港かなえ「未来」のネタバレ解説

未来


序章

主人公の佐伯章子(さえき・あきこ)が、ある女性と高速バスに乗るシーンがあります。

章子は、20年後の章子、30歳の章子と名乗る人物から届いた、
「未来の手紙」を取り出しました。

手紙には、東京ドリームマウンテン30周年と英語で書かれた、しおりが入っていました。
東京ドリームマウンテンが30周年を迎えるのは、
手紙が届いた時点から見て、まだ20年も先のことでした。

父親を亡くした章子を慰めるために、
お父さんがあなたの名前にこめた思いを知っていますか? と書かれていました。

章子の母の名前、文乃(あやの)には「文」という字が入っていて、
章子の「章」と「文章」になるということが書かれていました。

この手紙が届いたのは、小学4年生の終わりでした。


章子

この章は、章子が未来の自分に向けて書いた手紙、という形式で書かれています。

実際に未来に送ることはできないので、どこにも送りませんでしたが。

10歳の章子が「大人章子」に宛てて書いた手紙には、3年生のクリスマス前に、
サンタクロースに何をお願いするか話していたら、
須山亜里沙(ありさ)に、サンタクロースなんているわけないじゃん、
と言われたことについて書かれていました。

章子が大好きなパパに、サンタって本当にいるのかな、と聞いたら、
サンタは、サンタを信じてくれるところにいるんだよ、と章子のパパ、良太は答えました。

次は、5年生になった章子の手紙です。

マドレーヌを作ってくれる文乃には、オン(人)とオフ(人形)があり、
生活能力がないことが書かれています。

4年生まで担任だった篠宮先生が退職し、林優斗(ゆうと)という、
大学を卒業したばかりの若くてかっこいい先生が担任になりました。

人形の時の文乃は家事を全くできないので、
遠足では、章子は自分でお弁当を作りましたが、クラスメートの後藤実里(みのり)に、
えー、遠足なのに? 何で? かわいそう、と言われました。

しかし、クラスメートの亜里沙が、あたしも自分で作ったよ、と助けぶねを出してくれ、
林先生も、自分で作ったんだと言い、大きくて丸いおにぎりを見せました。
おにぎりにはハンバーグやたまご焼きやシャケ、チーズなどが入っていました。
林は実里に注意してくれました。

良太は生前に「樹木葬」というのに申しこんでいて、
良太が働いていた会社の社長夫妻と、文乃と章子は、
「パパの樹」を植えにいきました。

良太の持ち物の片づけをする時に、章子はフロッピーディスクを見つけましたが、
ノートパソコンにはフロッピーの差し込み口がなく、取りあえず、
引出しの中にしまっておきました。

文乃と林先生が付き合っているという噂が流れ始め、2学期の終業式の翌日、
学校で話し合われることになりましたが、大人達の話し合いの席に、
章子は呼んでもらえませんでした。

章子は図書室で待っていることになりましたが、
親がPTAの役員の実里も来ていました。
実里は、文乃や林先生たちが話し合っている会議室の隣にある、
児童会室の鍵を持っていて、章子と実里は児童会室にしのび込み、話し合いを聞きました。

ぼくは、佐伯文乃さんを愛しています、と林先生は言い、
心療内科に文乃と通っていたことなどを話しましたが、
わたしには、林先生に対する、恋愛感情はありません、と文乃は言いました。

その夜、林先生は章子の家までやってきて、家の前で騒ぎ、近所の人が警察を呼びました。

林先生は休職になり、3学期からは学年主任の仙道先生が担任代理になりました。

章子は6年生になり、亜里沙や実里とは別のクラスになりました。

その春休みに、良太の母が章子の家にやってきました。

良太と文乃は駆け落ちしていて、良太は母と絶縁していました。
良太の母は、最近になって良太が死んだことを知り、線香をあげにきたのでした。

良太の母は、章子の顔が良太そっくりなのを見て、
おばあちゃんの家に来てみないかい、と言いました。

学校にも行ってみようか、と良太の母が言うと、
やめて! 章子はわたしの、佐伯文乃と佐伯良太の子です、と文乃が言いました。

佐伯は文乃の名字で、良太の苗字は樋口だったということを、章子は初めて知りました。

良太の母が帰ったあと、人形から復活した文乃は、
章子の将来を考えたら、おばあちゃんの所へ行った方がいいのかもしれないわね、と言いました。

良太の母から手紙が来て、ゴールデンウィークに遊びにおいでと、
新幹線のチケットまで入っていました。

章子は良太の母の家に行きました。古い、和風の、お屋敷のような家でした。

良太の母は、文乃が父親と兄が家の中でねているのを承知で、火をつけ、
父親と兄が死んだということを話しました。
父親と兄を殺す目的で放火したと、文乃は自分で警察に言ったのだそうです。

良太はね、あの女の死んだ兄と親友同士だったんだよ、と良太の母は言いました。
事件があったのは良太が公K2年生の時だったのだそうです。

この家でおばあちゃんといっしょに暮らさないかい、
ここにいれば、殺人犯のむすめだと後ろ指をさされることもないからね、
と良太の母は言いました。

章子は夜中にふとんを抜け出し、良太の部屋に行き、高校の卒業アルバムを見て、
自分がこの先、どうするべきか気付きました。

翌朝、章子は良太の母に、おばあちゃん、わたしはおばあちゃんの家にはもう来ません、
もう会いに来ないでください、と言いました。

わたしが人殺しの子になってしまったのは、おばあちゃんが会いに来たからだよ、
わたしは子供だけじゃなく、大人からも悪口を言われたことがあるけれど、
人殺しの子とは言われなかった、
パパが折角決まっていた県の職員の仕事に就かなかったのも、
この町ではママは一生人殺し呼ばわりされるって分かってたからだと思う、
と章子は言いました。

良太との最後の約束で、ママを守ると約束したことを話し、
ママの味方はこの世に、パパとわたししかいないんだよ、と章子は言ったのでした。

家に帰ると、文乃は自分でハローワークに通い、
となり町にある観光ホテルで働き始めました。

そのホテルの厨房で副料理長をしている、早坂誠司という、
背が高くてハンサムな男と、文乃は付き合い始めました。

早坂は高校卒業後、調理師専門学校に通い、
世界一と言われるフランスの「ガルニエ」という店で働いていたことを自慢しました。

章子は小学校を卒業し、良太と暮らしたマンションを引っ越し、
早坂が買った、町の外れにある、かつてはイタリアンレストランだった一戸建ての家に、
章子と文乃も住むことになりました。

早坂も文乃もホテルの仕事は辞めましたが、婚姻届は出しませんでした。

中学1年生になり、実里とは別のクラスになった章子は、
担任の小倉先生からクラス委員長に任命されました。

早坂の店、「HAYASAKA」がオープンし、亜里沙の父親の須山も昼だけ働き始めました。
須山は右手の親指の先がありませんでした。

料理はおいしく、最初は繁盛していましたが、ディナーコースが2万円から、
ランチは5000円からという高めの値段設定でした。

1年生の時、実里と同じクラスだった女子がイジメが原因で不登校になり、
首謀者は実里だという声が届いていました。

2年生になり、章子は実里と同じクラスになりました。

「HAYASAKA」は値段設定が高いため、開店6カ月で赤字となりました。
また、早坂は過去の素行が悪かったことをネットで誹謗中傷されていました。

ゴールデンウィークの最終日、実里とその両親が来店し、
シナモンが嫌いな実里が、シナモンを使ったロールキャベツが臭いと文句を言い、
実里の父親と早坂が口喧嘩をしました。

実里の母は、須山の指の先がないことを言い、
この店はヤ.クザがやっているというウワサは本当だったのね、と言いました。

早坂は、実里の父親がランチに愛.人を連れてきていること、
ナースに手を出していることを暴露しました。

その翌日、担任の大原先生が章子を呼び止め、
佐伯さんの家って、ハヤサカっていう、フレンチレストランで良かったのよね、
と言いました。

そして章子が実里のイジメのターゲットになりました。

実里は章子が使用して汚物入れに入れたナ○○ンを、
本谷という男子の机の上に置き、本谷が吐きました。

その1ヵ月後にも、実里は章子を臭い臭いと言い続け、本谷が学校に来なくなりました。

さらに、大原先生は職員室で章子に、本谷が学校に来られるように協力して、と言い、
消臭スプレーと口臭用の歯磨き粉などを渡しました。

章子は本当に自分が臭いと思いこみ、自室に閉じこもるようになりました。

「HAYASAKA」に対するネットの誹謗中傷、町の人達のウワサにもなり始め、
早坂は高校生の頃、傷害事件を起こして1年間、少年院に入っていたということが知れ渡り、
被害に遭ったという昔の同級生が、立ちのきの署名まで始めました。

須山は人材派遣会社に登録し、文乃も登録して、町の高齢者の家を回る仕事を始めました。

夏休みに、良太の樹を植えた霊園が経営破綻して、社長が雲隠れしている、
というニュースが流れ、章子は制汗剤とローズの香りのコロンをつけて霊園に行きました。

良太の樹は枯れていて、章子にとって頼れる大人である、
良太の会社の社長夫妻に会いに行きましたが、
社長の奥さんは昨年脳の病気で倒れて以来、体を動かすのが不自由になって、
社長は付きっ切りで介護をしていると事務所の人に教えられました。

図書館に行った章子は、図書館のパソコンで霊園の被害者についてネットで調べ、
ついでに良太の母の住んでいる市の名前、そして殺人事件について調べました。

中学2年生の長女が夜中、自宅に放火して、就寝中の父親と兄を殺害、
動機について長女は、父と兄からの虐待をほのめかしていました。

家に着くと、早坂の料理の腕を高く買っていた、
高級ホテルを10軒以上展開している会社の社長、猪川(いのかわ)の車がありました。

章子は文乃を探して厨房に行き、何だ、このにおい、と早坂に言われました。

早坂は「ク○ボケ」とか「石地蔵」と章子を罵倒しました。

そこに、早坂にホテルの料理長を頼みたいと思っていた猪川がやってきました。
小さな女の子が少し香水を付け過ぎたからといって、
あんな怒鳴り声を上げるのはいかがなものか、
それしきの事で怒っていたら、大勢の料理人を抱える厨房を任せる事はできない、
と言って、料理長の件を白紙にしました。

猪川が去ると、早坂は章子に殴る蹴るの暴行を与えました。

翌朝、目を覚ますと、章子の左側の目の横から頬骨沿いが、真紫に腫れ上がっていました。

さらにその夜も、酔った早坂は章子に暴力をふるいました。

その翌日、火事なの、逃げなきゃ、と文乃が章子を起こしました。

レストランのスペースが燃え、早坂にはギャンブルで作った借金も百万単位であったことから、
警察は保険金目的で早坂が放火したのではないかと疑いました。

しかし、須山が火事より1月前に、林先生がうろついているのを見たと証言しました。
警察が林先生を取り調べたところ、放火は否定したものの、
ネットにレストランの誹謗中傷を書き連ねていたことは白状しました。

良太の会社の社長が、知り合いの経営しているアパートを紹介してくれて、
安い家賃で住まわせてもらえることになりました。

夏休みが終わり、教室に入った途端、本谷が顔をゆがめて口を押え、トイレに駆け出しました。

章子は走って教室を後にして、そのまま家に帰り、学校に行かなくなりました。

章子はパソコンで2年生になってからの出来事を「大人章子」に向けて書きましたが、
あんたはにせ物、と書き、それらの文章を削除しました。

サンタを信じなくなったように、章子は未来からの手紙を信じなくなっていましたが、
それでも大人章子に向けて、日記のつもりで手紙を書きます。

章子よりずっと前から不登校気味だった亜里沙が、章子のアパートに来て、
遠足で作った、チーズ、ウインナー、卵焼き、ギョウザの入った爆弾おにぎりと、
手紙を郵便ポストに入れていきました。

章子は手紙に書かれた電話番号に電話をし、亜里沙とコンビニで待ち合わせました。
亜里沙は章子を、亜里沙の先輩の家に連れていきましたが、先輩はいませんでした。

実里に何された? と亜里沙が聞き、章子は話しました。

亜里沙は本宮と、1年の時に同じクラスでしたが、
本宮はにおいに敏感で、小学校が一緒だった男子から、
ゲロ吐き本宮とからかわれていたことを、亜里沙は話しました。

亜里沙は章子のにおいをかぎ、あんたは臭くない、と言いました。
体から出た物は臭い、だけど、それはあたしのだって、実里のだって、
みんな一緒、と言いました。

翌日、章子が登校すると、何か、今日、臭くない? と実里が言い、
取り巻き達が笑いましたが、そこへ亜里沙がやってきて、実里と取り巻き達に説教しました。

本宮が教室に入ってくると、亜里沙は本宮にも説教しようとしましたが、
章子はそれを止め、私、二年生の間は保健室登校するから、
本宮くんから大原先生に、三年生は別のクラスになれるように頼んでおいて、と言って、
教室を出て行き、その足で職員室に向かい、2年生の先生達の前で、
保健室登校をする事を宣言しました。

その後、章子と亜里沙は、図書室登校をするようになりました。
亜里沙の父の須山と早坂が、訪問介護がメインの人材派遣の会社を始め、
文乃もそこで働いているということを亜里沙は話しました。

章子は、亜里沙の先輩、智恵理(ちえり)に会いに行きました。

智恵理はたまに、記憶の一部がスコンと抜けることがあり、
粗大ゴミの日に拾ってきたみたい、というノートパソコンを持っていました。

章子は智恵理の家に通うようになり、智恵理がいない時に、
ノートパソコンを起動させ、フロッピーを入れ、
「僕の子どもへ」という文書ファイルを開き、読みました。

後日、章子は良太の持ち物だったCDケースに、写真が挟まっているのを見つけました。
10代くらいの良太と文乃と知らない男の子が写っていて、
その男の子の顔に、息をのみ、きっと、ママのお兄さんだ、と思いました。

3年生になり、章子は親友の亜理紗と一緒のクラスで、実里と本宮は別、
担任は1年生の時の小倉先生と、快適な状態になりました。

文乃は週に1度、マドレーヌを作ってくれました。

やっと幸福になれそうでしたが、智恵理が、智恵理の両親が寝ている自宅に放火し、
両親の命に別状はないけれど、重傷だという事件が起きました。

章子と亜里沙は修学旅行には行かず、返金されたお金で、
章子と亜里沙と、亜里沙の弟の健斗の3人で、
夏休みにドリームランドに行こうという話になりました。

しかし、健斗は自宅である4階建ての県営住宅の屋上から飛び降りて、
自殺してしまいました。

同級生が修学旅行に行った日、行かなかった章子は図書室に行きましたが、
そこに本宮もいて、去年はゴメン、と本宮は言いました。

また、修学旅行では実里の班の子が、実里がトイレに言っている隙に逃げ出し、
実里は自由行動の時、1人でいたということを、
章子が入っている文芸部の子が教えてくれました。

夏休みに、亜里沙が章子の家に来て、弟を殺したヤツが誰か分かったんだ、
オヤジだよ、と言いました。

あいつは介護ヘルパーの派遣とか言いながら裏で〇春のあっ旋をしていたんだ、
と亜里沙は言いました。
いのやホテルの会長は美少年好きで、早坂はこびを売るため、
須山に健斗を差し出させていたのでした。

文乃も〇春をやらされていたのだそうです。

亜里沙は、章子の真似をして押入れに入っていて、
須山や早坂の会話を聞いて知ったのだそうです。

オヤジを殺す、と亜里沙は言い、私も殺す、早坂を殺す、と章子は言いました。

章子と亜里沙は、タバコでニコチン毒の液体を作り、
早坂と須山に飲ませることにしました。
飲ませた後は、家を出る前に火をつけ、
最後の思い出作りにドリームランドに行くことにしたのでした。



エピソードⅠ

この章は亜里沙の視点で話が進みます。

亜里沙には優しい母と凶暴な父がいました。

亜里沙の父、須山は東京で名の知られた人気美容師だったらしいが、
亜里沙の母の両親が営み、早坂がアルバイトをしていた金属加工の会社に、
須山がアクセサリーを作ろうとやってきて、
機械で右手の親指の第一関節部を飛ばしてしまいました。

仕事をやめて田舎に帰ってきた須山をはげますうちに、
亜里沙の母は妊娠し、母は20歳、須山は23歳で結婚しました。

須山は働かずに酒を飲み、母に暴力を振るい、
痛めつけた翌日は、必ず、母の好物である果物を買ってきました。

母は食道ガンになり、須山が亜里沙と健斗を病院に連れて行く途中、
須山は亜理紗と健斗に、右手を突きあげて、ハイテンション! と叫ばせました。

母の手術の前日、須山はシャインマスカットを食べさせました。

それから1月もせずに母が亡くなると、
須山は亜理紗を殴ったり蹴ったりするようになりました。

殴られ、蹴られ、意識がもうろうとしてくると、
口の中にシャインマスカットの味がして、亜里沙は誰にも相談しませんでした。

5年の時の担任、林は亜理紗の家がおかしいことに気づいて家庭訪問に来て、
須山は亜理紗への暴力をやめ、健斗に暴力を振るうようになりました。

健斗も、痛いとなぜか、口の中にブドウの味が広がると言って、
誰にも相談しようとはしませんでした。

亜里沙はシャインマスカット味のチューイングキャンディを
万引きしようとしているところを智恵理に止められました。

智恵理は、小学4年生の夏に母親が弁護士と結婚することになり、
県営住宅から引っ越していた、亜里沙より2つ年上の少女でした。

亜里沙はキャンディを健斗にあげた後、智恵理に連絡をとり、
智恵理の家に遊びに行くようになりました。

不登校になっていた章子を誘って智恵理の家に遊びに行っていたある日、
亜里沙と章子は、智恵理の部屋のポスターの下に、穴が開いているのを見つけました。

後日、亜里沙は公演で智恵理がタバコを吸っているのを見つけ、話しかけましたが、
誰や? おどれ、ワシをなめとんのか、と智恵理が言い、亜里沙は自転車で逃げました。

その一週間後、亜里沙は智恵理の親友のまどかと会いました。
まどかの二の腕に、ギュッとつかまれたようなアザがあり、
竜崎さん、力強いから、とまどかは言いました。

竜崎は県営住宅にいた、強面のおじさんで、
亜里沙と智恵理が野良犬に襲われそうになっていたところを助けてくれた人でした。

まどかは、竜崎さんは智恵理の別人格なのだということを言いました。

その翌日、智恵理の家が火事になったことを亜里沙は章子からの電話で知りました。
智恵理が自宅に放火して、まどかの家に隠れていて、
まどかと学校の先生に付きそわれて、自首しました。

須山は健斗に暴力を振るわなくなりましたが、健斗が以前にもまして、
暗い顔をするようになり、亜里沙は未来から届いた手紙に入っていた、
ドリームマウンテンの栞をあげました。

亜里沙はまどかに会い、智恵理が中学生の頃から、
義理の父親に虐待を受けていて、母親は見て見ぬフリをしていたのに、
智恵理の妊娠に気づくと、悪魔呼ばわりしながら智恵理を階段から突きおとして流産させ、
その頃から時々、記憶が飛んでしまうようになっていたことを知りました。

健斗がシャインマスカットを買ってきて、ハイテンション!
と右手の拳を高く突きあげて叫びました。

未来からの手紙には、あいかわらず健斗と仲がいいと書かれていましたが、
シャインマスカットを食べた次の日の明け方、健斗は飛びおり自殺をしました。
遺書には、健斗が1日だけ未来に行き、おとなになった亜里沙と2人でドリームランドに行き、
ドリームランドで栞を買ってきたということが書かれていました。


エピソードⅡ

この章は、章子と亜里沙と実里が小学4年生の時の担任だった、
篠宮真唯子の視点で話が進みます。

真唯子の母は真唯子が3歳の時に家を出て行き、
真唯子は製麺所で働く祖母に育てられました。

しっかり勉強して、公務員になるといい、と祖母に言われ、
真唯子は先生を目指すようになりました。

真唯子は指定校推薦で東京の大学の教育学部に進学し、
郊外の古いアパートで、学生生活を始めます。

真唯子は、そのアパートに住んでいた、
原田という映画好きな男子大学生と仲良くなりました。

おばあちゃんが倒れた、と製麺所の社長の奥さんに知らされ、
真唯子は地元の病院に急ぎました。

頑張って…………せ…、と祖母は最期に言い、
大丈夫、私、先生になるから、と真唯子は言いました。

製麺所の人たちと葬儀も無事終わらせて、アパートに戻り原田と祖母の話をしました。

ドリームマウンテンの5周年記念プレイベントが始まる、
翌年の3月にドリームランドに行くことになりました。

冬休みに帰省して遺品の整理をしていると、
真唯子の母だと名乗る女と、行政書士だと名乗る男がやってきて、
祖母が真唯子に学費だと持たせてくれた金をよこせと言いました。

後2年分の授業料はください、と真唯子は頼みましたが、
真唯子の母はダメよと言いました。

真唯子はアパートに戻り、残り180万円をどう捻出するか悩みましたが、
原田には相談できませんでした。

真唯子は連日フルタイムでアルバイトをし、正月も働き詰めで、
河川敷に座ってクレープを食べていると、
映像系の製作会社の代表取締役だと名乗る時任冴美(ときとう・さえみ)、
という母よりも少し年上くらいの女性に声をかけられました。

カラオケのPVに3本20万円で出てほしいと言われ、
約束の日に連れて行かれたのは、鄙びた温泉旅館でした。

そのPVは「ラ○ホテル専用のもので、
本番ナシですがア○○○ビデオ同然のものでした。

真唯子は嫌がりましたが、違約金100万くらい請求すると言われ、
そのまま出演しました。

真唯子は原田に別れを告げましたが、
お願いだから、最後にもう1度、俺にチャンスをください、
どんなことからでも、絶対に真唯子ちゃんを守るから、と言われ、
真唯子はラ○ホテルに行き、出演したPVを見せました。

すると原田は、そんな胡散臭い話、何で疑わないんだよ、
逃げてくればよかったじゃん、プライドとかないの、
20万なんて、俺が出したのに、と真唯子を責めました。

真唯子は改めて原田に別れを告げ、アパートに帰ると、
製麺所の社長の奥さんから電話がかかってきて、
祖母が真唯子に財産を残してあげられるように遺言を作り、
成人式の振り袖の場所にしまっていたということを教えられましたが、
真唯子は成人式に出るつもりはなく振り袖を調べていませんでした。

私はまったく追い詰められてなどいなかった、原田くんでも、
製麺所の人でも、誰かにひと言、相談すればよかっただけ、
ねえ、真唯子、あんたの心が死にそうならば、いっそ、体も殺しちゃえば?
と真唯子は考え、電車に飛び込むつもりで、家を出ました。

でも、そういうのって、あまり迷惑をかけない時間の方がいいのかな、
と考え、最後は楽しいことをしようと考え、
真唯子はドリームランドとドリームマウンテンに行き、
また来たい、また来よう、明日からも何とかなるんじゃないかと考え、
自殺を思いとどまりました。

アパートに帰ると、真唯子が自殺しようとしていたことに気づいて
反省した原田に謝罪されましたが、真唯子は改めて原田に別れを告げました。


その後、真唯子は教師になり、章子と亜里沙と実里の担任になりました。

ハーフ成人式という20歳の半分、10歳を祝う行事があり、
担任が選んだ子供の作文を展示することになりました。

実里の作文には、わたしは将来、公務員になって、
苦労しているお母さんにラクをさせてあげたいです、と書かれていましたが、
実里の父親は医者で、夏休みの宿題の自由作文には、
家族でハワイ旅行した様子がのびのびと書かれていたから、
真唯子は実里の作文を展示しませんでした。

実里の母親は、実里が選ばれなかったことで真唯子に仕返しをしてやろうと
機会をうかがうようになり、カラオケのPVの写真を学校側に報告し、
真唯子は3月末付で退職が決まりました。

真唯子は退職する前に、章子と実里の家庭の問題と向き合うことにし、
余命2カ月の良太に会いに行き、
死を考えてドリームマウンテンに行ったことを打ち明けました。

僕が死んだら、「章子に未来からの手紙を書いてやってもらえませんか、
あなたには幸せな未来がある、そんな内容の手紙を、と良太に頼まれました。

ドリームランドやマウンテンをはじめとした、
ドリームリゾート全般を運営する会社に就職した原田は、
真唯子にドリームランドのチケットを送り続けていました。
原田が持ち帰った、ドリームマウンテン、30周年と誤植のある栞を、
真唯子はもらい、章子と亜里沙に送る手紙に同封しました。



エピソードⅢ

この章は、良太が章子に遺したフロッピーディスクの中にあった
文書ファイルという形式で書かれています。

良太は顔が醜いことにコンプレックスを持っていましたが、
そのコンプレックスを克服し、
上倉学園高等学校という、私立の男子校に進学しました。

2年生になってから、良太は森本誠一郎という美少年と出会います。

父親が下着泥棒で逮捕され、そのせいで名字が変わった布施というクラスメートを、
森本がからかい、良太はそれを庇いました。

それをきっかけに、森本は良太の顔の醜さを石地蔵とからかうようになりました。

良太は森本にノートを貸すようになり、森本はそのお礼だと言って、
良太を家に招きました。

森本の父親は、良太の母が憧れている議員宅で、
いかにも金持ちが住んでいそうな洋風2階建ての洒落た建物でした。

隣の部屋に女がハ○カで待ってるからさ、1時間、好きにしておいでよ、
ということを森本は言いました。

その美しい少女を見た良太は理性を失って、彼女と関係を持ってしまいました。

その少女は真珠(まじゅ)という中学2年生の、森本の実の妹でした。

後日、良太は、真珠さんにまた会わせてほしい、後、金が必要な時には僕が払うから、
他の奴に真珠さんを売らないでくれ、と森本に頼みました。

真珠と再会した良太は、このあいだのことを謝りました。

良太は午前中にボランティア部でお菓子を作っていて、
調理実習の匂いがする、と真珠は言いました。

後日、良太は真珠とマドレーヌを作りました。
それを知った森本は、最初は怒っていたようでしたが、
マドレーヌを食べると様子が変わってきました。

良太は森本の家に泊めてもらうことになり、森本と真珠とハンバーグを作る時に、
交替で写真を撮りました。

その夜、良太は真珠が実の父親にレ○○されているのを目撃してしまいます。

森本は、良太をドリームランド行きの夜行バスが出る駅に連れていき、
事情を説明します。

森本の父が真珠に初めて手を出したのが、小学5年生になったばかりの頃でした。
母はおかしくなり、森本誠一郎と真珠とドリームランドに出かける予定だった日に、
睡眠薬を大量に飲んで自殺しました。

それから半年後に、森本は父が真珠に手を出していたことを知り、
自分も真珠に手を出そうとして失敗し、他の奴に真珠を売り始めました。

しかし、良太が真珠と仲良く調理実習をしているのを見て、
森本の罪悪感が膨れ上がりました。

俺は父を殺す、と森本は言い、計画を打ち明けました。

母の命日の8月29日に、森本は液体ニコチンを父に飲ませ、自殺に見せかけるため、
森本と真珠がドリームランド行きバスに乗った後、
良太が預かっていた鍵で家に入り、火をつけるという計画でした。

8月27日に、お礼の品だ、と言って森本は良太にCDを渡しました。

29日の午前0時過ぎに、ドリームランド行きのバスが出る、
森本の家の最寄駅の前を、良太が自転車で通り過ぎると、真珠の姿がありました。

良太は計画通り火をつけましたが、「そこへ真珠が現れました。

森本は真珠に、用事を思いだしたから、明日、飛行機で追いかけると言いましたが、
真珠は1人でバスに乗るのが怖くて、戻ってきたのでした。

良太は真珠と逃げようとしましたが、真珠は汚い言葉で良太を罵り、
良太は家に帰りました。

森本誠一郎とその父が死に、
自分が自宅に火をつけたと真珠が繰り返し証言していると報道されました。

後日、良太宛に森本から手紙が届き、父親に睡眠薬を飲ませ、
自分も睡眠薬を飲み、眠っているあいだに死ねるよう、
火をつけてもらったということが書かれていました。

火をつけたことは忘れてくれ、きみは真珠を父から解放し、
俺を自由な世界に送りだしてくれたのだから、と書かれていました。
この人生でたった1人の親友は、きみだったと思っている、と書かれていました。

真珠は、良太が眠っている父親と森本を殺そうとして火をつけたと思い、
良太を庇うために、良太を罵って帰らせたのでした。

それから5年後、同窓会で、鉄道マニアになっていた布施から、
新しい名前となった真珠の消息を知ったのでした。



終章

章子が、「早坂にニコチン毒入りのウイスキーを飲ませた後、火をつけ、
アパートを出ようとすると、文乃が帰ってきました。

わたし、全部知ってるの、ママの本当の名前は……、と章子が言いかけると、
文乃よ、文乃と章子で文章になる、と文乃は言い、章子を送り出しました。

ママが早坂の言いなりになっていたのは、
早坂の顔が死んだお兄さんにそっくりだったからでしょう?
ママは、お兄さんが家にいたことは知らなかったんじゃないの?
お兄さんへの罪滅ぼしのような気持ちで、早坂と接していたとしたら、
それはママの間違いだよ、と章子は考えました。

早坂のレストランが火事になったのは、文乃がやったんじゃないかと考えていました。

章子と亜里沙を乗せた夜行バスは、ドリームランドに到着しました。

亜里沙がドリームランド30周年記念の栞を持っているのを、章子が見つけると、
亜里沙は、父親に毒は飲ませたけど火はつけられなかったということを話しました。

須山が死んでいなくて、自分を殺しに来るかもしれないと震える亜里沙を見て、
わたしたちがドリームランドを訪れるのは、今日じゃない、
2人でこれを持ってるってことは、30歳のわたしたちは一緒に行ったってことじゃない?
だから、やめよう、と章子は言いました。

助けを求めよう、世の中には、ちゃんと話を聞いてくれるおとながいるんでしょう?
叫ぼう、大きな声で、と章子は亜理紗に言い、
いつか、笑顔で夢の国のゲートをくぐることができる、未来のために、2人は叫んだのでした。


というあらすじなのですが、この後、篠宮真唯子か原田が、章子と亜里沙に気づいてくれて、
2人が助けてもらうことができればいいなと、しまうましたは思いました。

虐待されている子供は、自分が虐待されていることを認めるのが難しい、
ということはよく聞く話ですよね。

「エピソードⅡ」の篠宮真唯子のPVの件が最も象徴的ですが、
信頼できる誰かに助けを求めることさえできれば、助かっていたであろう不幸が、
繰り返しこの本には登場します。

正直に言うと、しまうましたは、
「章子」と「エピソードⅠ」はあまり面白いとは思いませんでした。

不幸のための不幸というか、
章子や亜里沙を不幸にするためのエピソードの羅列のように見えてしまったせいです。

しかし、「エピソードⅡ」と「エピソードⅢ」で持ち直し、面白くなり、
総合的に見ると面白いと言える小説になったと思います。

結局、この長い小説は、助けを求めることができなかった人達が、
助けてと言えるようになるまでの物語だったのだと思いました。

未来からの手紙は、ちょっと無責任な気がしましたが……。

せめて、亜里沙と健斗の件は、手紙に頼らず、児童相談所に相談しておいてほしかったです。

児童相談所はその名の通り「相談」できる場所であり、
疑わしいと思った時点で相談してほしかったです。
ちなみに、匿名でも通告・相談できます。

ただし、児童相談所や児童養護施設は慢性的な人手不足になっていて、
児童相談所内にある一時保護所が刑務所のような場所になっている場合があったり、
相談されていても親に虐待された子供が死亡したり、
児童養護施設の施設内でも虐待が横行したりしていた事件などもあったので、
一概に児童相談所に相談すればいいと言えないのが辛いところですが。

だからといって、児童相談所や児童養護施設を「叩く」だけではなく、
なぜそうなってしまうのか原因を突き止め、問題解決に向け、
支援していくことが大事だと思います。

それが子供の未来を守ることにつながると思いました。

湊かなえ「贖罪」6話「終章」のネタバレ解説

この話は、後日談的なエピソードで、短いです。

真紀と由佳が使い古したバレーボールと花束を持って、小学校の校庭に侵入しました。

2人は100回パスをして、麻子の手記について話します。

普通、過去にあれだけひどいことをしていたら、事件直後に、
わたしのせいかも、って思わないのかな、と真紀が言っていますが、
しまうましたも同感です。

麻子は真紀に有名な弁護士をつけ、真紀は傷害罪で執行猶予がつきました。

由佳は事故で通しました。

紗英は正当防衛、晶子は心神喪失という線で裁判を続けていて、
麻子が有名な弁護士をつけているようです。

ここは来年の3月で廃校になるということを話します。

小さな花束を見て、あのときのケーキみたい、とどちらかが言いました。

エミリが殺される前、たった1度だけエミリの家に行ったとき、
麻子が出したケーキのことでしょう。

わたしが納得できるような償いをしなさい、という麻子の言葉を思い出し、
エミリちゃんのことを思いながら、手を合わせる、
――どうして、あのとき気付かなかったんだろう、
わたしたちが1番しなければならなかったことを、とどちらかが言いました。

というあらすじなのですが、全員重い罪にはならなかったようで、安心しました。

結局、エミリが殺された事件の犯人である「南条弘章がどうなったのかは、
はっきりとは書かれていませんが、南条はエミリが自分の娘だと知った後、
警察に出頭したのではないかと思います。

湊かなえ「贖罪」5話「償い」のネタバレ解説

今回は、麻子が紗英、真紀、晶子、
由佳の4人に宛てて書いた手紙という形式で書かれています。

お嬢様学校と呼ばれる女子大の2年生に進級した春、後にエミリの母親になる麻子は、
大学受験組の秋恵に、試験前にノートを貸してもらったのをきっかけに、
秋恵と仲良くなりました。

秋恵にボーイフレンドを5人紹介し、一緒に遊びます。

秋恵が欲しがっていた靴を買ってあげると、
理由もなくこんな高価なものは受け取れない、と秋恵は靴を返してきました。

麻子は腹が立ち、秋恵にもボーイフレンドを5人紹介させました。

秋恵のボーイフレンドは地方出身の教育学部の男子大学生で、
そのなかで教師になろうとしている弘章を、麻子は好きになりました。

弘章とのことで秋恵に協力してもらおうとしますが、断られてしまいます。

麻子は自分のボーイフレンドの1人を呼び出し、秋恵にお酒を飲ませて、
押し倒しちゃえと指示しました。

麻子は弘章とつきあい始め、誕生石のルビーのついた婚約指輪を買ってもらいました。

ある日、手が滑って、指輪を机の下に落してしまい、
彼の内緒のノートを見つけてしまいました。
そのノートには、麻子以外の女性への諦めきれない思いが書かれていました。

麻子は秋恵に、その女性について聞こうと電話しましたが、
就職試験を受けるための履歴書を書いていた秋恵は、
麻子さんは就職活動はなさらないの、ああ、そんなの必要ないわね、
お金持ちのお嬢様はコネでお好きなところへ入れるんでしょう?
と言いました。

腹が立った麻子は、弘章と結婚することを報告しました。

今からうちに来てくれないかしら、と秋恵に言われ、麻子が秋恵のアパートに行くと、
秋恵は手首を切って、血だらけのベッドの上に倒れていました。
弘章に電話して、すぐに秋恵の部屋に来てもらおうとします。

弘章さん、あなたを永遠に愛しています、と書かれた便箋がありました。

お酒を飲んでいた弘章は、飲酒運転が発覚し、教師をくびになりました。
突然ふりかかってきたすべてのことが怖くて、麻子は弘章から逃げ出しました。

麻子は、友人に紹介してもらった足立製作所の創業者の孫の足立と交際をしましたが、
からだの関係がない足立に、妊娠を知られてしまいました。

子どもの父親のことを足立に話すと、結婚しよう、子どもは俺の子として産んでほしい、
と言われました。

足立は、大学生のときにおたふく風邪になってしまって子どもを作れなくなりましたが、
同じく創業者の孫であるいとこに勝つために、麻子と取引しようとしたのでした。


そうしてエミリが生まれ、10年後に足立製作所の新工場ができた町に引っ越しましたが、
閉鎖的な町の人達にも、社宅の人達にも、創業者の孫である足立とその妻の麻子は、
受け入れてもらえませんでした。

エミリが殺された事件の後、
目撃者は最低4人いるのだから犯人はすぐに捕まるだろうと麻子は考えましたが、
紗英たちは「顔は思い出せない」と口を揃えて繰り返し、
麻子は紗英たちや町の人たちを憎むようになりました。

3年経って、その町を離れる時、麻子は、
あなたたちは人殺しだ、犯人を見つけるか、わたしが納得できるような償いをしなければ、
復讐をする、と紗英たちに言いました。

足立のいとこ夫妻の息子である孝博は、ときどき麻子の家を訪れるようになりました。

エミリが殺されてから15年後である今年の春先、孝博が紗英と結婚すると知り、
麻子は驚きました。
結婚式では、事件のことはもう忘れて、幸せになるのよ、と紗英に声をかけました。

なのに、「紗英は孝博を殺してしまい、麻子1人で、紗英の罪を抱えきれなかったから、
麻子は紗英の手紙をコピーして、真紀、晶子、由佳に転送しました。

それが真紀を追い詰めることになり、
真紀はプールに侵入してきた不審者を殺してしまいました。

PTA臨時総会に呼ばれた麻子は、
不審者を蹴り上げたときに思い出した15年前の犯人の男に似ている人物として、
南条弘章の名前を出しました。
もっと似ている人がいる、と真紀は言いましたが、本当は、
犯人の男は、エミリによく似ていた、と言いたかったんじゃないかしらということを、
麻子は考えました。

真紀の話したことが週刊誌のサイトに載せられ、麻子はそこのページを2部コピーして、
わたしはもう、あなたたちを許しています、とメッセージをつけて送りました。

しかし、晶子は自分の兄を殺してしまいました。
あの町に向かい、晶子と話しますが、晶子は手紙を2通とも読んでいませんでしたが、
手紙をあのときの約束の催促だと思っていて、追い詰められていました。

また、晶子は事件の日にこの町を訪れたいとことその彼女が、
駅で南条弘章を見かけたことを言いました。

最後の1人である由佳の母に会い、由佳が妊娠していることと、
アパートと携帯電話の番号を教えてもらいました。
由佳のアパートに行くと、由佳が男の人に突き落とされそうになっていて、
麻子はとっさに携帯でね話を取り出して、由佳の番号を鳴らしました。

由佳と話をして、廃屋の別荘の話を教えられます。
麻子は南条弘章にもらった指輪と秋恵の遺書を捨てることができずに持っていて、
指輪をエミリに見つかっていました。

紗英たちの町は秋恵の町の近くにあり、
秋恵にゆかりのある場所で、フリースクールを作るための物件を探していた南条弘章は、
廃屋の別荘で見覚えのある指輪と、秋恵の遺書を見つけたのでした。

南条弘章は、愛する女と、情熱を注ごうとしていた仕事を奪って逃げた麻子が、
どこで何をしているのか、その女の大切なものは何かを知り、エミリを殺したのでした。

麻子は『償い』について考え、過去の罪の告白をして、犯人の男、南条弘章に、
エミリの父親はあなたです、と告げたのでした。


というあらすじなのですが、「南条弘章はエミリが自分の娘だと気づいていなかったのですね。

麻子がエミリを足立の娘として育てるために、
エミリが予定日よりも早く生まれていたことにしていたことや、
前話で由佳が言っていたように、
『とつきとおか』の正しい数え方を知らない人が多いのが伏線だったのでしょう。


次の「終章」に続きます。

湊かなえ「贖罪」4話「とつきとおか」のネタバレ解説

今回の語り部は由佳です。

由佳は妊娠していて陣痛があり、総合病院の待合室で、
エミリの母親の麻子にむかって話しかけている、という形式で書かれています。

出産予定日は8月14日で、エミリが殺された日でしたしたが、
それより早く陣痛が来て病院に来ていました。

由佳は「とつきとおか」について話します。

医者から告げられた出産予定日が、10月10日だとすると、
単純に「とつきとおか」を引いて、関係を持った日が1月1日だと思う人が多いそうだけど、
最終月.経開始日に40週、280日を足すことになり、
この場合は1月15日から19日あたりの可能性が高いと言えるのだそうです。

由佳の友人の夫も出産予定日から「とつきとおか」を引いた日に出張していて、
出張中に他の男と浮気してできた子ではないか、と大げんかになり、
病院に行き、看護師から出産予定日の算出方法を聞き、
自分たちが大きな勘違いをしていたことを知ったのでした。

逆に、由佳の姉の夫は、間違った計算をしてホッとしていたのだそうです。

真紀がPTA臨時総会で話したことが、レコーダー持参の保護者によって、
そのままネットで公開されていました。
真紀が言っていた探検ごっこについて、由佳は話します。

由佳の家はぶどう農家やっていて、農作業の手伝いをさせられていて、
畑の奥が廃屋になっている別荘の敷地に面していました。

由佳は別荘の裏口のドアノブの鍵穴にヘアピンを入れて動かしていたら、
期待せずにやったのに鍵は音をたてて開きました。

由佳の3つ年上の姉の真由もこの別荘が好きでしたが、真由はぜんそくがあり、
ほこりっぽい場所に連れてくることはためらわれ、由佳は真紀に話しました。

由佳、紗英、真紀、晶子、エミリの5人でその別荘を探検しました。
秘密基地を手に入れた由佳たちに、エミリは、
暖炉の中に宝物を隠そうと言いました。
誰かの形見ということにもして、その人に宛てた手紙と一緒に隠そう、
とエミリは言い、由佳は姉が死んだことにして、
姉が修学旅行で買ってきてくれた押し花付きの栞を缶に入れました。

エミリは本物の指輪を持ってきました。

1週間後、エミリが由佳の家にきて、
指輪をママが捜してるの、一緒に別荘に取りに行って、と由佳に頼みました。

ドアの鍵をヘアピンで開けられるのは由佳だけで、ドアを開けてあげましたが、
缶の中に指輪がないことを知ると、由佳ちゃんでしょ、とエミリは言い、
泣きながら由佳を指輪泥棒扱いしました。

由佳は腹が立ち、家に帰りましたが、同じ日の晩にエミリとその父親がやってきました。

エミリはあの後、足立製作所に休日出勤していた父に電話をかけ、
助けを求めたのだそうです。
別荘の前でこれまでのいきさつを話していると、隣町の不動産屋の車がやってきて、
フリースクールを作りたいというお客さんを連れて、
午前中にここを案内したことを話しました。

缶はお客さんが見つけて、不動産屋のおじさんが返してくれたのだそうです。

事件の日、由佳は真紀の指示で交番に行き、
安藤という若くて縦にも横にも大きい駐在さんに知らせに行きました。

由佳は前々日に眼鏡を壊してしまい、エミリの死体もよく見えていなくて、
あまり怖がっていませんでした。

安藤をプールに案内し、他の子は親が迎えに来ましたが、
由佳の姉の真由ばかり可愛がっている由佳の親は、迎えに来なくて、
安藤が由佳を送ってくれました。

真由は由佳が母と一緒に事情聴取に行く日には必ず具合が悪くなり、
親に愛されていない由佳は、安藤に会いに行くようになりました。

道ばたに落ちている小銭を何度か届けたこともありますが、
途中からは自分の財布から百円玉を出して持っていくことになりました。

そのせいで図工の鉛筆を買うお金がなくなり、由佳は文房具屋で鉛筆を万引きしてしまい、
安藤に泣きながら万引きしたことを告白しました。
安藤は大きな手で、由佳が届けていたお金を返しました。

由佳は文房具屋に謝りに行きましたが、先に真由が文房具屋に謝り、
親にそのことを話していたため、由佳は納屋に閉じこめられました。

翌月、県警本部に勤務が決まった安藤がいなくなり、
誰かに構ってもらいたかった由佳はたびたび万引きをするようになり、
夜遅くまでうろうろしているような中学生のグループに声をかけられ、
夜遊びをするようになりました。

真由は高校生になり、彼氏ができると親を疎ましく思うようになりました。
母親は由佳に構うようになり、万引きにも気づいていました。

犯人を見つけるか、わたしが納得できるような償いをしろ、
でなければ復讐をする、と麻子に脅迫された日、由佳は家に帰ってた後、
もう万引きはしないと約束しました。
ずっと麻子に犯人の顔を脅されていたことにして、それが怖くて、
つい気が付いたら万引きをしていたのだ、と母親に言いました。

真由は県警の警察官と結婚しました。
義兄と握手をした由佳は、安藤の手と同じ感触だと思いました。

2年前、真由は流.産をして、子どもが生めないからだになりました。

去年の11月に県警の情報漏れの事件が起き、
管理の責任者の義兄はかなり重い処分を受けることになりましたが、
真由はキャンセル料がもったいないからと北海道のリゾートホテルに出かけてしまい、
由佳はその晩に義兄と関係を持ち、妊娠したのでした。

今年の4月、フリースクールで、入居していた少年が施設に放火した事件があり、
経営者の男性の声が犯人の男の声に似ていると由佳は思いました。

駅前の不動産屋に行くと、15年前に別荘を見に来て、結局買わなかった男が、
そのフリースクールの経営者の男と同一人物だと判明しました。

缶に入れていた栞に指紋があるかもしれないと思い、義兄に言おうとしましたが、
由佳のお腹の子の父親が義兄だと気付いた真由がお風呂で手首を切って自殺未遂をして、
言いそびれてしまいました。

その後、紗英の手紙のコピーと、真紀の告白が載せられた週刊誌のサイトのコピーと、
わたしはもう、あなたたちを許しています、と書いた手紙が、麻子から届きました。
そのことについて、由佳は麻子を責めます。

晶子の事件が起き、きちんと決着をつけなければならない、と思い、
大切な話がある、と義兄をアパートに呼び出しました。

しかし、義兄はお腹の子のことを由佳が真由に言いつけるのだと思い、
由佳を羽交い締めにして階段に追い込みました。

義兄は由佳を階段から落として殺そうとしましたが、そのとき、
由佳を見張っていた麻子が由佳の携帯電話を鳴らし、義兄は手をゆるめました。
由佳はからだをひねり、自由になった手で義兄の胸を思い切り突き飛ばしました。

由佳がそのことを麻子に言ったとき、真由からメールが来て、
義兄が死んだことを知りました。

わたしたちは、本当は巻き込まれてしまっただけなのではないか、
犯人の男は最初からエミリちゃんを狙っていたのではないか、
フリースクールの南条って人をあなたはご存じなのではないか、
と由佳は麻子に尋ねます。

エミリちゃんの切れ長の目は、あなたたち夫婦のどちらにも似ていなかった、
と由佳は言いました。


というあらすじなのですが、由佳も、あの事件の日に真紀に指示されて交番に行ったことで、
運命が大きく変わってしまいましたね。

由佳の初恋の相手は安藤だったのでしょうが、
安藤ではなく姉のものである義兄を欲しいと思い、
義兄の子を妊娠したのが何だか悲しいと思いました。

そして、「紗英は夫、真紀はプールに侵入してきた不審者、晶子は兄、
由佳はお腹の子の父親と、何らかの形で人を殺してしまいましたね。


次の「償い」は、麻子の話です。

湊かなえ「贖罪」3話「くまの兄妹」のネタバレ解説

今回は晶子が「カウンセリングの先生」に向かって喋った台詞という形式で書かれています。

晶子は紗英や真紀に比べると、舌足らずで子供っぽい喋り方をしています。

晶子と2つ年上の兄の幸司は骨太でがっちりした体型をしていて、
親や親せきからは「くまの兄妹」と言われていました。

事件の日、エミリが家にバレーボールを取りに帰ることになり、
真紀に言われて晶子もエミリについていきました。

その日は珍しくピンクハウスというブランドのブラウスを着ていた晶子は、
そのことをエミリに褒められて上機嫌でした。

晶子が母親から、晶子も男の子だったらよかったのに、と言われていたことを晶子が話すと、
エミリのママも、エミリが男の子だったらよかったのに、と何度も言われていたということを、
エミリは言いました。

エミリの母親の麻子は上品でしたが、数時間後、エミリの死体を見つけた後、
晶子がそのことを麻子に伝えに行くと、どうして、エミリなの! と麻子は叫び、
晶子を両手で押しのけました。

晶子は壁に思い切り顔面を打ち付けて、そのままの勢いで前のめりに転んで、
白い大きな陶器の壺で、おでこが切れて、鼻血が出て、ブラウスが真っ赤に染まりました。

晶子を見かけた幸司が迎えにきてくれて、家に帰りました。

おでこの傷のせいか、事件のことを思い出そうとすると頭が割れるように痛くなり、
晶子は犯人の顔も憶えていませんでした。

おでこに陶器の欠片が入ったままになっているからかもしれない、ということを晶子は言いました。

事件のあとは、身の丈以上のものを求めると不幸になると思い、
晶子はときどき、学校を休むようになり、幸司に励まされながら登校しました。

事件から3年後に、麻子から、時効までに犯人を見つけるか、
わたしが納得できるような償いをしなければ、復讐する、と晶子達4人は言われました。
晶子にとっての償いは、身の丈以上のものを求めないということでした。

晶子が高校に進学しなかったときもは、幸司が両親を説得してくれました。

幸司は地元の国立大学を卒業した後、公務員試験を受けて町役場に就職し、福祉課の職員になりました。

幸司の結婚相手の春花(はるか)は、東京の印刷会社に就職したものの、水商売のアルバイトを始め、
やくざの下っ端の男につかまって籍を入れないまま妊娠させられて、子どもを産んだ人でした。
やくざの男は新しい女を作って雲隠れして、春花は知らないうちに悪徳金融会社から多額の借金を負わされ、
命からがらこの町に逃げ帰ってきて、町役場の福祉課で晶子の兄と会って付き合うようになったのでした。

去年のお盆、8月14日に、晶子のいとこの誠司が妻の美里と、晶子の家に泊まりにきました。

エミリの事件があった日も誠司と美里はこの町に来ていました。

去年のお盆に、幸司も、恋人として春花と、その娘で小学2年生の若葉を連れてきました。

両親に、春花と結婚しますと幸司が言うと、両親は反対しましたが、
春花を幸せにしてやれるのは、世界中で俺しかいないんだと幸司は言い、結婚しました。

若葉は晶子になつき、2人は一緒になわとびや逆上がりや一輪車をしました。

春花も晶子に服を買ってくれたり、美容院を紹介して晶子の髪を切ってもらったりしました。

6月半ばのある日、春花の実家の母が倒れて、都市部にある大学病院に入院することになり、
春花は母に付き添うために留守がちになり、若葉は幸司と2人で過ごすようになりました。

2週間後の、7月の初め頃、晶子が若葉と一緒にお風呂に入っていると、
あざができているのに気付きました。

それから1週間後、紗英や真紀のニュースで大騒ぎになりました。
麻子から手紙が2通届いていましたが、晶子は読みませんでした。

若葉と幸司が、晶子の家から一緒に帰った後、宿題のプリントと家の鍵が、
机の上に忘れられていることに気付き、夜10時頃に届けに行くと、
幸司の住むマンションの部屋から「たすけて、と声が聞こえてきました。

忘れ物の鍵で玄関からそっと入ると、くまがエミリを襲っているのを晶子は見ました。

晶子はなわとびでくまの首を締め上げ、殺しました。
振り返るとエミリの母親が立っていて、余計なことを……と言われ、ゴッと何かが崩壊する音が聞こえました。

襲われていたのは若葉でした。
春花は人生をやり直すために、ちっとも愛していない幸司と結婚し、
若葉を自分が幸せになるための道具として幸司に差し出していたのでした。

くまの一家が身の丈以上のものを求めたから、ばちがあたったの、と晶子は言いました。

去年、誠司と美里が泊まったときの会話を、晶子は話します。
14年前、美里は小学校のときの先生、南条を駅で見かけていました。
南条は事故かなにかで教師を辞めて、関西の方に行ったと美里は聞いていました。
フリースクールの少年が放火した事件で、美里は南条のことを思い出したようでした。

今さら、晶子は『カウンセリングの先生』が麻子に似ていると気付きましたが、
頭が割れそうになり、町役場の福祉課に電話して迎えに来てもらうことを『カウンセリングの先生』に頼みました。


というあらすじなのですが、最後の方は晶子も混乱していて、少しわかりにくいですね。

幸司が「若葉を襲っているところを目撃した晶子は、幸司を『くま』、若葉をエミリだと思い、
幸司の首をなわとびで絞めて殺してしまったのでした。

余計なことを……と言ったエミリの母親というのは、春花のことですね。

『カウンセリングの先生』だと思っていたのは、エミリの母親の麻子ですが、
麻子に怯えていた晶子は、目の前にいるのが麻子だと思いたくなくて、現実逃避していたように思えます。

その後、晶子は、エミリだと思ったのが若葉だったというのは認識したようですが、
『くま』の正体が幸司だというのは、受け入れられる時と受け入れられない時があるみたいです。

最後、晶子が町役場の福祉課に電話してと『カウンセリングの先生』に頼んでいたのは、
まだ幸司が生きていてそこで働いていると思ったからなのでしょうね。

春花が若葉を差し出していたことについては、そんなこと、お兄ちゃんは望んでいなかったはずよ、
と晶子は幸司を庇うようなことを言っていましたが、それはどうなのでしょうね。

本当に望んでいなかったのなら、春花と離婚すればいいだけですよね。

幸司は最初から若葉を狙って春花と結婚したのでは……
」と、としまうましたは考えてしまいました。
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