星新一「不運」のネタバレ解説

K氏は死ぬ覚悟で海の真ん中に身を投げました。

K氏はあらゆる勝負事が好きでしたが、
最後の一度にありとあらゆる財産をつぎこんでやった勝負に負けてしまいました。

なぜそんな大勝負に賭けるつもりになったかというと、
失恋してやけを起こしたからでした。
K氏は女性に対しては運のいいほうで、
失恋したことはなかったのですが、
心の底から愛した女性に対して失恋してしまったのでした。

その原因は、酒に悪酔いして不注意のため自動車にはねられ、
顔が醜く傷ついてしまったからでした。
K氏は酒が好きでしたが、悪酔いしたのはその一度だけでした。

K氏は生きがいを失い、死の決心を抱き、海に身を投げたのでした。

しかし、気がついてみると、K氏は豪華な遊覧船のベッドの上に横たわっていました。

船内のホールには無料のバーがありましたが、
K氏が死ぬつもりになった原因のひとつは酒だったので、ふりきりました。

ルーレット台もあり、お金は胴元に頼めば貸してくれるそうですが、
自分をこんな目に追い込んだ憎い勝負事に手を出す気はしませんでした。

デッキのほうに歩くと、若く美しい女に誘われましたが、
おれはもう、酒やルーレットや美人など、
見るのさえいやなんだと言い、K氏はまたも海に身を投げました。

気がつくと、「今度は小さな漁船の持ち主に助けられていました。

豪華な遊覧船のことを相手に伝えると、
船の灯りが水にうつっていなかったのでは……と言われ、
そのとおりでした。

それは幽霊船で、海の死者を拾いあげ、あの世の港に送りとどけるため、
途中で気が変らないように、至れりつくせりのサービスをしてくれるのだそうです。

K氏はもう一回飛びこみ、なんとかしてあれに乗ろう、と言いました。
しかし漁船の持ち主は、幽霊船から逃げ出すと、先客名簿から削られ、
死なない、死ねなくなってしまうのだと言いました。


というあらすじなのですが、これは本当に「不運」な話ですね……。

何をやってもうまくいかないときは、死ぬのさえうまくいかない、
ということなのでしょうか。

星新一「利益」のネタバレ解説

エヌ氏はそれまで女性に養ってもらっていましたが、
夫人の機嫌を損ね、彼女は土地と家を残して出ていってしまいました。

エヌ氏は金を稼ぐために、庭に釣り堀をつくることにして、
シャベルで地面を掘りかえしました。

しばらく夢中になって堀りつづけているうちに、
石の地蔵が出てきました。

通りかかった近所の老人が、持病の神経痛がなおるようにと地蔵に祈ると、
痛みが、すっかりなくなりました。
すごい、ご利益だ、と老人は言い、庭の片すみにお堂を建て、
石の地蔵をそのなかにまつりました。

エヌ氏はその前に賽銭箱をすえましたが、
つぎつぎと訪れる善男善女が、箱に賽銭を投げこんで帰っていったのに、
賽銭箱をあけてみると、ぜんぜん金が入っていませんでした。

エヌ氏は対策をねり、金庫屋に頼んで、
鍵のかかるスチール製の賽銭箱を作らせましたが、
あけてみると、またも金がなくなってみました。

その原因を確かめるために、徹夜で見張ってみると、
そこで、なにをしている、と地蔵の声が頭のなかに響いてきました。

賽銭が消えていたのは、地蔵が持ち去っていたからなのでした。

地蔵は、ちゃんとご利益を与えているから、
報酬を受け取る権利がある、と言いました。

エヌ氏は面白くない顔つきで、二、三日は家の中にとじこもり、
参拝する人波を見つめていましたが、
ある夜、エヌ氏は「堂をとりこわし、
石の地蔵を床下に運んで埋めてしまいました。

はじめの計画どおり、庭を釣り堀にすることにしました。

エヌ氏にとって必要なのは、ご利益(ごりやく)ではなく、
利益(りえき)なのでした。


というあらすじですが、まさかのダジャレオチですw

地蔵はエヌ氏に掘り起こしてもらい、
庭の土地を使わせてもらっている恩があるんだから、
地蔵もエヌ氏に分け前を与えていれば、
こんなことにならなかったのに、と思いました。

もしかしたら、地蔵が地面の下に埋まっていたのは、
前の持ち主もエヌ氏とまったく同じように考えて、
埋めたからなのかもしれませんね。

乾くるみ「物件探偵」3話「浅草橋5分ワンルームの謎」のネタバレ解説

2012年3月、ニューシップ浅草橋の9階に住む
会社員の谷俊弥(たに・としや)は、
真上の10階の部屋が980万円で売りに出されているのを
インターネットで発見しました。

谷は、斉藤善実(よしみ)という男性の同僚から、
9階の部屋を2年前に購入しましたが、
10階の部屋の持ち主の足音がうるさく、悩まされていました。
管理会社を通して苦情を言っても、騒音は改善されませんでした。

回想です。
一週間前の2月25日、谷のケータイに、
塚本という老人から電話がかかってきました。

谷は12年前に元妻の亜津子と離婚していました。
亜津子は当時9歳の銀河という一人息子を連れて、実家へ帰り、
塚本哲哉という男と再婚していました。

しかし、1ヵ月以上前に火事があり、
亜津子と哲哉は亡くなってしまいました。
出火原因は隣家の漏電でした。

塚本にとっては血の繋がっていない銀河を谷に引き取って欲しい、
という電話でした。

谷は、塚本に会いに行きましたが、
銀河が受け取るはうだった亜津子と哲哉の生命保険金、
3000万円を塚本が着服しようとしていたことが発覚しました。

塚本は知りませんでしたが、亜津子から谷のところへ、
定期的に報告書が届いていて、そのことが書かれていたのでした。

銀河はコミュニケーションに難があり、引き籠り状態になっていましたが、
塚本家は銀河のそうした弱点を利用して、
彼が受け取るはずだった3000万円をうまいこと掠め取ったうえで、
銀河を谷に引き取らせようと画策していたのでした。

谷は銀河を引き取り自宅に帰りましたが、
プライバシーの問題があるので、
谷は銀河に独り暮らしをしてほしいと思っていました。
しかし、銀河は独り暮らしはしたくないと言っていました。

回想終わりです。

谷が住んでいる部屋の真上の10階の部屋を購入すれば、
足音の問題は解決します。
銀河も、すぐ近くに谷がいれば、安心して独り暮らしができます。

不動産屋へ行き、購入希望書を提出しましたが、
その頃から問題が発生しました。

バルコニーに鳩の死骸が落ちていることが相次ぎ、
誰かに嫌がらせをされているようでした。

3月30日の金曜日、
10階に住んでいた新山という30代の半ばの青年が、
引っ越すという挨拶に来ましたが、
新山は16年前に事故に遭い、両脚とも義足でした。
これからは田舎で、自然に囲まれた生活をしていきます、
と言い、新山は引っ越していきました。

翌日、銀河は10階に引越しましたが、そこへ不動尊子がやってきて、
「とても気持ちのいい部屋ですね」と言いました。

バルコニーに鳩の死骸が落とされている嫌がらせが何度もあった、
ということを不動に相談すると、
これだけ爽やかな部屋の声を残して行かれた方です、
新山さんに疑いの目を向けるのは、おそらく間違っています、
と言われました。

自分の部屋に戻った谷は、「銀河がドスドスドスという歩き方をしていて、
うるさいことに気付きました。

3月の間は、階下の8階に住んでいる人が、
このドスドスドスを聞かされていたと、谷は気付きました。

8階に住んでいる瀬戸という管理組合の理事夫妻は、保健所の職員で、
鳩の死骸を持ち帰り、8階から9階のバルコニーに、
鳩の死骸を投げ入れていたのでした。

ここは地獄でしかない、と思った谷は、
中古マンションの物件情報を検索し始めていました。


というあらすじなのですが、今回は不動尊子が何もしていませんでしたね。
推理をしなかったら、不動尊子はただのアブない人です……。

でも、意外な真相で面白かったです。

乾くるみ「物件探偵」2話「小岩20分一棟売りアパートの謎」のネタバレ解説

2月3日、27歳の独身教師の寺川万記子(まきこ)は、
インターネットで≪物件所在地=江戸川区≫という条件で検索し、
東京都江戸川区にある木造2階建のアパート1棟が、
4040万円で売りに出されているのを発見しました。

そしてそのアパートは、万記子が現在205号室に住んでいるアパート、
≪北西コーポ≫でした。

しかし、ネットでは空き室が1部屋あることになっていましたが、
万記子には覚えがありませんでした。

万記子はそのウインドウをプリントアウトし、、
ベッドの脇のコルクボードにピン留めしておきました。

翌土曜日の午前10時過ぎ、万記子は買物のために部屋を出ましたが、
外から見ても空室らしき部屋はありませんでした。

2月6日、月曜日の夜、窓のカーテンに小さな隙間があり、
午後2時17分から19分の2分間だけ、
なぜか予約録画されていたことが判明しました。

2月9日、木曜日の午後6時に帰宅した万記子は、
ダイニングキッチンの床に、
生きているダンゴムシが3匹転がっているのを発見しました。

2月12日には、集合ポストにウミウシ興産不動産事業部が扱っている、
4万円から5万円の家賃の賃貸物件のチラシが入っていました。
≪北西コーポ≫を管理しているのもウミウシ興産不動産なので、
おかしな話でした。

また、このチラシが入れられているのは万記子のポストだけでした。

2月15日には、エアコンの暖房が効かなくなっていて、
ウミウシ興産不動産に電話すると、担当の西本は、
エアコンを買い換えると万記子の負担が非常に大きくなり、損だ、
という意味のことを言いました。

万記子は、このアパートに新しく入居した人物が、
万記子の生活音を不快に感じ、
彼女に嫌がらせを行っている犯人ではないかと思っていました。

しかし、2月17日から二泊三日で、
高校2年生の社会見学旅行があり、
万記子は他の先生たちと一緒に引率の役を果たさなければならなくなり、
アパートを留守にしました。

2月19日は同僚の家に泊めさせてもらい、
2月20日に帰宅しました。

すると、本棚の本や、香辛料の瓶など、部屋の中の物が、
すべて微妙に動かされた痕跡がありました。

万記子が外に出ると、不動尊子がいて、
「このアパートは、悲鳴を上げています」と言いました。

万記子が尊子に事情を説明すると、
不動は角の駄菓子屋の店番をしていたおばちゃんに、
土日に≪北西コーポ≫に引越しのトラックが停まっていたのを
見掛けませんでした? と聞きました。

おばちゃんは、土曜日の午前中には荷物を運び出し、
日曜日の午後には荷物を運び込んでいた、と証言しました。

その部屋は、「万記子が住む205号室でした。

不動は、万記子の隣の部屋に住む淡口という女性に賃貸借契約書を見せてもらい、
北西コーポのオーナーはウミウシ興産不動産ではなく、
熊本に住む≪真栄田重雄≫となっていました。

しかし、万記子の賃貸借契約書では、
口座名義欄は≪西本和夫≫となっていました。

ウミウシ興産不動産の西本は、本来なら熊本のオーナーの手に渡るべきだった、
万記子が払っていた家賃を、着服していたのでした。

万記子の部屋はオーナーにとっては空室だったので、
ネットの物件情報にはそう書かれていたのです。

このアパートが売りに出されると、家賃を着服していたのが発覚してしまうので、
西本は万記子を追い出そうと嫌がらせを繰り返し、
万記子が引率で留守にしている間に買主に内覧させたのでした。

こんな素敵な部屋を、そんな酷い犯罪に利用していたなんて、
と不動は言い、左の目から一粒の涙を流したのでした。


というあらすじなのですが、文句なしに面白かったです。

このシリーズは、探偵役の不動尊子があくまでも善意で推理し、
事件を解決するのがいいですね。

乾くるみ「物件探偵」1話「田町9分1DKの謎」のネタバレ解説

物件探偵


2011年11月。
静岡県に住む42歳の中山繁行(しげゆき)は、
東京都港区にある中古マンション、
ロイヤルコージー田町の1DKの部屋を購入することにしました。

その部屋は1200万円で、
表面利回りが13.2%とお買い得な部屋でした。

利回りというのは、家賃収入の、
マンション購入金額に対する割合のことです。

管理費と修繕積立金という月々の出費を考慮して、
実質利回りを計算しても、12.0%と高い数字でした。

マナティホーム株式会社という不動産会社で契約し、
前のオーナーの桑野武彦に購入代金を一括で支払いました。

中山は良い買物をしたと思っていましたが、
翌年の2月25日に事態は急変しました。
マナティホームの福本から電話があり、
中山繁行が買ったマンションに賃貸で住んでいた、
62歳の浮島博子という字営業の女性が、
3月末までに退去すると言われました。

中山は上京し、福本と退去の状況の確認に行きました。

初めて見た部屋は、思っていたよりも狭く、みすぼらしい状態でした。

この部屋が購入価格で1200万円、1ヵ月の家賃が13万2000円、
その価値があるだろうか、と中山は思いました。

福本は、クロスを貼り替え、エアコンを交換し、
8万5000円くらいまでなら借り手がつく、
という意味のことを言いました。

福本が帰り、中山が部屋のドアを開けると、
30歳手前くらいの、グレイのスーツに身を包んだ女性が立っていました。
身長150センチ程度でストレートロングの黒髪の女性は、
「部屋が泣いています」と言った後、
名刺を出し、不動尊子(ふどう・たかこ)と名乗りました。

不動さんと呼ばれていた不動尊子は、
15歳のときに宅地建物取引主任者の資格をとり、
不動産の、物件の気持ちが分かるようになったと言いました。

中山が利回りを重要視してこのマンションを買ったことや、
浮島博子にも、前のオーナーの桑野武彦にも会っていないことを知ると、
不動尊子は、今から浮島博子に会いに行こうと言いました。

浮島古書店という、浮島博子の店に行った不動尊子は、
≪オグジン神田≫の件で少しお話を伺いに来ました、と言いました。

桑野武彦の方が先に売れてしまったが、
桑野に約束通り≪オグジン≫を毎月13万2000円で借りてもらっている、
と浮島博子は言いました。

中山さんは詐欺に遭われたということです、と不動は言いました。

ロイヤルコージー田町の実際の物件評価額は800万円でした。

浮島も桑野も800万円が相場の通子マンションを持っていて、
それをお互いに13万2000円という高額の家賃で借り合っていました。

こうすることで、表面利回りを釣り上げ、
800万円のマンションを1200万円で売ろうとしたのでした。
同じく表面利回りの良い≪オグジン神田≫の物件広告を見た不動は、
そのことを見抜いたのでした。
『交換殺人』ならぬ『交換賃貸』だったわけです。

観念した浮島博子は、差額の400万円を中山に渡し、
これで勘弁してくれろ、と言いました。
中山は心を入れ替え、不動の助言で、
そのお金の一部を使ってあの部屋をリフォームすることにしました。

それを聞いた不動は左の目から一粒の涙を流しました。


というあらすじなのですが、実際に中古物件を自分の目で見ずに、
書類上の数字だけを見て1000万円以上の買い物をする人、
というのが世の中には実在するんですよね……。

しまうましたには信じられないです。

自分が住むために買うならそんなことはしないのでしょうが、
投資のつもりで買おうとすると、目が曇ってしまうみたいです。
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