星新一「天使と勲章」のネタバレ解説

酒を飲んだ45歳のエヌ氏は酒場を出ようとしたところで、
面白くない気分の青年とぶつかってしまいました。

青年はエヌ氏の顔の左右を殴り、エヌ氏は倒れて道路で頭を打ち、
気を失ってしまいました。

同時に、エヌ氏のそばに天使が出現し、
いまの事件を目撃したと言いました。

酔って動作がにぶくなっていたエヌ氏は、
青年に殴り返すことができなかったのですが、
天使はそれを、右のほほを打たれたら、左のほほを出せ、
という教訓を実行したのだと勘違いしていました。

天使は勲章を1つさしあげます、と言い、
小さい壺の栓をはずしました。
霧のような気体が勢いよく噴出し、エヌ氏の口に入りました。

天国の勲章は、実質的なもので、いまの処置によって、
エヌ氏が持っている能力の1つを、
ずば抜けて高いものにしたのだそうです。

どんな能力を高めたのか天使が話そうとしたところで、
エヌ氏は病院で正気にかえりました。

エヌ氏は、天使が高めてくれた能力が何なのか、
知りたくて仕方がありませんでした。

医師に健康診断をしてもらいますが、
どの部分も、可もなく不可もありませんでした。

サイコロを持って、ほかの病室の患者と勝負してみたり、
見かける女性すべてに対して、精神力を集中してみたりしましたが、
念力を試みたりしましたが、天使が高めてくれた能力は不明でした。

退院して会社に復帰すると、
会社は高性能のコンピューターを購入していました。

上役はメモに、複雑な数式を書き係に手渡しました。
それをのぞいたエヌ氏は、
数式の答が頭のなかにしぜんと浮かびました。

エヌ氏は歯ぎしりをして、暗算の能力だったとは……、
なんと古くさい、これでは人びとが、
天使だの勲章だのをありがたがらないのも、むりもないな……、
とつぶやいたのでした。


というあらすじなのですが、「数学者とか受験生ならともかく、
45歳のサラリーマンが暗算の能力を高めてもらっても、
大して役に立ちませんよね……。
電卓ですぐに答えが出ますからね。


しまうましたも、どうせ能力を高めてもらうのなら、
それ以外の能力にしてほしいです。

宮下奈都「遠くの声に耳を澄ませて」4話「秋の転校生」のネタバレ解説

4話の主人公の「僕」は、コンピュータソフトの開発の仕事をしています。

「僕」は営業の仕事もしていて、
テレビのクイズ番組で正確な場所のわからない県ランキング上位に
入っていた県を、仕事で訪れました。

「僕」は、みのりという女の子と付き合っていました。
みのりは、鳥取県出身で、土鍋でご飯を炊いていて、
糠床も持っていました。

回想です。
職場の飲み会で好きな子のタイプを訊かれた「僕」は、
適当な答を言いましたが、それがぜんぶ、
蔵原佐和子という同僚に当てはまってしまい、
みのりは「僕」と蔵原佐和子の仲を疑い、帰っていきました。

回想終わりです。
商談は滞りなく進み、商談の相手は、
ほんならまた、の略で「なまた」と言いました。

それを聞いて、「僕」は小学4年生のときに転校してきた、
谷川瑞穂のことを思い出しました。

訛っている谷川瑞穂の喋り方を級友たちは笑いましたが、
笑うなよ、と「僕」は言いました。
その声は谷川瑞穂に届き、心細そうな顔に光が差していました。

ある日の帰り際、「ほなの」と瑞穂は言いましたが、
「僕」は聞き取れずに、「なに?」と訊き返してしまいました。

じゃあね、と瑞穂は言えずに、
目にいっぱい涙を溜めて駆けて言ってしまいました。
年が明け、春が来るのを待たずに瑞穂はまた転校していきましたが、
「僕」は瑞穂のことが好きでした。

商談の相手の「なまた」という言葉を聞き、
谷川瑞穂はここから来て、ここへ帰っていった、
と「僕」は確信しました。

今度、みのりを連れてこの町に来よう、と「僕」は思いました。

というあらすじなのですが、優しい気持ちになる話だと思いました。

よくテレビで方言を笑う番組を見かけますが、
しまうましたは、ああいうのが嫌いです。

ところで、今回の「僕」の回想に登場した谷川瑞穂は、
1話「アンデスの声」の主人公と同一人物だと思います。
名前が一緒ですし、父と一緒に暮らすため
半年ほど母と離れていたことなどが書かれているからです。

宮下奈都「遠くの声に耳を澄ませて」3話「どこにでも猫がいる」のネタバレ解説

3話の主人公の「私」は、5階建てのくたびれたマンションに帰り、
昨日イタリアから届いた葉書を見ました。

どこにでも猫がいます、日本のネコと同じような顔をしています、
と葉書には書かれていました。

回想です。

20歳だった「私」は、初めて恋人とヨーロッパに行き、
イタリアのシチリア島に行きました。

イタリアから日本へ帰って程なく、
恋人が、どんどん生気をなくしていきました。

ずっと世界中を旅していたい、と恋人は言い、
「私」は恋人と別れました。

元恋人が旅に出てまもなく、知り合ったばかりの人と「私」は結婚を決め、
元恋人の実家の住所に結婚の通知を送りました。

1年後に息子が生まれ、その息子が幼稚園に入る頃に離婚しました。

息子が小学2年生の夏の終わりに、「元恋人の姉から、
元恋人が亡くなったという訃報が届きました。

息子は高校3年生になったときに、大学へは行かない、
働いてお金をためる、と言いました。
20歳になった息子は、僕はこれから旅に出ようと思う、
世界中を旅してみたいんだ、と言い、『私』は、
元気でいってらっしゃい、と言いました。

息子が寄越す葉書には、猫のことがよく書かれていました。

『私』は、息子が帰る日を、そして『私』がいつか旅に出る日を、
こっそり待っていました。


というあらすじなのですが、最初に登場した、
どこにでも猫がいます、という葉書を書いたのが「元恋人かと思ったら、
息子でしたね。

作者の宮下奈都さんが意図してやったのかどうかは分かりませんが、
叙述トリックが使われています。


単に家族が独り立ちしただけならともかく、
旅に出た人を待っているのは辛いだろうな、と思いました。

宮下奈都「遠くの声に耳を澄ませて」2話「転がる小石」のネタバレ解説

2話の主人公は1話と違っていて、梨香という人物です。

梨香は照明器具をつくっている会社の営業事務をしています。

梨香の友達の陽子から電話がかかってきて、
波照間島(はてるまじま)にいると言われました。

陽子は他の友達と台湾旅行する予定でしたが、
パスポートを忘れてしまい、友達だけ台湾に行ってもらい、
陽子は成田からパスポートなしで行ける台湾に1番近い地点、
波照間島まで飛んだのだそうです。

来ない? と陽子は私を誘いました。

ここで回想です。
梨香は先週、恋人にふられました。

また別の回想があり、3年前、
2歳年下の陽子と知り合ったのは近所のパン屋だったことが書かれます。

小さなパン屋で1度だけパン教室が開かれ、
梨香は参加しましたが、
課される作業はひたすら地道で厳しいものでした。

教室の終わりに、焼けたパンを試食してひとりずつ感想を述べましたが、
私は自分では決して焼かないことにしました、
この店でずっと買い続けます、と陽子は宣言しました。

梨香もまったく同じ気持ちで、それをきっかけに仲良くなりました。

あたし、パン屋になりたかったんだ、でもやめた、あんなの見ちゃったら、
楽においしいパンを焼こうなんて考えられなくなるもの、
と陽子は言い、涙が一粒落ちました。

回想が終わり、梨香は本当に波照間島を訪れ、
陽子が民宿の車を借りて迎えに来てくれました。

ここにいたら、「逃げ回っている時は既に過ぎました、
というお知らせが来たのだということを、陽子は話しました。
陽子はエプロンを付けて、手ぬぐいを巻いていました。

宿でもパンを焼かせてもらっていたのかもしれない、
と梨香は思いました。


というあらすじなのですが、もしも陽子がパスポートを忘れず、
台湾を訪れていたら、
1度諦めた夢をもう1度追いかけようとは思わなかったでしょうね。

人生というのは不思議なものだな、と思いました。

宮下奈都「遠くの声に耳を澄ませて」1話「アンデスの声」のネタバレ解説

遠くの声に耳を澄ませて (新潮文庫)


じいちゃんにカレンダーはいらん、と主人公の瑞穂の祖父はよく言っていました。

祖父母は農家で、
生まれ育った地元からほとんど出たことがなく、
お盆と正月にしか休みませんでした。

そんな祖父が土間で頽れたという祖母からの知らせを電話で受け、
瑞穂とその母(祖父の娘)は、祖父母の家に向かいます。

祖母から知らせを受けたとき、
瑞穂の目の前にぱっと広がった光景がありました。
高い山、澄んだ湖、赤い花、といった光景でしたが、
どこで見た景色か思い出せませんでした。

子供の頃、瑞穂は母以外の人と暮らしたことがあり、
1度目が祖父でした。
2度目は父でしたが、
半年ほどで元通り父と分かれて暮らすことになりました。

祖父の病室に行き、母を病室に残し、
瑞穂と祖母は祖父母の家に帰りました。

翌日の午後に病室に行くと、瑞穂が仕事を休んだことを知り、
おまえの仕事ちゅうのは、ほんないい加減なものなんか、
と祖父は言い、瑞穂と母は町へ帰りました。

次に面会に行ったとき、祖父は急速に衰えて、
1日の大半を眠って過ごすようになっていましたが、
「キト」と言いました。

祖父母の家に預けられていた頃、
祖父はキトという街の話をしてくれたのを瑞穂は思い出しました。

その町は古代から栄えた年で、赤道直下にあるのに、
標高が高いため暑くもなく寒くもなく、
美しい山と鮮やかな花がありました。

ベリカード、ぜんぶおまえにやる、と祖父は言って目を閉じました。

瑞穂はキトを、
祖父とふたりだけでつくった架空の街だと思っていましたが、
家に帰り、祖母にキトのことを訊ねると、
エクアドルの首都だと教えてくれました。

ラジオを聴いてその内容を書いてラジオ局に送ると、
ラジオ局が受信証明書のようなものであるベリカードを
送ってくれるのだそうです。

アンデスの声、というキトのラジオ局の名前が記された
ベリカードを祖父母は何枚も集めていました。

どこにも出かけたことのなかった祖父母に豊かな旅の記憶があったことに
瑞穂は驚き、やがて甘い花の香りで胸の中が満たされていくのを
感じました。


というあらすじなのですが、いい話ですね。

ただ、農家の祖父が盆と正月以外休まなかった、
というのがちょっと気になりました。

今でこそ、冬でもビニールハウスで農作業ができるようになりましたが、
昔は農家にとって冬は農閑期だったはずですからね。

それと、雨の日とかも農作業はできなかったと思うのですが……。
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