大樹連司・鬼頭莫宏「ぼくらの~alternative~」4巻13章「マリア」のネタバレ解説

マリアの家は、海沿いの街の高いところにある旧家でした。

アフリカ系アメリカ人であるマリアの父を、マリアの母はまだ待っていましたが、
父はもう本国に家庭を持っていました。

日本に任せておいたのが失敗だったのではないか、と考えたマリアは、
日本に国籍離脱届を出し、合衆国の人間となりました。

一方、カンジの両親が設計した沖天楼(ちゅうてんろう)の欠陥工事が報道されていました。
〈ジアース〉のパイロットについて調べていたマスコミが、当たりを引いたのでした。

沖天楼の工事はカンジの母親にとって不本意な形で進行し、
カンジが小学1年生の冬、母親は沖天楼の上から、飛びました。

カンジは沖天楼を、〈ジアース〉で壊すつもりでしたが、その報道により、
父親は法の裁きを逃れることはできないでしょうし、沖天楼もいずれ解体されるようでした。

戦う理由、なくなっちまったなあ……、とカンジは呟きますが、
このゲームはトーナメント制じゃないから、いくつの地球が生き残るか決まっていないので、
ある程度勝ち進んだ地球は、ほかの宇宙のためにこそ、勝ち進む義務があるということを、
コエムシはカンジに言いました。

一方、11章のラストで凍死したようにも読めたウシロは、
マーヤとコエムシに助けられ、〈ジアース〉の隙間の、
最初に「契約」が行われた部屋に匿われていました。

ウシロはそこで綺麗なままのカナの死体を見ていましたが、マーヤが世話を焼いていました。

食べたいものを聞かれ、クリームシチュー、カナが、よく作ってくれた、うまかった、
とウシロが答えると、マーヤは罵声を浴びせ、背中を蹴り飛ばし、去っていきました。

戦闘が始まり、今回もホーム戦でした。
ハワイ近郊でマリアとカンジは再会します。

戦闘が始まるまで、マリアは合衆国の大統領であるケンネルを説得しようとしていましたが、
信じてもらえず、父の空母に軟禁されていたのでした。

試してみたかったことがうまくいかなかったマリアは、友人である関を呼んでもらいます。

マーヤに手伝ってもらい、マコが作ったユニフォームに着替えます。

敵は巨大な全翼機、≪大烏≫です。

≪大烏≫は、自分たちの地球から、コックピットを経由して艦載機を転送していました。

さらに、≪大烏≫の世界のアメリカの軍人たちは、MM-88というウィルスを散布し、
ケンネルをコックピットに転送させました。

ウィルスにより、ニューヨークでは数万人が白い黴に覆われ、死亡しました。

≪大烏≫の軍人たちは、ケンネルに話を合わせ、異星人だと名乗り、
ニューヨークに対して行った攻撃の結果を見せます。
合衆国全土をこうした目に遭わせたくなければ、我々に協力してください、
と≪大烏≫の軍人は言いました。

一方、マリアは、〈ジアース〉よりも速く動ける≪大烏≫に距離をとられ、
攻撃を当てることができず、苦戦していました。

さらに、≪大烏≫の世界の艦載機だけではなく、こちらの世界の米軍機までもが、
〈ジアース〉を襲います。

『ワクチンが欲しければ、自分たちに協力しろ』と大統領を脅迫したのだと、
マーヤは推測しました。

敵を倒しても、この世界で増殖してしまったウィルスは、残り続けます。

――このウィルスに有効なワクチンは、我々の操縦室にしか存在しない、
抵抗を放棄せよ、とアメリカ政府が日本政府へ通達したことを関が伝えます。

罠よ、私が敵なら、最初からワクチンなど持ってこの世界には来ないわ、
予防注射の一本も打っておけばすむ話じゃない、とマーヤは言いました。

≪大烏≫の艦載機が東京の方角を目指し、ウィルスを仕込んだ弾頭をぶら下げて発進しました。

敵は、おまえに追わせたがってるんだ……とカンジは止めますが、
お兄ちゃんのこと、よろしくおねがいします、と言ったカナのことをマリアは思い出し、
≪大烏≫に背を向けて、東京に向かった艦載機を追いました。

数時間後、……ウィルスって、生きてないのか――? 光が見えないか?
とカンジが思いつき、ようやく撃墜できました。

絶望的な距離が開きましたが、〈ジアース〉を敵の近くまで転送してもらうことはできません。

敵の急所は≪大烏≫の上部に露出して存在していますが、核兵器を使っても無駄なのだそうです。
敵のヌイグルミに損害を与えられるのは、ヌイグルミだけです。

マリアは、〈ジアース〉の一部をミサイルの弾頭に詰めて発射することを思いつきます。

ヌイグルミ以外は転送できるので、
国防海軍の残されたほぼ全ての航空戦力を≪大烏≫の近くに転送してもらいます。

関も八八式軽戦のコックピットに乗りますが、マーヤが見送りに来て、
もし失敗しても、敵の操縦室――急所まで生きて辿りついて、
そうすれば、少なくとも勝つことだけはできるかもしれないわ、と関に言いました。

マリアの父のキース少尉は、マリアのいる操縦室に転送され、マリアと話したことで、
敵のヌイグルミを援護しろという大統領命令を拒否しました。

夜明とともに作戦は開始され、関たちが攻撃を開始します。

しかし敵は艦載機を防衛用に残していて、太刀打ちできませんでした。

関は≪大烏≫の上部に不時着し、ウィルスに感染してしまいましたが、
マーヤとの約束通り、敵の操縦室に辿り着こうとします。

マーヤは、関の命の光をマーカーとして、レーザーを撃つことを提案しましたが、
はたして、それで敵の急所を直撃することが可能なのか? とマリアは疑問に感じます。

マリアはカンジからコモたちが弾道ミサイルを迎撃した方法を聞き、
右腕につかんだ左腕を思いきり、投げました。

〈ジアース〉がその左腕にレーザーを撃ち、レーザーが装甲に跳ね返されて乱反射します。

左腕が爆散し、その破片が、≪大烏≫の背中へと散弾となって降り注ぎました。

マリアの攻撃は、たしかに、敵の急所の外壁を直撃し、
中にいた敵性地球人たちを負傷させましたが、敵は依然として健在でした。

関はアニメ版『ぼくらの』エンディング曲、『vermillion』の歌詞を口ずさみ、
敵の操縦室に入り、敵性地球人を拳銃で狙いましたが、引金を引く前に意識を失いました。

関は異世界のウィルスに対して、未知の抵抗力を持った人間で、
関の体内でウィルスは元のウィルスと似て非なるものに進化しました。

敵性地球人たちは自らが散布したウィルスに対する予防接種を受けていましたが、
進化したウィルスに感染してしまいます。

墓穴を掘ったな、宇宙人ども……、とケンネルが言い、敵性地球人に射殺されました。

そして敵性地球人たちは全員死亡し、マリアは勝利しました。

マリアは自分の家の近くの海に転送してもらいます。

マリアの両親も冬の海に転送され、――It's a beautiful world.
とマリアは考えました。

その思いは、『世界は美しい』というコモの想いと一緒でした。

一方、中国がウィルスを焼き払うためアメリカに弾道ミサイルを発射し、
アメリカの国防長官たちは白い黴に覆われながら、報復の核を発射しました。

報復の連鎖が始まり、世界中が攻撃を受けます。
カンジは、〈ジアース〉の襟首のところ、かつて、コズエが転落した場所に立ち、
オレたちは十四人だった、いまはもう、オレ一人だ、と考えていました。

――たった今、東京への着弾が確認された、とオペレータが言ったところで、4巻は終わります。


というあらすじなのですが、マリアの戦いは原作のカンジ編に少し似ていましたね。

その一方で、原作ではなかったウィルスによる攻撃や、「核戦争も始まり、
世界が滅亡への道を突き進み始めました。

前回のコモ編で核を迎撃したのに、結局東京に核が落ちるのか……と、やるせない気持ちになりました。


最初は14人いたパイロットはカンジだけになってしまいました。

次の5巻が最終巻です。

大樹連司・鬼頭莫宏「ぼくらの~alternative~」4巻12章「コモ・カナ(2)」のネタバレ解説

11章の後、コモは「今度こそ、パイロットに選ばれました。

戦いは、それから1週間ほどたって始まり、ホーム戦でした。

夕暮れの洋上で、〈ジアース〉は敵の≪孔雀≫と向かい合っていました。
≪孔雀≫は人型ですが、背から放射状の物体を生やしていました。

敵の光点は残り1つで、途中で契約者が減ってしまったようでした。

〈ジアース〉が大振りで殴りかかると、≪孔雀≫の羽が、何千万本と細い糸のように伸び、
ジアースを包み込みました。

操縦室の外壁を貫いて、敵の糸が侵入してきて、コモが狙われます。

マリアがコモを突き飛ばして、マリアの左腕を数本の糸が貫きました。
糸には鏃(やじり)のようなものがついていて、
引き抜かれるとマリアの血肉がこびりついていました。

コモは負けを悟りましたが、……ごめん、できない、と小さく声がして、
意図が力を失ってだらりと垂れ下がりました。

向こうの世界の青いコエムシが現れ、こちらのコエムシに指示して、
マリアを病院に転送させました。

適性地球の操縦者が逃亡したため、残り47時間以内に決着がつかなければ、時間切れで、
両方の地球が消滅することを青コエムシは説明しました。

戦闘から24時間が経過し、アメリカは日本に、事実上の宣戦布告をします。

手づまりになった佐々見に、心当たりがある、自分を自宅に戻してほしい、
自分を一人だけにしてほしい、とコモが告げました。

前回の戦闘から、もしも、自分たちが最初からもっと子どもたちを信じていれば、
と反省した佐々見は、コモの言う通りにしました。

コモが自宅でピアノを弾いていると、短髪の女の子、阿野万記(まき)ことマキが現れ、
コモの名前を呼び、抱きつきました。

マキの世界では、マコではなくマキが阿野家の養女になっていて、
マキは向こうの世界のコモの親友だったのでした。

マキの世界でも、みんな頑張ろうとしたのですが、マキたちの名前が報道されて、
マキの両親も仲間たちもみんな殺されてしまって、マキも殺されそうになった時、
戦闘が始まったのだそうです。

それでも戦おうとしましたが、コモの顔を見たら、もうダメだったのだそうです。

あの糸みたいな攻撃肢の先端に感覚器――目とか耳とか、感じたりできるものがついているのだそうです。

……弟に、会ってみる? マコのお母さん、陣痛室に入ったって、とコモはマキに告げました。

マキはマコの母親が入院する国防医大の病室にお見舞いに行きますが、
左腕の骨を砕かれて入院していたマリアはマキに気づきます。
しかし、マコの両親を傷つけるようなことになれば、申し訳が立たないと、そっと病室を後にしました。

軍も、マキに気づきますが、佐々見はコモとの約束を守り、手出ししませんでした。

明朝、アメリカ軍が日本に侵攻しようとします。
この世界では日本の同盟国である中国は、静観しています。

コモは日本を守るため、〈ジアース〉を動かします。

いまにも、ワタシの父とおまえの父親が殺し合おうとしているんだぞ!
と父親が合衆国軍・空母にいるマリアは叫び、止めようとしますが、コモは戦おうとします。

マリアはコモと決別し、父であるキース・S・バーナード少尉がいる艦に、コエムシに転送させました。

コモは、なるべく人を殺したくない、ミサイルだけを狙えば、と思っていて、
撃ち漏らした1発のミサイルが、コモの父の乗る〈長門〉という船を沈めました。

一方、阿野摩子の弟であり、阿野万記の弟である1つの光が、生まれました。

結局、マキは両親に真相を話していて、弟を腕に抱かせてもらいました。

アメリカ大統領のケンネルは、補佐官たちに核兵器を異星人の兵器に撃つことを迫られ、
同意しました。

大陸間弾道ミサイル(ICBM)が発射されます。

秒速数キロに達するため、〈ジアース〉で撃ち落とすことはできません。

日本の国防軍が迎撃の準備を進めますが、「マキが話し合いに割って入ります。

たぶん、こっちのヌイグルミと、そっちので力を合わせれば、ミサイル、迎撃できます、
とマキは言いました。

〈ジアース〉を≪孔雀≫に接近させると、≪孔雀≫は〈ジアース〉に機体を密着させ、
背中の羽――攻撃肢が、どこまでも空へと伸びていきます。

そっちのヌイグルミ、〈ジアース〉って言うんだよね、
あたしたちも名前つければよかった、〈ジアース〉二号……って、ダメかな?
とマキが聞き、いいよ、マコも、喜ぶと思う、とコモは答えました。

天空へと伸びた攻撃肢は、大気圏外で円状に拡散し、巨大な花となりました。

超感覚で弾道ミサイルの軌道を理解したマキは、撃って! と叫びます。

〈ジアース〉のレーザーは、巨大な花の中心を直撃し、攻撃肢は爆散し、
レーザーの粒子も飛び散ります。
核弾頭に、レーザーと攻撃肢の破片が、散弾のように襲いかかり、迎撃に成功しました。

〈赤城〉の甲板で、コモがマキに拳銃で狙いをつけますが、手が震えていました。

コモの父親が死んだことを知ったマキは、あたしの世界では……お父さん……、
と言いかけましたが、いいの、とコモは遮りました。

奇跡が存在するのではない、存在するということが奇跡なのだ、だから、世界は美しい、
とコモは考え、マキを殺し、コモの世界を、肯定しました。


というあらすじなのですが、面白かったです。

原作のコモ編では、ピアノを弾いているというコモの個性が強調されていましたが、
小説版ではマコ(マキ)の親友という側面が強調されていましたね。

あのピアノを弾くシーンは絵がある漫画だから成立するものなので、
いい判断だったと思います。

原作では、敵性地球のパイロットは、自分の死んだ娘の面影をコモに見て、
コモを殺せなくなってしまったようでしたが、
だからと言ってコモの地球のために積極的に何かをしようとはしませんでした。

しかし、今回のマキは、コモの地球に守りたいものを見つけ、
コモと協力するという展開に持っていったのもよかったです。

次の13章は、マリアが主役となります。

大樹連司・鬼頭莫宏「ぼくらの~alternative~」4巻11章「コモ・カナ(1)」のネタバレ解説

ぼくらの ~alternative~ 4 (ガガガ文庫)


3巻10章のアンコの戦いが終わった後、名乗り出たのは古茂田孝美ことコモでした。

目を覚ました庄司一尉が、和久隆を撃ったのは自分だと証言したことで、
田中が上層部に「契約者がほかの契約者以外に殺害された場合、世界が消滅する」
と偽の報告をしていたことが明らかになりました。

田中は流出した機密情報の責任もとらされ、
ジアース搭乗者の管理任務を解かれ、謹慎させられることになりました。

佐々見は、上層部のあいだでパイロットを“交換”する意見が、
再び持ち上がっていることを田中に話しました。

宇白可奈に、小学四年生に、百億の人間を殺させるというのは、あまりに、
ひどすぎないか……? それならば、いっそ……あの子のためにも……、
と佐々見は言いました。

私には、それは逃げでしかないと思います、
自分たちが、何もできない、という事実からの――と、田中は反論しました。

一方、コモやカンジや関が集まって話し合いをしていると、モジこと門司邦彦がテレビに出て、
僕があの〈アムシペ〉のパイロットです、パイロットでした、と嘘の証言をしていました。

モジは政府のやり方に反発して、契約を解除させられてしまったことや、
〈アムシペ(ジアース)〉は異星人の兵器だということなど、嘘の証言をします。

しかし、〈ジアース〉が負ければ、世界が滅ぶという、もっとも重要な事実を、
隠し通していました。

モジの証言は、マーヤの指示に従ったものでした。

モジは宇宙を消滅させることで、モジがナギを殺し、ツバサが裏切られて死んだという事実を、
消滅させようとしていたのでした。

モジの放送により、世界中で日本人がバッシングを受けました。

数日後には、日本人のいるところに怪獣が現れるからと、
合衆国の南部で、日本人家族が殺害されたニュースが流れました。

しかしコモは、画面の中にあふれたエゴイズムもまた、世界の一部であり、
私自身の中にもたしかに存在するものなのだと、受け入れようとしていました。

一方、田中と面会した関は、カナちゃんから、お願いがどうなったかと聞かれたんですが……、
と言いました。

田中は、「佐藤美保」という名前しかわからなかったことを伝えましたが、
嘘だな――関は、直感的にそう感じました。

見付からなければ、もう諦めるというカナの言葉を関が田中に伝えると、
……なぜ、諦めるの? 次のパイロットは、古茂田さんよね、」と田中は言いました。

関が去ると、田中に与えられた個室にマーヤが現れ、
本当のこと言ってあげればいいのに、と言いました。

田中はマーヤの喉元に、万年筆の先を突きつけ、
あなたの目的が、この世界を滅ぼすことなら、私は、いまここであなたを排除するわ、と言いました。

せめてお墓ぐらいつくってもらえないかしら? とマーヤは言い、本名を田中に教えました。

一方、宇白順ことウシロが、カナに暴力を振るっていると、
マリアが止めようとしました。

しかしコモは、カナちゃんは、ウシロくんと一緒にいたいと思っている、
私たちからすれば、異常かもしれないけれど、もう、時間がないの、
とマリアを止めました。

一方、アメリカ大統領のジョージ・ケンネルは、
キノクニという日系の首席補佐官たちから、日本との開戦を要求されていました。

また、カンジは未契約者は誰かについて考えていました。

未契約者を割り出す手がかりとして、椅子に注目します。
椅子が用意されていない者は、契約していませんが、
あのウシロが使っている学校椅子は、カナも使っていることをカンジは知っていました。

そこへ、カナがやってきて、以前カナが話した『あのこと』について、
絶対に、絶対に秘密にしておいてほしいんです、とカナは念を押しました。

アンコが命を落とした後、次のパイロットがなかなか、名乗りを上げず、
しばらくして、コモがおずおずと手を挙げ、――私が次のパイロットです、
と言ったことをカンジは思い出しました。

その後、カンジはウシロの個室に入り、――契約してないのは、お前か? と聞きました。

カナが、足でまといがいたら、負けると思って、ウシロはあの板に触らなかったのだそうです。

……楽しかったかよ……オレたちが死んでいくのは……? とカンジは怒りました。


そして、数日後、戦いの日は訪れます。

今回はアウェー戦で、相手の世界でしたが、地面がガラス状になっていました。

一度、地面が融解するぐらいの超高熱に晒されて、それから冷えて固まったのでした。

この世界では核戦争が起き、パイロットたち以外は全滅してしまっていたのでした。

敵は、原作ではダイチの対戦相手だったドラムに相当する、巨大なドラム缶のような形の、
〈打筒〉でした。

〈ジアース〉が敵との距離を詰めていきますが、その動きが妙に速く、力強いものでした。

生命力が力だってことですからね、……若いほうが、動力源が豊富ってことです、
とコエムシが言いました。

〈ジアース〉がレーザーを放つと、圧倒的なパワーで、相手の装甲を貫通しました。

相手のパイロットには、もう守りたいものがなく、〈打筒〉は無抵抗でした。

〈ジアース〉が勝利すると、「みなさん…………ありがとう、ございました……、
とカナが言って立ち上がり、頭を下げました。

お兄ちゃんのこと、よろしく、お願いします、とカナは再度頭を下げます。

お兄ちゃん……ひとりぼっちにしちゃって……ごめんなさい……、それがカナの最期の言葉でした。

しかし、大人たちの“交換”を防ぐため、
コモがカナの代わりにパイロットだと名乗り出ていたことを知らなかったウシロは、
斃(たお)れたカナの体を、蹴りつけました。

カナちゃんだったんだよ、操縦者は! おまえのために、戦ったんだよ、カナちゃんは!
おまえを守るために! とカンジは叫びました。

それにより、契約していないのがウシロだと、全員に知られてしまいました。

矢臼別の演習場に戻ったウシロは、カンジと一緒にいるのが耐えきれなくなって、
雪の降る中、呆然と歩きました。

ウシロは、初めてカンジに話しかけた時の言葉を呟きながら、歩きます。

たった1人の妹と、たった1人の友を失った喪失感と寒さから、
ウシロは雪の中で寝てしまいました。


というあらすじなのですが、刊行時期を考えると、これは原作の「カナ編よりも前に書かれた話ですね。

タイトルが『コモ・カナ(1)』になっているのは、
パイロットがカナであることをギリギリまで読者にも秘密にしておくためでしょうね。

原作では、カナが契約していると思っているパイロットや軍人は1人もいませんでしたが、
カナが契約していることを知っていたら、“交換”したがる、
それを防ぐために他のパイロットがカナの代わりに名乗り出る、という流れは納得ですね……。

マコが生きていたら、きっとコモではなくマコがパイロットに名乗り出ていたのだろうなと思います。

でも、マコは先に死んでしまったから、マコの親友だったコモが名乗り出てあげたのでしょうね。

今回は、カナの視点で描かれたシーンが1つもなく、ゾッとするくらい寂しい印象の話でした。

〈ジアース〉は過去最強の性能になっているのに、相手は戦闘を放棄するというのも皮肉だと思いました。

次の12章は、今度こそコモがパイロットになります。


(原作:鬼頭莫宏「ぼくらの~alternative~」4巻 11章 12章 13章

星新一「敏感な動物」のネタバレ解説

ビルの警備の職についていた青年は、ネズミの行列が下へと移動しているのを目撃しました。

悪いことの起る前ぶれでは……、と思った青年は、上司に申し出て、
べつなビルでの勤務につきました。

しかし、そのビルでもネズミたちが下の階へ、下水道へと移動していました。

ネズミが大量に移動しています、なにかが起ります、
と青年はあちこちに訴えますが、どの役所でも問題にされませんでした。

警察では、署長らしい人から、
二度とこのような人さわがせなことを口にするな、こんどやったら逮捕する、と脅されました。

青年は旅行用具をそろえ、ネズミの行先を追いました。

ネズミはある谷間へと向かっていましたが、
そこには鉄条網が張られていて、「立入禁止」の札が出ていて、警官が見張っていました。

やはり、災厄は襲ってくるのだ、それを察知した一部の階級だけが、
この奥に避難しているに違いない、と青年は考え、地面を掘り、鉄条網をくぐりぬけました。

小型ラジオのニュースを聞くと、
ネズミを誘導し1カ所に集める超音波のことを報道していました。

ネズミは敏感な動物なので、感づかれないよう、すべて計画は秘密裏にすすめられていましたが、
1カ所に集められたネズミは、まもなく焼き殺されるため、情報が解禁されたのでした。

青年はあわててかけだそうとしましたが、周囲から熱い煙がただよってきていました。


というあらすじなのですが、災厄から逃れようとした結果、
逆に災厄のなかに飛び込んでいってしまったというオチですね。

でも、「ネズミには人間の言葉はわからないんだし、
せめて鉄条網の『立入禁止』の札のところに、計画の説明を書いておいてくれればよかったのに、
と思いました。

星新一「黄金の惑星」のネタバレ解説

地質学者のエヌ博士と、操縦士兼助手のエヌ夫人は、宇宙の旅をつづけていました。

ある時、通信機がSOSの電波を受信しはじめました。

われ黄金の惑星を発見せり、されど……、という声が聞こえました。

救助信号を受信したら、まず、もよりの基地に連絡しなければならないことになっていますが、
秘密を保てなくなってしまうため、エヌ博士とエヌ夫人は連絡しませんでした。

その惑星に近づき、望遠鏡で観察すると、大気もあり、水もあり、植物がはえていて、
住民もいるようでした。

どこかに宇宙船が着陸していないか、調べますが、どこにもありませんでした。

黄金の塊が転がっているのを見つけ、エヌ博士たちは着陸します。

エヌ博士たちは黄金を宇宙船につんで持ち帰ることにしました。

住民の何人かが、そっと近よってきつつありましたが、
博士は光線銃で威嚇し、追い払いました。

船内の倉庫が一杯になると、宇宙船を出発しようとしましたが、
黄金の重荷のため、宇宙船は少し上昇したかと思うと、下降しました。

博士は、われ黄金の惑星を発見せり、されど……、とSOSの救助信号を打ち、
2人はパラシュートで船外に脱出しました。

宇宙船は地上に落下し、爆発して四散しました。

住民が迫ってくると、ようこそ、と言いました。

彼らは地球人ですが、救助信号を聞いても基地には知らせずにやってきて、
エヌ博士たちと同じようなことになったのでした。

エヌ博士たちは住民たちと黄金の惑星で暮すことになったのでした。


というあらすじなのですが、無限ループって怖くね? という感じの話でしたね。

水の比重は1ですが、金の比重は19.3もあります。

同じ体積なら、黄金は水よりも19倍以上も重いということです。

通常、船内の倉庫にそれほど重い物を積み込むことは想定されていないでしょうから、
宇宙船は黄金の重荷に耐えられなかったのでしょうね。
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