西尾維新「十二大戦」のネタバレ解説

十二大戦


第一戦 猪も七代目には豚になる  異能肉(いのうしし)『愛が欲しい。』

頻繁に戦争が起こり、戦士たちが戦場で異能バトルを繰り広げている、
という世界観の話です。

12年に1度、十二支の、
子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の代表の戦士が戦い、
勝ち残った1人はどんな願いでも叶えてもらえる、
「十二大戦」というものがありました。

第12回の十二大戦を開催するためだけに、大戦主催者は、
人口50万人規模の大都市群を一夜にして滅ぼし、
ゴーストタウンにしました。

イノシシの『亥(い)』の異能肉、本名・伊能淑子(いのう・としこ)は、
高層ビルの150階まで階段を上がり、会場に行きました。

異能肉の武器は、両手に持つ機関銃『愛終(あいしゅう)』と
『命恋(いのちごい)』です。
彼女は日常生活を送る時も、常にその武器を両手に持っていました。

300年以上の歴史を持つ名家の跡取り娘である異能肉は、
傲慢で高飛車で、嫌で性悪な人物像の女性で、12大戦に参加するために、
本来の参加資格者であった妹を12年かけて暗殺していました。

異能肉はわざと遅れて会場入りしたため、他の11人の戦士たちは揃っていました。

しかし、蛇である『巳(み)』の戦士は、首を斬り落とされ、
既に絶命していました。

ウサギの『卯(う)』の戦士の男が持つ二丁刃物は血塗れで、
明らかに犯人でしたが、本人は否定しました。

シルクハットを被った審判の老人、ドゥデキャプルは、
テーブルの上に置かれた12個の黒い宝石を、
ひとつずつ噛まずに呑み込んでください、と言いました。

『巳』の双子の兄である竜の『辰(たつ』の戦士は、
どさくさに紛れて弟の分の宝石も手に取りました。

異能肉たちが黒い宝石を呑み込むと、ドゥデキャプルは、
その宝石、猛毒結晶『獣石(じゅうせき)』は、
人間の胃酸と化学反応を起こして12時間で人間を死に至らしめる劇薬でございます、
と言いました。

その12個の宝石を、すべて集めることができた戦士の優勝です。
優勝者となった戦士は、どんな願いでもたったひとつだけ、叶えることができます。

また、優勝した戦士には、副賞として解毒剤が提供されます。

宝石はが反応するのは人間の新鮮な胃酸のみで、
それ以外は、どんな物理的な破壊力をもってしても、
傷つけることは叶いません、とドゥテキャプルは言いました。

牛の『丑(うし)』の戦士の男は、人間が呑み込んでしまった宝石を、
どうやって集めろというのかね? と訊きましたが、
ドゥテキャプルは、方法はお任せしますが、
相手の腹をかっさばくのがもっともてっとりばやい、と答えました。

つまり、普通に考えれば、優勝して生き残るのはたった1人で、
12時間を過ぎても決着がつかなければ、全滅もあり得ます。

ドゥテキャプルがいなくなると、平和主義者の猿の『申(さる)』の戦士の女性が、
このルールなら、みんなで協力すれば、誰も死なずに済むかもしれないわ、
と言い、賛同者を募集しました。

ずっと眠っていたネズミの『子(ね)』の戦士の少年が、
『申』に賛同します
(このとき、異能肉は『子』の声に聞き覚えがあるような気がしました)。

『丑』と、鳥の『酉(とり)』の戦士の女性や、
馬の『午(うま)』の戦士の大男も賛同しました。

しかし、『卯』の戦士が手を挙げると、『丑』と『酉』と『午』は抜けました。

『申』が、『子』と『卯』に、こっちに来て――と言ったとき、
出し抜けに、部屋の床が大きく崩れました。

大量の瓦礫と共に、異能肉が階下のフロアに着地したときには、
着地のどさくさに異能肉と『卯』以外は姿を隠していました。

「『亥』の戦士――『豊かに殺す』異能肉」
「『卯』の戦士――『異常に殺す』憂城(うさぎ)』
と、2人は名乗りをあげ、戦闘開始です。

異能肉は憂城に両手の機関銃を向け、トリガーを引こうとしましたが、
その腕を背後から、彼女は羽交い締めにされてしまい、
憂城の刃物で食道を貫かれてしまいました。致命傷です。

異能肉が最後の力を振り絞って首だけで振り向くと、
首のない、胴体だけの死体がありました。
『巳』の戦士の死体でした。

憂城は『死体作り(ネクロマンチスト)』であり、
殺した相手と「お友達」になり、
お友達を自由に操ることができる能力者だったのでした。


第二戦 鶏鳴狗盗(けいめいくとう)  怒突(どっく)『勝ちが欲しい。』

犬の『戌(いぬ)』の戦士である本名・津久井道雄(つくい・みちお)は、
武器は持たない主義で、牙で噛みつく『狂犬鋲(きょうけんびょう)』で
攻撃する戦闘スタイルです。

普段は保育園に勤めていますが、『資質』のある子供を適切な組織に流すのが、
怒突の本業です。

『毒殺師』の怒突は、周囲には隠していますが、『毒』を使う戦士であり、
体内に呑み込んだ黒い宝石の毒を無効化していました。

つまり、怒突だけは12時間という制限時間から解放されており、
他の戦士が3人以下になるまで、
集合場所のビルの地下駐車場に隠れているつもりでした。

しかし、『酉』の戦士である庭取(にわとり)という女性に見つかってしまいました。

庭取は、仲間になろうと思って、怒突に声をかけたのだと言います。

庭取の特殊技能は、あらゆる鳥類との意思疎通が可能な『鵜の目鷹の目』であり、
その能力を使って怒突のことも見つけたのだそうです。

庭取は、憂城が『死体作り』であり、
異能肉と『巳』と3人チームのラビット同盟を作ってしまったことを、
怒突に伝えました。
十二大戦の終盤までここに隠れていたら、どんどん仲間を増やされてしまいます。

「『酉』の戦士――『啄(ついば)んで殺す』庭取っ!」
「『戌』の戦士――『噛んで含めるように殺す』怒突」
と名乗りをあげ、同盟を組むことになりました。
ただし、怒突はいずれ庭取を裏切る予定でしたが。

庭取は、ラビット同盟の隊から異能肉が離脱したのを怒突に教えました。

怒突は、庭取にラビット同盟の相手をさせようと、庭取の腕を噛み、
対象者の潜在能力を限界まで引き出す秘薬『ワンマンアーミー』を注入しました。

そして、パワーアップした庭取は、引き出されたパワーで、
怒突の頭部をぐしゃりと握り潰して殺しました。

『鵜の目鷹の目』で、怒突が毒殺師であることを知っていた庭取は、
最初からドーピングしてもらうために、怒突に近づいていたのでした。


第三戦 牛刀をもって鶏を裂く  庭取『自分が欲しい。』

『酉』の戦士、庭取の本名は丹羽遼香(にわ・りょうか)です。
幼少期より凄惨な虐待を受けて育った庭取は、15歳以前の記憶がありません。
人を騙したり人を殺したり庭取は、丹羽家に引き取られた後、
戦場においてスパイ的な役割を担うことが多いです。

武器は、『鶏冠刺(とさかざし)』と呼んでいる鋤(すき)です。

庭取は、『鵜の目鷹の目』で鳥たちに協力してもらう代わりに、
殺した死体を餌として鳥葬する、という契約を鳥たちと結んでいました。

ゴーストタウンを歩いていた庭取は、
『歩く死体(ウォーキングデッド)』となった異能肉を発見し、
数百羽の鳥に異能肉を襲わせ、殺させて食べさせました。
死んだ後も、機関銃をいつまでも乱射し続けることができる、
という異能肉の特殊技能は使うことができたので、
数十羽の鳥が撃ち落とされて殺されてしまっていました。

庭取自身も食事をしようと、コンビニエンスストアに行きました。

すると、そこで同じく食料を調達しにきていた
『子』の戦士である少年と出会いました。

「『子』の戦士――『うじゃうじゃ殺す』寝住(ねずみ)」
と名乗った寝住に連れられ、『申』が隠れている下水道に案内してもらいました。

「『申』の戦士――『平和裏に殺す』砂粒(しゃりゅう)』
と名乗った砂粒は、停戦勧告の賛同者を募集したときに庭取も手を挙げていたので、
庭取のことを仲間扱いしていました。

ドーピングで、ステータスだけではなくメンタルまで引き上げられていた庭取は、
平和主義者の女性の砂粒と話をしているうちに、
強(したた)かだった自分らしさを失ってしまい、
砂粒に、仲間にはなれないと言って、下水道から出ました。

そこで、十二戦士の中で、もっとも高名な戦士である、
『皆殺しの天才』の『丑』と出会いました。

『丑』の持っているサーベルや、衣装は血で赤く染まっていました。

『丑』は、砂粒が近くにいることを看破しました。
庭取は、砂粒を守るために戦うという、庭取らしくない「いい奴」っぽい理由で、
『丑』と戦うことになりました。

「『丑』の戦士――『ただ殺す』失井」
と失井は名乗り、サーベルで庭取の両目を正確に差し貫きました。

最後の意識で、庭取は、わたしの死体を食べていいよ、鳥さん達、
と思ってから死にました。


第四戦 敵もさる者ひっかく者  砂粒『平和が欲しい。』

『申』の戦士、本名・柚木美咲(ゆうき・みさき)は、
とある霊山において生を受け、
水猿(みざる)、岩猿(いわざる)、気化猿(きかざる)という3人の仙人から、
戦士としての手ほどきを受けました。。
液体・固体・気体を自在に操る戦闘能力は、本来、極めて高いのです。

平和主義者の砂粒は、これまで314の戦争と、229の内乱を、
和解に導いてきました。
武器は停戦交渉と和平案です。

庭取が下水道から去った後、砂粒は、考えている必勝法、
十二大戦を停める作戦はひとつではない、と寝住に言いました。

最初の集合場所のビルの床を砕いたのは、他ならぬ砂粒でした。
先制攻撃に出ようとした誰かの気配を察し、
あの場にいた全員を護るために、砂粒は床を砕いたのでした。

寝住は、砂粒ほど、人を救ってきた人間はいないと言いましたが、
砂粒は、私ほど、人を救えなかった人間もいないよ、と言いました。

いわれのない虐殺や、正義の蛮行などの現実を見てきた上で、
砂粒は戦いを停めることを選びました。
綺麗事なめんなよ、ボク、と砂粒は言いましたが、
寝住は寝てしまっていました。

しかし、大量の鳥の羽ばたきが聞こえてきて、砂粒は寝住を起こしました。

異能肉の機関銃で殺された数十羽の鳥が、憂城に操られ、
下水道の奥から近づいていたのでした。

砂粒は寝住と一緒にマンホールの蓋を押し上げて地上へと出ますが、
憂城に巨大な刃物で襲われました。

寝住に『巳』の戦士の首なし死体を任せ、砂粒は憂城と戦います。

追いついた大量の鳥の死骸が砂粒を襲いますが、
砂粒は鳥の羽骨をへし折り、はたき落としました。

憂城が振るった刃物を、砂粒は高くジャンプして飛び越し、
憂城の背後から憂城を取り押さえにかかりました。

ところが、憂城は振り向きもしないままに手首を返して、
砂粒の胴体に刃物を刺し、殺しました。

砂粒と憂城が戦っていた場所から、少し離れた位置に植えられた街路樹に、
『巳』の生首がぶら下がっていました。
憂城は、その生首の目を監視カメラのように使い、
己の背後を見守っていたのでした。


第五戦 羊の皮をかぶった狼  必爺(ひつじい)『時間が欲しい。』

『未(ひつじ)』の戦士である必爺、本名・辻家純彦(つじいえすみひこ)は、
十二大戦参加者の中で最年長です。

36年前に開催された第9回大戦では、必爺は優勝しており、
『孫の顔が見たい』という願いを叶えました。

その孫が十二大戦の出場者として選ばれそうになったのを受けて、
自ら名乗りをあげました。

必爺は十二大戦のルールを破り、毒の宝石『獣石』を呑み込まず、
懐に隠し持っていました。

必爺は、頭の中で12人の戦士たちを順位付けするなら、
自分は10位以下だろう、と考えていました。

必爺は大会開始から3時間隠れた後、呑み込まなかった『獣石』を利用して、
他の戦士を騙そうと考え、動き出します。

しかし、見つかったのは、
ランキング最下位の『寅(とら)』の戦士の女性でした。

『寅』は、ゴーストタウン内の公演のベンチで、
酒をたらふくかっくらって酔っぱらっていました。

必爺が、自作の投擲手榴弾(とうてきしゅりゅうだん)
『醜怪送り(しゅうかいおくり)』を取り出したのと同時に、
『寅』は、必爺が隠れていたのを見破り、声をかけてきました。

必爺は『寅』の前に姿を現しますが、『寅』はやはり、
アルコールが回っていて、完全に酔っぱらいでした。

それでも、
「『未』の戦士――『騙して殺す』必爺」
「『寅』の戦士――『酔った勢いで殺す』妬良」
と名乗り、戦います。

見え見えだったはずの、『寅』の『爪』による攻撃が、
十爪とも、必爺の矮躯にヒットし、皮を引き裂かれました。

実は、妬良は、「酔えば酔うほど強くなる」でお馴染みの、
酔拳の使い手だったのでした。
もっとも、妬良は酒よりもなお、人の血に酔うのですが。


第六戦 千里の馬も蹴躓(けつまづ)く  迂々馬(ううま)『才能が欲しい。』

ここで、大会主催者が、戦争のための戦争として十二大戦を開催し、
代理戦争として誰が優勝するのか賭けをしていた、
ということが読者に明かされます。

国をチップにしたベットがおこなわれるのは、
戦士が半分に減った、このときでした。
オッズ順は、
1『丑』 2『卯』 3『寅』 4『午』 5『辰』 6『子』
です。

身長230センチ、体重150キロの『午(うま)』の迂々馬、
本名・早間好実(そうま・よしみ)は、
およそ人体では考えられない強度を誇る防御術『鐙(あぶみ)』と称する
タフネスの持ち主でした。

しかし、『丑』の戦士の失井は、歩く死体となった異能肉を見て、
『死体作り』がいると知り、他の戦士を早めに殺そうとして、
迂々馬と戦いました。

失井は、迂々馬の防御術『鐙』を徹透して、傷をつけていました。

信仰の域に達していた筋肉を傷つけられたことで、
迂々馬は心に傷を受け、失井から逃げた後、
銀行の金庫にバリケードを作って閉じこもっていました。

迂々馬の自慢の『鐙』は、体外からの攻撃だけではなく、
体内からの攻撃にも、毒に対してさえ有効かもしれませんが、
消極的な行動でした。

しかし、いつの間にか、金庫の中に寝住がいて、
スマートフォンを見ていました。

鼠(ねずみ)ってのは、ちょっとでも隙間があれば、
どっかからは這入ってくる、と寝住は言いました。
銀行の金庫と言っても、中に入る際、迂々馬が鍵を壊し、
力任せにバリケードを組み上げただけなので、
隙間はあるかもしれませんが、
こんな短時間で見つけられるような隙間ではないはずでした。

寝住が名乗ったので、
「『午』の戦士――『無言で殺す』迂々馬」
と迂々馬も名乗りましたが、寝住は迂々馬と戦うつもりはないようでした。

『巳』の首なし死体から逃げる際に、パニックルームとして、
この金庫を使っているだけだったのでした。

『未』の爺さんが、今どこにいるか、知ってる?
と寝住に訊かれましたが、迂々馬は知りませんでした。

寝住は、俺を追って、『巳』の奴がここに来るかもしれねーから、
あんた、ここから逃げた方がいいぜ、と言い、消えました。

しかし、迂々馬はそのまま引きこもり続け、いつの間にか、
金庫の中が煙に満ちているのに気づきました。

寝住を追った『巳』が、背負っていた火炎放射器『人影(ひとかげ)』で、
金庫へ火炎放射したのでした。

酸素を奪われ、迂々馬は死にました。


第七戦 竜頭蛇尾(先攻)  断罪(たつみ)兄弟・弟『金が欲しい』

「『辰』の戦士――『遊ぶ金欲しさに殺す』断罪兄弟・兄!」
「『巳』の戦士――『遊ぶ金欲しさに殺す』断罪兄弟・弟!」
と名乗りをあげていた兄弟の弟の方、『巳』の戦士、
本名・積田剛保(つみた・たけやす)は、
『歩く死体』として寝住を追っていました。

高機能レーダーにも似た独自の技能、『地の善導(ぜんどう)』があるので、
首が無くても、地面からの振動を足の裏から敏感に感じ取り、
周囲の状況を把握し、反応することができました。

『寅』の妬良が、断罪弟を見つけて前に出ますが、
断罪弟は妬良に火炎放射器で攻撃します。

妬良は断罪弟の右腕を吹っ飛ばし、火炎放射器を奪いました。
そのタンクの中に入っていた液体を飲みますが、
ここでようやく、断罪弟がただの死体だと気づき、
一方的に立ち去ろうとしました。

断罪弟は妬良をロックオフし、再び寝住を追跡しようとしますが、
そこへ『丑』の失井が現れ、断罪弟の左腕を吹っ飛ばしました。

そこへ、妬良が戻ってきて、失井を睨みつけ、戦闘モードに入りました。

妬良と失井は名乗りをあげようとしましたが、
断罪弟の、引き千切られた右腕と、切断された左腕が、
それぞれ妬良の首と、失井の喉元に飛びついて、
がっちりと五指を喰い込ませ、喉を握り潰そうとしました。

その様子を、断罪兄弟の兄、『辰』の戦士が上空から見下ろしていました。


第八戦 竜頭蛇尾(後攻)  断罪兄弟・兄『何も欲しくない。』

断罪兄、本名・積田長幸(ながゆき)は、
弟の火炎放射器『人影』と対になる氷冷放射器『逝女(ゆきおんな)』を
背負っています。
タンクの中身は液体窒素です。

それとは別に、竜として空を飛ぶことができ、
十二大戦が始まってからずっと空の上に隠れていました。

その頃地上では、妬良と失井が、『巳』の切断された両腕で、
喉を潰されそうになっていました。

失井は、妬良に、この状況を打破するための、一時的な共闘を申し込みます。
この状況さえクリアできれば、私がきみに、決闘を申し込む、と言いました。

妬良は何をすればいいのかと聞きましたが、
失井は、何もしなくていい――きみはそのまま、泡を吹いていれば、
と言い、妬良の足元のアスファルトに、サーベルをぶつけました。

火花が散り、アルコールや火炎放射器のタンクを呑んでいた妬良は、
燃え上がりました。

妬良はアウターを乱暴に脱ぎ捨て、失井はその燃えさかるアウターで、
自分の首を絞める断罪弟の左腕をくるみました。
左腕の死体は、ただの死体になり、力を失いました。

荼毘に付して、成仏させたのでした。

庭取が、鳥に食べさせて異能肉の死体を鳥葬したり、
迂々馬の焼死体が動き出さなかったりした例から、
失井は『死体を殺す方法』に独力で辿り着いたのでした。

妬良も何とか消火作業を終え、失井に対して激高しました。

しかし、立ち上がった断罪弟の残る首なし腕なし死体を倒すまでは、
共闘は続きます。

その様子を上空から見ていた断罪兄の腕の中に、
弟の生首が落ちてきて、断罪兄はそれを受け止めました。

憂城は断罪弟の生首を高く打ち上げることで、空撮を試みたのでした。

断罪弟の首は断罪兄の腕に噛みつき、さらに、
憂城が跳ねてきて、断罪兄の胴体を横薙ぎに、まっぷたつにしました。


第九戦 二兎追う者は一兎も得ず  憂城『お友達が欲しい。』

断罪弟の生首や、憂城を高く打ち上げたのは、砂粒の死体でした。

憂城は空から地上を見下ろし、自分以外の生存者は、
妬良と失井と寝住の、たった3人であることを知りました。

妬良と失井のところに、断罪兄の上半身と下半身が落ちてきて、
2人は一気にピンチになりました。

しかし、失井は策を弄し、宙に浮かぶ断罪兄が背負っているものは、
液体窒素の放射器だと妬良に伝えました。

そこへ、断罪兄が弟の生首を投げてきて、失井は真上に蹴り上げました。
くるくると回転する生首は、広角カメラの役割を果たします。

戦っている途中、妬良はピンときて、氷冷放射器『逝女』のタンクを奪い取り、
爆弾のように投げ落としました。

断罪兄弟の死体はかちんこちんに冷却処理され、落下して粉々になり、
ない交ぜになって、動かなくなりました。

そこへ、憂城が現れました。砂粒は寝住を追っていて、別行動です。

『死体作り』としての憂城は恐ろしくても、
使役する死体を失った憂城は弱く、
失井のサーベルと妬良の爪で、憂城は八つ裂きにされてしまいました。


第十戦 虎は死んで皮を残す  妬良『正しさが欲しい。』

憂城は十二大戦が終わった後、妬良と失井の死体を使うことを考え、
やり過ぎないように、自分で妬良と失井を殺そうとしました。
丑寅タッグが断罪兄弟に、ああも損傷少なく勝つことは、
想像できなかったのです。

しかし、憂城は妬良と失井に殺される前に、自ら舌を噛んで死にました。

回想です。

妬良、本名・姶良香奈江(あいら・かなえ)は、
アルコールを摂取する言い訳として、酔拳の使い手となりました。
実際の酔拳は酔った動きを模した拳法であり、酒を飲む必要はないのですが。

かつてはとても思慮深く真面目な女の子だった妬良は、
戦場で人を殺し、称えられるにつれ、妬良の純粋な目には、
世の中が矛盾だらけの、偽善だらけに見えるようになりました。

妬良は道を外れ、アルコールで頭を満たすことで、
余計なことを考えなくなり、迷いを消しました。

アルコールのせいで知能が下がった日々の中、
妬良は戦場で失井と出会いました。

正しいことを正しい方法でしていると確信しているかのごとく、
失井の剣筋には迷いはありませんでした。

失井は妬良のことを、無理矢理酒を呑まされた民間人のお嬢ちゃんだと思い、
助けてくれました。

妬良は、どうしてそんな正しいことができるのか、
どうすればそんな正しいことができるのか、おずおずと訊きました。

すると失井は、「まず、正しいことをしようとするだろう?」
「次に、正しいことをする」と言いました。

①正しいことをしようとする。②する。
と、理論が天才過ぎて、何も伝わってきませんでしたが、失井はさらに、
正しいことは、しようと思わなければ、できない、
きみが正しいことができなくて苦しんでいるのだとすれば、
それはきみが、正しいことをしようと思っていないからだ、と言いました。

妬良は失井のことを、目標にしたい師匠と考えるようになりました。

妬良は没交渉だった実家に土下座して、
参加戦士としてねじ込んでもらいました。

こうして、やっと失井と再会できたのですが、
失井の方は妬良のことをまったく憶えていませんでした。

回想が終わり、殺したはずの憂城の両刀から失井を庇うために、
妬良は失井を突き飛ばしました。

兎の両刀、『白兎』と『三月兎』が、妬良の腹の、柔らかいところに突き刺さりました。

失井は、妬良の腹に刺さった剣を持つ手をバラバラにして、
妬良をおぶって、闇雲に走り出しました。

失井は、死なせはしない! と言いましたが、
妬良は、あんたがあたいを、殺してくれ、と頼みました。

このままだと妬良は憂城に殺されたことになるので、
その前に失井に殺してもらうことにしたのでした。

しかし失井は、決闘はとりおこなう、きみは私に、負けて死ぬのだ、
と言いました。
失井は結局、妬良のことを思い出してくれませんでしたが、
妬良は師匠に、会ったのもこれが初めてだ、と言いました。

天才は死にかけを、正しい手順で、ただ殺しました。


第十一戦 人の牛蒡(ごぼう)で法事する  失井『助けが欲しい。』

失井、本名・樫井栄児(かしい・えいじ)は、
5歳の初陣から皆殺しで、このときより天才の名を欲しいままにしてきました。
武器のサーベルの銘は『牛蒡剣』です。

妬良を殺した失井は、妬良の中に、かつて戦場で会った少女の面影を見ました。

どうしてそんなに正しいことができるのか、
正しいことをすれるにはどうすればいいのか、
そう訊かれた失井がその質問に真剣に答えることで、
失井の天才性は完成されたのでした。

一方、憂城は死してなお、優勝を目指していました。

十二大戦の勝利条件は毒の宝石を12個集めることであり、
勝利条件さえ満たせば、死んでいようとも、
優勝資格があるということなのです。

憂城は妬良と失井に八つ裂きにされる前に、
12個の宝石を集めろという指令を己に出して、
己の意識を終わらせました。

そんな憂城の死体は切り刻まれましたが、死体の部分が再び集結して、
1人の人間のシルエットを作り、失井の前に現れました。
ただし、各パーツの部位は間違っていましたが。

怪物となった憂城を、失井は斬りましたが、
斬り裂いた死体の中から、砂粒の死体が飛び出してきて、
失井に抱きつき、押し倒しました。

信じられないパワーで組み敷かれて、身じろきもできません。

舌を噛んで自殺しようとする前に、砂粒はヘッドショットで、
失井の歯をあらかたへし折りました。

そこへ、寝住が、必爺の武器である投擲手榴弾『醜怪送り』を持って現れました。
妬良が必爺を倒してくれたから、
寝住は手榴弾をここに持ってくることができた、と寝住は失井に伝えます。

私にとっては、これが正しいことだ――きみは、
きみが正しいと信じることをしたまえ、少年、と失井は言いました。

失井は、寝住とどこかで会ったような気が、しないでもないが――
と思いながら、爆発して死にました。

こうして、寝住は12個の宝石を集め、優勝しました。


終戦 大山鳴動鼠一匹  寝住『夢が欲しい。』

寝住、本名・墨野継義(すみの・つぎよし)は、
確率世界への干渉力『ねずみさん(ハンドレッド・クリック)』
という特殊技能の持ち主でした。

同時に100までの選択を実行でき、任意の選択を現実として確定できます。

精神は過大な負担を強いられることになるので、代償として眠くなりますが。

消滅した分岐の記憶は、寝住以外には残りませんが、
たまに残ることもあり、異能肉や失井が、
寝住とどこかで会ったことがあるような気がする、
と感じていたのがその伏線だったのでした。

寝住は十二大戦への出場を避けようとしましたが、
避けられる選択肢は、100通りの分岐の中にはありませんでした。

寝住は優勝後、ドゥテキャプルからインタビューされます。

十二大戦中に試した100のルートのなかで、
寝住が生き残ったのはこれが唯一のルートでした。
99回死んだので、寝住には、
自分が優勝したという感慨はまったくありませんでした。

砂粒の和平案というのは、主催者サイドを交渉相手にしようとしていたのだろう、
とドゥテキャプルは言いました。

優勝商品である『たったひとつの願い』については、
ゆっくり考えさせてもらうことにし、寝住は帰宅しました。


というあらすじなのですが、今回はあらすじ書くのが大変で、
何度も挫折しそうになりました……。
でも、非常に面白い話なので、何とか乗り切ることができました。

子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の逆の順番で、
個性豊かな12人のキャラクターに焦点を当てつつ、
ことわざにあったストーリーにするという、
信じられないような縛.りプ.レイなのに、この面白さです。

凄すぎます。

この話は、
西尾維新さん原作の短編漫画集「大斬(おおぎり)」に収録されている、
「どうしても叶えたいたったひとつの願いと、割とそうでもない99の願い」
に続きます。

星新一「宇宙のキツネ」のネタバレ解説

宇宙研究所にキツネを連れた男があらわれました。

その男が持ってきたのは、
化ける(変身する)ことができるキツネでした。
キツネはカラフト犬に化けてソリをひっぱったり、
馬に化け、人をのせては走りまわったり、
ブタに化けたりすることができました。

ブタに化けたのは、食料が欠乏したら、
食べればいいというわけでした。
ブタのきらいな人なら、ウシやトリに化けさせることもできます。

キツネは最後に絶世の美女に化け、
所員たちの驚嘆は最高潮に達しました。

船内の限られた広さに積めて、これだけ役に立つ動物はいませんが、
念のために本格的な検討が行われることになり、
操縦士がひとりえらばれ、そのキツネを連れて、
宇宙船で飛び立ちました。

一週間たって、宇宙船が帰還し、
出迎えた人びとがキツネの味はどうだったかと訊くと、
操縦士は、なんとか食える、といったところだね、と答えました。

しかし、人びとのひとりが、
宇宙船のなかから出てきた操縦士の尻のあたりを指さして、
尻につけている変なものはなんだい……と訊きました。


というあらすじなのですが、「キツネは化けたとき、
しっぽだけは化けることができないと言われています。

つまり、本物の操縦士は宇宙にいる一週間のうちに、
キツネに食べられてしまい、キツネが操縦士に化けていた、
というオチだったのでした。

ライオンやトラに化けられたら、ひとたまりもなかったでしょうね。

星新一「無重力犯罪」のネタバレ解説

広い空港で宇宙船が発射されるのを、
人びとが見まもっていましたが、
そのなかに、いつまでも立ち去ろうとせず、
空を見上げて薄気味わるい笑いを浮かべている男がいました。

不審に思った警官がその男に呼びかけると、
男は、宇宙船に乗っていた探検隊員の連中が、
焼け死んだとしても、わたしをつかまえることなどできませんよ、
と言いました。

警官は男を警察に連行し、取り調べをします。

男もあの宇宙船に乗りたくて志願したのに、
人選でまっ先にはねられ、面白くないからやったのだと言いました。

荷物室にある書類箱に、無重力になると押えてあるおもりがバネじかけで、
しぜんにはなれ、火がつくようなライターをかくした、と男は言いました。

乗務員室のほうの連中が気づいた時には火の海になっている、
証拠は宇宙に飛び散ってしまうから有罪にはできない、
と男は言いましたが、「無電で宇宙船と連絡がつき、
証拠物件が手に入った、と刑事は言いました。

無重力ではすべての物の重さがなくなります。
空気も重さがなくなり、温められた空気と冷たい空気の重さも同じで、
対流が起こらないため、せっかくついたライターの火も、
まわりの酸素を使ってしまうと、それ以上は燃えることができず、
すぐ消えてしまったのでした。


というあらすじなのですが、男が人選でまっ先にはねられるのは、
当然ですねー。

こんな性格の人物が狭い宇宙船の中で他の隊員と強調できるわけがないですし、
無重力についても無知なのですから。

星新一「天国」のネタバレ解説

中年の男の主人公である「私」は、
生活の気力がおとろえ、どなる上役や、うるさいワイフ、
感心しない仲間とつきあいはじめた息子が嫌になり、
いっそ死んでしまいたくなった、とバーでつぶやきました。

それを聞いたバーテンは、
棚の片すみから見なれぬ形のびんをおろして、
どうぞ、と言いました。

楽に死ねる薬が入っていると思った主人公は、
それを一気に飲みましたが、いくら待っても、
苦しくもなんともなりませんでした。

主人公は怒りますが、
それは本気で自殺したいのか判断するテストだったようで、
バーテンは、生きたまま天国へご案内します、と言いました。

バーテンはエンジェル協会と書かれたカードを出し、
そこに書かれた場所へおいで下さいと言いました。

翌日、主人公がそこに行くと、社員は何枚か写真を撮られました。

4日後、ふたたびそこを訪れると、
写真をもとに作らせた、主人公にそっくりなロボットがありました。

とつぜん社員は主人公の手をねじりあげ、
わあ、助けてくれ、と主人公は大声を上げました。
社員はその声を録音していました。

このロボットの機能は少し歩けることと、
いまの録音を叫ぶことだけでした。
滝壺、海、噴火口に落ちるといった、死体が残らない方法で、
ロボットが衆人環視のなかで派手に死ねば、
世の中に対しては、主人公が死んだことになります。

その前に生命保険に入ります。
保険金はすべてエンジェル協会が受け取りますが、
天国での生活は保証してくれました。

数日後、主人公の身代わりのロボットは水力発電所のダムに落ちて死に、
主人公は船で、南の島の楽園に移住しました。

欲しいものはなんでももらえ、不満はありませんでしたが、
主人公はなぜか、あのどなる上役と、面白くもないワイフと、
出来そこないの息子との生活が、なつかしくてたまらなくなり、
ボートを作り始めました。

それを見つけた管理員は、天国からもどれるはずが、ないじゃないか、
どうしてもあの世に行きたいなら、泳いで行けば、
途中でおぼれて、生まれ変わることができるかもしれない、
と言いました。

主人公が、それをやってみるとしよう、と思ったところで、
この話は終わります。


というあらすじなのですが、自業自得とはいえ、主人公が可哀相だな、
と思いました。

親孝行したいときには親はなし、という言葉もありますが、
近くにいる時は不満しか感じないものなのでしょう。
失ってみて初めて、その貴重さが分かるのでしょうね。

この主人公が本当に望んでいたのは死ぬことではなく、
思い切り休むことだったのではないか、と思いました。

星新一「調査」のネタバレ解説

ある平和な夜に、赤い炎の尾が空から降ってきて、
町はずれの丘の向こうに消え、轟音と地響きが発生しました。

警官たちが丘に向かうと、暗い野原の中に、
長さ20メートル、直径5メートルくらいの大きさの、
銀色に光るスマートな形の物体がありました。

翌朝、学者と同僚と助手がやってきて調査を開始します。

まず、物体に電波をあて、金属らしいことと、
宇宙のどこからか飛んできた物だと分かりました。

物体の尾部あたりから変な電波が発信されているのを、
助手が学者に報告しました。

どこかの星のやつが宇宙旅行に出かけ、
途中で事故をおこし、不時着し、
救助を求める電波を出したのでしょう、と助手は言いました。

学者たちが物体の周囲をぐるぐるとまわっていると、
物体の外側をおおっていた銀色の金属らしいものがはがれ、
うまそうなにおいのするピンク色のゼリー状の物質があらわれました。

ゼリーを食べたがる人たちを学者は止めましたが、
人びとの間から犬がかけ出し、そのゼリーをかじってしまいました。

学者の指示でゼリー状物質を回収すると、
その下に茶色のプラスチックのようなかたい物がありました。

ナイフでプラスチック様の物質をけずると、
その下にさらにかたい物がありました。

アルコールランプやバーナーでとかしますが、
いくら高温にしてもとけなくなりました。

こんどは冷やしてみると、冷却した部分にひびが入り、
ひびが入った層がつぎつぎとはげおちました。

まだ先があったので、今度は放射線発生装置を使うことにしました。
電波はまだ発信されつづけていました。

場面が変わり、「巨大で青白い色の太陽を持つ惑星で、
その電波を受信していました。

ほうぼうの星へ送った無人の小型宇宙船からの報告で、
ゼリー状の物質を食べたことから動物はたしかにいて、
刃物を使う文明、火の発見の段階も越していると分かりました。

また、高温、低温を作る技術も発達していました。

放射線を発生させる技術については、これから受信するところでした。

放射線でこわれる層の下から出る猛毒ガスを防ぐことができるほど
文明の進んだ星だったら、宇宙に進出して暴れる前に、
処置をしにでかけよう、とその惑星の人達は話していました。


というあらすじなのですが、タイトルの「調査」は、
地球の人達が宇宙からの物質を調査している、という意味と、
宇宙人が地球人の文明の進み具合を調査している、
という2つの意味があったのでした。
プロフィール

Author:しまうました
見やすい記事一覧はこちらです。

スポンサードリンク
このブログについて
見やすい記事一覧はこちらです。
このブログの記事は管理人「しまうました」の独自の解釈によるものなので、制作者の意図したものや一般に考えられているものとは異なる場合があります。
個人の趣味でやっているブログなので、解説してほしい本のリクエストは受け付けていません。
重要なネタバレ箇所は白字にしてあるので、反転してお読みください。
現在、荒らしをした人物のコメントを拒否しており、巻き添え規制される場合があります。詳細はこちらに書いてあります。
承認したコメントに対しても、管理人は基本的には返信しません。また、後日予告なく削除する場合があります。ご了承ください。
今月の人気ページ
人気ページの集計期間は30日間です。2017年3月11日リセット。
スポンサードリンク
カテゴリ
最新記事
最新コメント
検索フォーム
月別アーカイブ
FC2カウンター
スポンサードリンク

ソードアート・オンライン プログレッシブ (4) (電撃文庫)

業物語 (講談社BOX)

キノの旅XX the Beautiful World (電撃文庫)

悪の教典 上 (文春文庫)

                amazon人気本ランキング
RSSリンクの表示
リンク
最新トラックバック
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
記事一覧
見やすい記事一覧はこちらです。