米澤穂信「いまさら翼といわれても」4話「わたしたちの伝説の一冊」のネタバレ解説

今回は2話同様、摩耶花の視点で話が進みます。

小学3年生の時に、叔母が、
本って不思議ね、誰が書いてもいいなんて、
と言ったのをきっかけに、摩耶花は漫画を描き始めました。

2月19日、月曜日に「ラ・シーン」という月刊漫画雑誌を購入した摩耶花は、
「井原花鶴」というペンネームで応募していた「塔のある島」が、
努力賞に入賞していたのを知りました。

5月14日の月曜日、古典部の部室の地学講義室に行った摩耶花は、
千反田さんが持ってきた4年前の読書感想文コンクールまとめを
見せられました。

奉太郎が「『走れメロス』を読んで」というタイトルで、
銅賞をとっていました。

奉太郎は、メロスが走らなければならなかった理由は、
前日の豪雨で橋が流されていたことと、
山賊に教われたことだと書いていました。

山賊はメロスのいのちを欲しがっていて、山賊というよりは刺客でした。

ディオニス王はメロスが帰ってくるとはまったく思っていないので、
王がメロスが帰るのを邪魔するはずがありません。

あなたは遅かった、走るのは、やめて下さい、
と言ったフィロストラトスも王の敵だと奉太郎は主張します。

メロスを狙った人物はこれからも、王の疑心をあおり人心を離れさせるため、
あらゆる手を使ってくるだろうから、王の改心は長続きしないかもしれない、
という内容を奉太郎は書いていました。

それを読んだ後、摩耶花は漫研の部室に行きます。

漫研では読むだけ派と描いてみたい派が対立していました。

年度が変わった後、
本人は素敵な漫画を描くのにまわりにそれを言わず、
読むだけ派の事実上のリーダーになっていた河内亜也子先輩が、
他の3年生よりもひと足早く退部しました。

河内亜也子はブレーキ役だったため、対立は激化していました。

摩耶花が漫研の部室で漫画のアイディアを出していると、
摩耶花と同じ2年生の浅沼に話しかけられました。

浅沼は、ほかの子たちには黙って同人誌を1冊作り、
神高漫研の名前で、夏休み中のイベントに出すのだと言いました。

ほかには浅沼、田井(たい)、西山、針ヶ谷(はりがや)、
など描いてみたい派の部員に声をかけるのだそうです。

お題は「漫研」で、浅沼は総務委員会にかけあって、
部費から同人誌の予算を出させたいのだそうです。

枚数を決めるのは金曜日まで待ってほしいと摩耶花は言いました。

火曜日の放課後、教室で漫画のネームを描いていると、
読むだけ派の羽仁真紀(はに・まき)という漫研部員が
教室に残ってほかの子と話をしていました。
羽仁真紀は河内亜也子と個人的に仲のよかった女子でした。

翌日、水曜日も真紀は教室に残っていて、
浅沼の計画、ばれたよ、浅沼が吊し上げられてるみたい、
と摩耶花に話しかけました。

なにかあったら連絡すると真紀に言われ、
携帯のメールアドレスを交換しました。

部室に行くと、湯浅部長が引退し、
真紀が新しい部長になるのだと、
現在の読むだけ派リーダーの篠原に言われました。

摩耶花がいない間に、同人誌は部費から出すが、
失敗したら部費を無駄に使った責任を取って、
全員出て行け、ということを言われます。
ちゃんとしたものができたら、
読むだけ派は新しい部を作るのだそうです。

篠原は、計画段階に過ぎなかった同人誌作りの部費を申請させることで、
分裂の前に読むだけ派にわざわざ恥をかかせようとしていました。

しかし、摩耶花がそれに気付いた時には、
浅沼は申請用紙に記入してしまっていました。

木曜日の放課後、古典部の部室で漫画を描いていると、
すぐに来て、と真紀からメールがありました。

部室にいた里志に、漫画のネームを描いていたノートを見張っていて、と頼み、
漫研の部室に行きましたが、真紀はいませんでした。

真紀を捜しても見つからず、古典部の部室に戻ると、
ノートがなくなっていました。

真紀がメールで摩耶花を呼び出した後、古典部の部室に来て、
摩耶花に頼まれたのだと里志に言ってノートを持っていったのだそうです。

ひととおりのことを里志に話すと、里志は、
このあいだの奉太郎が書いた読書感想文に似ている、
という意味のことを言いました。

真紀はディオニス王と同じで、同人誌が完成しても完成しなくても、
部を分裂させるという真紀の目的は達せられるので、
真紀には摩耶花のノートを盗む理由がなにもなかったということになります。

5月18日金曜日の昼休み、摩耶花は浅沼に、ノートが盗まれたことは言わずに、
来週の火曜日まで枚数を決めるのを待ってほしいと頼みました。

その後、真紀に、
放課後『バイロン』というお店に5時半に来てほしいと言われました。

『バイロン』に行くと、河内亜也子が待っていました。

摩耶花のノートを真紀に盗ませたのは、河内亜也子だったのでした。

河内亜也子はノートを返した後、伊原、あんた、漫研やめな、と言いました。

漫研は摩耶花の足を引っ張るだけだと言われます。

漫研にとって摩耶花は、進学校の弱小野球部に入部した、
強豪校でもトップになれるような10年に1度の天才のようなものであり、
摩耶花も漫研のためにならないのだそうです。

河内亜也子は、プロになりたいと言い、
3年の高校生活のうち2年も、あんなところで使ってしまったことを、
後悔していると言いました。

河内亜也子は、『夕べには躯に』を伝説だと言い、
今度は河内亜也子と摩耶花が伝説を作る番だという意味のことを言いました。

浅沼に義理立てしたいのなら、去年、
文化祭曜日4ページ描いた神高漫研を紹介する4コマ漫画を渡せばいい、
と河内亜也子は言いました。

ノートが盗まれたのは、真紀に詳しい事情を話さず、
真紀になんとかして金曜の夜まで、
摩耶花が浅沼に返事するのを邪魔しろと頼んだせいでした。

金曜の夜まで待たせたのは、その日が『ラ・シーン』の発売日だからでした。

河内も『ラ・シーン』に応募しましたが、
もし摩耶花が上の方の賞をもらっていたりしたら、
それこそ河内と組んでいる場合ではないと思い、
結果が出るまで待っていたのだそうです。

結果は、はっきりとは書かれていませんが、
どうやら河内は努力賞に入選して、摩耶花は入選していなかったみたいです。

摩耶花は河内と神山高校に残る伝説の1冊を作ることにして、
漫研を退部しました。


というあらすじなのですが、しまうましただったら、
プロを目指そうが目指すまいが、
こんな雰囲気の悪い部活、さっさと辞めてますね。

湊かなえ「告白」第6章「伝道者」のネタバレ解説

5章のラストで修哉に電話をしたのは、修哉の母親ではなく、
森口悠子でした。

修哉がウェブサイト上に掲載した、ママへのラブレターを、
森口は読んでいて、「馬鹿ですか?」と、
読者の声を代弁してくれました。

第1章の終業式の日の朝、森口は確かに、
眠っている夫、桜宮正義から血液を採取し、学校に持って来て、
修哉と直樹の牛乳パックに注射器で血液を混入しました。

森口のとった方法では、HIVに感染する確率は極めて低い、
ということは森口も最初からわかっていましたが、
ゼロではない限り、正しい裁きが下されると信じていました。

それからひと月後の4月の終わり、
最期の時を迎えた桜宮は、驚くべきことを告白しました。

終業式の日、森口が桜宮の血液を採取したことに、
桜宮は気付き、学校に行きました。
桜宮は、森口が牛乳パックに血液を混入しているのを知り、
新しいものに取り替えたのだそうです。

憎しみを憎しみで返してはいけない、
それで心が晴れることなど、絶対にないはずだ、
彼らはきっと更生することができる、そう、信じてやってくれ、
と言い、桜宮は死にました。

聖職者、という言葉が本当にあるのだとすれば、
彼にこそふさわしいのかもしれません、と森口は言いました。

生まれてすぐに母親を病気で亡くし、
父親が小学五年生のときに再婚し、
継母との折り合いも悪く、家出を繰り返すようになった、
という桜宮の人生を、森口は修哉に語ります。

しかし、森口は、死の瞬間まで、親であるよりも、
教師であろうとした桜宮を許せず、
桜宮に守られた修哉や直樹のことも許せませんでした。

桜宮の教え子で、森口とも1年かぶっていた寺田良輝が、
桜宮の葬儀の場にやってきて、
修哉と直樹のクラスの担任になったと報告されました。

2年B組の様子を聞いた森口は、
もしも桜宮であればこうするのではないか、
と寺田にアドバイスをし、陰から寺田を操って、
修哉と直樹を追いつめていたのでした。

森口は、直樹に対しては
十分に復讐を果たすことができたと思っていました。

修哉が馬鹿な計画を思いつかなければ愛美は死ぬことはなかった、
修哉も直樹も、最終的には苦しみながら死ねばいいと思っているが、
どちらか1人憎い方を選べと言われれば、修哉を選ぶ、
という意味のことを森口は言いました。

寺田から、いじめは解決したという報告を受けた森口は、
無駄だとは思いながらも、
毎日、修哉のウェブサイトもチェックしていました。

そして、更新された「遺書」を読んだ森口は、
修哉がどう思おうと、修哉の人格は、
母親以外の人物を認めようとしない修哉が作り出したものであり、
犯罪を犯したのは、誰のせいでもなく、あなたのせいなのです、
と言いました。

修哉の母親のことは、自分の欲求が満たされないために、
幼い子供に手を上げ続け、欲求が叶えられた途端、
その場限りの無責任な愛情を残して去っていった、
身勝手な人間だという意味のことを森口は言いました。

あなたの世界に、あなたと愛するママしか存在しないのなら、
ママを殺しなさい、と森口は言いました。

修哉の作った爆弾は、一定の温度下では機能が停止するという特徴があり、
森口は「爆弾を解除して、急速冷凍させて運び、
修哉の母親のいるK大学理工学部に新たに爆弾を設置していました。

森口ははっきりとは語っていませんが、修哉の母親に睡眠薬を飲ませるとか、
手足を拘束するとかして、逃げられないようにしていたのでしょうね。

爆弾を作ったのも、スイッチを押したのもあなたです、
これが本当の復讐であり、あなたの更生の第一歩だとは思いませんか?
と森口が修哉に問いかけたところで、この話は終わります。


というあらすじなのですが、「告白」はこれで完結です。

しまうましたは、「聖職者」の桜宮よりは、
森口の気持ちの方に感情移入してしまいますね……。

桜宮の善意の押しつけがましさは、
直樹の母親に通じるものがあるような気がします。
牛乳パックを取り替えたところまではいいですが、
その後、すぐに警察に通報しろよ、と思いました。

新人賞に応募されたのは最初の第1章の「聖職者」だけで、
2章以降は後付けだとは思えないくらい、
連作短編あるいは長編小説としてまとまっていたのではないかと思います。

同じ場面を、森口、直樹の母親、直樹、修哉と、
何度も何度も繰り返し描写されるのには、少しうんざりしてしまいましたが、
その欠点が、デビュー2作目以降では改善されているのが凄いですね。

湊かなえ「告白」第5章「信奉者」のネタバレ解説

5章は、修哉が「天才博士研究所」というウェブサイトに書いた、
遺書の文面が書かれています。

修哉は、父親のことも直樹のことも、クラスメイトのことも、
美月のことも、馬鹿だと考えていました。
修哉が唯一尊敬しているのは、修哉の母親だけでした。

8月31日に、修哉は学校に爆弾を仕掛けました。

明日は2学期の始業式で、全校生徒が体育館に集合します。
1学期に書いた作文が、県の最優秀賞に選ばれ、
ステージに上がった修哉は短く別れを告げ、爆弾のスイッチを押し、
多くの人を巻き添えにして木端みじんに吹っ飛ぶ予定でした。

修哉はその動機を、遺書に書きます。

帰国子女であり、日本のトップクラスの大学の博士課程で
電子工学を専攻していた修哉の母親は、研究で壁にぶちあたり、
時を同じくして交通事故に遭ってしまいました。

それを助けてくれたのが、田舎の電器屋の店主である、
修哉の父親でした。

それをきっかけに2人は結婚し、修哉が生まれました。

母親は修哉に、断念してしまった研究を、繰り返し説明しているうちに、
何か閃くものがあり、修哉の父親に内緒で論文を書き上げ、
それをアメリカの学会に送りました。
修哉が9歳のときでした。

しばらくすると、母親がいた研究室の教授の男が、
母親に大学に戻るよう説得しにきましたが、
子供を置き去りにして出て行くことはできないと言い、
母親は申し出を断りました。

あんたさえいなければ、と母親は修哉に手を上げるようになりました。
しかし、感情を爆発させた日の夜は、必ず部屋にやってきて、
修哉の頭を撫でながら、ごめんね、ごめんねと涙を流し続けていたので、
修哉は、頬が腫れても、手足に痣ができても、
母親を憎いとは思いませんでした。

愛する人を、自分の存在により苦しめていることがつらくてたまらなくなり、
修哉は自殺を考えましたが、父親が虐待に気付き、
10歳のときに両親の離婚が成立し、母親は家を出て行くことになりました。

離婚が決まってからは、母親はいっさい手を上げなくなり、
食事は修哉の好物ばかりが並びました。

別れの前日、ショッピングセンターに行きました。
そのショッピングセンターは、
後に修哉が直樹と「わたうさちゃん」のポシェットを買いに行く場所です。

母親は、何十冊もの本と、最新のゲーム機を買ってくれました。

別れるときには、修ちゃん、ママは約束事で、修ちゃんに会いに行ったり、
電話をかけたり、手紙を書くことは禁止されているの、
でもね、修ちゃんはたった1人のママの子だもの、
修ちゃんに何か起これば、ママは約束を破ってでも駆けつけるからね、
と修哉の母親は言いました。

翌年、父親は美由紀という同級生と再婚しました。
美由紀は、最初は修哉のことを実の子供のように扱っていましたが、
妊娠すると、修哉を祖母の家だった川沿いの平屋に、
修哉の勉強部屋を作ると言って、修哉を隔離しました。
空になった部屋には、真新しいベビーベッドが置かれていました。

修哉は、母親が別れの前日に選んだ『罪と罰』や『戦争と平和』を読みます。

電器屋の倉庫として使われている家の中を宝の山だと考え、
修哉は勉強部屋を「研究室」と呼ぶようになり、
発明品第一号、逆回り時計を完成させましたが、周囲の反応は薄いものでした。

母親の住所も電話番号も知らなかった修哉が、
唯一知っているのは、勤務しているであろう大学だけでした。

そこで、自分のウェブサイト『天才博士研究所』を開設し、
母親からコメントが書き込まれるのを期待して、
大学のウェブサイトのコメント欄に、
自分のウェブサイトのアドレスとメッセージを書き込みました。

しかし、母親からのコメントはありませんでした。

中学生になり、担任の森口に少し交換を覚えた修哉は、
「びっくり財布」を森口に見せますが、修哉は森口の反応に失望しました。

しかし、その直後、「全国中高生科学工作展」の審査員に、
瀬口喜和(せぐち・よしかず)という人物がいるのに目を留めました。

瀬口は、母親がいるであろうK大学理工学部電子工学科教授でした。

「びっくり財布」を工作展に応募し、入賞し、
地元の新聞記者から、インタビューを受けました。

しかし、その日、「ルナシー事件」が起こり、
世間は「ルナシー事件」の話題で持ちきりになりました。

どんなに待っても母親からの連絡はなく、
瀬口教授が修哉の母親に、修哉のことを話すはずがない、
きっと、「ルナシー事件」の話をしているに違いない、と修哉は考えました。

修哉は殺人を起こし、その責任は母親にある、
とマスコミに報道させることにしました。

授業中に、ノートに何度も「死.ね」と書き殴っていた直樹に話しかけ、
ターゲットを選ばせてみて、直樹を証言者にすることにしました。

事件当日、愛美がポシェットのファスナーに手をかけ、気絶したときは、
死んだ! 死んだ! 大成功だ! 母親が駆けつけてくれる、
「今までごめんね」と抱きしめてくれる、それからは、ずっと2人一緒だ、
と修哉は考えました。

しかし、去り際に直樹に捨て台詞を言ったせいで、
直樹は修哉の計画をぶちこわそうとしました。

事件からひと月後、森口が真相に気付き、化学室に呼び出されましたが、
森口は、警察には言わないと言いました。

終業式の日、森口はクラス全員の前で事件の真相を語り、
「びっくり財布」を否定し、愛美を殺したのは修哉ではなく直樹だと言い、
エイズ患者の血液を修哉と直樹が飲んだ牛乳に混入していた、
ということを話しました。

修哉はHIVに感染し、母親が心配して会いにきてくれることを望みましたが、
検査の結果が出るのは3ヶ月後でした。

終業式の日から3ヶ月後に血液検査を受けに行った一週間後、
委員長の美月がいじめのターゲットになりました。

血液検査の結果は陰性(感染していないということ)で、修哉は落胆しました。

キスをさせられたと思いこんでいるであろう美月に、
そのことを知らせましたが、美月は、知ってた、と言いました。

修哉は美月に好意を抱くようになり、付き合い始めました。

しかし、夏休みのあいだじゅう、美月は文学賞に応募するための原稿を書いていて、
それを教えてくれたのは郵送した日、今から1週間前のことでした。

美月はルナシーかぶれしていました。
ルナシーとは月の女神、これは私の名前「美月」からとっているのだ、
ルナシーと私は、もとは同一人物だった、などと、
美月はわけのわからないことを語りました。

また、薬品を担任の寺田に使ってみようか、と言い出した美月に、
寺田のどこがそんなに気に入らないのかと質問すると、
修哉が見下していた直樹が美月の初恋の人だから、
という意味のことを美月は言いました。

サイテー、馬.鹿じゃねえの?
と修哉が言うと、美月は修哉のことを「マザコン」と罵り、
ママは結局、あんたを捨てただけじゃない、
そんなにママを待ちこがれてるなら、自分から会いに行けば?
ぐだぐだ言いながら待ってるのは、拒否されるのが怖いんじゃない?
と言いました。

修哉は逆上し、美月を「殺害し、研究室の大型冷蔵庫の中にしまいました。

そして、今から3日前、修哉は母親に会いにK大学に行きました。

そこで、工作展の審査員の瀬口と会い、瀬口の研究室に案内してもらいました。

瀬口の机上の写真立てには、修哉の母親が映っていて、
瀬口はそれを新婚旅行の写真だと言いました。
また、修哉の母親は瀬口の子供を妊娠中で、12月末に生まれる予定なのに、
今日も学会で福岡まで出かけている、という話を瀬口はしました。

修哉は瀬口の妻のことを、僕の……、尊敬する人、です、と言い、
瀬口は修哉が妻の再婚前の息子だと気付いた様子でした。

修哉は研究室を駆け出し、
たった1人の私の子供、そう言ったではないか、
その子供を迎えにこないまま、己よりさらに優秀な男と再婚し、
そいつの子供を産み、幸せになろうとしているのか、と考えました。

瀬口は気付いたはずなのに、母親からは何の連絡もありませんでした。
これから行う大量殺人は、母親への復讐だ、
と修哉は遺書をウェブサイトに載せ、明日の出来事を、
どうか最後まで見届け、この魂の叫びを彼女に届けてほしい、と書きました。

しかし、「始業式で表彰されるときに『さらば!』と叫び、
爆弾のスイッチを押しても、何も起こりませんでした。

爆破装置に組み込んだケータイが、振動している気配すらなく、
演台に仕掛けてあったはずの爆弾がなくなっていました。
そのとき、非通知で電話がかかってきて、修哉は通話ボタンを押しました。


というところで、5章は終わります。

この話は6章「伝道者」に続きます。

湊かなえ「告白」第4章「求道者」のネタバレ解説

第4章は、真っ白な狭い部屋にいる下村直樹の回想が書かれています。

直樹は、物心ついた頃から、ひたすら母親に褒められながら育ち、
自分は頭がいいし、スポーツもできると思っていました。

しかし、小学校3年生になる頃には、それは母親の願望であって、
実際はがんばったところで中の上くらいにしかなれないことに気付いていました。

しかし、褒めるところがないため、
母親が直樹のことを「優しい」という言葉でごまかしていました。

成績上位者を子供たちの前で発表する森口に、
母親がクレームの手紙を書いていたのを知ると、
母親が「優しい」と親戚や近所の人に自慢するたびに、
直樹はみじめな気分になりました。

そんな直樹は、2月に、
クラスの男子から一目置かれた渡辺修哉に声をかけられ、
お世辞を言われたことで、有頂天になりました。

川沿いにある古い平屋の一室、修哉の「研究室」を訪れ、
パワーアップした「びっくり財布」を見せられます。

懲らしめたいヤツを直樹に選んでほしいと言われ、
直樹はA組の担任の戸倉や、森口の名前をあげますが、
修哉に却下されました。

しかし、森口の子供の愛美はどうかと言うと、修哉は興味を持ちました。

ショッピングセンターで愛美がポシェットをおねだりしていたのに、
買ってもらえなかったことを教え、
直樹と修哉はショッピングセンターに買いに行きました。

計画を立て、事件当日の放課後、
竹中の家の飼い犬のムクがいる庭にボールを投げこみ、
竹中が留守にしているのを確認します。

愛美を待っている間、直樹は修哉に、今度、うちに遊びにきてよ、
母さん、僕に頭のいい友だちができてうれしいみたい、と言いました。

修哉は、ムクにパンをやりにきた愛美にポシェットを渡します。

直樹は、びっくりして尻餅をつく程度だと思っていたのですが、
愛美は気を失い、目を閉じたまま、ピクリとも動かなくなりました。

それまで直樹をおだてていた修哉は手のひらを返し、
みんなに言いふらしていいよ、共犯とか、気にしないでね、
最初から仲間だなんて思ってないから、
脳なしのくせにプライドだけは高い君はあきらかに人間の失敗作だよ、
という意味のことを言いました。

修哉は帰っていきましたが、直樹は、
愛美がプールに落ちたことにしようと、
プールサイドぎりぎりのところまで運びます。

愛美は目を覚ましましたが、人間の失敗作だよ、という言葉が、
直樹の頭の中によみがえります。

やっぱり殺人者になろうとしていたんだ、僕を利用して、
でも、子供は生きている、渡辺くんの計画は失敗だ、失敗! 失敗!
と考え、直樹は徐々に意識を取り戻した愛美をプールに落としました。

渡辺が失敗したことに、成功したんだ、
と思いながら、直樹はプールから出ていきました。

翌日、何で余計なことをしたんだ、と修哉に言われ、
話しかけないでよ、仲間でもないのに、
それから言いふらしたければ自分でどうぞ、
という意味のことを直樹は言いました。

しかし、事件から1ヶ月後、森口にプールで話がしたいと言われましたが、
直樹は家に来てほしいと頼みました。

直樹は、愛美がプールに落ちる直前に目を覚ましたことだけは隠し、
嘘をつきました。

それから一週間後の終業式の日、森口はクラス全員に、
少年AとBが修哉と直樹であることが分かるように話し、
殺したのは直樹だと断言し、牛乳に桜宮の血液を混入したことを話しました。

それ以降、絶対に両親に感染させてはいけない、
と直樹は考えながら過ごしました。

不登校が続き、病院に連れて行かれた帰り、
ハンバーガーショップの隣の席にいた子供が、
足元に牛乳をこぼし、直樹は隣の席の親子を森口とその子供だと思いこみ、
トイレで吐きました。

それ以来、外に出られなくなりました。

また、家庭訪問にきた寺田を、森口とグルになっているのかもしれない、
美月だって信用できたもんじゃないと考え、
部屋に上がってきた母親に怒鳴って辞書を投げつけました。

それでも直樹は生きていることに喜びを感じていたのですが、
後日、母親が作った食事に睡眠薬を混入されて、
眠っているあいだに髪の毛を切られてしまいます。

しかし、母親の仕業とは知らない直樹は、自分が死にかけているのだと思い、
パニックになり、風呂場で頭を丸刈りにした後、
自分はゾンビになったのだと思いこみ、
コンビニの商品に血をつけました。

母さんは、ゾンビになってしまった僕ですら、受け入れてくれている、
と直樹は思い、森口の子を故意に殺したことを打ち明けました。

プールに投げ込んだのは、怖かったからでしょ?
と母親に何度も訊ねられましたが、
母さんの理想に限りなく近いヤツが失敗したことを、成功させたかったんだ、
とは、さすがに言えませんでした。

その後、寺田と美月が家庭訪問にやってきて、
寺田は、修哉はずっと学校に行っていたということや、
いじめられてはいたけれど、解決したということを大声で言いました。

あいつはきっと、ひきこもりになった僕を心から軽蔑し、
笑っているに違いない、と怒った直樹は、
明日、警察に行って、全部全部ぶちまけてやる、と考えました。

しかし、「包丁を持った母親がやってきて、直樹を抱きしめ、
母さんと一緒に、おじいちゃんとおばあちゃんのところに行きましょう、
直くん、ごめんね、上手に育ててあげられなくて、ごめんね、
失敗して、ごめんね、と言いました。

失敗という言葉に過剰に反応した直樹は、包丁を奪って母親を刺しました。
そのまま、母親は階段を落ちていき、
僕も一緒に、連れてって、と考えました。

直樹の姉がやってきて、部屋の外から、
直くんは、何もしていないんだからね、悪い夢を見ていただけなんだからね、
と言われ、直樹は、
今までの出来事を夢で見た別の少年のことだと考えていました。


というところで4章は終わるのですが、もし仮に修哉に話しかけられなくても、
他人のせいにするのをやめない限り、
直樹はいつか駄目になっていたと思います。

それよりも、HIVは感染力が弱いので、
トイレでの便座の共有や、同じコップでの回し飲み、
お風呂やプール、洗濯などでは感染することはないのに、
それで感染するかのように描写し、
HIVへの偏見を煽っていることのほうが気になりますね。

直樹の視点の4章でそれを書くのは無理でも、2章5章あたりで、
それについて言及するべきだったのではないかと思います。

この話は5章「信奉者」に続きます。

星新一「初夢」のネタバレ解説

主人公の「私」は、元日に年賀状を見ていました。

ひときわ目立つ、美しいカラー写真の年賀状を見つけます。
上のほうにまっ赤な太陽が、下のほうには青々とした海が、
その間には大型旅客機が銀色に輝いて、
ゆうゆうと飛んでいるという構図でした。

眠気が押しよせてきて、主人公は足をこたつに入れたまま、
無意識のうちに、その年賀状を頭の下にして、
たたみの上にあおむけに寝そべりました。

ふと気が付いてみると、外国のホテルの部屋にいました。

机の上にあるタバコの箱に手をのばし、あけてみると、
その箱は空っぽでした。

棚のうえに並んだ酒のびんを手にすると、
びんのなかは空っぽでした。

なんというひどいホテルだ、と主人公は言い、
そのへんを散歩しようとドアに手をかけますが、
外から鍵がかかっていてあきませんでした。

電話機の受話器に耳をあてると、なにかご用でございますか、
とむこうから声がしました。

主人公が不満を言うと、窓の下の通りをごらん下さいませ、
自動車がございますでしょう、と言われました。

窓から見おろしてみると、そこは露地になっていて、
美人の乗った1台のスポーツ・カーがとめてありました。

そのスポーツカーは、お客さまにさしあげようと思って、
用意したものでございます、と言われました。
美人は主人公の専属として雇った、通訳兼ガイドだと言われます。

しかし、ドアの鍵があかないと言うと、
じつは、まだ準備が……と言われてしまいます。

電話機のそばにあったメニューを開いて、料理をたのみますが、
料理のほうも、まだ準備が……と言われてしまいます。

さっきから見せつけるばかりで、なにひとつ手に入らない、
どうしたらこの先が実現するんだ、と主人公はどなり、
手にしていたメニューを力をこめて引き裂きました。

主人公は夢からさめ、頭の下に入れていた年賀状を、
ねぼけながら破いていました。

ひとの悪い夢を見させやがる、
こんな年賀状を送りつけたやつの名が知りたい、
と主人公はつぶやき、裏がえしました。

そこには「“あなたの夢を完全に実現する大特売。
海外旅行とスポーツ・カーの当る特賞”と書かれ、
それにつづいて、でかでかと商品名が印刷されていました。


というあらすじです。

枕の下に見たい夢の写真や絵を入れて眠ると、
その夢を見られる、というおまじないがありますが、
ダイレクトメールを頭の下に入れて眠ってしまうと、
こんな夢になってしまう、というオチですね。
プロフィール
Author:しまうました
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このブログの記事は管理人「しまうました」の独自の解釈によるものなので、制作者の意図したものや一般に考えられているものとは異なる場合があります。
個人の趣味でやっているブログなので、解説してほしい本のリクエストは受け付けていません。
重要なネタバレ箇所は白字にしてあるので、反転してお読みください。
現在、荒らしをした人物のコメントを拒否しており、巻き添え規制される場合があります。詳細はこちらに書いてあります。
承認したコメントに対しても、管理人は基本的には返信しません。また、後日予告なく削除する場合があります。ご了承ください。
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