星新一「おそるべき事態」のネタバレ解説

今回は、大病院の院長と、精神分析が専門の医師の、
2人の会話だけで話が進むという形式です。

院長は医師に、良心病とでもいう新種の病気が広まっていて、
その病気の患者が運び込まれてきたので、
治療してほしいと頼みました。

しかし、治療法はまだ確立していませんでした。

良心病になった本人はいいのですが、周囲が困り、
院長の想像では事故をよそおって、
巧妙に消された患者も、ありそうでした。

そうだとすれば、魔女狩りの再現ですか、
おそるべき事態です、と医師は言いました。

ある患者は、旅行中に列車の窓から余分の錠剤を投げ捨てた際に、
症状があらわれました。
犬か鳥が食べたらと思い、友人の止めるのを振りきり、
次の駅で下車し、そのあたりに戻り、たしかめました。

また、べつな若い患者は、彼の友人が盗みをやって逮捕されたら、
友人の非行は自分の友情が至らなかったのが原因だ、
自分も罰してもらいたいと警察に出頭したのだそうです。

また、ある女性の患者は、あいそよくおしゃべりすると、
相手の恋心をかきたて、あとで絶望させることになっては気の毒だと、
男に話しかけられても、必要なこと以外は返事をしなくなってしまいました。

タクシーの運転手の患者は、事故をおこすまいと、
運転が非常に慎重になりました。

病気の進行したある患者は、区会議員の選挙に際し、
候補者ひとりひとりについて、たんねんに調べて歩いて、
そのあげく、やっと投票しました。

院長は、マスコミの大げさな報道に関連があると考えていました。

この病院に送られてきた患者は、年配の男で、
大きな鉄道会社の社長でした。

以前は書類に、読まずにサインし、万事はスムーズでしたが、
鉄道の事故や不正を気にしはじめ、計画書や報告書は、
何度も調査をくりかえさせ、あげくのはて、
自分で見なくては気がすまなくなりました。

医師が患者を治療し、鉄道会社の社長は全快しましたが、その結果、
鉄道事故による死傷8名、工事での死傷5名、
監督官庁への贈賄の発覚が2件、下請け業者からのリベート問題5件、
従業員の不正20件などが発生しました。

しかし、これもこれまでの平均値で、とくにさわぐほどのことでは、
ないそうだ、と院長は言います。

医師も、事態をすべて正常に戻せて、なによりです、と言いました。


というあらすじなのですが、本当に正常なのは良心病の患者のほうで、
異常なのは院長や医師のほうだったんじゃないか、としまうましたは思いました。

異常であることが当たり前になってしまうと、
正常な人のほうが異常者扱いされてしまうのでしょうね。

鉄道会社の社長を治療した結果、「事故が多発しているのに、
それを院長や医師が喜んでいる
」のが怖いと思いました。

川原礫「ソードアート・オンライン11 アリシゼーション・ターニング」のネタバレ解説

ソードアート・オンライン11 アリシゼーション・ターニング (電撃文庫)


10巻の続きです。

第5章 右眼の封印 人界歴380年5月

教官相手の検定試験でージオが5位、キリトが6位となり、
学院にたった12人の上級修練士となったユージオは、
ティーゼ・シュトリーネンという6等爵家出身の、
まだ16歳になったばかりの少女に≪傍付き≫として
身の回りの世話をしてもらっていました。

キリトのほうも、ロニエ・アラベルという同じく6等爵家出身、
16歳の少女が傍付きとなりました。

ティーゼは赤毛と赤い瞳で、表紙の真ん中にいる少女です。
その右隣にいるのが、ロニエです。

ユージオとキリトがティーゼとロニエを選んだわけではなく、
先に他の上級修練士が傍付きを指名してもらい、
余ったのがティーゼとロニエだったのでした。
ティーゼとロニエは、傍付き候補12人の中で彼女たちだけが6等爵家出身、
という理不尽な理由で余っていたのでした。

ある夜、ユージオが修練場に行くと、
先客であるライオス・アンティノスとウンベール・ジーゼックに、
嫌がらせっぽく話しかけられます。

ライオスは序列第1位の主席上級修剣士、
ウンベールは序列第2位の次席になっていて、
ますます偉そうに振る舞っていました。

傍付きになると上級修剣士の身の回りの世話をしないといけないので、
ライオスとウンベールはそれを嫌って、選考試合で手を抜き、
入学試験の成績を13位以下に調整していたのでした。

キリトによると、上級貴族出身の生徒たちの剣の威力の半分は、
子供のころから育て上げた巨大な自尊心です。
だからライオス達は、貴族どころか央都出身ですらないユージオやキリトを、
事あるごとに貶めようとしているのでした。

この世界では、剣に何を込めるのかが重要なんだ、
というキリトの教えを考えながら、ユージオは白金樫の木剣を振っていましたが、
ユージオはまだ、≪剣に込めるべき何か≫を見つけていませんでした。

ライオスやウンベールは、稽古をしているユージオのことを馬.鹿にします。

ウンベールはユージオに、ライオス殿の指導を受けていっては? と言い、
ユージオは、来月の検定試合の前に、自尊心が生み出す強さとは、
いかなるものなのか、知っておきたいと思い、それを承知しました。

ユージオの希望で、ウンベールと初撃決着の試合をします。

単純な力比べではユージオのほうが上でしたが、
ウンベールは凶相と言うべき異様な表情へと変化し、
「調子に……乗るなッ!」と怒声を迸り、≪アインクラッド流≫を卑劣と言い、
ユージオの右肩を砕こうとします。

ユージオは、上からの技を下から受けっぱなしじゃ、押し切られて当然、
という剣の囁きを聞いたように思い、技を切り替え、
アインクラッド流秘奥義≪バーチカル≫を発動させ、
ウンベールを3メル(3メートル)以上も吹き飛ばしました。

ユージオは、ウンベール相手に1本取れそうでしたが、その直前に、
ライオスが引き分けを宣言しました。

それから数日後、ユージオとキリトは、今後、
ライオスとウンベールがしてくるであろう嫌がらせの内容について、
考えを巡らせます。

その時キリトは、平常心は忘れないように、ステイ・クールでいこうぜ、
と言いました。
ユージオにはステイ・クールの意味が解らず、訊き返しますが、
アインクラッド流の極意その1だよ、落ち着いていこうぜ、っていうような意味かな、
別れの挨拶にも使うけど……とキリトはごまかしました。

それから数日後、ユージオはティーゼと歩きながら話をしていました。

ユージオは、ティーゼは央都出身だったよね、家は近いの? と訊きました。

ティーゼの父は6等爵士だが、下級貴族なので、
帝国行政府に近いお屋敷街の3区と4区には住めず、
学院のある5区からはちょっと遠い8区に実家がある、
という話をティーゼはします。

5等、6等爵士には色々と権利の制限があるのだそうです。
≪帝国基本法≫により裁決権を与えられているのは、4等爵士までで、
5等以下の爵士は逆に上級貴族の裁決の対象になっているのだそうです。

ティーゼの父親は、長子であるティーゼが家を継ぐ時には、
4等爵士に叙せられて欲しいと思い、この学院に入れたのでした。
もし学院代表剣士に選ばれて、帝国剣武大会でいいところまで行けば、
それも有り得ないことではありません。

池のほとりで、ユージオ、キリト、ティーゼ、ロニエの4人で、
ティーゼとロニエが作ってくれたお弁当を食べます。

ティーゼとロニエは改まった様子で、
指導生の変更申請に関して、学院管理部に口添えして頂きたい、
と言いました。

寮で同室のフレニーカという女子を傍付きとして指名したウンベールが、
院則の違反にはならずとも、女子生徒としては少々受忍しがたい命令を、
色々としているのだそうです。

ウンベールは数日前にユージオと立ち合いで引き分けた腹いせに、
フレニーカに懲罰権を行使したり、屈辱的な用を命じたりしていたのでした。

自分の傍付き錬士に過剰に厳しく当たっても、
禁忌目録や帝国基本法、修剣学院則に違反はしないのだろう、
しかし――それは≪していいこと≫なのか?
この世界には、書物に記された法律の他にも、
従わなければならない大切なものがあるはずではないのか……?
と、ユージオは考えました。

ティーゼの父はティーゼに、私たちが平民の人たちよりも大きな家に住み、
幾つかの特権を与えられているのを、当たり前と思ってはいけない、
貴族であるということは、そうでない人たちが楽しく、
平和に暮らせるよう力を尽くし、戦が起きた時は、
先に剣を取り、先に死ななければならないということなんだ、と教えていました。

ティーゼも、ユージオと同じようなことを考えていて、
両眼に大粒の涙を浮かべさせていました。

ロニエとティーゼを見送ってから、ユージオとキリトは、
ウンベールとライオスの部屋を訪れます。
室内調度はのきなみ最高級品に交換され、
ライオスとウンベールは学院の制服ではなく、
高級な南方産の絹の長衣を身に着けていました。

フレニーカの件で注意しようとしますが、
ライオスとウンベールはしらばっくれます。

フレニーカに、毎夕の湯浴みの折に体を揉み解してもらっていることや、
制服が濡れては困るだろうとフレニーカにも下.着姿にさせていることなどを、
ウンベールは喉を鳴らして笑いながら言いました。
現実世界なら確実にセク.ハラになる行為でしたが、
それは学院の規則には違反していませんでした。

ユージオは熱くなりましたが、キリトに止められ、
ユージオとキリトは、ウンベールの部屋を出ました。
ライオスは意図的にユージオを挑発し、
あそこでユージオがウンベールに言いすぎたら、
それを逸礼行為に認定して最大限の懲罰を科すつもりだったんだろう、
とキリトは言いました。

俺のいないところでまた連中に何か言われても、
さっきみたいに熱くならないように気をつけろよ、とキリトは言い、
解ってるよ、ステイ・クールだろ、とユージオは言いました。

翌日、ユージオはティーゼに、
フレニーカの件でウンベールに抗議したことを伝えました。

ティーゼはユージオの右腕に縋り付き、
ユージオ先輩に、お願いがあるんです、きっと学院代表になって、
剣武大会にも勝って、四帝国統一大会に出てくださいね、と言いました。

ユージオが統一大会で上位に入り、一代爵士として叙任されたら、
「私……私の…………」と、ティーゼはプロポーズのようなことを言い、
俯いて体を震わせました。

大会が終わったら、きっと君に会いに行くよ、とユージオは言い、
私も強くなります、ユージオ先輩のように……正しいこと、
言わなきゃいけないことをきちんと言えるくらい、強く、とティーゼは言いました。

その翌日の5月22日、大雨の日に、
キリトとユージオはティーゼとロニエを待っていました。

しかし、4時半になっても2人は掃除に来ませんでした。

キリトは嫌な感じがすると言い、
ティーゼとロニエを初等錬士寮まで迎えに行きました。

行き違いにならないよう、ユージオは部屋で待っていましたが、
そこへフレニーカ・シェスキ初等錬士がやってきました。

フレニーカは、ウンベールに抗議してくれたことについて、
ユージオにお礼を言います。

しかし、ウンベールは今日の夜間に、説明の難しいご奉仕をフレニーカに命じ、
フレニーカは、このような命令が続くくらいなら、いっそ学院を辞めようと思い、
ティーゼとロニエに打ち明けたのだそうです。
それを聞いたティーゼとロニエは、
直接ウンベールに抗議すると言って3時半に寮を出ましたが、
まだ戻ってこない、という話をフレニーカはしました。

ユージオは手入れしていた青薔薇の剣をそのまま持って、
ウンベールの部屋に行きました。

ウンベールとライオスは飲酒していましたが、
上級修剣士は寮内での飲酒も許可されていました。

ティーゼとロニエが訪ねてないか、と何度もユージオは訊き、
ウンベールは西側の寝室の扉を開けました。

ティーゼとロニエは、制服の上から、真っ赤な縄で縛り上げられ、
ベッドに横たわっていました。
濃密に漂う香のせいか、2人は意識が半ば混濁しているようでした。

ティーゼとロニエは、ライオスとウンベールに甚だしい非礼を働き、
帝国基本法の貴族裁決権を行使しているのだと、ライオス達は言いました。

裁決権は、上級貴族最大の特権で、行使の対象は5等及び6等爵士とその家族、
領地に暮らす平民だけですが、罰の内容は禁忌目録にないことなら、
自在に決められるのだそうです。

ライオスはティーゼの頬を撫で、ウンベールはロニエの足に手を這わせます。

ユージオは「やめろっ……!!」と叫んでベッドに駆け寄ろうとしますが、
動くな、平民!! これは、帝国基本法及び禁忌目録に則った、
正当、厳粛なる貴族の裁決である!
そして、裁決権の妨害もまた重大な違反行為だ!
そこから1歩でも動いたら、お前は法を破った罪人となるのだ!
とライオスが叫びます。

いきなりユージオの両足が、勝手に止まりました。

先輩、動かないで、私なら、大丈夫……これは、私が受けるべき、
罰なんです、とティーゼは震え声でしたが、毅然とそう言い切りました。

ユージオは法に疑問を抱き、右眼の奥に鋭い痛みが走りました。

なぜ法は≪禁じる≫だけなのか、何百頁にもわたって無数の禁止条項を列挙せずとも、
ただこう書けばいいではないか、誰もが誰もを尊重し、敬意を払い、
仁愛の心を持て、と、とユージオは考えます。

教会の権威を以てしても、全ての人間に善心のみを持たせることはできないのだ、
なぜなら人間とは、もともと、善と悪の両方を持つ存在だからだ、
とユージオは考えます。

ライオスとウンベールがついに決定的な行いに及ぼうとし、
いや……助けて、ユージオ先輩! とティーゼは悲鳴を上げます。

ユージオは右眼の激痛に耐えながら、青薔薇の剣を鞘から抜こうとします。

薄い赤に染め上げられた右眼の視界の中央で、
【SYSTEM ALERT:CODE871】と神聖文字が輪を作って並び、
右向きに回転していました。

ユージオはそれが、法への恭順を強制している≪封印≫だと直感しました。

ライオスとウンベールへの憎しみを力に変え、右腕を動かします。

ティーゼが叫び、ユージオも絶叫した、その刹那、
右眼で銀色の光が爆発し、ばしゃっ!
という感触とともに眼球そのものが内側から弾け飛びました。

視界が半分欠け落ちましたが、それすらも意識せず、
ユージオは猛然と青薔薇の剣を鞘走らせ、
ホリゾンタルでウンベールの左腕を半ばから斬り落としました。

ウンベールは絶叫し、ライオスに、天命を分けてくださいと頼みますが、
ライオスは、絹紐でも巻いて、血を止めておけ、と言っただけでした。

貴族裁決権の対象は、原則として下級貴族と私領民だけだが……
禁忌を犯した大罪人とあらばその限りではない!
とライオスは叫び、高く剣を振りかぶります。

ユージオは、禁忌目録に違反し、ウンベールを斬ったとい衝撃が大きすぎて、
身じろきすらできませんでした。

ライオスはユージオの首を落とそうとしましたが、
キリトが現れ、漆黒の刀身を持つ長剣でライオスの剣を止めました。

禁忌だの、貴族の権利だの、知ったことか、とキリトは言い、
セルルト流秘奥義、≪輪禍(リンカ)≫を繰り出しました。
ユージオを守るため、狭い室内で戦わないといけないので、
キリトはアインクラッド流ではなくセルルト流を使ったのでした。

ソルティリーナが、最後の最後でウォロ主席を破った大技、
単発秘奥義の2連撃を放ち、ライオスの剣を真っ二つにへし折り、
ライオスの両腕を、手首の少し上で斬り飛ばしました。

ライオスはウンベールに、お前の紐を解いて、私の傷口を縛れッ!!
と叫びましたが、これを解いたら、オレの天命が減る!!
とウンベールは拒否しました。

ティーゼとロニエを縛っていた絹紐は、
すでにウンベールの左腕の止血に使われています。

ライオスの両腕からの止血を止めるには、
その紐を両方とも使わなければなりませんが、
ウンベールの紐を解けばウンベールの天命がまた減り始めます。

正当な理由または同意なく他者の天命を減少させる――
それは明白な禁忌目録違反です。

ライオスは、≪自分の命≫と≪禁忌目録≫のどちらかを
選ばねばならない状況に立たされました。

キリトはロニエの上半身を縛める縄を解き、ライオスの止血をしようとしましたが、
その前にライオスの声が異様な響きを帯び、
「でででっ、でっ、でっ、ディッ、ディル、ディルディルディル、
ディルディルディルディルディ――――――――」
と叫び、ライオスはそのまま真後ろにごとりと倒れました。

ライオスの天命はまだ残っているはずなのに、ライオスは死んでしまいました。

ウンベールが悲鳴を上げて廊下に飛び出しました。

ティーゼはユージオの胸に飛び込み、謝りましたが、
ユージオも、ごめん、怖い思いをさせてしまって、と謝りました。

その時、寝室の天井に≪ステイシアの窓≫のようなものが浮かび、
生白い肌にはまる、硝子玉のような眼で、
何者かがユージオたちを見下ろしていました。

白い顔が口を開きます。
ユージオはティーゼの頭を強く抱きかかえ、キリトもロニエを包み込み、
白い顔が奇怪な声で神聖術の式句を唱えるのを、聞こえないようにしました。

その晩、ユージオとキリトは修剣学院管理棟の地下懲罰房で過ごし、
翌朝の午前9時にアズリカ寮監がやってきました。

アズリカは≪四大聖花≫から採れる貴重な神聖力の結晶を砕き、
それを触媒にユージオの右眼を神聖術で治療しました。

右側の視界が戻り、ユージオはアズリカにお礼を言いました。

アズリカは、禁忌目録、公理教会それ自体さえも、
神ならぬ人が作ったものだということを忘れないで、と言いました。

それは、創世神ステイシアがこの人界を生み出した、
というユージオの常識とは違うことでした。

アズリカは右眼だけをつぶり、鋭い痛みに耐えながら、
あなたたちはきっと近いうちに知るでしょう、この世界の真実を、
と言いました。

学院敷地に、飛竜と整合騎士がいて、
ユージオとキリトはそこに連れて行かれました。

その整合騎士は、セントリア市域統括、
公理教会整合騎士――アリス・シンセシス・サーティと名乗りました。

ユージオはその整合騎士アリスを、
幼馴染みのアリス・ツーベルクが成長した姿だと思い、
整合騎士アリスの右肩に触れようとしましたが、
整合騎士アリスは鞘ごと剣帯から外し、その先端でユージオの頬を打ちました。

それでもユージオは、その整合騎士アリスが幼馴染みのアリスだと思い、
カセドラルに入ってアリスを元のアリスに戻す方法を探すことにしました。

アリスは、8年前、幼いアリスを縛めたものと、まったく同じ拘束具で、
ユージオとキリトを捕縛しました。

その時、ティーゼとロニエが、よろめきながらも懸命の歩みで近づいてきました。
ティーゼはユージオの青薔薇の剣を、ロニエはキリトの黒い剣を持っていましたが、
剣の重さのせいでティーゼたちの掌はすり切れ、血が滲んでいました。

ティーゼは、ユージオたちに剣を返す許可をアリスに頼み、
アリスは2本の剣を同時に軽々と持ち上げ、飛竜の荷入れに収めました。

ティーゼは涙を流しながら何度も謝り、今度は、
私がユージオ先輩を助けます、私……頑張って、きっと整合騎士になって、
先輩を助けに行きますから……だから、待っててくださいね、と言いました。

ロニエはお弁当の包みをキリトに渡します。

背にアリスを乗せ、両脚にユージオとキリトをぶら下げた飛竜が飛翔し、
央都の真ん中にそびえる巨大な塔、公理教会セントラル・カセドラルを目指しました。


転章Ⅲ

2026年7月6日、結城明日奈は、桐ヶ谷和人が入っているSTLを目指して、
螺旋階段を上っていました。

螺旋階段の上からロボットが下りてきて、明日奈は驚きました。

比嘉が現れ、そのロボットを≪エレクトロアクティブ・マッスルド・
オペレーティブ・マシーン≫の1号、
略して1EMON(イチエモン)と呼びました。

比嘉は、神代凜子をプログラムのチューニングに付き合わせているのでした。

その後、明日奈は、STL4号機のジェルベッドに横たわる和人の体を、
ガラス越しに見詰めました。

お見舞い後、改めて比嘉と神代凜子と話をします。

イチエモンは、アンダーワールド育ちのフラクトライトを載せるために
菊岡が造らせたロボットなのだそうです。

イチエモンはデータ収集用の試作機で、
AI搭載試験用の2号機≪ニエモン≫はもっとスマートなのそうです。
人工フラクトライトのオートバランサーは人間と同じ性能があるから、
ほぼ完全な人型ボディを実現できるかもしれないのだそうです。

その後、明日奈はラースの男性スタッフとすれ違いました。
伸ばした髪を後ろで束ね、無精ひげを浮かせた男を見て、
もしここがアインクラッドなら、
細剣の柄に指先を触れさせていたであろう感覚を感じましたが、
神代凜子に呼ばれ、歩行を再開してあれこれ考えているうちに、
感覚は薄れ、消えてしまいました。

(すみません。あらすじの途中ですが、この続きは後で更新します)

時雨沢恵一「キノの旅」12巻2話「悪魔が来た国」のネタバレ解説

老人が、誰かに向かって、若い頃に悪魔と出会ったことがある、
と語りかけている、という話です。

老人が住んでいる国の人達は、緑に囲まれたこの国以外、世界に人はいない、
と考えていました。

老人がまだ12歳だった頃、森の向こうから、
キノとエルメスがやってきましたが、
その国の人達は、エルメスのことも生き物だと思いました。

その時の南地区の首長が、ご飯に誘い、
首長の奥さんは焼いたパンと、野菜と果物といった食事を運びます。

首長の奥さんが、腰にバターの袋を下げていて、
キノはそのバターのいい匂いに気づきました。

私の特製バターです、お使いになりますか?
と首長の奥さんに訊かれ、キノは、少しいただけたら嬉しいです、と言いました。

器にバターが盛られ、キノはそのバターをパンに塗って食べました。

その時、首長も奥さんも、当時12歳だった老人も、
この人は悪魔なんだと気づきました。

人だったら、化粧品であるバターをパンに塗るなんて、
そして食べるなんて、するわけがないから、と考えたのです。

キノが悪魔だと気づいてからは、
逆にみんなほっとして、キノに話しかけました。

キノは3日間の滞在の許可を申し出ましたが、
悪魔は夜にコウモリやモグラに姿を変えて、
人間を襲うと木に変えてしまうので、断りました。

キノはたくさんのバターで満足したのか、すんなりと引き下がり、
国の外へ、森の中へと去っていきました。

という話を、老人は誰かに向かって話していたのですが、
それを見ていた他の住民達は、「隣のおじさん、
また1人で木彫りの人形に話しかけているわ、と言ったのでした。


というあらすじなのですが、この話のオチは要するに、
『王様の耳はロバの耳』だと思います。

老人は、悪魔と出会ったことを誰かに言いたくて言いたくて
仕方がなかったけど、結局誰にも言えず、
穴を掘って王様の耳はロバの耳だと叫んだ散髪屋のように、
木彫りの人形に向かって話していたのでしょう。

あるいは、認知症になってしまっただけかもしれませんが……。

時雨沢恵一「キノの旅」12巻1話「正義の国」のネタバレ解説

キノとエルメスは海と草原の間を走っていました。
目指す南の地平線と水平線の向こうに、黒い雲が広がっているのを見て、
これで少しは涼しくなるかな? とキノは言いました。

翌朝、灰色の空の下を、キノは寒いくらいだと言いながら走っていました。

エルメスは、どこかで火山が噴火したんじゃないかな、と言いました。
火山灰より軽い物質が、浮遊粉塵になって、空のとても高いところに留まり、
風に乗って、ずいぶん遠くの空まで覆っているのだそうです。

さらに翌日、キノはコートを着て走っていました。
真昼だというのに薄暗く、キノはエルメスのヘッドライトをつけていました。

目指していた国に辿り着くと、入国審査官は半袖のシャツに短パン姿でした。
入国審査官は鼻声で、明らかに寒さに震えていて、途中何度もくしゃみをしました。

キノとエルメスは、この国のことを、“南国ムード漂う、解放的なところ”
と聞いていましたが、今の空は黒く、吹く風はどこまでも冷たいです。

半袖のシャツに短パンの、20人ほどの逞しい体つきの男達がいましたが、
キノがエルメスを止めると、皆一様に視線を逸らし、
固まったまま防波堤を逃げるように移動していきました。

国の中心部に、全員が半袖短パン姿の老若男女が
100人以上列をなして並んでいる病院がありました。

そこへ、牛車に乗った、この国の首相がやってきました。

牛車が止まり、半袖短パン姿のボディガードの男2人と、
半袖短パン姿の、40代中頃の女性の首相が出てきました。

キノが首相に、天気が悪いと言うと、そうね、ここ数十日はね、
と答えが返ってきました。

気温もかなり落ちていて、寒そうに見えることをキノが言うと、
でも、この国ではこれが正装だから、と首相は言いました。

建国以来、この国では皆で半袖に短いズボンをはくのだそうです。

ある国では長袖シャツにネクタイを締めて、さらに背広の上着を着るのが正装で、
皆真夏でもその格好をしていると聞いたわ、
そんな非論理的でバカげたことをする国に生まれなくて、本当によかったわ、
と首相は言いました。

また、この国で半袖短パン姿以外の格好をすることは、憲法違反なのだうです。
旅人のキノは例外扱いのようですが。

その後、キノは3日ルールを破り、半日で出国しました。

それから、およそ200と数日が経過した後のこと、
厚手の防寒着を着込んだ、シズとティーと陸がその国にやってきました。
この辺りの植物は全滅で、とうとう雪まで降っていました。

薪にするために木々は全て切り倒され、白骨化した死体が転がっていました。

シズはティーに、この国の人間はね、考え方を変えることができなかったんだ、
“昔からずっとそうだ。今まではそれでよかった”という理由で、
薄着以外の服装を正しいとすることができなかったんだよ、
自分達を取り巻く世界が、状況ががらりと変わってしまったというのに、
それに対応することができなかったんだ、と言いました。

ティーは、「かれらのせいぎをつらぬいたのか? と言い、
その通りさ、彼らは、彼らの正義を貫いたんだ、とシズは言いました。

20匹ほどの狼の群が、雪の下にある住人の遺体を貪り食っていました。
狼は、寒くなったので、餌を求めて移動したのでした。
彼らは、ずっとずっと、逞しい、とシズは言い、バギーを発進させました。


というあらすじなのですが、この「正義の国」は、
8巻エピローグ「船の国」のその後を暗示している話ですね。

船の国の人達も、自分達を取り巻く世界が、
状況ががらりと変わってしまったというのに、
それに対応することができず、おそらく全滅してしまいましたからね。

そのことをティーがどう思っているのか気になっていましたが、
ティーは、「彼らは、彼らの正義を貫いた」と心の整理をつけていたことが分かり、
しまうましたは、少し救われたような気持ちになりました。

時雨沢恵一「キノの旅」12巻口絵3「願い」のネタバレ解説

エルメスがキノに、「死なないでね」とお願いする話です。

エルメスは、キノが生きているからこうして走っていられます。
別の人が乗っても、キノほど走ってくれるか分かりません。
だから、キノには死なないでほしいとエルメスは思い、
まだ言ってないから、一応言ったのでした。

一方、キノはエルメスに、朝早く起きてほしいと何度も頼みましたが、
エルメスは寝たふりをしたのでした。

というあらすじなのですが、今回はいつにも増して、短い話です。

原稿用紙換算枚数1枚強といったところでしょうか。

「旅人の話」を読むと、
運転手を亡くしたモトラドのその後は地獄なので、
エルメスの願いは痛切なものなのだろうな、と思います。

しまうました達が普段乗っている自動車や自転車も、
口がきけないから何も言わないだけで、
エルメスと同じことを考えているのかもしれないな、と思いました。
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このブログの記事は管理人「しまうました」の独自の解釈によるものなので、制作者の意図したものや一般に考えられているものとは異なる場合があります。
個人の趣味でやっているブログなので、解説してほしい本のリクエストは受け付けていません。
重要なネタバレ箇所は白字にしてあるので、反転してお読みください。
現在、荒らしをした人物のコメントを拒否しており、巻き添え規制される場合があります。詳細はこちらに書いてあります。
承認したコメントに対しても、管理人は基本的には返信しません。また、後日予告なく削除する場合があります。ご了承ください。
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