ちなみに、川端健太は女将の甥っ子でした。

小杉は竜実を逮捕して警察署に連れて行こうとしますが、
竜実と波川は無実を訴え、
アリバイを証明できる女性がこのスキー場にいると説明しました。

小杉は竜実達の説明に説得力を感じ、信じ始めていました。

南原から電話があり、一課が藤岡の駐車場で竜実の車を発見し、
竜実達が藤岡の車で逃走していると突き止めた、と教えられました。
本庁の花菱は、人海戦術で逃走車両を調べており、
リミットは明日の午前中だと南原に言われました。

高野誠也は、結婚式のパフォーマンスについて調べ、
例の女将がいる居酒屋で、
パフォーマンスを仕切っている千晶と待ち合わせしました。

やってきた千晶と根津に事情を説明しますが、
さっきのパフォーマンスのリハーサルで滑っていたのは千晶であり、
千晶は今シーズン、一度も新月高原スキー場に行っていない、
人違いだと言われてしまいました。

今朝、コース外でツリーランをしていたのは千晶ではありませんでした。
実はあのウェアは、某スキー場がレンタル用に作ったもので、
市販はされていませんでした。
古くなったそのウェアを処分すると聞き、
赤と白だから縁起がいいと考えた千晶は、
パフォーマンスのウェアを統一するのに使おうと、
数日前に全部で50着くらい、こっちに送ってもらったのでした。

根津に言われ、千晶はパフォーマーにメッセージを送りました。

一方、小杉は女将に、俺たちは将棋の駒だから、
竜実が犯人ではないと思っていても明日の午後には竜実の身柄を確保し、
東京に連れて帰らないといけない、という話をしました。

しかし女将は、小杉は一度は上司に逆らおうとしたと言い、
この人も五分の魂を持っている人だなって思った、という話をしました。

女将が夫と結婚した時、村全体で借金が20億円もあり、
大手企業がスキー場を買い取ろうという話が飛び込んできました。
しかし女将の夫は真正面から反発し、
村の最大の財産を売るというのは魂を売るのと同じだ、
一人一人は小さな虫みたいな存在かもしれないけど、
一寸の虫にも五分の魂がある、
その魂を集めれば大きな力になるはずだ、と主張しました。

女将はその話をした後、小杉さんの魂はどうなんですか、と言いました。

その頃、竜実の部屋の電話に、今回のパフォーマーの中に女神はいない、
ウェアを貸した人もいなかった、という千晶から電話がありました。

女神が何らかの事情で嘘をついている可能性もあるので、
翌日の朝9時に、竜実が直接パフォーマーの女性たちの顔を見て、
女神を探すことになりました。

その話を小杉に伝えると、犯人を明らかにすれば、君の無実を証明できる、
と小杉は言いました。

小杉は殺人事件の概要を竜実たちに説明します。

というか、読者に事件の概要が説明されるのも、これが初めてです。

殺されたとき、
被害者の福丸陣吉は「テレビを見ながら囲碁の研究をしていたのではないか、
と警察は考えていました。

福丸に生前、臨時収入が入ったとかで寿司を食わせてもらったことがあった、
という話を竜実はしました。

現場の写真を見た竜実は、
すでに知っていることばかりで役に立たなかった、
と福丸が言っていた『囲碁ワンランクアップ術』という本が、
テーブルの上に載っているのはおかしいと言いました。

また、福丸は殺されたときにセ○シータレントのイメージDVDを見ていた、
ということになっていましたが、
仏壇が開いていると死んだ奥さんに見られているみたいで落ち着かない、
と福丸が言っていたのに、仏壇が開いているのは変だと竜実は言いました。

仏壇が開いていたのは、犯人がDVDをセットしたからで、
本当は囲碁のDVDが入っていたのだろうということになり、
小杉は始発の電車で東京に戻って犯人を捜すことにしました。


何としてでも証人の女性を見つけるんだ、それができない場合は、必死で逃げろ、
と小杉は言い、部屋を出て行きました。

翌朝、南原からの電話で、
間もなく警察が里沢温泉スキー場にやってくると知った小杉は、
そのことを竜実達に伝えるように女将に頼みました。

竜実はパフォーマーの女性達の顔を見せてもらいますが、
女神はいませんでした。

しかし、ヘルメットに星型のシールが貼ってあったことを話すと、
千晶は、このウェアを持っている人間がもう1人いるのを忘れていた、と言い、
新婦の葉月の妹の莉央がウェアとヘルメットを持っていると言いました。

莉央がいる場所へ行こうとゴンドラに向かいますが、
竜実は警官に見つかってしまいます。
竜実は必死で無実を訴え、アリバイの証人が近くにいると話しますが、
警官は話を聞いてくれません。

竜実はスキーで逃げ出しますが、大勢の警官に囲まれてしまいました。


千晶は「莉央に会いに行き、新月高原スキー場で竜実に会ったのを証言してほしい、
と頼みました。

その頃、中条は完全に竜実を犯人扱いし、
竜実や波川の話を全く聞こうとしていませんでした。

しかし、そこへ小杉から中条へ電話があり、
『たまには被疑者たちの話を聞いた方がいいですよ。
あんたより、よっぽど賢い人間かもしれませんからね。
後で恥をかきたくなかったら、いう通りにすることです』
と言われました。

千晶と莉央がやってきて、莉央が竜実に顔を見せますが、
女神ではありませんでした。
しかし、莉央の姉の葉月が、莉央に無断でウェアとヘルメットを借り、
新月高原スキー場に行き、竜実に写真を撮ってもらっていたのでした。

莉央は葉月に電話しますが、たった今、
妊娠3か月の葉月の具合が悪くなり、
ゲレンデ・ウェディングができなくなってしまいました。

莉央は、千晶と根津に結婚式の代役を頼みました。

葉月は病院に行く前に、竜実と中条のところにやってきて、
アリバイを証明してくれました。

竜実たちは見張りをつけられつつもある程度の行動の自由が許され、
根津と千晶の素晴らしい結婚式を見学しました。


一方その頃、小杉と白井は「岡倉貞夫(おかくら・さだお)という老人の家を訪れ、
福丸と結構な金額を賭けて囲碁をやっていただろう、と言い、
事件前日に囲碁番組を録画したDVDを押収しました。

そのDVDに福丸の指紋が付いていたのが決め手となり、
岡倉貞夫は逮捕されました。

あの日、岡倉貞夫は福丸に頼まれ、前日の夜に録画した囲碁番組のDVDを持参し、
そのDVDを見ながら、金の無心をしました。
岡倉貞夫は日々の生活に困窮し、賭け囲碁仲間に加わりましたが、
負けが込み、支払いに苦労していました。

話を聞いた福丸は、借金を頼む前に、まず負けた分を払え、と怒り、
岡倉貞夫の息子に電話しようとしました。

息子に知られたくなかった岡倉貞夫は、福丸を殺害し、
DVDを入れ替えたり、カムフラージュに教本を置いたり、
お金を盗んだりして逃げ出したのでした。

岡倉貞夫が自供してから一週間後、小杉は再び里沢温泉スキー場を訪れ、
女将に事件解決を報告しました。

そこへ根津と千晶が通りがかり、千晶の家の家業は莉央がやってくれることになった、
という話をしていました。
根津と千晶は本当に結婚することになったのですが、
もう一回本物の結婚式をやりたいと言う千晶と、
二回もやりたくないと言う根津は口喧嘩していました。

また、竜実や波川や藤岡を含めた『マウンテン・モンキーズ』のメンバーは、
お揃いの白地に赤い水玉模様のウェアを着て、
里沢温泉スキー場でスノーボードをしていました。


というあらすじなのですが、東野圭吾作品のシリーズの主人公は、
なかなかヒロインと結ばれないことが多いので、
根津が幸せになってくれたのは良かったと思います。

とても面白かったですし、
ハッピー・エンドになってくれたのも良かったです。

しかし、殺人事件の真犯人の正体がひど過ぎます。

物語のメインは、竜実と警察の攻防や、女神探しであり、
真犯人なんか誰でもよかった、というのは分かります。

でも、いくら誰でもよかったからと言っても、これはないでしょう……。

真犯人の正体がひど過ぎる理由を、メタ的な視点で解説します。

まず、竜実は警察から逃げるだけで精一杯ですし、
警察は竜実が犯人だと思い込んでいるから他の犯人を探そうとしていません。

しかし、読者は違います。

読者は竜実が犯人ではないと知っているので、
誰が犯人なのだろうと考えながら読み進めます。

終盤になって小杉が竜実の無実を信じて、竜実以外の犯人を探そうと、
竜実から情報を聞きますが、その時の会話が事実上答えになっているので、
そこからが解答編で、その直前までが問題編、という風に捉えることができます。

それなのに、「問題編に真犯人の岡倉貞夫が全く登場していません。
全部で409ページの話なのに、岡倉貞夫が初めて登場するのは395ページ目です。

問題編には、物語の鍵となる囲碁の囲の字もなければ、
セ○シーDVDや囲碁の教本というヒントも全く登場しません。

つまり、この話は、問題編に登場しなかった犯人が、
問題編には登場しなかった動機で、
問題編には登場しなかった方法を使ってカムフラージュしていた話だった、

ということになります。

いくら何でもひど過ぎるでしょう。

ほんの一行でいいから、「岡倉貞夫が序盤に登場していたり、
福丸陣吉の趣味が囲碁だと序盤で書かれていれば、
こんな不満は抱かなかったのに、と思います。

っていうか、全く登場してなかった岡倉貞夫を犯人にするくらいなら、
動機の賭け囲碁やカムフラージュはそのままで、
柴犬のペロの散歩のバイトを竜実に紹介した大学の教官が犯人だった、とか、
『マウンテン・モンキーズ』が溜まり場にしている
お好み焼き屋の店主が犯人だった、という風にすることもできたはずです。

何でよりによって、一行も登場してない奴を犯人にするんだよ、と思います。

現実の事件ならそれでいいですが、これは小説なんですよ。

解決編で初めて真犯人が登場して喜ぶ読者がいるとでも思っているのでしょうか。


全体としてはとても面白い話だっただけに、その部分が残念です。

東野圭吾「恋のゴンドラ」7話「ゴンドラ リプレイ」のネタバレ解説

最終話です。

桃実は職場で弥生に、日田のことがまだよくわかっていない、
と愚痴をこぼしました。

弥生のアドバイスで、日田のことをもっとよく知るために、
またしても里沢温泉スキー場にスノーボード旅行に出かけます。

メンバーは月村夫妻と水城と秋菜と、日田と桃実でした。

しかし、旅行中、日田は空気の読めない言動を繰り返します。

自由に滑ることになった時も、他のカップルが男女で滑っているのに、
日田だけはどんどん先に行ってしまい、
日田を追いかけた桃実は転んで大変な目に遭いました。

食堂で日田に文句を言うと、日田は、
桃実がついてきてるとは思わなかった、と言います。

ついていくに決まってるでしょっ、
なんで、その程度のことがわかんないのよぉ、
と桃実が泣きながら言うと、日田は、
だったらそういってくれたらよかったのに、と言いました。

センスの悪い服を着ている日田に、あたしが服を選びましょうか、
と桃実が言うと、日田は助かると言いました。

日田を着せ替え人形にするのは楽しそうで、
桃実は、一つのヒントを摑みました。

今度は、桃実が日田の前を走ることになりましたが、
日田はちゃんと桃実を待っていてくれて、うまく滑ることができました。

桃実は、神社仏閣マニアだと打ち明け、
来週の月曜日の朝早くに鎌倉に行こうと言いました。

日田は女性をリードするタイプではなく、
また、桃実も男性にリードされるのが好きなタイプではなかったので、
桃実が好きなように行動し、日田に合わせてもらうようにすれば、
うまく付き合えるのだと判明しました。

来週の月曜日の朝は、
日田が大好きなアメリカンフットボール界最大のイベント、
スーパーボウルが全世界に中継される日でしたが、
日田は桃実と鎌倉に行くのを優先してくれました。

日田と桃実がいい雰囲気でゴンドラ乗り場に行き、
月村夫妻と水城と秋菜と同じゴンドラに乗りました。

さらに、カップルの男女が入ってきたのですが、
その女性の方は、「何と、桃実にとっては因縁の人物である、
橋本美雪であり、男性の方は浮気男の広太でした。

桃実はゴーグルをつけているので、
美雪と広太の方は桃実の存在には気づいていない様子でした。

日田が美雪に告白しようとした時に、広太が横取りしたということを、
桃実は初めて知りました。

一時期美雪と別れる原因となった1話の出来事を、
広太は面白おかしく、水城たちに話します。

しかし、それは事実とは全然違っていて、
桃実は広太に彼女がいるのを知っていて大胆に誘ってきた、
という風に広太は嘘をつきました。

桃実にとっては1話の事件は不幸の始まりだったのに、
広太は、僕にとってラッキーでした、
このゴンドラは、幸運の恋のゴンドラです、と言って笑いました。
その瞬間、桃実の頭の中で何かがスパークしました。

桃実は日田に、さようなら、と呟き、広太を睨み付けながら、
ゴーグルとフェイスマスクを外しました。
数秒後、絶叫がこだましました。


というあらすじなのですが、「桃実が可哀相です……。

何も悪いことをしていないのに、
なんで桃実ばっかりが散々な目に遭わないといけないんだろう、
と悲しくなりました。

この後、桃実は日田の前で醜態を見せることになってしまったのでしょうが、
願わくば、日田がそんな桃実のことを受け入れて、2人とも幸せになってほしい、
と思いました。

東野圭吾「恋のゴンドラ」6話「プロポーズ大作戦 リベンジ」のネタバレ解説

4話の後、日田と桃実は何となく付き合っている雰囲気になりましたが、
日田は一度ゲレコンで桃実に振られたという思いがあり、
桃実の方は、まだ日田の空気が読めないところが心配で、
今ひとつ距離を縮められずにいました。

水城はそんな日田のためにひと肌脱いでやろうとして、
桃実にプロポーズしろ、と日田に言い、
弥生も誘って里沢温泉スキー場にスノーボード旅行に行きました。

水城はまだ本命の彼女である木元秋菜と付き合っており、
弥生に浮気相手になってほしい、と頼んでいました。

スノーボードの最中に、桃実だけ残して他の3人は姿を消し、
桃実がホテルに戻ると、豪華なスイートルームが取られていて、
ホテルの制服に着替えた日田が桃実を出迎え、
真っ赤な薔薇の花束を渡して桃実にプロポーズする、という作戦でした。

しかし、日田は途中で転んで怪我をしてしまい、
作戦は中止になりました。

桃実は日田についていてあげたいと言い、
水城と弥生がスイートルームに行くことになりました。

しかし、部屋に行く前に、弥生は、
この旅行は水城に木元秋菜にプロポーズさせるために、
日田たちが仕組んだものだったのだと言いました。

スイートルームに行くと、月村夫妻に呼び出された秋菜がいました。
水城は秋菜に真っ赤な薔薇の花束を渡して、
結婚しよう、幸せにするよ、とプロポーズしました。

秋菜は涙を流し、水城に抱きついてオーケーしました。


というあらすじなのですが、2話では水城が日田をハメましたが、
今回は日田にリベンジされてしまいましたね。

東野圭吾「恋のゴンドラ」5話「スキー一家」のネタバレ解説

今回は、2話に登場した月村春紀と、月村と結婚した旧姓土屋麻穂の話です。

月村にとっては義理の父親にあたる、麻穂の父親の土屋徹郎は、
スキーは大好きだけどスノーボードは大嫌い、という頑固な男でした。

月村は麻穂のアドバイスで、
スノーボードをやっていることは内緒にします。

また、月村と麻穂は、徹郎とその妻の小百合と一緒に、
土屋家では恒例になっているスキー旅行に行くことになりました。

スノーボードは滑走禁止のスキー場に行く予定でしたが、
宿が取れず、里沢温泉スキー場に行きました。

そこで月村はスキーをしましたが、スノーボードには慣れていて得意なのに、
スキーは上手くいかず、徹郎に怒鳴られてばかりで嫌気が差しました。

レストランに行くと、スノーボードをしに来た若者達のマナーが悪いのを見て、
徹郎はスノーボードの悪口を言います。

レストランは混んでいて、パトロール隊員の根津昇平が、相席を頼みました。

ちなみに、この根津昇平というキャラクターは、
「白銀ジャック」や「疾風ロンド」などの主人公ですが、
今回は脇役として登場しています。

スキーヤーの根津を気に入った徹郎は、昼食後、
根津にお勧めコースを案内してもらいます。

根津は非常にスキーが上手く、
徹郎はスキーに関する根津のアドバイスを素直に受け入れました。

根津は、深雪用のスキー板が流行していて、スノーボーダーだけではなく、
圧雪していない滑走禁止エリアを滑るスキーヤーも増えた、
という話をしました。

林道に入ろうとしたところで、
根津のスキー板のバインディングの調子が悪くなり、
通りがかった親切なスノーボーダーの若者達から、
スノーボードを貸してもらいました。

実は根津は、スキーよりスノーボードの方が本職で、昔、
スノーボードクロスのオリンピック候補の選手だったこともあったのでした。

根津のスキーをつけた若者は、片足だけで問題なく滑っていきました。

根津は、スキーヤーとスノーボーダーの一方しか知らなければ、
どうしても思いやりに欠けた部分が出てしまう、
両方を知ることはとても大切だ、と言いました。

旅館に行くと、徹郎はショックを受け、
スノーボードの悪口は言わなくなっていました。

実は、「この一連の流れはすべて、計画通りだったのでした。

3話に登場したパトロール隊員も実は根津で、
その時に根津と知り合った麻穂は、根津に相談し、
父親のスノーボード嫌いを何とかしてもらおうとしたのです。

麻穂は、今なら月村がスノーボードをしていることを
打ち明けられると言いました。
しかし月村は、スノーボードは徹郎がいない時にいくらでも出来るから、
この家族旅行では毎年スキーをすると言いました。

月村は、根津の言葉で、スキーとスノーボードのどちらかしか知らないのは、
とても損なことだと気づいたのでした。


というあらすじなのですが、東野圭吾さんも元々はスキーヤーで、
後になってスノーボーダーに転身した人なので、
両方の気持ちが分かるのでしょうね。
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